DREAM FACTORY 2017 春(県総体 )
県総体 団体6連覇!
団体戦
準々決勝 ②-0 三条東
準決勝 ②-0 中越
決 勝 ②-0 巻
前山・冨樫(春) ④-3 古澤・藤田
鈴木・保科 ④-1 小林・石山
水澤・田辺 蓮沼・阿部
高い集中で、会津インターハイへの切符を勝ち取りました。
6連覇と言っても、毎年いろんな条件の中、たった一つの挑戦権をかけたドラマがあります。
今年は、昨年の岡山インターハイベスト8というスタートがすべての起点でした。
1,2年生主体で勝ち取ったIH5位入賞。それゆえに県内大会では勝って当たり前という空気が、まだまだ成長期にある高校生には重荷としてのしかかります。
一方で「敵は全国5位。私たちは失うものなんか何もないから、ただ向かっていくだけ」こうした開き直りのパワーを相手に与える条件にもなります。
昨年の10月の県新人戦での惨敗。そして冬の県選抜決勝では、目の前の勝利にこだわりすぎて戦う心を見失ってしまいます。相手の悲鳴にも似た歓声。うなだれる北越の選手たち。重い日々が続きました。
北信越選抜では個人戦1位と3位。実力的には十分優勝を狙えるのに、団体では勝負所でエースが敗退。全国選抜を逃してしまいます。
このような「重荷」は、他方、自分らを強くしてくれる「負荷」でもあります。
僕は繰り返し実感するのですが、3年の夏(県総体~IH)に自己ベストを出せるかどうかは、この種の負荷としっかり向き合ってきたかどうかにかかっていると思います。
前年の実績という重荷だけではなく、学年が上がるにつれチームの中では責任という負荷がかかってきます。チームをまとめる責任、後輩を指導する責任、チームの問題を自らの問題として逃げずに背負う責任。どんなチームにあってもエースであったり、リーダーであったり、上級生であったり、責任のかかる立場にある者は、秋~冬、そして冬~春と季節が移り行く中で、自分の責任と向き合う場面が数多くあるはずで、その一つひとつとどう向き合ってきたか、逆に向き合わずにきたか、それが最後の大会での強さになり、弱さになっていく。
「負荷」は実際重いですから、できれば脱ぎ捨てたい。身軽になりたい。身軽で戦える1年生~2年の夏までは、この「負荷」がないので伸び伸びと戦えても、2年の秋からは、「負荷」をあえて背負う覚悟が必要なのだと思います。その覚悟を日々の取り組みの中で育ててやるのは、我々指導者の大切な仕事です。選手も苦しいし指導者も苦しい。その苦しい時期を共に歩む。その日々から、アスリートが誕生する。そう信じています。
昨年の秋~冬にかけて、チームの敗北の「現場」にいつもいたのが保科葵です。
保科は能力の高い選手です。高校に入ってから前衛になったのですが、飲み込みが早く、ポイントを伝えてやるとすぐにできます。半年あまりで県のトッププレーヤーになり、2年目には北信越代表として宮崎で行われる全日本最終選考合宿に参加するまでに成長しました。しかし、性格が(よく言えば)おおらか、(悪く言えば)大雑把。これはトップ前衛にはむしろ必要な資質でもあると思っているのですが、本物のアスリートとして全国トップの選手に近づくには、この大雑把で緻密性に欠ける自分と向き合う必要がありました。
さて、今回の6連覇、そして個人戦の鈴木・保科の大会連覇、その「ど真ん中」には保科葵がいました。
個人戦、向かってこられる重圧からか、当日の空模様のようにペアの鈴木は重苦しかった。それを支え、苦境を切り開いていったのが保科でした。
団体戦では、常にチームを鼓舞し、後輩を励まし、自分自身もほぼ完ぺきなパフォーマンスで全勝しました。
今回のDREAM FACTORYは、昨年12月、県選抜で長岡商業に敗れた日から、保科が自分と向き合ってきた日々を振り返ってみたいと思います。
遡ること半年、県選抜団体決勝。鈴木・保科のペアを崩して、保科は下級生の前山と組んで戦いました。
第一対戦に出て相手の長岡商業のエースとの対決になりました。
序盤、保科の雑なネットプレーが続いてリードされていきます。前山も走らされて強引なプレーがミスになり、G0-3まで追い込まれました。
インドアの平行陣の安定に対して、北越の雁行陣の攻めが正確性を欠きます。
ここから、こちらも平行陣にして戦いました。苦肉の策です。1本1本、かみしめるようにしてポイントを重ね、ファイナルまで追いつきました。
長いラリーが続き、隣のコートでは2試合が終了。1-1となって、この第一対戦が3番勝負の形になりました。
