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2020年5月28日 (木)

Dream Factory 2020 新緑

若き指導者との対話①

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緊急事態宣言が解かれ、学校もまもなく再開されそうです。
まずは「密」を避けての分散登校で短縮授業で徐々に日常へ戻る階段を用意しての再開です。
では部活動は… 
 
部活動を「課外活動」だと強調する向きがあります。これが部活動に対するネガティブな文脈で使われると、どうしようもない徒労感と違和感に苛まれます。「授業」が「正課」であり、部活動は「課外」だ、という言葉はとてもバイアスがかかっている。これはひとえに「正」と「外」という言葉のマジックのようです。部活動は「学校教育活動の一環として学習意欲の向上や責任感,連帯感の涵養等に資するもの」(学習指導要領)であり、れっきとした学習活動です。それが主体的学習活動であるからこそ、しっかりその場を整えてあげるべきでしょう。

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「知育・徳育・体育」すべてが教育であり、そのバランスこそが人格形成の核であるということは論をまたないと思います。決して思考停止になってはなりません。全国の指導者の皆さん、議論を尽くしましょう。孤独に闘っている先生、夜明けは遠くありません。子供たちの夢の最前線にいる者として、共に頑張っていきましょう。
 

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北越の部長を務める3年生の佐藤莉穏は、先日「今年の県総体、6月24日に実施決定!!」という朝刊のニュースを見て泣いて喜んでいる、という夢を見たそうです。そして、夢から覚めてがっかりしながらも、気を取り直して支度をし、いつものように玄関のカギを開け、静かに戸を開き、まだ誰もいない道路を走り始めるのです。
もう、言葉になりません。
 
僕は、青春をかけて生きている人間の伴走者として、また、かつてその同じ18歳をブカツにかけて生きた人間として、共にこの夏を全力で燃焼したい、そのためにできることを精一杯やります。

さて、先日、ある県の中学校の先生からメールが届きました。とても熱心な先生で、行間から情熱がほとばしっています。生徒の夢を叶えたい、日本一を取らせてあげたい、純粋な思いです。

その先生とメールをやり取りしながら、不思議な気持ちになりました。なんだかかつての自分自身とメールをしているような錯覚に陥ったのです。
僕もかつて、こんな風に情熱の塊で指導していた時代がありました。経験不足、力不足を実感するがゆえの焦燥、そして苦悶、それを情熱で燃やして前へ進むしかなかった、不器用で純粋で無鉄砲な愛すべき時代です。でも、今だから言えます。その時代の闇雲な燃焼がなければ、決して夢の頂点を見ることはなかった。
 
僕は今年で59歳になります。来年は還暦です。公立高校なら間もなく退職というところです(北越高校は定年がもう少し先です)。少し前から、僕の中で、若い先生に何か伝えられるものがあれば伝えていきたい、という思いが強くなってきていました。今年に入ってから、他にも同じような熱い心を持った先生からお便りをいただきました。

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僕は選手としてはどこにでもある地方の雑草でしたし、大学も体育会で鍛えたわけでもありませんし、指導者になってからも誰かのもとで指導を学んだわけでもありません。技術や戦術であれば、他の有名な方々に聞いた方がずっと有益だと思います。そんな中で僕が伝えられるとすれば「哲学」なのかもしれません。地元の選手で日本一を目指す、その方法ではなくて、その考え方、その夢を駆動させる「観」を求めて、若い先生たちが扉をたたいてくれているのだと思います。
そのような情熱ある若い先生との対話を通して、次の世代の指導者、ひいては次の世代の選手たちとつながることができるとすれば、とても嬉しいことです。
また、現役の選手たちは、先生たちはこんなことを考えて指導してくれているんだと思い至ることができれば、時に目の前の物事を短絡的にとらえがちな幼い心を少しだけ広くしてあげられるかもしれません。
 
 
はじめまして。
〇〇中学校でソフトテニス部の顧問をさせていただいています、〇〇と申します。
 
DREAM FACTORYを読ませていただき、ぜひご質問をさせて頂きたいと思い、急なメールで大変申し訳ないとは思ったのですが、連絡をさせていただきました。
 
DREAM FACTORYのお話の中にあった、
昨年度のIH後の投稿の中にある「君が育った道のり、君から教わった選手としての生き方。」、
2019年1月の投稿の中にある「僕はこの子たちに生かされているんだな。こんな劇的なドラマの中に重要な登場人物として命を与えられているんだな。」というところが特に印象に残りました。
生徒と共にソフトテニスをさせてもらっている中で、生徒から学ぶことやこちらが与えてもらっていることが沢山あるなと感じております。先生のお話の中で、あらゆるところに「ありがとう」という言葉があり、この想いが指導者である中でとても大切なことだと改めて実感させていただいました。
 
また2015の吉藤さんのノートにあった
「あと一歩」というお話。
私自身も「あと一歩」という経験がとてもあります。その一点が取れていれば、あそこで思い切らせることができればと。
その「あと一歩」は私にとって永遠の課題です。
 
目の前の選手の為に、ぜひ津野先生から学ばせていただきたいと思っております。ご質問をさせてください。
 
☆先生が日本一になるために一番こだわっていること(モットーや大切にしていること)を教えてください。
☆「あと一歩」その先にいくために答えは自分で見つけなければならないことだと思いますが、先生の考える「あと一歩」とはなんですか。
☆今年から女子の指導にチャレンジするのですが、女子指導でこだわっていらっしゃること、男子との違いについて教えてください。
 
