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2018年12月

2018年12月27日 (木)

Dream Factory 2018 冬

長いトンネルを抜けるとそこは・・・

01_2県選抜 団体優勝!

ホームページが新しくなりました。どんどん進化する北越高校、いいですね。北越高校は新潟県の、否、日本のトップランナーを目指して日々イノベーションしています。

ただ、昭和世代の私は、技術革新について行くのがやっとです。若手のホープたちから教わりながら頑張りますので、これからもよろしくお願いします。工事中で更新できなくてすみませんでした、というのは真っ赤な嘘で、優先順位を後回しにし続けた末、ホームページの全面的リニューアルを迎えてしまった、というのが真相です。要はさぼりです。すみません。

真っ赤な嘘と言えば、競技力の向上に、この「嘘」って奴はかなりしぶとく、かなりの粘着性を持って絡みついてきます。ジュニア期ですと「疲れることはやりたくない」レベルの分かりやすい嘘になるでしょうが、「プレアスリート期=高校期」だと、自分が「嘘」と共犯してやるべきことをやっていない、という形で「嘘」が内在化し、競技力の向上を妨げるということがよくあります。「嘘」は「言い訳」とか「妥協」という自他共に見えにくい形状で潜在します。アスリートになりたくてなりきれない半端アスリートは、自分が「言い訳」していること、「妥協」していることに全く気づきません。全力で走らないこと。微妙に諦めること。うまくいかない理由を探究せずにメニューをこなしていること。気持ちいい練習ばかり無意識に選んでいること。今日まとめるべきことを明日以降に先送りすること。こんなことは無数にあり、それはテニスコートを離れても試され続けるものです。

やるべきだとわかっていながら先送りしたり、誰かに依存したり、日常のあらゆる場面、あらゆる場所で「やるor やらない」「yes or no」(noだとしっくりきませんね。明確にやらない!という意志ではないですから「yes or ignore 」でしょうか。)を試されます。今がやるべき場面だと当然理解して、Yes!の(目に見えない)ボタンを押すと同時に動き出す、それを繰り返していたら、必ず状況をコントロールできる強い心が育ちます。プレアスリートのコーチとして、選手のメンタルを強くするには、スポーツ心理学的なメンタルトレーニングをすることではなく、日常のあらゆる場面で「yes or ignore」を試されているのだと自覚させ(これをチーム北越的には「向き合う」といいます)、笑顔で「Yes!」を選択する心を培うことだと思っています。

その成果は必ず追い込まれた場面で現れてくるものです。勝負のかかった重要な時に、そのプレッシャーに耐え切れず、ラケットが振れなくなったり、無難な選択を繰り返したり、根拠のない一か八かの無謀なプレーを不必要な場面で選択したりして、自ら勝負を降りていく選手のいかに多いことか…。リードしていても、中盤まで競り合っていても、終盤でえっ?というくらい、あっけなく勝利を投げ出してしまうペアのいかに多いことか…。そうではなくて、どんな状況下に置かれても、自分がやるべきことを信じてやり切れるかどうか、たとえそれで何回かうまくいかなくても、信じると決めたことを信じ続けて、状況を打開していく、トップに立ちたいのならそこを追究してほしい。

その意味で、この秋に大きく進化したのが、2年生 田中遥奈です。

夏の鈴鹿IH、その時のブログで書いたように、その頃の田中はまだ幼く、3年生の阿部に引っ張ってもらわないと力を発揮できないジュニアアスリートでした。夏の終わりに田中はくじけかけました。新リーダーとして求められる課題と自分の現実を重ね合わせて、そのギャップをモチベーションにすることが難しかったのです。ただ、その苦境の中で自分には自分を待ってる仲間がいる、そう深く悟ることでもう一度コートに戻ってきた田中は、以前の田中ではありませんでした。もう、全く違います。少しのサナギ期を経て、これだけ劇的に進化するケースはあまり経験ありません。人間の成長って素晴らしいですね。挫折が人を一回りも二回りも大きくする。

昨今の教育を取り巻く環境にプレッシャーを受けて「優しい指導」(私的には「腰が退けた指導」)がひたひたと波のように広がっていますが、それはある意味、指導者の妥協でもある。以前、福岡で中村学園の外薗先生に教えを乞うた時、先生は「コートは私と子供たちの真剣勝負の場だ」と仰ってくださいました。この教えはそれから私の座右の銘になりました。

10月に行われた県新人選抜大会。本命の水澤が皇后杯出場で不在ではありましたが、田中はダブルス(ペア冨樫)、シングルスの二冠に輝きました。それでも満足することなく、全国レベルの水澤の背中を全力で追っています。二冠を獲った日のノートに、水澤の代わりに主将として二日間戦った田中はこんなことを書いていました。

「奈央はこんな責任の中でいつも戦っているんだ」

責任と自覚、それを背負いながらも、逆に背負って期待されるからこそ、もう一回り大きな自分と出会える、チャンピオンマインドのふもとにようやくたどり着いたのでしょう。

12月暮れの県選抜(団体戦)では、冨樫と組んで全勝。その時のノートで田中はこう書きます。

去年のリベンジっていう強い想いがあったから、逃げてのミスは無かった。去年名古屋で私の心の弱さからくるクソミスでゲームセット。そのリベンジのために、私が全勝する。だから逃げてなんていられない、そういう思いを持ってプレーできた。試合中、瑞希先輩を見上げて何度もガッツポーズをした。瑞希先輩も喜んでくれた。私がこんな風に戦えたのは、夏から瑞希先輩が本気で私を変えようとしてくれたおかげだし、直前の合宿でも私の中途半端さに気付いてくれて、どういう時にそうなるのかまで教えてくれたからだと思う。瑞希先輩に恩返しをするって強く誓っていたから、信じて戦えた。瑞希先輩、絶対去年の名古屋のリベンジしてみせます!

