Dream Factory 2021 初夏
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新潟県大会 団体10連覇!
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ボロクソ3年生が見せた「信じる強さ」
令和3年の県総体。準決勝でライバル巻高校を退けて、2面展開で行われた決勝戦。
思い切りラケットを振って向かってくる長岡商業を、2年生エース本間・入澤が跳ね返して先勝。隣のコートでもキャプテンペアの高野・高橋がG3ー0のアドバンテージでマッチポイントを迎えていました。
右ストレート展開から、高橋の矢のようなポーチボレーが決まって、県10連覇を達成しました。
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長く苦しい冬でした。
Dream Factory 2020秋〜冬〜2021春と、季節は巡りましたが、今年のチームのツボミは全然膨らんできませんでした。
リーダー不在。託されたリーダー自身が責任を背負えない。3年生が入れ替わり立ち替わり自分の弱さに負けてチームの核になれない。言葉では「らしい」ことを言うけど、全くの言行不一致。ボロクソです。
何とか立て直して全国選抜の切符は取ったものの、その後、全国へギアを入れるべき時に3年生が責任と自覚を持てない。
とうとう2年生にキャプテンを任せて全国センバツを戦うことになりました。
本間は当時まだ1年生。部長の斉藤と精一杯努力してくれましたが、3年生の誰一人キャプテンの責任を背負えないチームが勝負になるわけがありません。あっさり初戦敗退して新年度を迎えます。
このボロクソ3年生チームにようやく芽吹きが訪れたのは、高橋咲羽が覚悟を決めてキャプテンを「する」ようになってからだと思います。
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高橋との出会いは3年前の中学校の新潟地区大会です。確か初戦だったと思います。
相手はその年の県中学校No1後衛でしたが、高橋は果敢に取りに行きまくるのです。技術はありません。実力差は圧倒的です。全く触らせてもらえません。それでも怯(ひる)まず、諦めず、追い続ける。
こういう選手を育て上げたら、どんな風景見させてあげられるんだろう。
そう思いました。
1年目は幼いながらも順調に成長して、インターハイのメンバー入り、冬の県センバツ〜北信越センバツではレギュラーの一人として優勝に貢献しました。
しかし、その後のコロナ休校から2年生のほぼ丸1年、高橋の夢は「夢」ではなくなりました。
「夢」とは、何であれ、すぐに手に入るものではないですから、本気で手に入れようとすれば困難性が伴います。本気じゃなく夢を語っている時、夢はシャボン玉のようにふわふわと自分の周りを漂っているでしょう。ですが、本気で「夢」を見据えた時、シャボン玉はスーッと遠のき、星のように遠くで仄かに光るのです。その時、人は初めて「夢」までの遠い道のりに慄(おのの)き、その遥かさに困難性を実感するのです。だからこそ、「夢」は「希望」であり続けるわけですが(すぐに手に入るものへのアプローチは「欲望」といいます)、その困難性=厳しさを忌避するのであれば、もはやそれは「夢」ではない。
アスリートとは、この困難性を自ら追い求めて「夢」を全力で掴みにいく者のことです。
トップクラスに立った経験のない子がトップの「夢」を目指し続けられるには、強い意志力か、「君ならやれる」という指導者のメッセージを信じる力か、そのいずれかが(最終的にはどちらも)どうしても必要だと思っています。
高校部活動の世界でアスリート魂を育てるにあたっては、高校2年生というステージがとてもキーになるといつも感じさせられます。
1年目はがむしゃらに行ける。3年目は最後の追い込み歯車が回る。その間の高校2年生。多感な時期に溢れかえる情報と誘惑の氾濫、この1年間を、コーチが選手とどう関わり合い、どう「夢」に舵(かじ)を切らせ、どう精神的に成長させられるか。それはとても難しく、それ故とてもやり甲斐のある「生の燃焼」(うまい対応語が見つかりません)だと思います。
高橋がようやく「夢」へ真っ直ぐ舵を切ったのは3月になってからです。無論、全国センバツに間に合うわけもなく、名古屋では1ゲームも取ることが出来ず敗退します。
自らに今何をすべきかを問わなかった人間に、全国の舞台でできることなど何一つない。
水澤選手の言葉通りです。
県10連覇をかけた県総体までは、たった2ヵ月しかありません。
それでも、高橋が持っている「光」を諦めるわけにはいきません。
途中でバトンを落とそうが、何度も転ぼうが、思春期ですから、すべてに意味があります。どんなに遅くとも「自ら何をすべきか」この時期に真剣に向き合うことは、人生において計り知れないほどの価値があると思います。
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このボロクソチームのもう一人のキーパーソンは部長の斉藤菜月です。前にも紹介した広島から北越に来た子です。
技術的には伸び悩みましたが、リーダーの責任を果たしながら人間的に大きく成長しました。斉藤は誠実で努力家で、心が豊かで仲間や後輩の面倒見がとてもいい。何よりも基本的にポジティブで建設的。ボロクソだった3年生の「良心」と言っていい存在です。何度も「やらかす」仲間や後輩たちに、愛情を持って妥協せず向き合います。自分自身の弱さも十分に理解しているので、仲間たちの弱さにも寄り添ったうえで一緒に乗り越えようとします。6人の3年生の中で、斉藤と近藤の二人がBチームや1年生を指導し、北越の心を伝え続けてくれました。
キャプテン高橋と部長の斉藤。二人のノートを軸に、ボロクソチームがアップダウンを繰り返しながら、チームとして意志力と信じる力をはぐくみ、熱い絆を築きあげて、10連覇へのチャンピオンシップポイントを高橋が鮮やかなポーチボレーで決めるまでの日々を追っていきます。
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全国センバツから3週間後、県総体のシードに大きくかかわるハイジャパ予選の前日。高橋のノートから。
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こうやって1日1日振り返って、時には過去も振り返って、言葉にして記述していることが私のエネルギーになっているし、自信にもつながっています。きっと私だけじゃなく、ノートを読んでくれている先生にもエネルギーを与えているんだと信じます。
「信じる」これをパワーワードとして、明日戦います。
高校でテニスを続ける「縁」をもらって、夢を追っていたつもりだったけど、1年間の闇に阻まれた。それを春の選抜の完敗で思い知って、今真っ直ぐ努力している。そして再びチーム北越のキャプテンを任されている。私には私のストーリーがある。
今は光へ向かってもがいている状態だけど、私はそれを超えて、光をコートの中に放ちたい。
星みたいに誰かにエネルギーを与えられるように☆☆
次こそ、口だけじゃないことを証明したいんだ!