お互いが追い込まれた状態でのミス待ちラリーが果てしなく続きましたが、最終的には保科が狙われてゲームセット。
翌日、みんなで日本リーグを観に行きました。
日本リーグにはDreamFactoryの卒業生がたくさん活躍しています。
アドマテックスの成田さん小林さん、太平洋工業の小林さん、ダンロップの岡村さん。
セミプロのアスリートが、チームの夢、会社の誇りを背負って、それでも思いきり戦う姿を保科にも感じてほしいと思いました。
それから約1か月。新潟県2位校として、北信越選抜に出場しました。
2位校は、各県からの2位校のリーグで1位となり、1位校リーグの3位チームと全国への第3代表の切符をかけて争います。要は全勝しなければならない。
2位校リーグの中では、石川県の七尾高校との試合がキーになりました。その戦いで、エース鈴木・保科は力を出せずに敗れ、チームも全国選抜への出場を逃してしまいました。
鈴木に精彩がなく、そうなると保科は冷静な判断を欠き、ペアとして踏ん張りがきかなくなります。
次の日の個人戦では、団体を負けに導いた悔しさから、鈴木・保科が圧勝。しかし、保科は決勝のチャンピオンシップポイントでイージーなミスを連発します。
向き合っているはずの自分の薄っぺらさがなくなりません。メンタル的にも自信をなくし、ペアとの関係もしっくりいかなくなります。
この頃が、保科のボトムポイントだったかもしれません。自分の薄っぺらさを自覚し、そこと向き合い取り組んでいるのに成果が出ない。部長としてチームをまとめ、メッセージしつづけなければならないのに、自分自身がありえないプレーを大事な場面で犯してしまう。
保科は誠実な人間です。失敗すれば、その失敗から逃げずにきっちり反省できる人です。ただ、それが長続きしない。簡単に言えば「子供の反省」の域を出ないので、そこを根気強く指導しつづけました。反省をするのではなく、日々の姿勢を変えるのだ。試合のない普段の時に、自分の夢に立ち戻り、自分をコントロールし、後輩たちをきっちり指導し、時には仲間とぶつかりあうこと。
実際、今年のチームはそこが弱い。ぶつかり合えないのです。お互いが気を使ってぶつかり合うことを回避する。去年の岡崎のような存在がいません。それもまた追い込まれた時の弱さにつながっている。
ただ、保科、鈴木を中心に、徐々にチームはメッセージを心で受け取り、リーダー改革、チーム改革に取り組み始めます。保科の本気の姿が練習中も練習外でも見られるようになってきました。
このようなノートを見ていると、保科が自分の心に向ける眼差しが深くなっていることに気づきます。
ぺらっと自己弁護してしまう自分へも客観的な眼差しが向けられるようになってきました。
日々の練習の、イージーミスを一つひとつ振り返ると同時に、自分の心のマイナス思考を、保科は毎日チェックするようになります。
こうして冬が終わり、春を迎えます。
鈴木・保科は、全国私学大会、全日本選抜に出場しました。
ところが、格上との戦いになると、まず鈴木が臆してしまいます。県内では無敵であっても全国のトップと戦うと挑戦者魂を貫けない。
保科も悩みます。
ただ、この全国での「腰引け敗退」は、このペアに強い課題を与えてくれることになります。
自分の内側の心技体の充実だけではなく、外に対して強く自分を押し出す力への自覚です。
5月の連休の最後に、今年のインターハイ会場の会津総合運動公園で研修大会がありました。
予選を終え、決勝を文大杉並高校と戦うことになりました。昨年3冠、王者の文大です。
真夏にここで咲くでっかい向日葵の種をこのコートに蒔いてこい、そう言って送り出しました。
砕け散りました。木っ端微塵とはこのことです。
スピード、力強さ、正確性、そして何よりも気の強さが桁違いでした。
エース鈴木・保科はオーダーで、文大の3番手、1年生ペアと当たりましたが、またしても鈴木が戦わずにリードされ、その後開き直って打ち合いますが、怯えた保科が気持ちで負けてしまいました。
なぜ、向かっていかないのか。トップに対してのこのひ弱さはどこからくるのか。
2年前のエース、田辺・岡村は違いました。相手が強ければこちらのエネルギーレベルも上げて挑んでいきました。格上との戦いを楽しんでさえいるようでした。
小技やかわすテニスで勝機を見いだすのではなく、真っ向勝負で戦う心、それを「フラットな闘志」と名付けました。
「フラットな闘志」が君たちには欠けているのだよ。
チーム北越で向き合ってきた日々は本物だ。
文大にもどこにも負けない。誇りをもっていい日々だ。
それなら、なぜ臆する?