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この田中のノートに表れているドラマこそが、Dream Factory北越の真髄だと思います。

「本気」「誠実」「絆」「リスペクト」・・・

こうして、ただの名もないジュニアプレーヤーが、ハートを感じて、責任を自ら引き受けて、誰かのために夢を叶えてみせる。アスリートの誕生ですね。

もう一人、12月の県選抜、それから翌日に行われた県インドア大会(個人戦)で、ようやく長いトンネルを抜けて、コートの上で、北越のユニフォームを着て輝いた選手がいます。

今井風花です。

本当に長いトンネルでした。いくつもの大失敗を繰り返し、自分のスモールハートに負けて心も折れ、失意の日々が続いた後、ようやく前を見て進み始めた夏のインターハイ直前、身体の不調でドクターストップとなりました。秋地区も出られず、県新人も不出場。本人も辛かったと思います。ですが、ご家族の温かい励ましと今井自身の復活への強い意志で病を乗り越え、トレーニングを開始できたのは北風が吹く頃だったでしょうか。短い準備期間でしたが、今井の心は田中同様、以前と全く違うアスリートハートに進化していました。何より自分のスモールハートを公然と口にし、ノートにも毎回書き、隠さずに立ち向かっていきました。もちろん、日々その名残は色濃く出るのですが、先輩や僕から指摘される度に、悔しそうな表情で唇を噛みしめます。口で言わずとも、「私はもうこの自分の弱さから絶対に逃げない」と決意しているのがよくわかりました。今井は、県選抜では水澤と組んで全勝。その日のノートです。

今日の試合の成果は何と言っても「スモールハートゼロ!」小さくなったことはなかった。もちろん、レシーブが浅かったりして、技術的には完璧じゃないけど、私の代名詞だった「スモールハート」が出なかった。いつも奈央がカバーしてくれるけど、私は小さくなって戦えない、そんな試合を繰り返してきた。だけど今日はちゃんと二人で戦えた。なぜか。精神的にリラックスしていたし、何よりも「やるしかない!」って覚悟が決まっていた。今回、いつもなら身体を動かして気持ちも上げてきたけど、しっかりと落ち着く時間を作った。そして最終的には「よし、行くぞ!」って思ってコートに向かう。すごい自信にもなったし、嬉しかった。明日も、これからも「私は私をコート上で全部表現する」こうやって戦っていきたい。

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こうして今井風花という選手をこのDream Factoryのブログに記載できること、指導者として心から嬉しく思います。長いトンネルは君の進化の「さなぎ期」だったんだね。

ただ、この二人、田中・今井ペアは、個人戦で攻撃的ストローカーの巻高校平行陣ペアに敵いませんでした。田中のボールが浅くなったところをすべて今井に持ってこられ、そのテンポとスピードに今井が最後まで対応できませんでした。それでも今井も田中も前向きに悔しがっています。それでいいのです。課題を浮き彫りにしてもらえたわけだから、他の学校の選手たちの成長にも感謝すべきです。春にどれだけ対応できるスピードとフィジカルの強さを身に着けられるか、冬はいろんな意味で自分のベースを底上げするチャンスです。

今、チーム北越では、進路が決定した3年生(おかげ様で4人全員が第一志望で決まりました)が「恩送り」として選手の個人コーチになってくれます。今年の3年生は例年以上に熱くコーチングしてくれていて、その光で選手たちが次々と古い葉っぱを落としてレベルアップしています。北越は滅多に練習試合に出かけません。特にこの時期は技術の基本、というよりそもそもの技術の考え方をブラッシュアップし、身体を作り、今までの葉っぱを一旦落として再構築することに時間をかけています。その中で、自分と向き合いながら、強い心を養っていきます。雪国のチームですから。もう昔みたいにそのことをハンデだと思わなくなりました。僕も選手たちも冬は雪の中で根を張るのです。それでいいし、それがいい。夏の大輪の花をみんなで夢見て、今日もチーム北越、冬空の下で元気に頑張ります!

02県選抜インドア(ダブルス個人戦) 1位 水澤・冨樫   3位 田中・今井

秋~冬の大会結果

秋季新潟地区大会

〇シングルス

1位  水澤奈央  2位 田中遥奈  3位 冨樫春菜

〇ダブルス

1位 水澤・冨樫  3位 田中・佐藤  3位 鈴木・清野

県新人選抜大会

〇シングルス

1位 田中遥奈  3位 鈴木唯香

〇ダブルス

1位 田中・冨樫  

県選抜大会(団体)  優勝

県選抜インドア大会(個人)

1位 水澤・冨樫  3位 田中・今井

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