(4月16日)
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しかし、ドラマはそれほど簡単ではありません。
高橋は星野と組んで戦いますが、ライバル校の巻のレギュラーと当たる前に、冬の練習試合では簡単に勝っていた村上高校の2年生に負けて(コケて)しまいました。
序盤、思い切り高橋にぶつけてくる戦略に混乱してしまい、我を失ってしまいます。何とかファイナルまで挽回しますが、ファイナルの中盤に高橋の不安定で意志の感じられないプレーが続いて敗退します。
真っ直ぐになれなかった1年間、きつい場面になると逃げるようにして過ごしてきた日々が、もともと弱くはなかったメンタルタフネスをすっかり台無しにしてしまいました。
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村上の2年生にファイナルで負けた。悔しいを超えて自分が嫌いだ。正直、光は私からは見えない。もう「光!」って自信持って言えないし、何のために頑張っているのかわからない。私が「信じて」ベストで戦って勝つことがみんなへの恩返しだと思ってたのに、それが叶うことはない、きっと。
闇がよみがえってくる。これからどうやって光を探していけばいいかわからない。どうやって姿を見せればいいかわからない。だって次の大会でもまたライバルの巻と当たる前にコケるのわかっているから。もう不安100%で自信ゼロ。
(4月17日)
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物事が上手くいっている時は、強気になれるし、ポジティブでいられるけれど、それが阻まれると一気にすべてをネガティブに捉えてしまいます。こちらの指導も仲間の励ましもすべて自分の非を咎(とが)めるものとして敵対してしまう。失敗や挫折は必要なことであり、糧となるものですが、逃避マインドが心にあると「嫌」という感情と結びついてしまうのですね。ただ、高橋はネガティブを引きずらないカラっとしたところもあり、その回復も早いのです。
晴れのち嵐のち快晴、夕方には豪雨警報・・・春先の高橋はそんな感じです。なかなか難しい…。
10日後のノートは、一転して希望に満ちています。
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最近、私は「信じるPOWER」で戦っている私を想像してから、眠りについています。いつか夢で出てきてそれが「正夢」になることを待ちわびています。そのために足りないこと必要なことを全力でやり抜いていきます。
今日は1年生にしっかりと強く伝えた。部活に来る時間、ノートの書き方について。もちろん1年生は元気があっていい面もあるけど、調子に乗ったりゆるい感じがあるから、3年生の意志としてしっかり伝えた。
それから、クラスの子と部活の話をよくするようになった。その子は準備が遅かったり雰囲気が悪かったりする時に、1年生やチームに対してズバッと言える人がいないんだ、って言ってた。
私自身は、そういうこと伝え合うのが当たり前だと思っていたけど、それは北越女テニだからなんだなって改めて思った。
その子には、チームにとってプラスでしかないんだから勇気出して言ってみるか、仲のいい仲間にその悩み話してみて二人で伝えたらいいんじゃないって言ってみました。
私がこんなこと言うなんて、違和感ありありだけど、改めて、私、いろんなこと見る視点とか色々変わったなって思う。
その子の悩みはプラスへ向かうものだから、一緒に悩んでいきたいと思った。
(4月26日)
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アップダウンを繰り返しながらも、高橋のメンタルは着実に健全な方向に育ってきているのを感じていました。
草木も人も日陰にいたら育たない。命は光を浴びて育つものです。
リーダーとしての自覚も徐々に表れていきました。そして、自分を対象化することも、それを言葉にして他者へ開くことも、自然とできるようになってきました。以前の高橋からは考えられないことです。
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今日は、私、自分の弱さを(多分初めて)オープンにした。
どうなるかがわかっているはずなのに、自分に負けてやってしまうのが弱い私。今は光へ向けて生きているけど、苦境の中で弱い私が現れる。上手くいっている時は、どこに弱さがあるの?ってくらいポジティブで攻めの発想の中にいられる。それが私の「弱さ」のやっかいなところ。試される場面は多くない。だからこそ、その時に「来たぞ、弱い私。ここだぞ」って思えるかどうかだってことをチームにも伝えたかった。
伝えたいことを話すと気持ちいい。
伝えたいってことは、その弱さを対象化できているってこと。私自身が認めて、その弱さに対する準備ができているってこと or すでに私がやっていること。弱さであっても強さであっても、こうやって姿で見せて、伝えていきたいんだ。
(4月29日)
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それでも、まだ苦境に立つとネガティブな感情をコントロールできません。些細なことから始まるのですが、自らどんどん状況嫌悪→環境否定→自己否定に陥ります。
