DREAM FACTORY 2015 春(県総体 1)
県総体 団体4連覇達成!
3年吉藤を核に炎になった北越魂
2日目の個人戦が終了した時点で、今年の県総体の本命は長岡商業だということがはっきりしました。長岡商業の3年生エースは無敵で個人優勝。どのペアもファイナルにもちこむことさえできませんでした。後衛高井さんの重くて速いストロークと運動センス抜群の前衛長谷川さんのペアの充実ぶりは今大会秀抜でした。また長岡商業の2番手は新入生のダブル後衛ですが、二人とも安定したストローク力と運動量豊富なコートカバーリング技術を持ち、準決勝の同士討ちで高井・長谷川組に負けるまで、やはりファイナルゲームまでもつれさせずに勝ち上がりました。一方で、北越は2年生エース松浦・大原が準々決勝でその長岡商業の1年生ペアに自滅負け。ダブルフォルトからリズムを崩し、最後は自己コントロールも失って自ら戦いを下りました。地区個人準優勝の3年吉藤皇子と2年岡崎のペアも、去年IHまで駆け上がった勢いはもはやなく、戦いの中で自己ベストも出せずに敗退しました。IH決定リーグ(通称 地獄リーグ)を何とか勝ちきって、松浦・大原ペアが5位、1年の鈴木・保科ペアが6位で、インターハイ出場にすべりこむのがやっとという状況。勢いは長岡商業にあり、その破竹の勢いに楔を打ち、どう立ち向かっていくかが、最終日、団体戦の鍵となりました。
平成27年度 新潟県総合体育大会 (5月29日~31日 新潟市庭球場)
団体戦
準々決勝 ②-0 新発田
準決勝 ②-1 巻
決 勝 ②-0 長岡商業
和田・田辺 ④-3 高井・長谷川
鈴木・保科 ④-3 北川・山崎
吉藤・松浦 吉田・若月
厳しい試合でした。2試合で2時間半かかったそうです。久しぶりに、激戦を制したという決勝でした。
チーム北越のドラマは今年も健在でした。
優勝が決まった瞬間、会場にいた皆さんはどこをご覧になりましたか?
優勝を決めた1年生ペアの喜ぶ姿でしょうか。最高潮に盛り上がるベンチでしょうか。それともベストを尽くして敗れた敵軍でしょうか。
あの時、すべてのエネルギーを使い切ったように、一人コートに崩れ落ちた人がいました。
その人こそ、今回のドラマの主役です。
Episode 1 吉藤を核とした3年生と1年生の深い絆
県総体の約3週間前、新潟地区大会が行われました。
結果は次の通りです。
<団体戦>1位
<個人戦>
1位 松浦明彩加・大原未来
2位 吉藤皇子・岡崎楓
ベスト8 鈴木愛香・保科葵
ベスト16 和田栞璃・田辺なつき、渡部那菜・鷲尾玲稀
1年生鈴木は全中5位の実績の持ち主です。全国トップの高校からの誘いを断って地元新潟で頑張ろうと北越に来てくれた選手です。これだけの実績を持っていると、どうしても自分で「勝たねば」の呪縛をかけてしまう。日本一になるのは3年生の時でいい、と言っても、「負けられない」という思いがプレーを固くしてしまいます。地区大会の個人戦は、ディフェンシブに高くボールをつないでくる選手を攻めあぐみ、敗れてしまいました。
こんなに泣くんだ、というほど自分の不甲斐なさに悔しくて泣いた日の夜のことでした。
鈴木と吉藤では、素質は天と地ほどの差があります。でも吉藤は努力の人です。努力で積み上げてきたことばかりだからこそ、自信を持って「地」から「天」にも伝えられる。躊躇はありません。ズバッと言います。鈴木は過去に、指導者以外から、これほどズバッと「そうしちゃダメだよ、こうすべきだよ」と言われたことはないかもしれません。これがチーム北越の姿です。初心者であっても、下級生であっても、レギュラーにも誤りは誤りだと普通に伝える。そのことが鈴木は嬉しいのかもしれません。吉藤皇子は大地の人です。大地に根差した言葉は、魂があります。それが鈴木に力を与えます。
去年の千葉インターハイ団体戦で、吉藤は、田辺・岡村から、大事なバトンを渡されました。
「皇子、チームを任せたよ!」
日本一になった田辺・岡村から、あの日チームを引き継いだのは吉藤でした。
しかし、新チームの2年生(現3年生)はまとまりを欠きます。それぞれ自分のことばかりでチームは年が変わっても「心を一つ」にできません。そんな中での北信越選抜大会、このチームは全国選抜代表決定戦で敗退してしまいます。
それからの日々、吉藤は文字通り、身を粉にして何とかチームにハートを作ろうと孤軍奮闘しつづけました。
そして、春になり、新入生が加わり、ようやく3年生がまとまってきます。
ただ、吉藤の努力を、感覚として一番確かに受け取ったのは、新入生の鈴木愛香だと思います。
県総体、2日目の夜、宿舎で、吉藤は入部してから今に至るまでの思いをチームに伝えます。