自分の培ってきたすべてをフラットにぶつけて戦ってみろよ。
自分や仲間やチームを信じて、大きなものに挑みきってみろよ。
その結果、勝っても負けても清々しいじゃないか。
ただ、保科がこうして向き合ってきた「薄っぺらさ」、その日々は決して薄っぺらいものではありませんでした。
秋~冬~春、季節が移りゆく中、保科の心も技術も磨かれていきました。何よりもリーダーの自覚が確かなものとなりました。
県総体直前、鈴木のノートにはこう書かれてあります。
県総体を見ていた方から、こんなことを言われました。
「今回、鈴木は保科に助けられたな。苦しい時に、保科は基本的なことをミスなく完璧にやった。あんなテニスをやられたら、敵はどうしようもない。」
団体戦
準々決勝 ②-0 三条東
準決勝 ②-0 中越
決 勝 ②-0 巻
前山・冨樫(春) ④-3 古澤・藤田
鈴木・保科 ④-1 小林・石山
水澤・田辺 蓮沼・阿部
高い集中で、会津インターハイへの切符を勝ち取りました。
6連覇と言っても、毎年いろんな条件の中、たった一つの挑戦権をかけたドラマがあります。
今年は、昨年の岡山インターハイベスト8というスタートがすべての起点でした。
1,2年生主体で勝ち取ったIH5位入賞。それゆえに県内大会では勝って当たり前という空気が、まだまだ成長期にある高校生には重荷としてのしかかります。
一方で「敵は全国5位。私たちは失うものなんか何もないから、ただ向かっていくだけ」こうした開き直りのパワーを相手に与える条件にもなります。
昨年の10月の県新人戦での惨敗。そして冬の県選抜決勝では、目の前の勝利にこだわりすぎて戦う心を見失ってしまいます。相手の悲鳴にも似た歓声。うなだれる北越の選手たち。重い日々が続きました。
北信越選抜では個人戦1位と3位。実力的には十分優勝を狙えるのに、団体では勝負所でエースが敗退。全国選抜を逃してしまいます。
このような「重荷」は、他方、自分らを強くしてくれる「負荷」でもあります。
僕は繰り返し実感するのですが、3年の夏(県総体~IH)に自己ベストを出せるかどうかは、この種の負荷としっかり向き合ってきたかどうかにかかっていると思います。
前年の実績という重荷だけではなく、学年が上がるにつれチームの中では責任という負荷がかかってきます。チームをまとめる責任、後輩を指導する責任、チームの問題を自らの問題として逃げずに背負う責任。どんなチームにあってもエースであったり、リーダーであったり、上級生であったり、責任のかかる立場にある者は、秋~冬、そして冬~春と季節が移り行く中で、自分の責任と向き合う場面が数多くあるはずで、その一つひとつとどう向き合ってきたか、逆に向き合わずにきたか、それが最後の大会での強さになり、弱さになっていく。
「負荷」は実際重いですから、できれば脱ぎ捨てたい。身軽になりたい。身軽で戦える1年生~2年の夏までは、この「負荷」がないので伸び伸びと戦えても、2年の秋からは、「負荷」をあえて背負う覚悟が必要なのだと思います。その覚悟を日々の取り組みの中で育ててやるのは、我々指導者の大切な仕事です。選手も苦しいし指導者も苦しい。その苦しい時期を共に歩む。その日々から、アスリートが誕生する。そう信じています。
昨年の秋~冬にかけて、チームの敗北の「現場」にいつもいたのが保科葵です。
保科は能力の高い選手です。高校に入ってから前衛になったのですが、飲み込みが早く、ポイントを伝えてやるとすぐにできます。半年あまりで県のトッププレーヤーになり、2年目には北信越代表として宮崎で行われる全日本最終選考合宿に参加するまでに成長しました。しかし、性格が(よく言えば)おおらか、(悪く言えば)大雑把。これはトップ前衛にはむしろ必要な資質でもあると思っているのですが、本物のアスリートとして全国トップの選手に近づくには、この大雑把で緻密性に欠ける自分と向き合う必要がありました。
さて、今回の6連覇、そして個人戦の鈴木・保科の大会連覇、その「ど真ん中」には保科葵がいました。
個人戦、向かってこられる重圧からか、当日の空模様のようにペアの鈴木は重苦しかった。それを支え、苦境を切り開いていったのが保科でした。
団体戦では、常にチームを鼓舞し、後輩を励まし、自分自身もほぼ完ぺきなパフォーマンスで全勝しました。
今回のDREAM FACTORYは、昨年12月、県選抜で長岡商業に敗れた日から、保科が自分と向き合ってきた日々を振り返ってみたいと思います。
遡ること半年、県選抜団体決勝。鈴木・保科のペアを崩して、保科は下級生の前山と組んで戦いました。
第一対戦に出て相手の長岡商業のエースとの対決になりました。
序盤、保科の雑なネットプレーが続いてリードされていきます。前山も走らされて強引なプレーがミスになり、G0-3まで追い込まれました。
