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2022年1月 2日 (日)

Dream Factory 2022 冬

何も咲かない寒い日は

下へ下へと根を伸ばせ

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センバツ県予選が終わり、今年のチーム北越は県予選で敗退し、春の全国センバツへの戦いが終わりました。

レギュラー6人のうち、4人の3年生が抜けた穴を埋めることができませんでした。

決勝リーグ、1勝1敗で迎えた最終戦、優勝した巻高校との戦いで勝てば三つ巴でチャンスはありました。こういう場面でこれまでのチーム北越は、持っている力以上の集中力を発揮して夢を手繰り寄せてきたのですが、今年のチームはその北越魂が育っていませんでした。観客席から全力で応援してくれている3年生のパワーも借りて共に戦い、「感謝の力」で勝利を届けることもできませんでした。

ただ、その最終戦は、この新チームとしてはベストの戦いができたので、その上で夏から力をつけてきた巻高校に敗れたのですから、実力負け、というのが正しいと思います。

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負けて泣いていたね。

でも、泣いても何も変わらないよ。

全国センバツへ行けなくて悔しくて泣いていただけなら、ほしいものが手に入らなくて泣いている幼な子と変わりはしない。相手だって日々努力しているのだよ。打倒北越で練習を重ねているのだよ。まずは、その努力に唇を噛みしめながら敬意を持つべきだ。

相手は強くなったんじゃなくて、自分を強くしたんだよ。

少なくとも君たち以上に集中し、チーム力を上げ、声を掛け合い、弱さを克服しながら、チームとして自分を強くしてきたんだよ。

その上で、君は自分に何を認める?

「己を知る」

今の君たちには、ここができないのだと思う。

だから、日々の練習が身にならない。力に換わらない。

自分の弱さは何か。

自分は何から逃げているのか。

周りのサポートにもかかわらず、なぜ自分は大事な場面でベストを出せないのか。

力を借りているつもりで、ただの依存になってはいないか。

戦いの現場は最終的には自立した力だけが頼りだ、その力を日々つけているのか。

そもそも、君は自分で大きな夢を本気で叶えたいのか。

「己を知る」とは「自分と向き合う」ことだ。

自分の弱みを知るからこそ、自分の強みにも気づいていく。

おそらく逆はない。この順序だ。

弱みに目を向けない「強み」など、傲慢か無知か臆病かのいずれかだろう。

自分の弱さと向き合うのは、絶対的な希望に裏打ちされた強烈な意志が必要で、それは簡単なことじゃないんだよ。

元日に、こんなコメントが書かれている賀状をいただきました。

先生、私、去年から自分に向き合うようになって、そして新しい道に進んでみようと思い始めて、新たに勉強を始めたんです。自分と向き合うと、逃げてた自分と戦わなきゃいけないので、手ごわいです。

もうお子さんも小学生になっているのですが、きっと心に期するものがあって、今の自分を脱皮して何かに挑戦するんだと思います。

人間、いくつになっても、新しい道に舵を切る時には、今までの自分と「向き合う」必要があります。それは「逃げてた自分」と面と向かって対決しなければならないことで、だからこそ「手ごわい」のです。

この年賀状は、かつての教え子で、新潟東高校キャプテンとしてでっかい夢を叶えた佐藤由樹さん(旧姓 小林さん)からのものです。

由樹さんの中学までの実績はゼロと言っていい。高校2年生の冬までも惨敗の連続。県大会に自力で行ったことなどありません。

何人もの仲間や後輩が諦めてドロップアウトしていく中、夏に咲くヒマワリを自分に重ねて弱い自分を鼓舞し、チームに力を与え続けた人です。

しかし春も惨敗が続きます。地区大会でやっと16本に入って県大会出場がやっと。

そして、迎えた3年の県総体。ノーシードのパッキングから這い上がり、シード選手をいくつ破ったでしょうか。最後は前年のインターハイ選手を撃破してベスト8。それだけでも十分奇跡ですが、翌日の地獄リーグでも、当時の巻高校のエースに奇跡的勝利を果たしてインターハイ出場の夢を叶えたのでした。新潟東高校の創部以来、初めての快挙でした。

由樹さんは、中学から6年間のソフトテニス競技人生で、もらった個人戦の賞状は市内大会も含めて1枚しかありません。

それが、インターハイ出場切符である県総体6位の賞状です。

君たちは全員が、少なくとも由樹さんよりも実績も経験もあり、恵まれた環境にいて、たくさんの人から応援されている。

決定的に違うもの、それはどんなことがあっても最後には「夢の花」を咲かせたいという揺るがない意志、そして自分の弱さをわかり、さらけ出し、それと向き合い続ける実行力とその継続力だ。

由樹さんが惨敗を続けていた厳しい冬、繰り返し伝え続けた言葉があります。

2000年のシドニーオリンピックで、日本初の女子マラソン金メダルを獲得した高橋尚子さんが、無名の高校時代に恩師から授かったという言葉です。

何も咲かない寒い日は

下へ下へと根を伸ばせ

やがて大きな花が咲く

高校時代実績のなかった高橋尚子選手は、卒業後、小出監督と出会い鍛えられ世界的なランナーに育っていきました。ずっと座右の銘にしてきたそうです。

それを由樹さんとそのチームに教えたのです。

そして、由樹さんは翌年の夏、奇跡のインターハイ出場の夢を叶え、その次の年、高橋尚子さんはシドニーで金メダルを獲得するのです。いずれも、冬に伸ばした根に「史上初」の快挙を咲かせたのです。

さあ、冬に負けた人たち。

もうダメかも、と諦めかけている人たち。

今するべきは、花を咲かすことではありません。

自分と向き合い、「下へ下へと根を伸ばす」ことです。

泣いているだけなら、根は縮こまり腐ってしまいます。

自分を強くしたいのなら、自分の弱さを見据えることです。

夢を叶えたいのなら、今こそ自分が逃げているものに立ち向かうことです。

もちろん簡単なことではありません。

敵は自分の中にいます。

「手ごわい」ものです。

冬だからいいのです。向かい風だからいいのです。

負けた直後だからチャンスなんです。

春は芽吹く季節、春から伸ばした根では大きな花は咲きません。

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敗者たち、結果が出ないからといって、現実を諦めにつなげてはいけない。

それは、人間として大事な尊厳を自ら損なうことです。

悔しさは力の源泉です。

ただし、正のエネルギーにも負のエネルギーにも、どちらにも変換できるものです。

だから、君はそれを燃やしてプラスに向かうエネルギーを得てください。

「負けから這い上がる」

「挫折から起き上がる」

その湧き上がる力より価値のある力なんてありません。

誰もがその力を持っています。

諦めるから現れないだけです。

チーム北越。

今年の冬は、少しずつ少しずつ、厳冬の中、下へ下へ根を伸ばしていきます。

また来る春を信じて。「大きな花」が咲く夏を信じて。

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一粒の向日葵(ひまわり)の種を蒔きしのみに荒野を我の処女地と呼びき

   by  寺山修司

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