その日の鈴木のノートです。
団体優勝の日の保科のノートから。
(つづく Episode 2 へ)
3年吉藤を核に炎になった北越魂
2日目の個人戦が終了した時点で、今年の県総体の本命は長岡商業だということがはっきりしました。長岡商業の3年生エースは無敵で個人優勝。どのペアもファイナルにもちこむことさえできませんでした。後衛高井さんの重くて速いストロークと運動センス抜群の前衛長谷川さんのペアの充実ぶりは今大会秀抜でした。また長岡商業の2番手は新入生のダブル後衛ですが、二人とも安定したストローク力と運動量豊富なコートカバーリング技術を持ち、準決勝の同士討ちで高井・長谷川組に負けるまで、やはりファイナルゲームまでもつれさせずに勝ち上がりました。一方で、北越は2年生エース松浦・大原が準々決勝でその長岡商業の1年生ペアに自滅負け。ダブルフォルトからリズムを崩し、最後は自己コントロールも失って自ら戦いを下りました。地区個人準優勝の3年吉藤皇子と2年岡崎のペアも、去年IHまで駆け上がった勢いはもはやなく、戦いの中で自己ベストも出せずに敗退しました。IH決定リーグ(通称 地獄リーグ)を何とか勝ちきって、松浦・大原ペアが5位、1年の鈴木・保科ペアが6位で、インターハイ出場にすべりこむのがやっとという状況。勢いは長岡商業にあり、その破竹の勢いに楔を打ち、どう立ち向かっていくかが、最終日、団体戦の鍵となりました。
平成27年度 新潟県総合体育大会 (5月29日~31日 新潟市庭球場)
団体戦
準々決勝 ②-0 新発田
準決勝 ②-1 巻
決 勝 ②-0 長岡商業
和田・田辺 ④-3 高井・長谷川
鈴木・保科 ④-3 北川・山崎
吉藤・松浦 吉田・若月
厳しい試合でした。2試合で2時間半かかったそうです。久しぶりに、激戦を制したという決勝でした。
チーム北越のドラマは今年も健在でした。
優勝が決まった瞬間、会場にいた皆さんはどこをご覧になりましたか?
優勝を決めた1年生ペアの喜ぶ姿でしょうか。最高潮に盛り上がるベンチでしょうか。それともベストを尽くして敗れた敵軍でしょうか。
あの時、すべてのエネルギーを使い切ったように、一人コートに崩れ落ちた人がいました。
その人こそ、今回のドラマの主役です。
Episode 1 吉藤を核とした3年生と1年生の深い絆
県総体の約3週間前、新潟地区大会が行われました。
結果は次の通りです。
<団体戦>1位
<個人戦>
1位 松浦明彩加・大原未来
2位 吉藤皇子・岡崎楓
ベスト8 鈴木愛香・保科葵
ベスト16 和田栞璃・田辺なつき、渡部那菜・鷲尾玲稀
1年生鈴木は全中5位の実績の持ち主です。全国トップの高校からの誘いを断って地元新潟で頑張ろうと北越に来てくれた選手です。これだけの実績を持っていると、どうしても自分で「勝たねば」の呪縛をかけてしまう。日本一になるのは3年生の時でいい、と言っても、「負けられない」という思いがプレーを固くしてしまいます。地区大会の個人戦は、ディフェンシブに高くボールをつないでくる選手を攻めあぐみ、敗れてしまいました。
こんなに泣くんだ、というほど自分の不甲斐なさに悔しくて泣いた日の夜のことでした。
地区大会個人戦、結果ベスト8。最後の2試合は教えられた打ち方で打つことに自信がなくて、全部手打ち、上半身主体の前の打ち方に戻っていた。それには試合中から気づいていた。が、やっぱり自信がなくて手打ちになった。だからボールが短かった。それからは焦りと不安で逆に自分を追いつめてしまった。高校では、あの手打ちでは通用しないと言葉で伝えられていたけど、今日は実際に痛感した。これからは、今度こそ骨盤と下半身をしっかり使った打ち方で打てるよう自信をつけるまで練り上げようと心の底から実感した。
先生も言っていたが、タクティクス(戦略・戦術)の勉強は本当に必要だと思った。葵と研究・追究しよう。こんなに悔しい思いをしたのは初めてかもしれない。
夜、皇子先輩(3年 吉藤皇子)からメールがきた。
「明日の団体戦は、自分の今できることをやろう!」
「自己ベストで戦うことだ。迷うな!」
「困ったらベンチ見ろよ! みんなついてるから」
涙が出た。今は完璧じゃなくていいんだ。できることをやればいいんだなって、気持ちが軽くなった。
皇子先輩は昨日だって、校内戦で自分が吉藤・岡崎に負けて、課題練習をしていた時、もっとこうしたらいいよ、これはこうしちゃダメだよ、って何回も教えてくれた。次の日、個人戦で対戦するかもしれないのに、3年だから負けられないはずなのに…。