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昨日の夜は、とてもネガティブになってたと思います。すごく思い出してくるというか、自分の闇がフラッシュバックしてきて、なんか胸が苦しくなって部屋でノート書いてたのですが、外のベンチに行って泣きながらノート書きました。
コメント、本当にありがとうございます。
昨日、ネガティブになった時、もう前と違って、隠さず現れた感情をすべて先生に吐き出しました。ひどい言い方したと思います。すみません。
あの少しの壁を超えられない。元気に返事する。笑顔でいる。深く呼吸する。これだけでネガティブワールドに行かないのに、それができない…。もう自分でコントロールが効かなくなって…。
でも、先生が言うように、あれが希望の一歩なのですね。
信じます、今日の日、今日のあの時が、希望の光につながる一歩だということを。
(5月6日)
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僕は真っ暗闇にいる高橋に「これ、希望だよ」と言ったのです。
これまでの高橋は自分を開けなかった。ネガティブな闇を内に押し込めて、表面上「らしい」ことを言って誤魔化していたのです。それが自分を歪めてしまう。今回は、それを吐き出しました。
「それは絶望ではなくて希望でしょ。」
希望を持つから絶望があり挫折がある。リアルに希望を抱けなければ、絶望せずに逃避するはずですから。疑いなく「絶望」は「希望」の一部です。
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春季地区大会直前のノート
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今日はとても1日、楽しかったです。
こうやって練習の中で起こる事を日々言語化、対象化していくことが、強さにつながっているんだって実感します。
地区大会では、まだまだ未完成だけど、少しでも強くなった自分と出会いたいです。ラストの地区大会、私は挑戦です。メンタルも今まで積み上げてきた技術もタクティクスも。信じて戦うのみです。
朋恵先生が帰られる直前に私のところに来て声をかけてくださいました。
「高橋が日々、自分を対象化して変わろうとしているのはよくわかるよ! だからこそ、苦しい時に自分でどう頑張れるかだね。そういう時に高橋に集まるみんなの目は決して敵じゃないよ!」
ネガティブに陥る私は、自分を見失って人格が変わったようになってしまいます。もしそうなったとしても先生方は全力で本来の私を取り戻そうと力を貸してくれる。そういう環境にいることを本当に感謝して日々生きたいと思いました。
(5月8日)
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地区大会。個人戦は、巻のレギュラーにペアの1年生後衛がラリーにならず高橋は何もできませんでしたが、団体戦は、同じ相手に対してポイントしまくりました。後衛の高野が中盤から相手にも状況にもビビってしまってファイナルで負けましたが、高橋の精神的成長がプレーにつながってきました。試合後のノートでもそのことを実感しました。そして弱さに負けた高野へ語り掛ける言葉は、ストレートです。
地区団体優勝!
お疲れ様でした!
今日はバイザーに「勇気」「信」って書いてもらいました。大事な場面に手で触ってすごくエネルギーをもらえました。
決勝戦の巻戦。
あれは私、完璧に「ゾーン状態」だったと思います。
相手が見える。心が見える。予想が外れない。身体が勝手に反応する。超集中でした。
心配していた厳しい場面での人の目、全く気にしなかった。
新潟市庭球場で1面だけ残った決勝戦、リードしていて追いつかれて逆転される嫌な展開。いつもなら人の視線が気になるような場面だったけど、今日は全く気にもせず敵に集中できていた。
昨日の個人戦で鷲尾が先生のアドバイスを信じてやりきったって話を聞いて、それが私に火をつけた。一番信頼されているはずのキャプテンが信頼してくれる人を信頼しないなんてあり得ない、そう思った。信じて戦う姿を表現したかった。
個人戦の近藤と斎藤の姿は本当に凄いというか、これが3年だっていう姿だった。
斎藤の県総体代表決定戦でのファイナル2-6からの逆転劇。相手のネットインさえ走りきって返球してポイントした。諦めないへこたれない北越を表現してくれた。
私たちも、団体決勝、ポイント2-6だった。
前日の菜月の姿を思った。「諦めない、私たちも…」
敵のセカンドアタック!
身体が反応した。
バッチリ止めた。
3-6。
でも次のポイントで、凜が振り回されて簡単にサイドを割った。
凜、ハートが弱い。凜の弱さは序盤~中盤はあまり出ない。けど終盤に出る。競ってくるとハートがどんどん弱くなる。「信じて戦うよ」って口では言っていても、自分の中に芽生える不安や怖さにどんどん負けていく。「信」が「疑」に負ける。自分を疑う心。疑心暗鬼。つまり自分に負ける。
凜、ラストの県総体まであと1ヶ月だよ。
私も死ぬ気で強くなっていくから、凜も死ぬ気で頑張れよ。
誰の手を借りてもいいんだよ。そんなの恥ずかしくなんかない。
先生の力も借りて、弱い自分を対象化して、本気で向き合い、やるって決めたことを全部やって、時には闇に入りそうになっても、弱音吐いても、自分を隠さないで、強くなろうよ。
本当に変わった凜と、ラストの県総体、勝負したいんだ!
