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2019年10月13日 (日)

Dream Factory 2019 野分

秋季地区大会

 今年は大きな出遅れからのスタート

 それを支える3年生の「恩送り」

台風19号が日本を襲い、裏側であるはずのここ新潟も各地で河川が氾濫、私の住む場所にも避難勧告が出ています。当然部活は中止し、時間ができたので、ブログを更新します。

秋の地区大会が終わり、茨城国体も終了し、水澤と冨樫は最後の戦い=来週末の全日本(天皇杯・皇后杯)、新チームは進路が決まった3年生の力を借りてその次の週の県新人戦に向けて、日々精進の毎日です。チームを引っ張ってきた3年生が抜けて、まだまだ本物の力がない新チームは、地区大会でジュニアの経験豊かでセンスのある選手が多い巻高校に惨敗しました。今年の新チームのドラマは、久しぶりに大きなビハインドからのスタートです。同じ地区内でもずっと前を走っている巻高校、背中はまだ遠いです。問題は山ほどあり、それゆえ課題は常にあるのですが、1年生2年生の意識がかなり進化してきて、その成長に驚くことが多くなってきました。人としての成長、それがテニスの大事な場面で生きる、だから自分の小ささ、自分の幼さ、自分の至らなさに気付き向き合うことが何より大切なんだ、こう考えるのがチーム北越です。夏を越えていく中で、先輩や仲間からの多くのエネルギーと思いをしっかりと受け止め、受け入れ、自分と向き合う力に換えていける子が多くなってきました。失敗はいいのです。何度失敗したっていいんです。その自分を超えていこうとする思いが本気ならば。その思いさえ日々紡いでいけば、必ず花は咲くのです。悔しさと強い向上心、特にこの思春期にその経験が深いほど、人はたくさんの人を振り向かせられる美しい花を咲かせるのだと思います。この力が必ずテニスにも人生にも大きな力となって、将来、どんな世界に生きようとも状況をプラスに変えていける人になっていってほしい。これが決してブレることのないチーム北越の願い=哲学です。

秋季新潟地区大会 

シングルス 1位  鈴木唯香 

      3位 星野結衣

ダブルス  3位 星野結衣・佐藤莉穏

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新潟地区では巻高校に大きく出遅れている北越の新チームですが、あちこちに来年の花の気配が(まだつぼみですらなく気配ですが)現れてきています。

まず優勝した巻のエースに、1年生ペアの高野凛・高橋咲羽が準々決勝で競り合えたこと。二人は中学からテニスを始めた子で、巻のエースとの中学時代の実績を相撲で例えて比べると大関と序二段ほどもあるでしょう。G2-3のP3-0、あのゲームを取り切ってファイナルを戦えると面白かったと思いますが、まだまだテニスの力不足、「人として」の力不足です。

その高野のノートです。

ダブルスのベスト4決めで巻高校のエースに負けた。G2-3のP3-0、あと1本でファイナルだ。そこで私のトップ打ちが力んでネット。ここだって時に決めきれない。

今年の県総体団体決勝。1-1の三番勝負の緊迫した試合。流れが相手に行きかけた時に、田中先輩が打ち込んで相手が全く動けなかったトップストロークに憧れて、今まで磨いてきた。前日の練習でも一番最後に田中先輩にボール出してもらって合わせた。そして技術も確認した。田中先輩には「明日、試合で使うんだよ! 頑張ってね!」って言ってもらっていた。それなのに、また力んでネット…。自分の壁を自分でわかって乗り越えていくのが「北越」。私はそれを超えられなかった。もっともっと自分を追い込んでスキルを上げていかなくちゃ。

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シングルスの2回戦、相手は中学生の時どう頑張っても勝てなかった子だ。夏これだけ頑張ってきたんだから絶対!と思って臨んだ。長いラリーになった。攻め続けていた。けど、やっぱり最後は自分の力み。ダブルスと同じことが起こる。今回の大会でわかったことがある。自分は同格や格上の相手との試合で競っている場面で力みやすいということだ。成果としては最後までキーワード言いながら気迫出して戦えたことだ。トップ打ちも何回打ち返されても泥臭く相手のコートに打ち込んだ。そこはこの夏を通して成長できたような気がします。

