Dream Factory 2020 秋
「未熟」集団、ようやく出航!
夏の代替大会を感動的なドラマで締めくくった3年生からバトンを引き継いだ新チームでしたが、新リーダー学年の2年生のトラブル続きで、まったくチームとして前へ進めないでいました。
これもコロナ禍の余波なのかと思うことが多々ありました。毎日のようにいろんな問題が起こり、その対処に追われて「チーム一丸」を作れません。3月~5月、チームとしてのスタート時が空白になってしまった今年、そのツケが今に回ってきているのでしょうか。
ただ、これは問題が起こるたびに生徒たちにも伝え、自分にも言い聞かせるのですが、「成長過程にある者にとって失敗はつきものであり、失敗自体は経験値となるなら、むしろあった方がいい」。失敗も後悔も挫折もない部活動など無意味だと思っています。
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思春期の人間の発達課題は、あえて言えば「経験から学んで前へ進むこと」しかない。「失敗から学ぶ」とすれば、その失敗と向き合う以外にないのですが、幼い精神は「向き合う」ことを嫌がります。自分の弱さと「正面切る」わけですから、それは覚悟がないとできません。
今年の新チームは、度重なる小さなインシデントごとに、「向き合える」チームであるか、「向き合える」くらい心は育っているか、を試されているように思います。
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「日ごろから何を為すべきかを自らに問わない人間に、全国の舞台でできることなど一つもない」
これは2年連続で日本一になった水澤奈央選手の名言の一つです。本当に名言ですよね。全くその通りだと思います。「全国の舞台」を「主体的な人生」とか「目指していたポジション」とかに置き換えれば、大人にも深く刺さる格言になります。
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「何を為すべきかを自らに問わない」新チームは、まず秋の地区大会で巻高校に今年も惨敗しました。地区大会でベスト4に巻高校が3ペア、北越は1年生の入澤・本間ペアが孤軍奮闘、優勝しましたが、2年生は次々と自分に負けていきました。
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🔶秋季地区大会 R02.9.14 in新潟市庭球場
ダブルス
1 位 入澤瑛麻・本間友里那
ベスト8 高野凛・鷲尾祐稀
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普通は「心機一転」となるところですが、それでも船は出航できない。この結果でも、自分と向き合わない(向き合えない)ので、脱皮していきません。そもそもどんなチームにしたいのか、新リーダー学年がビジョンを提案できないのです。
ただ、そんな「もがきの日々」の中で確実に育っているなと思えたのが、「立ち上がる力」です。トラブルが起こってもそれを個人の問題だとしてしまえば、チームの力にはなりません。一人の未熟さをチームの課題ととらえられて、初めてチームは機能します。問題が起こるたびに2年生は練習後に自主ミーティングを開いてぶつかり合います。逃げずにぶつかり合います。そのエネルギーは確実にチーム推進力になっていく、そう思えました。
そして、チームは今年のスローガンを決めました。
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今年は強力なリーダーがいない。だからこそ、何度失敗しても、どんなに打ちのめされても、明日を信じ、今日やるべきことをやる。それがただ、「立ち上がる」ことしかできないとしても。今日「立ち上がる」ことで、明日につながる。明日を信じるから、今日「立ち上がる」。
過去は「教訓を得る」目的以外では振り返らない。目標は強く思うけれど、それが叶うかどうか未来予測はしない。どちらも、今どうにかできるものじゃないからです。今できることに全力を注ぐ。それが明日への扉を開ける。
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自分で自分を成長させるって孤独な作業です。
いくらチームに属しているといっても、アスリートとは本来、孤独なものです。
高い目標に向かう時、人は孤独を生きる(孤独にではない)。その孤独さを実感して、それを避けるのでなく、何かにすり寄っていくのでなく、孤独を歩む自分を肯定できる時、人は「信じる力」に目覚めるのだと思います。
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今、チーム北越は日替わり部長制を敷いています。一日交代で2年生が部長を務める。否が応でもチーム視点を持たざるを得ません。一日部長の検証も自分たちで行います。成果と失敗、成長と未熟、毎日検証しあっています。
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その中心になっているのが、近藤と斉藤です。二人は現時点でレギュラーメンバーではありませんが、サブチームの責任者として、日々1年生を指導してくれています。その親身さ、その誠実さは本物です。だからこそ、レギュラーメンバーの不甲斐なさに対してかける言葉に重みがあります。
二人は秋季地区大会では1年生と組んで出場しましたが、それぞれ自分の弱さを露呈して力を発揮できませんでした。その後ペアに戻して、県新人選抜に臨み、シードを二つ倒して初の県大会ベスト8入りを果たしました。
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🔶 新潟県新人選抜大会 R02.10.17 in 新発田市五十公野公園テニスコート
1 位 入澤瑛麻・本間友理那
3 位 星野結衣・高橋咲羽
ベスト8 高野 凛・鷲尾祐稀
〃 近藤梨果・斉藤菜月
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<斉藤菜月のノートから>
地区大会の後、先生が「県新人は近藤・斎藤に戻して戦う。ベスト8目指して頑張れ!」と言ってくれた。
そこから、近藤と二人でずっとベスト8を目標に練習してきた。ドローが発表されてみると、下越地区の2位、村上高校ペアのパッキングだった。そこを倒すと新潟地区大会で私が1ゲームも取れずに負けた新潟商業のペア。簡単ではない試練だったが、そこを今度こそやりきって、第1シードの本間・入澤と思い切り戦いたい、そう思って戦った。
梨果(近藤)、やりきったね!