(5月11日)
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一方の斉藤。自ら選んだ後輩の三浦とインターハイを目指しますが、地区大会の3回戦で自滅敗退してしまいます。その後の敗者復活戦の最終決定戦もファイナル2-6と追い詰められましたが、そこから驚異的な粘りを見せて、逆転勝利。何とか県大会への出場権をもぎ取りました。
斉藤のその日のノートです。
斉藤は喜ぶどころか、本戦で出た自分の弱さに涙します。
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今日は高校最後の地区大会だった。
結果は本戦で負けて、県大会出場枠をかけた敗者復活戦を勝ち上がって、本当にギリギリの県出場だった。
最後まで苦しかった。本当に苦しかった。だけど、この苦しさは私に課せられたハードルとしか思えない。決定戦最終戦はファイナル2-6の相手マッチ。
負けたくない、その思いだけだった。
そこから1本1本、逆転勝利して、みんなみんな喜んでくれた。
でも、私は弱い。
今日は今までに泣いたことないくらい、悔しくて情けなくて泣きました。
県10連覇に向けて、部長としても強くならなければならない。
チームのために、私、毎朝走ります。そしてどんな時でも北越ホールの下で夜イメトレします。
今日の姿だけは表現したくない。
戦うべきものは自分自身。演じる強さではなく、本物の強さを。
(5月10日)
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翌日の団体戦。
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今日は地区の団体戦。
巻との一騎打ちだ。
勝ったけど、咲羽が最後のミーティングで伝えてくれたように、決して気持ちのいい勝ち方ではなかった。
ただ、昨日の個人戦も含めて、本間・入澤はエースとしての姿を表現してくれた。本当にありがとう。
二人は冬に巻のエースに負けてからペアを解消し、この地区大会から再結成した。入澤はずっと自分の甘さと向き合っていた。本間だって、自分を変えたいとずっともがいていた。
向き合ってきた者の強さって本当にすごい。何でこんなに強いんだろうって思うくらいエネルギーになって現れる。
咲羽も今日は強さを表現してくれた。高野が小さくなってもチームを救う勇気あるプレーを何度も見せてくれた。キャプテンとして本当に頼もしかった。
二人で作ってきた今年のチーム。県10連覇に向けて、リーダーとしてもまた頑張っていこうね!
凛(高野)、最後の最後でこうして弱さが出るんだね。
3年になって戦う団体戦は今までと違う責任を背負っての戦い。だからこそ、それを背負えるだけの生き方をしてきたかどうかが必ず試される。本当にその通りなんだ。
でも、もう一度チャンスをもらったんだよ!
だからこそ、絶対後悔しない選択を日々していこうよ!
(5月11日)
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地区大会でライバルの巻高校に勝ちはしましたが、二人のノートにも書いてあるように、団体メンバーの高橋以外の3年生は、自分を出し切れていない、もどかしさの残る戦いでした。最後の歯車が回るはずの3年の情けない姿を見て、2年生の本間が熱いメッセージをノートに綴ってくれたので、それをみんなで読みました。
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本間って、ここまでチームのこと考えてくれてるんだなって思った。
3年生の問題をチームの問題として考えてくれている。本気でメッセージしてくれている。
本間のメッセージは「自分の弱さをオープンにして、それを自分が認めて、そして自分自身を切り拓け」ということだ。
変わってほしいという願い。
このチームが好きだからこそ、一緒に夢を叶えたいという希望。それゆえの厳しさ。
そこから本間は逃げない。
逃げるとすれば、私たち3年だ。
2年生が私たちにこれだけ退かないで、熱く訴えかけてくれている。
それを熱く受け止めないとすれば、それはもうチーム北越じゃない。
本間のメッセージ、それをノートに書くのにどれだけの決意と勇気と願いと希望があるのか、それを私たち3年生は噛みしめるべきだ。
友里那、いつもチームのこと本気で考えてくれて、ありがとう。
私たち絶対変わるからね。
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下級生が「自分の弱さを認めて、新たな自分を切り拓け」と語りかけたメッセージから、斉藤は自分と向き合います。
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私の弱さについて
本間から伝えられて、私は今日、思ったことがある。
私は自分の中で強いものから壁を作ってしまうことがある。これは1年生の時に、練習帰りのバスの中で先生に伝えてもらったことだ。でも私はその弱さと今まで向き合ってこなかった。今回の地区大会の負けもこことつながっていたなって今になって思う。
練習中だったら、Aチームと打ち合う時に感じてしまう壁。一緒にやった方が強くなるのはわかっている。だけど、また打ち合えないんじゃないか、また元の打ち方に戻ってしまうんじゃないか。そんなネガティブな感情が自分の中に湧き上がるのを感じていた。それを感じるから、その感情を強引にねじ伏せて、押し殺そうとしてきた。でも、これは向き合うのとは違う。戦っているつもりで、実は強引にねじ伏せようとしている、何とかして蓋をしようとしているだけだったんだ。
梨果(近藤)は、練習のラストがかかると、自分からAチームコートに行って「〇〇、ラストお願いしていい?」って大声で頼んで自分を向上させている。でも自分は梨果って凄いなって思っているだけ。
梨果、ごめんね。
あなたが、本気で強くなりたいって思っている行動をこんな風に受け取ってしまっていました。
これが私の弱さです。
だから地区も、追い込まれて打てなくなる。強いプレッシャーに飲み込まれて逃げたんだ。
三浦(ペア)が弱いだけじゃない。
今まで、このことをこのノートに書いたりして向き合うのを避けてきた。
ラストの県総体、もう後悔だけは嫌だ。
もう自分を中途半端にしたまま、自分に負ける戦いだけは絶対にしたくない。
(5月15日)
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本間のチーム愛にあふれた熱いメッセージを受け取って、他の3年生も深く考えました。県総体まで2週間余りとなった中で、3年がどう責任を背負ってチームを前へ進めるのか真剣に話します。チームメイトにどうすれば本間の思いが伝わるのかという点で、斉藤と近藤、そして高橋がぶつかり合います。