インドアの平行陣の安定に対して、北越の雁行陣の攻めが正確性を欠きます。
ここから、こちらも平行陣にして戦いました。苦肉の策です。1本1本、かみしめるようにしてポイントを重ね、ファイナルまで追いつきました。
長いラリーが続き、隣のコートでは2試合が終了。1-1となって、この第一対戦が3番勝負の形になりました。
お互いが追い込まれた状態でのミス待ちラリーが果てしなく続きましたが、最終的には保科が狙われてゲームセット。
自分の薄っぺらさでチームを負けに導いた。悔しい…。本当にごめんなさい。
長商のW後衛にファイナル負け。G0-3から、こっちも平行陣にしてファイナルまで追いついた。
P2-0、逆クロスへのボール、面が薄くて吹いてアウト。その後スマッシュがアウト。
ここから小さくなってラケットを振れなくなる。
吹くのが怖くてほぼ返球。お互い返球しあってミスを待っているラリー。
デュースまでいって、果てしなくアゲインは続いた。
こっちのマッチポイントは4回あった。
愛(ペアの前山)のツイストがネット。そして次はWF。
だけど、3回目と4回目のマッチポイントは私のストロークが薄くてのアウトだ。
マッチを握っても、雁行陣で攻める選択はできなかった。序盤のようにネットについて狙われたら…という不安に勝てなかった。
「インパクトでの面の薄さは人間の薄さ」前に先生から言われたことがある。
それがチームを負けに導いたんだ。
変わりたい。この負けは絶対に忘れない。
変わらないと、来年の県総体、同じように私がチームの夢を終わらせる。
これから毎日、朝6:45からギャラリーを走る。
少しでも厚い人になって、勝利を導ける人になれるように。
(12月17日 保科葵)
翌日、みんなで日本リーグを観に行きました。
日本リーグにはDreamFactoryの卒業生がたくさん活躍しています。
アドマテックスの成田さん小林さん、太平洋工業の小林さん、ダンロップの岡村さん。
セミプロのアスリートが、チームの夢、会社の誇りを背負って、それでも思いきり戦う姿を保科にも感じてほしいと思いました。
日本リーグは、私みたいなクソ試合する人なんて誰もいない。いるわけがない。
相手のマッチポイントだって、当然打ち切るし、点を取りにいく。ミス待ちなんかじゃない。戦いだ。
点を取り合う戦いだ。
見ていてもハートを感じる。絶対負けられないと強く思っているから、だから絶対点を取りに行く。
それだけのことだ。
私は、絶対負けられないと思って無難に引いてしまう。攻める気持ちを失ってしまう。
この差だ。勝ちたい勝ちたいと思っているけど、自分自身の勝つための準備が薄っぺらなんだ。
葵先輩(ダンロップ岡村葵;北越の卒業生)は私とは全然違った。
ペアの安藤さんの引退試合。負けられない戦いだ。
相手の強打を敢えてポーチボレーに行く。後衛前の深いロブを追いに行く。
あんなに深いロブ、「ミスするかも…、決まらないかも…」という雑念は当然あるだろう。
でも、その雑念を振り払って決めに行く姿。
「厚い」人だ。ハートが強い。思いが強い。
この二日間のこと、決して忘れないで北信越でリベンジする。
選抜の切符、全国への切符、必ずつかむ。
(12月18日)
それから約1か月。新潟県2位校として、北信越選抜に出場しました。
2位校は、各県からの2位校のリーグで1位となり、1位校リーグの3位チームと全国への第3代表の切符をかけて争います。要は全勝しなければならない。
2位校リーグの中では、石川県の七尾高校との試合がキーになりました。その戦いで、エース鈴木・保科は力を出せずに敗れ、チームも全国選抜への出場を逃してしまいました。
鈴木に精彩がなく、そうなると保科は冷静な判断を欠き、ペアとして踏ん張りがきかなくなります。
次の日の個人戦では、団体を負けに導いた悔しさから、鈴木・保科が圧勝。しかし、保科は決勝のチャンピオンシップポイントでイージーなミスを連発します。
全国選抜に行けない…
また、自分が終わらせた…
ここ勝負、って場面にいつも私がいる。
そして勝てない。県も、北信越も。
背負う場面で耐えられない。
うまくいかないと顔がこわばっていく。ミスが出ると振り切れない。いつもこうだ。
ペアとしても問題があると思う。
それは愛香(ペアの鈴木)にいつも試合をつくってもらっていることだ。
主体が愛香にいつもある。
良いチームになってきたって自信もあったけど、やっぱり核となるべき自分が弱すぎる。
努力はしている。でもまだまだ弱いんだ。
今日の試合ではっきりわかった。
愛(後輩の前山)がミーティングで勇気出して言ってくれたように、
失敗から学ぶのはもうたくさんだ。成功を積み上げるチームに!