皇子先輩は本当に尊敬する。いつも仲間のことを想って、自分を犠牲にしてまでサポートしている。いつもすごいなって思う。自分も今は自分のことでいっぱいいっぱいだけど、他の人のために何かするってこと、増やせるようにしていきたい。
北越は「誰かのために」っていつも思ってやっている。今日の県総体出場決定戦での琴音(1年 吉藤琴音)と佳矢乃(1年 猪俣佳矢乃)の試合は感動したな。負けた友恵先輩(3年 斉藤友恵)を県総体に出してあげたいって思いで戦っていた。(勝利すれば自力で県総体出場になり、学校枠を斉藤にプレゼントできる)そして勝利。琴音・佳矢乃、ありがとう。
振り返って、今日、私は、誰かにエネルギーを与えられたか、勇気を与えられたか、勇気を持ったプレーをしたか? まだまだだ。
北越高校に入学して、初めての公式戦。このチームは、チームの誰かがナイスプレーをした時には、みんなが自分のことのように一緒になって喜ぶ。試合をしていて、一人で戦っているんじゃないんだって思える。このチームっていいなって思う。私は中学校の時の実績から、変なプライドがあって、勝たなくちゃとしか思っていなかった。地区大会で負けるくらいなら北越に行った意味ないって思う人もいるかもしれない。だけど、私はこの地区大会を通して、北越に来て本当に良かったと思う。いろいろちゃんとわかってくれて一緒に本気で日本一を目指してくれる先生、成長を一緒に喜んでくれて、逆に苦しい時には声をかけてくれる先輩やチームの仲間。自分って幸せだなって思う。だからこそ、このチームで奈良IH行って、目標を達成したい。来年、再来年じゃない。このチームは今年しかないんだから。(1年 鈴木愛香)
鈴木と吉藤では、素質は天と地ほどの差があります。でも吉藤は努力の人です。努力で積み上げてきたことばかりだからこそ、自信を持って「地」から「天」にも伝えられる。躊躇はありません。ズバッと言います。鈴木は過去に、指導者以外から、これほどズバッと「そうしちゃダメだよ、こうすべきだよ」と言われたことはないかもしれません。これがチーム北越の姿です。初心者であっても、下級生であっても、レギュラーにも誤りは誤りだと普通に伝える。そのことが鈴木は嬉しいのかもしれません。吉藤皇子は大地の人です。大地に根差した言葉は、魂があります。それが鈴木に力を与えます。
去年の千葉インターハイ団体戦で、吉藤は、田辺・岡村から、大事なバトンを渡されました。
「皇子、チームを任せたよ!」
日本一になった田辺・岡村から、あの日チームを引き継いだのは吉藤でした。
しかし、新チームの2年生(現3年生)はまとまりを欠きます。それぞれ自分のことばかりでチームは年が変わっても「心を一つ」にできません。そんな中での北信越選抜大会、このチームは全国選抜代表決定戦で敗退してしまいます。
それからの日々、吉藤は文字通り、身を粉にして何とかチームにハートを作ろうと孤軍奮闘しつづけました。
そして、春になり、新入生が加わり、ようやく3年生がまとまってきます。
ただ、吉藤の努力を、感覚として一番確かに受け取ったのは、新入生の鈴木愛香だと思います。
県総体、2日目の夜、宿舎で、吉藤は入部してから今に至るまでの思いをチームに伝えます。
その日の鈴木のノートです。
皇子先輩の団体にかける想い…。それはどの高校の3年生よりも強くて大きい。それは、今まで一緒にいてよくわかる。あの誠実さ、部長としての責任とチームへの指摘、後輩の指導、いつもチームの中心となってチームをまとめてきてくれた。その皇子先輩は今年がラストの年だ。皇子先輩と一緒に戦えるのは今年だけ。何が何でも一緒に奈良IHに出て戦いたい。絶対に奈良IHの舞台に皇子先輩を立たせる。皇子先輩だけじゃない。いつもチームのことを考えて支えてくれている玲稀先輩、那菜先輩、友恵先輩。今日だって、3年生の本気の応援が心に伝わってきた。一緒に戦ってくれていた。3年生の4人とまだまだ一緒にテニスがしたい。まだいろいろ教わりたい。一緒に戦いたい。絶対に明日で終わらせない。団体戦に強い北越だ。会場にいる人たちにチーム北越の強さ見せつけよう。皇子先輩、3年生のために、絶対に優勝して、奈良IHにつなげます。おやすみなさい。(1年 鈴木愛香)
団体優勝の日の保科のノートから。
私は苦しい場面で玲稀先輩(3年 鷲尾玲稀)の「みんなついてるからね!」って言葉に何度も救われた。そして、この言葉が私に勇気をくれ、私を強くしてくれた。個人戦も団体戦もこの言葉に助けられた。みんなで戦っている。自分だけで戦っているわけじゃない、チーム北越なんだ、ってすごく感じた。
喜ぶのも一緒、悔しいのも一緒、本当に大きな力… 個人戦でもIHに行けるのは、このチームのおかげだと思う。(1年 保科葵)
(つづく Episode 2 へ)