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その日の高橋のノート
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今日、私は初めて仲間に本気で反論しました。
自分の思ってることを吐き出すって、本当に勇気がいることだと思います。
私がこうして自分の思っていることに素直になれたのも、先生との信頼関係を築いていく中で、いろんなものが良い意味で吹っ切れているんだな、って感じます。
先生に今回のこと、言葉にしてもらって深く納得しました。性格とか長所とか傾向とか、人それぞれで全く違うんですね。いろんなことを広く見れてすべてにかかわれる人もいれば、私みたいに自分が大事だと思うことに特化してエネルギーを集約する人もいる。それぞれ、良い悪いじゃなくて個性なんですね。個性がそれぞれであるゆえに、時にすれ違いも起こる。ぶつかり合いも起こる。とてもよく理解できました。
幼い頃の言い合いとは違って、なんだかぶつかり合うことで逆により深いものが見えた気がします。だから、今日はぶつかり合ってみんな成長できた日なんだと思います。
これまでの私は、一方的に伝えられて、「はい…」とか、言い訳みたいなことを言ったりして、クソな感じだったけど、なんか、今は自分自身もチームの夢に向かって精一杯生きてきてたから、自分を否定されるようなことに対して黙っていられませんでした。凛も思っていることがあるなら、はっきり言った方がいいのにと思いました。自分の思いがあるなら吐き出せ!って思っていたくらいです。
(5月21日)
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同じ日、斉藤のノート
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今日、先生がみんなに伝えてくれたこと。
自分とは違うけど本気の仲間をリスペクトする
それぞれ戦っていることがあって、思っていることだって違うけど深い。
レギュラーは自分たちが10連覇の戦いを背負うっていう強いプレッシャーの中で自分を磨いている。咲羽は咲羽でキャプテンとして本気で考えていることがある。毎日提案型で生きようとしていることもよくわかる。もう以前の咲羽じゃない。
先生に直接伝えてもらったように、私の中でも考え方の進化が必要なんだな。
部長として、キャプテンとして、それぞれ全力を尽くすことがある。立場が違えばエネルギーを注ぐ場所も違う。
今日、先生に「自分で問題だと思ったことを、他の仲間にも加わってもらって伝えようとすることがお前の弱さだ」と伝えてもらって、自分の中でもスッキリしました。
リーダーとしての潔さ。それは信頼と自信そのものだ。
部長として、これでいいのかな、いつもそんな風に私は考えていた。みんなが一番納得する道はどれだろう、って。
ここまで本気のメンバーがそろって最後の大会を目の前にすれば、いろんな考えがあるのが当たり前。部長として、自分の考えを覚悟を決めて伝える、それが逆にみんなが私に求めていることかもしれない。信頼がそこにはある。自分の中のモヤモヤがなくなりました。
自分がこれから生きていく中で、こうやって面と向かって「これが君の弱さなんだよ」って伝えてくれる人っているんだろうか。大人になったら、もうこんな機会はないのかもしれないと思ったら、とても幸せなんだなと思います。
確かに、莉穏先輩は、チームに何かを伝える時、いつも一番本気で、一番熱があった。
でも、それって覚悟と信頼があるからなんだ。部長として本気でチームに伝え続けるって、苦しいことでもあるって、この立場になってよくわかる。でも、莉穏先輩はそういう苦しさはチームに見せなかった。私たちが見えないところでもがき苦しんでいたんだと思う。
自分の中だけで考えているだけじゃ、変わらない。思っているだけじゃ、変わらない。人も自分も。
いかに行動として切り拓いていくかに尽きるんだと思う。
チームに対しても、まだ切り拓ける部分はたくさんあるんだろうな。
咲羽、ぶつかり合ったけど、咲羽は今まで通り勝つためのチーム作りに力を尽くしてね!
県10連覇を達成するため。石川IHで決勝に行くため。
チームの団結は私に任せて。私が変える。私が切り拓く。
今日、こうやって3年生でぶつかり合った。
改めて、みんな本気なんだな、って思った。
この仲間と本気で勝ちたいって強く思った。
強い思いはみんなが持ってる。そこにリスペクト。
どこの学校よりも絆は間違いなく一番強い。
さらに強い「チーム高橋」にするために、私は残された日々を全力で生きる。
(5月21日)
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青春映画そのものですね。このぶつかり合いを機に、3年生がぐっとまとまったように思います。斎藤は、この件から、さらに自分自身への洞察を深めていきます。
今日は本を読みました。広島カープの新井さんの著書です。その中にリーダーのことについて書いてあって…
心を鬼にして言うべきことを言わなければならない時もある
とあった。
先生がこの前伝えてくれた部長としての覚悟。
莉穏先輩のようなリーダーになるためには、この考えも必要なんだな。
県での10連覇。
強力なライバルがいるからこそ、チームが引き締まって戦う環境を作りたい。だからこそ、私に覚悟がいるんだ。
部長をやっていてすごく感じるのは、伝えられる方も苦しいが伝えている方はもっと苦しいんだっていうこと。
責任もあるし、プレッシャーもある。
莉穏先輩、そして今までの9連覇、それぞれの代にリーダーで苦しんでいた人がいたはず。その先輩たちの偉大さを思う。
私は10回目のチーム北越のリーダー。
この苦しさがチームを強くし、私自身を強くする源だ。
(5月24日)
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今日は、持久力トレーニング。
考え方を変えた。
いつもはあと何分だということに意識がいく。それから前に誰々がいて、すぐ後ろは誰々。
もう私は自分のベストに集中していない、雑念だらけの人間だった。
抜きたい、抜かれたくない。いつも他者との比較。
でも、表現したいのは自己ベスト。
試合に置き換えて考えれば、ポイントは〇対〇、あと何ポイントでゲームが取れる、ゲームを失う。相手は誰々で私より強い、弱い…
そんなことばっかりが意識に上る。
そうじゃないんだって!