私って本当に懲りない人間だなってつくづく思う。
今度こそ、今度こそターニングポイントにしないと、日本一どころか、IHにさえ出られない。
(1月14日)
個人戦、優勝した。
嬉しいけれど、正直悔しい。
また馬鹿なことをした。優勝を決めるマッチポイントから4本連続クソミス…
負けそうな土壇場にも弱いし、あと一歩で勝利という土壇場にも弱い。
どっちにしても、ギリギリの場面で1点がほしくなる。それが力みになったり、馬鹿な判断につながる。
ペアの意志疎通にも問題ありだ。
私たちのペアは二人で何かをする時間がほぼない。
愛香は一人で全部する。私は二人でする時間を増やしたい。
最近の愛香はなんか怖い。もっとコミュニケーションとりたいけど、どうしても一歩引いてしまう。
自分でもわかっている。怖いと思っている自分が最悪だ。ペアとして一緒に前へ進もうとしていないということだ。
次、団体で戦うのは、もう春のインターハイ予選だ。
自分の弱さから逃げず、ペアからも逃げず、1日1日を大切にしていこう。
ペアとしても本気で話をしよう。
チームとしても、ペアとしても、本物になりたい。
(1月15日)
向き合っているはずの自分の薄っぺらさがなくなりません。メンタル的にも自信をなくし、ペアとの関係もしっくりいかなくなります。
この頃が、保科のボトムポイントだったかもしれません。自分の薄っぺらさを自覚し、そこと向き合い取り組んでいるのに成果が出ない。部長としてチームをまとめ、メッセージしつづけなければならないのに、自分自身がありえないプレーを大事な場面で犯してしまう。
保科は誠実な人間です。失敗すれば、その失敗から逃げずにきっちり反省できる人です。ただ、それが長続きしない。簡単に言えば「子供の反省」の域を出ないので、そこを根気強く指導しつづけました。反省をするのではなく、日々の姿勢を変えるのだ。試合のない普段の時に、自分の夢に立ち戻り、自分をコントロールし、後輩たちをきっちり指導し、時には仲間とぶつかりあうこと。
実際、今年のチームはそこが弱い。ぶつかり合えないのです。お互いが気を使ってぶつかり合うことを回避する。去年の岡崎のような存在がいません。それもまた追い込まれた時の弱さにつながっている。
ただ、保科、鈴木を中心に、徐々にチームはメッセージを心で受け取り、リーダー改革、チーム改革に取り組み始めます。保科の本気の姿が練習中も練習外でも見られるようになってきました。
リーダーミーティングを持った。
テーマは「リーダー同士がぶつかれないことについて」
私たちの一番の問題は、ぶつかった後の関係を気にしてしまうことだ。
嫌われたくない。っていう気持ちがあるから、強く言えない。全員一致だった。
そこが下北沢との違いだ。(前にバレー女子の下北沢成徳チームを追った番組をみんなで見た)
下北沢のキャプテンは嫌われても大事なことをメッセージし続けていた。
それから、伝えられた側の態度も重要だ。
逆ギレ、言い訳、他の人への愚痴、そんなのはもっての外。
仲間が勇気を出して言ってくれたことをちゃんと受け取ってあげること。
「〜していこう」とか「〜しよう」じゃなくて、「〜して」ってズバッと言う。
そして、部員みんなの人間性の理解。誰が 何に取り組んでいるのか、リーダーは把握していないと 、的確なアドバイスができない。
その三つを主に話した。
部長の私が人の目を気にするからダメだ。
もう小さな殻に入るのはやめにする。
結局それは人の評価を気にすることだし、大事なポイントで不自然なことをすることにもつながるんだ。
(2月13日)
今日、おばあちゃんの家に行ってきた。そしたら親戚の叔母さんが来て一緒に話をした。
幼い頃以来なので、初対面みたいな感じだった。いつもなら、そこで引いてしゃべらなくなる自分。
だから、敢えて自分から昔のこと聞いたり、話したりするようにした。
昔からこういう時に口数が少ない方だったから、叔母さんに変わったねって言われた。
全然そうじゃなくて、話題が出てこなくて困っているのに…
もっと堂々とした人になりたい。
自信を持って発言したり、自分の意見をはっきり言える人に…
(2月15日)
今日は都道府県対抗に出る中学生が練習試合に来た。
冬の間、ずっと続けて来た雑ミス撲滅の取り組みの成果を見るチャンスだ。