以上三点です。よろしくお願いします。
図々しく、このような急な質問で大変失礼なことだとはわかっております。
申し訳ありませんが、ぜひよろしくお願いします。

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こんばんは。
お便り、ありがとうございます。
 
関東は緊急事態宣言が解除されていないですよね。
生徒さんたち、どうですか?
3年生にかけてあげる言葉一つひとつが、いつもと比べものにならないくらい重いものとなると思います。先生の熱い心で、勇気を与えてあげてください。
 
Dream Factoryもずっと読んでくださっているのですね。
2015の吉藤のブログは、もう載っていないはずです。
 
長く、こうして若い人間たちと夢を共に追っていると、だんだん立場が逆転してくるような気がしてきます。若いうちは、こっちが先頭に立って切り拓いてやる、というようなシナリオでドラマを生きていたと思うのですが、最近は先生が目を留めていらっしゃる箇所のように、こちらが夢を追わせてもらっている、生かされているという思いが強くなってくるのです。不思議なものです。主客転倒、でもそれが幸せなのかもしれません。
 
さて、熱心な先生の期待に応えられるかどうか、自信がありません。
そして、正解はないと思います。ですから、教えるなど、滅相もありません。
こちらの思いの一部をしたためさせていただいて、先生がより考えを深めるきっかけになれば幸いです。
 
①先生が日本一になるために一番こだわっていること(モットーや大切にしていること)を教えてください。
 

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日本一になるためにこだわっていることはありません。
こだわっていることならあります。たくさんあります。
そのこだわりと日本一の優勝旗とどちらかを選べと言われたら躊躇なく前者です。なので、日本一になるためのこだわり、という風な考え方にはならないのです。
こだわっていることは、Dream Factoryに色濃く現れていると思います。若い人間の人格的成長です。責任を伴った成長を促し、その過程を通じて心を養う。苦境に立たされた時に依存せず、状況に振り回されず、確かだと信じることをやり切る。その力がこれからの人生に力になり、競技の厳しい場面での力になる、そう考えています。ただ、生徒の人格的成長にこだわっている方は全国に山ほどおられるでしょう。その理想へ向けてそれぞれの指導者のこだわりがあるのだと思います。そう考えると、こだわりって入れ子構造ですね。
2019年の9月号ソフトテニスマガジンに北越高校女子部の記事が載っています。先生なら御覧になっているかな? 同じようなことを聞かれて話したことがまとまっていますので、読んでみてください。
ただ、おそらく、「言葉の力を信じる」と明言するのは私くらいしかいないかもしれません。
 
②「あと一歩」その先にいくために答えは自分で見つけなければならないことだと思いますが、先生の考える「あと一歩」とはなんですか。
 

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指導者としての「あと一歩」ということでよろしいでしょうか?
シミュレーション力と決断力だと思います。
僕も若いうちから、何度も「あと一歩」で悔しい思いを積み重ねてきました。
ずっと、経験のない選手を鍛え上げて全国を目指してきましたから、「あと一歩」は市内大会レベルから地区大会、県大会、ブロック大会、全国大会、インターハイ決勝・・・と、あらゆる階層で経験してきました。僕にとってはそのすべてが貴重な経験で、日本一の富士山に登るにしても、ふもとの一歩、次の一歩と積みあがって頂点へ向かうのですから、その一つひとつに「あと一歩」があるようなものです。
近年、選手が日本一になったり、準優勝だったりという高みへ来て、ふもとの一歩を思う時、やはりあの頃はそのふもとの世界しかリアルに思い描けなかったのだと思い至ります。
先生はかなり高いレベルで「あと一歩」を求められているのだと思いますが、現時点での「あと一歩」はその一歩先の世界において、勝負になる場面のシミュレーションがあらゆる角度から高い解像度でなされれば、その一歩の確からしさは上がっていくのではないでしょうか。
 
③今年から女子の指導にチャレンジするのですが、女子指導でこだわっていらっしゃること、男子との違いについて教えてください。
 
男子を教えた経験は高校で30代の頃に4年間と、40代の頃行政職だった期間が2年あり、その時地元の男子中学生の外部コーチをしていました。男女で共通する部分はたくさんあります。同じ成長過程にある人間ですから、当たり前ですね。
ただ、思春期の女子は、この時期の男子より「信じる力」が強いと思います。

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「信じる力」は「超えていく力」になりますから、時間をかけて関係をつくっていくと、一番大切な場面で輝きます。
それから、個人差はありますが、男子は教えられたことが世界のきっかけになるのに対して、女子は教えられたことが世界そのものになる。ですから、概して男子は教わったことを踏み台にできますが、女子は教わったことの完成度を高めようとします。そこに女子選手の指導の難しさと面白さがあると思っています。
 
 
さあ、どうでしょう。
お力になれるといいのですが。
 
ハウツーで答えられるものではないので難しいです。
先生の道でいいのです。途中で投げ出さないことです。薄れないことです。
間違いは生徒が教えてくれます。
そこに素直になってください。
すべてに意味があり、すべてはつながっています。
 

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コロナ禍が早く収束し、一日でも早く生徒とあの空に抜けるような打球音が聞けますように
 
先生のご活躍とご健康を心よりご祈念申し上げます。
失礼します。
 
北越高校
津野誠司 seiji.tsuno@gmail.com
 
 

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