今、自分ができる目の前のことを、全力でやる。
今を全力で生き切る!
自分が走る30分間、肩甲骨の振り、重心の位置、呼吸、これだけに集中した。
すると、いつもよりずっと集中して自分のペースで走れたし、いつもよりずっと自分自身を追い込めた。
そうなんだ。こうなんだよ。
集中するってこういうことなんだ。
(5月26日)
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今日は県総体前の最後の休日練習。
昨日、愛香先輩(鈴木愛香:教育実習中)に厳しく伝えてもらって、私は「気魄タイム」を作って1年生に見せた。こうやって気魄を込めて戦うってこと、私たちが先頭に立ってチームをリードしていかなくちゃ。そして練習の一つひとつ入る前に、チームで心を一つにする時間を提案した。練習中もまずは私が一番気魄を出すんだと誓いながらやりきった。
男子はまさかの敗退。優勝は巻。2位は長商。どちらも角シードではない。団体は何があるかわからない。巻は男女アベック優勝って思って向かってくるに違いない。だからこそ、もっともっとギアを上げて、跳ね返す力を表現する。やってきたことはどの学校より自信があるって言えることが北越にはたくさんある。あとはハートだ。だから想いの強さを表現することだ。
(5月30日)
今日で学校でできる県総体前、最後の練習が終わった。
本当にあっという間だったなって思う。
練習中ペアの三浦のサーブが入らなくなって、コート外で一緒に見てやっていたら、1年の船山が近づいてきて、「菜月先輩、最後の試合なのに、自分のことはいいんですか…」って、泣きながら話しかけてくれた。こんなに感性豊かな1年生が一緒にいるんだって思ったら、私の方こそ泣きそうになってしまった。
先生も伝えてくれたように、私たちが1年生の時は、ただ連れて行ってもらったインターハイだった。だけど、今年は自分たちがこの1年生を「連れていく」番なんだ。
本当にいろんな事があった6人だけど、この6人だからこそ、っていうことだってある。
今までやってきたこと、向き合ってきたこと、伝えてもらってきたこと、たくさんの宝物がある。
新潟県のどこよりも、私たちは真っ直ぐ夢に向かってきた、それだけは断じて言い切れる。
だからこそ、自分たちを信じて戦うだけだ。
どこだって、打倒北越で向かってくる。
かかってこい!
相手がどこであれ、私たちは私たちの目標に向けてまっすぐ生きるだけだ。
(6月2日)
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雨の中の県総体初日。
斉藤は地区大会をギリギリで抜けてきたためポイントがなく、厳しい組み合わせでした。最終的にベスト8に残るペアのパッキングで、2回戦が勝負でした。
これまでの斎藤は、誠実な人間が強く勝ちたいと念ずることによって生じる「縮こまり」に悩まされていましたが、この日はすべてラケットを振りぬきました。タクティクスも駆使して中盤のG2-2まで互角です。次のゲームで脚が止まっての失点が響き、そのまま2-④で敗れました。硬式テニスでいう1ブレイクです。敗れましたが戦って敗れました。自分に負けたのではない。ベストを尽くして敵に負けました。
最後の県総体が終わってしまったけど、まだ全然実感がないです。
今日の試合はずっと先生がベンチに入ってくださった。本当にありがとうございました。中越(高校)戦、勝ちたかったです。
最後は私が狙われた。三浦は自己ベストで戦ってくれた。
地区大会であの情けない試合をしてから、本気で自分の弱さを認め向き合ってきた。
あれから自分ができることすべてをやり切ったと思う。
自分を変えるというのがいかに難しく覚悟のいることなのか、そのことに最後にやっと気づいた。
宿に帰ったら、お父さんから連絡が来ていた。
部屋で電話した。悔しくて、なかなかしゃべれなかった。
「菜月が自分で新潟に行くことを決めて、3年間やり切ったこと。本当に誇りに思う。一緒に夢を見させてくれてありがとう。」って言ってくれた。
お父さんの夢、現実にしてあげたかったな。
最後に、「3年間、ありがとうございました。」って伝えた。
電話越しにお父さんも泣いているのがわかった。
小学校からテニスを始めて、こうやって新潟に来させてもらって本当に感謝している。
中本監督やどんぐり北広島の選手とのかかわりもお父さんがいたからだ。元々サッカーのコーチをしていたのに、私がソフトテニスを選んだら、いつの間にかソフトテニスのコーチをしていた。本当にすごい人だと思う。
こうして振り返ってみると、本当にあっという間だった。
1年生の時は逃げてばかりの私だった。でも、2年生になってリーダーを任されて、私が逃げたらチームが終わるんだって思えるようになった。
最後の戦いで、三浦とペアを組んでよかったです。三浦には人一倍厳しいことも言ってきて、みんなの前ではああやって言っているけど、三浦を信頼しています。三浦ならわかってくれる、必ず思いを込めて一緒に戦ってくれる、その思いはずっとあった。三浦と組んで、私も成長できました。これからはチームだけに集中します。
先生、私、北越に来て本当に良かったです。ありがとうございました。
きっとこれから先、まだまだたくさん壁が出てくるのだと思います。
向き合ってきたことを信じる、その力は本当に強いんだなって、改めて思っています。