1試合目の雑ミスは2本。
何もない場面での雑ミスはゼロだが、勝敗に関わる大事なポイントで出る。
相手が中学生だろうと関係ない。わかって準備していなければ必ず出る。
・大事なポイントをどういう心で迎えるか。
・そういう時の集中力の作り方はどうあるべきか。
まだまだ追究が足りない。
2試合目の雑ミスは序盤なし。
ゲームカウント2-0からWFをきっかけに3連続のクソミス。
ギリギリのポイントでも出るし、余裕がある時も出る。
余裕がある時のパターンは、心に余裕があって、そこでWFとかスマッシュミスとか、イージーな ミスが出ると、「ああー、やってしまった…」って考えてしまう。その考え方が連続ミスの始まりなんだ。
3試合目も同じだった。序盤のミスはなし。リードしてから始まる。
これも自分の中の「負けないっしょ」って考えからだ。なんか落ち着かなくなって、圧勝してしまいたくなる。
簡単なプレーの雑さ。何度言われても変われない自分がいる。
午後に先生が時間をかけてメンタルの講義をしてくださった。
それを聞きながら、自分は本当に日本一を狙っているのかと思ってしまった。
メンタルって心のことだと思っていたけど、考え方や行動までもが深くメンタルに関係していた。
私は普段から何気にマイナス発言をしていた。小さいことかもしれないけど、「疲れた…」なんて普通に教室でも言っている。
こういうマイナス発言を続けていれば、自分の中の心も感情もマイナスなものになっていく。
部長がこんなじゃあ、チームがチャレンジしていけるわけがない。
ただ、いきなり「疲れた」「ああ…」とかって、それを思わないところから始めるって難しいと思う。
だから、まずは口に出さない。
思ったとしても、これは日本一への道って考えて、口に出さずに思考を変えていく。
それを毎日振り返る。
あと96日で県総体。100日を切ってることにドキッとした。
本物のエースになりたい。
どんな場面にも揺るがない、頼りになるエースになりたい。
(2月26日)
このようなノートを見ていると、保科が自分の心に向ける眼差しが深くなっていることに気づきます。
ぺらっと自己弁護してしまう自分へも客観的な眼差しが向けられるようになってきました。
日々の練習の、イージーミスを一つひとつ振り返ると同時に、自分の心のマイナス思考を、保科は毎日チェックするようになります。
マイナス発言をチェックし始めて10日。今日も1回してしまった。
どういう時にしてしまうのか?
場面とか自分の心の状況とかじゃなくて、話してる相手だ。
マイナスな空気や言葉で同調を求める相手に合わせてしまう。
こうやって自分の思考パターンや発言に注意するようになってから、周りの心がわかるようになってきた。
野球部、バレー部、いろんな部活の人の心が態度や発言からわかる。
最近、男テニ(男子ソフトテニス部)が、勝利を積み重ねているのもわかる気がする。いつも前向きだ。本当にインターハイベスト8をとるために何が必要かを考えてる。
かつては全然だったのに、リーダーが変わった。やっぱり日ごろの自分とコート上の自分ってしっかりつながっている。
今日のリーダーミーティングで、なつき(田辺)はほとんど無言。
愛の問題も進めたのは愛香で、愛もなつきの方を向いて話すことはない。
しっかり伝えたら泣いてたけど、昨日もそのことで伝えられて泣いたんじゃないの。
変われよ。悔しくて泣くくらいなら変われよ。
日本一への道だと思って頑張れよ。
本気になれよ。
寮に戻って、「自分がチームを変える!」机の上に大きく書いて貼った。
「愛香と」じゃない。自分が、だ。
(3月8日)
マイナス発言、今日はゼロ。
でもマイナスに思うことはやっぱりあるんだな。
ただ、そのマイナス思考が始まった時に「違う!」ってことを強く言い聞かせる。
そうしないと、マイナスの渦に巻き込まれる。
チームにもマイナス発言のこと伝えつづけて、部員同士のマイナス発言はほとんど聞かれなくなった。
これがチーム全体の気を上げることになればいいな。
練習中も、マイナス思考との戦いだ。
1本のミスに対して「また~してしまった…」って思ってしまう。
自己嫌悪は悪いことじゃない、と先生は言う。自己向上へのスターティングブロックになるから。