新潟商業戦に勝ってベスト8が決まった時、ベンチに入ってくれた朋恵先生からも先生からも「ナイスゲーム」って笑顔で言ってもらって嬉しかった。
今まで梨果と組んで試合をして、こんなにタクティクスを考えて戦うレベルまで行ったことがなかった。いつも心が弱くて戦いきれなかったり、技術やフィジカルの問題が大きかったりして、戦術どころではなかった。いつもいつも悔しい思いばかりしてきた。でも、今日ははじめてタクティクスを考えながら試合ができた。テニスってこんなに楽しいものだったんですね。唯香先輩と莉穏先輩に伝えてもらったおかげだ。ありがとうございます。
初めての舞台、県大会の準々決勝、目標だった本間・入澤との試合、スキルや経験は相手が上かもしれないが、チーム北越の誇りとして気魄と声だけは負けないと誓って戦った。先生や他の人からも、「すごい声聞こえてきたから、リードしてるんじゃないかと思ったよ」って言ってもらって嬉しかった。
これで、県インドアの出場権を得た。インドアでも北越らしい気魄溢れる試合ができるよう、これからも自分と向きあいながら、戦いつづける。
ありがとうございました。
(2年 斉藤菜月)
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<近藤梨果のノートから>
新チームを受け継いでから、私たちは失敗だらけの毎日だった。
リーダーの準備不足。チームがやるべきことをやらない。リーダー学年である私たちの意識の低さ。
感覚的に達成と失敗の比率は1:9くらいなんじゃないかってくらいひどかった。
けど、その中でキャプテンが「へこたれない強さ」が北越にはあるって思い出させてくれた。
菜月(斎藤)、ありがとう。そしてベンチに入ってくれた朋恵先生、ありがとうございます。
初めてです。菜月とポイントごとに状況を考えて、「次どうする!」って話し合って方針決めてタクティクスを中心に戦えたのは。次の1本にわくわくしながら戦いました。
今までは、どんなに練習をしても、試合になって大事な場面になると逃げてきた私。毎回、無謀な点の取り方をして、そのミスが引き金となって積み木崩しのように崩れて負ける。
でも、今日は違った。
ミスはあった。無謀な配球ミスもあった(3試合して3本だ)。
その時、「あ、出た!」って冷静に自分を見れた。
ここで焦らない。こういう時に、自分は欲を出すんだって、私の「あるある」と向き合えた。
だから、最後まで自分を見失うことがなかった。
ようやくわかった。
先生が言っていたこと。
自分を知る
糸魚川合宿の帰りのバスで、自分でもこんなに泣けるのかっていうくらい泣いた。
ずっと私は「自分を知る」ことから逃げてきた。
正直「自分を知る」って、自分の見たくない部分を見ることで、怖くもあるし逃げ出したい気持ちにもなる。
あの日、向き合ってよかった。
本当に逃げずに向き合えてよかった。
でもまだゴールじゃない。私と菜月の目標はインターハイに行くことだ。そして団体メンバーになること。
まだまだ。ベスト8じゃ届かない。
もっと力をつけないと。
そして、私が佐藤と丸山(1年生)を育てるんだ。
あの二人は今回の負けも軽く考えすぎだ。
悔しさのない負けからは向上などない。
私も伝えてもらったように、二人にもしっかりと伝えます。
(2年 近藤梨果)
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もう一人、今回の大会で大きく自らを超えた2年生がいます。
高野凛です。
高野はようやく自分と向き合うことができるようになりました。1年生の時とは、まるで違います。春の卒業生の田中遥奈が去年は3年生のバディとして高野に寄り添ってくれていましたが、その時は、成長した姿を見せることができませんでした。
自分の弱さから目を背けなくなりました。もちろん、まだ「やらかす」ことはあります。その弱さを誠実に認める「強さ」を持てるようになりました。そして、仲間の「弱さ」に寄り添いながら、それを「強さ」に換えていこうとする姿が一貫してみられるようになりました。
県新人選抜の戦いの中で、とても象徴的な「事件」がありました。
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<高野凛のノートから>
県新人選抜、また私にとって高校最後となる大会が終わった。
チームとして秋地区の惨敗からリベンジを誓って取り組んできた。
「へこたれずに信じて戦うチーム」、これを表現するために、一人ひとりが超えたいことをはっきりさせて挑んだ。