その信念を頼りに生き抜いていきたいと思います。
(6月4日)
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時計を1週間戻して、高橋のノートです。
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今日の疲労感は、今までにないものでした。
やっぱ、1日1日の生き方が以前と全く違うんだなって改めて実感しています。
最近、駆け引きがめっちゃ楽しいんです。やっと莉穏先輩が「楽しい」って言っていた意味がわかってきました。
県総体の団体戦は、私が勝利して10連覇決めたいです。
3年生のこの時期になって、こんなにも日々やってきてることが「自信につながる」とは思っていなかった。
ハイジャパ予選の暗黒の負けが、自分にとっては大きな成長のきっかけだったような気がする。そこから、このノートに書く「思いの綴り」も深くなったし、こうして毎日自分自身を対象化して言語化していることが、今の自分を確かなものにしているんだと思う。
最後の時に、自分を100%信じれるかどうか、それはこうした日々の積み重ねなんだ。
絶望から大きな希望の花を咲かせるために、日々進化し続けたい。
(5月24日)
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勝負の日が近づくにつれて、高橋のノートは「なりたい自分」「表現したい自分」のイメージが明確になってきます。「~したい」という強い思いが言葉になって溢れます。
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県総体まで、あと5日。早い…
今日1日は、何かいつもと違った。県総体のことを考えると、ワクワクするし緊張もするし、少し不安もあるし、いろいろ複雑な気持ち。
団体戦は誰と組むかわからない。でも今の私なら誰とでもいける。
誰よりも激しく勝負して、莉穏先輩のように県でNo1の前衛を表現したい。
絶対、マッチポイントは私が決める。見ててください!
3年になって、私は真っ直ぐこのチームの夢に生きてきた。真っ直ぐに信じて立ち上がったんだ。勇気持ってやるだけ。
絶対大丈夫! 私ならやれる!
先生が信じてくれる「私の光」、表現したい!
(5月31日)
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プロ野球選手の「ホームラン宣言」のようです。確率はずっと小さいはずですが…
しかし、実際にそうなるのです。
このノートに書いたとおりになるのです。
チーム北越は、こういうこと本当によくある…
ただの願望を書いたのではありません。
強く強く思うことは実現する
思いの純度が極限まで高まるとそれが現実になる
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今日、ミーティングで先生が2年前のDream Factory(卒業生に贈る3年間のフォトムービー)を見せてくれた。
何か、今までと全く違う心境だった。
ドックン!と突き刺さる何かがあるように、重いし、緊張するし、何よりも深い感動があった。
2年前、あの田中先輩のマッチポイント、ノータッチウイナーは凄い。凛も見て泣いていた。絶対に強く何かを誓ったんだと思う。
私たちも先輩たちみたいに、苦境になっても戦い続ける人になってみせたい。3年生の力を見せつけたい。
絶対に絶対に苦しくても逃げずに戦いきる!
信=勇気
先生が書いてくれた言葉。
やってきたことを信じて、それを勇気に換える。
(6月4日)
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みんなが最後に私に渡してくれた優勝旗は、とても重かったです。
団体メンバー、そしてサポート、全員が本当に自己ベストで戦ってくれました。
3年間の総決算の団体戦。勝って嬉しかったが、ホッとしたというのが正直な思いです。
準決勝の巻戦は、本当にタフな戦いだった。
冬の北信越選抜を圧勝したエースがいる巻高校。しかも地区大会の巻き返しで勝負をかけてくるに違いない。思いと思いのぶつかり合いだ。
3番勝負になった。心配していた祐稀。初めて見る気魄。
スマッシュを打つ時のキーワード。インパクト時の気魄。表現してくれた。
本当に嬉しかった。
2年生エースの入澤・本間。
試合をしていく中での、瑛麻の成長。本間のブレない強さ。この重圧にも屈しない強さを身に着けていたね。何度もベンチに向かってガッツポーズしてくれた。
決勝戦の高野と咲羽。今回の団体戦は3年の思いもすごく伝わってきた。
絶対に石川IHに行くんだって戦ってくれた3年生4人、本当に頼もしかった。
最後に先生からのサプライズニュースは何がなんだか最初はわからなかった。
私を梨果を組ませて北信越の団体を戦う!?
一昨日引退したつもりだったのに、頭が整理できなくて、抱き着いてきて大泣きしている梨果のテンションに追いつかなくて…
でもだんだん状況が理解できて、嬉しさがこみあげてきた。
チームのみんなも笑顔で祝福してくれた。
私の寿命、もう少し伸びたんだね。
そして3年生全員で戦える北信越。しかも苦楽を共にしてきた梨果とペア復活!