でも、試合中そんなことは考えていられない。ミスを修正することは大切だけど、「~してしまった…」というような思考は自分を下向きにさせるからNG。
ミスをした。「じゃあ次はどうする?」「どうやって挽回していく?」
それを瞬間瞬間に考える。思考は前へだ。そうすると連続ミスはなくなる。
(3月11日)
今日は練習を早めに切り上げて、みんなで「チアダン」(映画 福井商業高校チアダンス部が全米選手権で優勝するまでを実話をもとに映画化したもの)を観た。
軽いショックを受けた。
自分らと「やりたい! なりたい!」の強さが違う。
チアダンの部員たちは、思いを直接言うし、思いを共有する。
ミーティングなんてわざわざ持たなくたって、言うべきことは言うし、そして受け止める。
全く受け身ではない。自らの行動。
私もひかり(主人公)と同じく「仲良くまとめようとする」。
でもチアダンの部長は違う。
敢えて嫌われ役に徹する。
みんなの夢をかなえるため、あえて嫌われる存在になる。
この覚悟が自分にないんだ。
全然優しすぎる。気ばっか使いすぎる。
リーダーの覚悟が足りなさすぎる。
本当に強いところ、本当にでっかい夢をかなえるところってこうなんだろうな。
ぶつかりあって、お互い本音を伝えあって。
私は一つにしようとするから逆にまとまらないんだ。
メンバーの心が開けば一つになるのか。
だとすれば、私たちが口を閉じていたり、心を開いていかない限り、何も始まらない。
私も、ひかりの「夢ノート」作ってみよう。
本当に自分が思ったことを全部書き込むノート。
このテニスノートにも思いを書いているけど、文章になるから長くて見にくい。
ひかりのように、赤ペンで短く、ズバッと書くのもありだ。
(3月18日)
こうして冬が終わり、春を迎えます。
鈴木・保科は、全国私学大会、全日本選抜に出場しました。
ところが、格上との戦いになると、まず鈴木が臆してしまいます。県内では無敵であっても全国のトップと戦うと挑戦者魂を貫けない。
保科も悩みます。
ただ、この全国での「腰引け敗退」は、このペアに強い課題を与えてくれることになります。
自分の内側の心技体の充実だけではなく、外に対して強く自分を押し出す力への自覚です。
全国私学、全日本女子選抜、収穫はあった。けど負けた。自己ベストではない。
また失敗。また、また。
ペアとしても失敗。
何だろう…。自分がやっぱり愛香に対しての気づきが浅い。
今回、愛香自身になんか迷いがあって、気迫があるときの「思いきり」がなくなる。
「かわさないで、しっかり打って!」何度も言った。けど変えられなかった。
格上になると、愛香は別人になる。表情も固くなり、何よりまず目が死ぬ。そしていつものボールじゃなくなる。
どうしたらいいんだろう。愛香がチキンになったとき、私は何ができるんだろう。
愛香は頭もいいし、うまいし、技術や戦術も高い。けど、やっぱり、責任や勝負がかかった試合になると重くなる。その重さを吹き払うような気魄がなくなる。
試合前の準備も、やっぱりどこか気が足りなかったと本人も認めた。
日ごろからのペアとしての取り組みも、でっかい夢をかなえるためには甘いんだ。
私の本気が足りないから、ペアの心に届かないんだ。
チアダンを見てから、チームに対して考えを変えてやっていることはあるけど、それまでが甘かったから結局こういう全国レベルで出てしまう。
愛香が全国レベルで戦えなくなる、この問題は自分もかかわるべきだ。エースとして格上と当たってすぐ負けるようじゃダメだ。
こうして、また「変わらなくちゃ」なんて言ってるから、ダメなんだけど、でも、今回は今までと違って「こんな自分を…」というより、今取り組んでいることを本物にしていくこと、そう思える。
私自身は、この私学大会、メンタルがおかしくなったというよりも、すべきことの整理をさぼっていて負けた。雑だ。
自分への全国大会からのラストヒントは、
・技術、戦術の整理
・相手の心を読み切るタクティクス
まだまだ勉強が足りないんだよ。本当に。
自分の雑ミスは、心の問題ももちろんあるけど、テニスの勉強、技術、戦術の日ごろのメンテナンスが大きいんだよ。
県総体まで、あと70日。