戦えずに自ら落ちていった、あの秋地区のリベンジをチームとして果たせたと思う。
どのペアもラケット振れないとか、戦わないで自分から退くようなペアはいなかった。
けど、勝ちきれてない。
県のトップと「戦えた」だが「勝ててない」
ここが、今の私の位置だ。
戦って思うのは、やっぱり私たちは巻のエースに比べてタクティクス力が足りないということ。
中盤までは競ることができる。でも、そこでタクティクスに余裕がなく、突き放される。
先生にも指摘されたけど、私にとって、大事なキーポイントが2カ所あった。あそこで組み立てることができずに、意味のわからないプレーが出る。
これだけジュニア時代から経験豊かで、スキルも高く、余裕のある相手に、大事なポイントでこっちが焦り、自分を抑えられなくなって敗者の道を進んでしまう。
もう一度、鍛え直し。
やっぱり日々の生き方からだ。
メリハリを持って、全体を見て、チームのことを考えて、そして何をすべきか明確にする。そういう日々を積み上げよう。
決勝戦、とても勉強になった。競り合いながら、それぞれの持ち味を出し切って戦う。
入澤と本間、プレッシャーもあっただろう。その中でポイントを取って取られて、それがゲームだ。その中での駆け引き。まだ私が到達できない世界だ。
でも、絶対に私はあのレベルで戦いたい。
いつか、必ず北越同士で決勝を戦いたい。それは私たち2年生の仕事だ。
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ただ、準々決勝までの間にも、大きなドラマが私たちにはあった。
私たちは秋季地区大会で、巻高校のペアに自滅で負けた。地区大会は平行陣で戦ったが、突然祐稀(鷲尾)が崩れ、普通のストロークがネットネット。当然ボールを祐稀に集められ、慌ててグリップをいじってもアウト、ネット。もう何もできなかった。あのとき、私は祐稀を立て直すために何かすべきだった。けど、ムードを壊すのが怖くて、自分が伝えることで、祐稀のメンタルが崩れるのが怖くて、何もしなかった。そしてそのまま敗退した。
そして、迎えたこの県大会、先生が前におっしゃっていたが「神様っているとしか思えない瞬間がある」。
本当にその通りの場面が用意された。
長岡商業との戦い、きっちりと戦ってゲームカウント3-1のカウント3-1、圧倒的なマッチポイントだ。そこから、祐稀が簡単なハイボレーを2連続ミスでジュース。さらにストロークミスが続き、なんとマッチポイントから4本連続イージーミスでゲームカウント3-2とされた。
私は「神様に試されている」って、本当に思った。祐稀じゃない。私への試練だ。
もう逃げなかった。
強く祐稀に伝えた。
「祐稀、自分一人で戦ってるんじゃないよ。」
「ベンチ見て! 莉穏先輩を見て! ちゃんと見て! 祐稀一人の戦いじゃないんだって!」
そして、祐稀は変わってくれた。勝ち切れた。
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祐稀に日頃から本気でぶつかってきた。祐稀の問題はペアである自分の問題なんだって言い聞かせて、逃げずに戦ってきた。
だから信じれた。今の祐稀なら絶対変われる。私がぶつかったからと言って、祐稀はメンタルで落ちていったりしない、そう信じれた。
この人が向上するためなら、逃げずに伝え、そう伝えたからには、自分がその責任を背負う。そういう生き方を、私は北越の先輩たちから学んできた。そういう先輩たちの姿に憧れてきた。
私たちは、一歩進めたと思う。それは大きな成果だと思う。
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そうは言っても、やっぱり巻のエースに競り勝てない。
まだまだなんだ。
できたこととできないでいること、両方あるけど、やっぱり思うことは、本当に日常の生き方って、大事な場面につながっているっていうこと。
そのこと噛みしめて、これからもへこたれず、信じて、自分とペアとチームに向き合っていきます。
(2年 高野凛)
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最後に。部員が奇数だったため、地区大会~県新人選抜までの間、1年生の横山莉子さんに手伝っていただきました。横山さんはInt.特進コースに所属しており、毎日7限まで授業や講座で勉強しながら、2カ月間部員と一緒に、合宿にも参加して真剣に技術や心も鍛えて試合に臨んでくれました。あなたの純粋な笑顔にみんなが元気をもらいました。ありがとう。