先生、本当にありがとうございます。
選ばれるからには、他の2本に頼った「おまけ」になんかならない。
梨果と二人、泥臭く北越Bチームの意地見せて戦います!
(6月6日)
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個人戦 入澤・本間 県チャンピオン奪還!
同士討ちで星野・鷲尾が銅メダル
巻高校のエース、石山さん神保さんのペアとの決勝対決は去年の代替大会以来何度目になるのでしょう。二人によると中学校時代からだそうで、中学時代は敵わなかったそうです。
高校に入って力をつけた二人は1年時に3連勝しました。
夏の代替大会、秋季地区大会、県新人選抜です。
しかし、12月に行われた県インドアの大会で敗れました。巻ペアは、確実にこちらの弱点を研究し、一方で自らの弱点はしっかり修正してきており、決して「たまたま」ではない「実力の逆転」を感じさせる勝負でした。
1月の北信越インドアでも巻ペアがほぼ敵なしの状態で優勝。このままやっていても翌年の春~夏に再逆転は難しいと判断して、このペアに大ナタをふるうことにしました。
まずはしばらくの間ペアの解消。ジュニア時代からのペアですから、お互いをよく知っているがゆえのなれ合いとマンネリが生じていました。冬の間、様々な経験をさせることで、自分の強みと弱みを徹底的に洗い出させて、春を待ちました。
春のハイジャパ予選は、入澤は3年生の鷲尾と組んで決勝で敗退。本間は入ってきたばかりの1年生の高橋寧々を教育して引っ張って、ベスト4入り。お互いがしっかり結果を出してきたので、春季地区大会から再結成させました。
冬に突かれた弱点はむしろ強みに変わっていました。
そして、県総体。
ベスト4決めで、入澤の未熟さが露わになり、マッチポイントを握られるまで追い詰められましたが、本間はその状況を跳ね返す強さを身に着けていました。
決勝は初めて完勝と言っていい内容の勝利。
県チャンピオンのポジションを研究と努力、そして人間的な成長を伴って奪還しました。
この2ペアのライバル関係は理想的だと思います。
お互いを超えようとすることで、2ペアの力が上がっていく。
石山さん、神保さんに敬意と感謝を伝えたいと思います。
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3年生の星野と鷲尾は充実したパフォーマンスで勝利を積み上げました。
翌日の団体戦の準決勝=巻高校戦では、お互いのエースが勝っての3番勝負、個人戦の3位同士の激突になりました。
自分と向き合いながらメンタルコントロール力をつけてきた星野。そして、これまで何度も集中力を欠いたようなミスからチームを危機的状況に招いていた鷲尾でしたが、3年生の近藤と斉藤が試合に向けた準備と実際の戦いの場で起こるリスクをしっかりマネージしてくれました。それから鷲尾自身も、自分の性格の弱みから目をそらさず、仲間のヘルプを素直に受け入れることで自分が強くなれることを理解して、団体戦としての自己ベストを表現してくれました。
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星野結衣のノート
3番勝負に強い3年生。
ひとまず県総体で表現できました。
先生、私に自信をつけさせるご指導、ありがとうございました。
いつも熱く伝えてくれてありがとうございました。
団体優勝したが、なんだか実感がわかないのはなぜだろう。
あのクソな3年が4人も入って優勝? 10連覇?
本当にひどかった私たち3年生。
私たち勝負できるのか? 何度目かのつまずきの時そう思った。
ただ、いつか本間がつぶやいた言葉を先生が拾って伝えてくれた。
「巻のエースに1本負けても他の2本で勝って優勝って、何か違う気がする」
私はこの言葉が深く心に刻まれた。
そしてずっと、巻のエースを自分も倒すんだって誓って日々を積み重ねた。
毎日、渦のように沸き起こる様々なこと、不安や悔しさ、いろんなことが混ざり合いながらも、私たちは1日1日を精一杯生きてきたと思う。
県総体前の練習で、OGの愛香先輩、なつき先輩、玖瑠実先輩が本気で伝えてくれた。
「気魄がない」「北越らしくない」
あの時、伝えてもらって火がついた。
あの次の日、菜月が提案してくれてチームの気魄は上がっていった。
先輩、ありがとうございました。
菜月に最後、優勝旗を渡した。
何だろう、何て言ったらいいんだろう。
このチームの結束力。つくづく感じる。
目に見えないずっと深いところでつながっている感じ。
それが根っこのように張り巡らされて、最後に花が咲く、って言えばいいのかな。
先生が前に伝えてくださった通りになる。
本当にすごい。
信じて戦える
こういうことなんだって実感する。
でも、まだまだ今日の力では、3年前の先輩が行ったところまでは行けない。
分かっている。レベルが違うんだ、全国は。
エリートだらけの全国、そこに雑草魂を持った北越が挑む。
こっからがスタートなんだ。
(6月6日)
ベンチの後ろから、近藤が「祐稀、やれるよ! 祐稀も信じて戦える!」これまで「やらかしていた」場面で何度も何度も、祈るように、仲間の心に深く届くように、響かせていた声が印象的でした。
最後に、団体戦途中からの出場になった、高野の決勝戦での気魄も10連覇になくてはならないものでした。
「ボロクソ3年生」が失敗するたびに「信じて立ち上が」って築き上げてきた絆が、団体10連覇と2年生エース入澤・本間のチャンピオン奪還に深く寄与したと思います。
2021年、今年も3年生のドラマがあって全国Dreamの切符を力強くつかみました。
ここからが本編です。ここがスタートです。