自分にできること、ペアとして取り組むこと、チームに対してやること。今の取り組みを充実させる中で、進化しよう。
(4月1日)
5月の連休の最後に、今年のインターハイ会場の会津総合運動公園で研修大会がありました。
予選を終え、決勝を文大杉並高校と戦うことになりました。昨年3冠、王者の文大です。
真夏にここで咲くでっかい向日葵の種をこのコートに蒔いてこい、そう言って送り出しました。
砕け散りました。木っ端微塵とはこのことです。
スピード、力強さ、正確性、そして何よりも気の強さが桁違いでした。
エース鈴木・保科はオーダーで、文大の3番手、1年生ペアと当たりましたが、またしても鈴木が戦わずにリードされ、その後開き直って打ち合いますが、怯えた保科が気持ちで負けてしまいました。
今年のインターハイ会場に、私はヒマワリの種を蒔けなかった。
決勝、文大の1年生に戦わずに終わった。しかも1年生だ。
序盤・中盤は、また愛香が打ち切れない。
それでも、G1-2から生き返ったのに、自分は全くなにもできない。ただただ、それまでの相手とは全く違うスピード、ボールの力、テンポの速さ、それに怯えた。小さくなった。
抜かれているわけではない。なのに気持ち的に自滅した。レシーブミス、WF、サーブレシーブが乱れ、もう戦いじゃなかった。
私は何に怯えているのか。
準決勝までの相手だってインターハイ常連だけど、全く問題なかった。
決勝の文大、トップ校のテニスにひるむ。
文大という名前にひるんでいる、先生はそう言う。
私の中の薄っぺらな部分、自分に甘いところ、すぐ言い訳するところ、人の目を気にするところ。
相手が強ければ強いほど、向かっていった田辺・岡村先輩のような、フラットな心がほしい。
もう一度、自分を見つめなおそう。
「自分と契約しているコーチを変えろ。」先生にはそう言われた。
選手は指導者のほかに、自分の中だけにいる「個人契約コーチ」を持っているという。
OKラインの低いコーチ。厳しさを課さないコーチ。言い訳を流してくれるコーチ。
私が契約しているコーチは、私に優しく、ぬるいコーチだ。
あと80日後には、ここでインターハイだ。
自分の薄っぺらさをもっと自覚しよう。
(5月7日)
なぜ、向かっていかないのか。トップに対してのこのひ弱さはどこからくるのか。
2年前のエース、田辺・岡村は違いました。相手が強ければこちらのエネルギーレベルも上げて挑んでいきました。格上との戦いを楽しんでさえいるようでした。
小技やかわすテニスで勝機を見いだすのではなく、真っ向勝負で戦う心、それを「フラットな闘志」と名付けました。
「フラットな闘志」が君たちには欠けているのだよ。
チーム北越で向き合ってきた日々は本物だ。
文大にもどこにも負けない。誇りをもっていい日々だ。
それなら、なぜ臆する?
自分の培ってきたすべてをフラットにぶつけて戦ってみろよ。
自分や仲間やチームを信じて、大きなものに挑みきってみろよ。
その結果、勝っても負けても清々しいじゃないか。
ただ、保科がこうして向き合ってきた「薄っぺらさ」、その日々は決して薄っぺらいものではありませんでした。
秋~冬~春、季節が移りゆく中、保科の心も技術も磨かれていきました。何よりもリーダーの自覚が確かなものとなりました。
県総体直前、鈴木のノートにはこう書かれてあります。
チーム全体に「本気」が感じられることが多くなってきました。
先生も言っていましたけど、私も教室で遠く離れたコートからハッキリ二人の声が聞こえてきました。
葵(保科)となつき(田辺)です。
文大戦の負けから、少しずつ変わりはじめていると思います。
県大会が近いから、ではなく、文大に惨敗したから、葵やなつきの心はきっとそうだと思います。
葵はミーティングで、チームはまだまだ気が足りないと強く伝えてくれた。
球出しであっても、あれほど気を込めて一球一球ボールを打つ部長を見て、私も頑張らなきゃと思います。
まだまだ、キャプテンの私も足りないなと思いました。
「逃げずに!」「堂々と!」「正面からフラットに」ぶつかっていく!
(3年 鈴木愛香)
県総体を見ていた方から、こんなことを言われました。
「今回、鈴木は保科に助けられたな。苦しい時に、保科は基本的なことをミスなく完璧にやった。あんなテニスをやられたら、敵はどうしようもない。」