北越らしさ、私は表現できた所もできなかった所もある。シングルスでの唯香先輩(鈴木)の優勝は、私たちに「北越らしさ」を見せてくれた。準決勝→決勝、相手は巻高で、前日のダブルスの決勝を巻の同校対決で戦ったスキルの高い相手だ。唯香先輩はチェンジサイズの時ノートを必ず開いていた。後で聞いたら、「冨樫先輩の思い、そして何度も自分に負けた悔しさ」その思いを確かめて絶対超えてやると思って気を引き締めていたそうだ。泥臭く粘り強く、1球1球に思いを込めて、だからこそチーム全員で一つになれる。こういう戦いを春には全員ができるように、秋の悔しさを絶対に忘れない。

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シングルスでびっくりしたのが、1年生の近藤が前日ダブルスの優勝ペアの一人に勝利したことです。初戦だったので相手も油断していたと思いますが、勝ち切るまで集中を切らさずよく頑張りました。ただ、番狂わせを演じたのに次で負けるのは本物の力ではない証拠です。

近藤は本当に全く実績のない選手で、ただただこのチームに憧れて北越に来た子です。身体も固く、頭も固い。固いことだらけですが、意志も固いのです。「人として」の力にも大きな潜在力を感じます。人間は何もかもダメなどということは絶対になく、必ず素晴らしいものを持っています。それを芯にして自分の幹を作っていけば、3年間のドラマの中で必ずいいことありますよ。

それから、これも1年生の斉藤菜月が前日のダブルスでベスト8に入ったスキルの高い選手にファイナル3-6のマッチポイントを握られながら、一つひとつ挽回して逆転で勝利した試合には感動しました。斉藤は広島から来た子です。北越はインターハイ前に「どんぐり北広島チーム」に行き、そこで力をつけてもらうことが多いのですが、その際地元の中学校が練習に来ていたことがあり、斉藤の一つ上の岩田栞という子が北越の練習をコーチと二人でじっと見ていました。

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こんなチームで自分もテニスを続けられたらと思ったそうです。普通は思っただけで終わるのですが、コーチにも勧められてはるばる北越に入部したのです。とても感受性が豊かで、学力も高く、自分の思いや考え、将来の展望もしっかり自分の言葉で伝えられる素晴らしい子です。新潟高校と合同練習をした時にいくつかのテーマでディスカッションを組んだのですが、一番生き生きと楽しそうにテーマを掘り下げていたのは岩田でした。新潟高校の監督の石崎先生(元日体大キャプテンで、私の恩師です)にもとてもかわいがってもらっています。ここで人間形成を学びながら学力をつけ、将来は世界の平和と貧困の問題に貢献し、そして最終的には地元に戻って先生になりたいという夢を明確に持っています。今、チームの部長を任せています。

斉藤は同じ北広島町立豊平中学校の後輩です。岩田も斉藤も広島での実績はありません。強くなりたいなら、広島にも強い学校はありますし、中国近畿はソフトテニスの強豪校がひしめいています。なぜ北越に? コーチがおっしゃるのは「北越みたいなチームって、全国いろいろ探しましたけど、ないです。だから北越でテニスをやらせたい。」ご両親も意志を尊重してくださって、寮生活をしながら一歩一歩、夢へ向かって成長しています。上半身主体の動きを下半身主体に、そしてインナーマッスルを使えるようになることが今の課題です。ハートがある子で、意気に感じることができる。

斉藤菜月のノートです。

今日はシングルスだった。初戦の相手は経験もセンスもある相手だった。昨日のダブルスでもベスト8に入っている。でも先生から「昨日見ていたらスキルもセンスも高い。でも間違いなくおまえの方が毎日自分と向き合ってきているから、粘って競り合いになれば勝つチャンスは必ずある。こういう相手に競り勝ったら、もう一度チャンスあげるから、意地見せてこい!」と言ってもらった。

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プレーボールから気迫だけは一番出して「北越らしく」見ている人が元気をもらえるような試合をしようと思った。G2-0でリードしたが、調子を出してきた相手に次々とポイントを決められG2-3と逆転された。このゲームが一番苦しかった。しっかりやろうと思っているのに連続ダブルフォルト。今までの私ならここで自滅していたと思う。でも今回は自分の中から闘志が湧いてきた。

「こんな所でなんで自分に負けてんだよ!」「意地見せ

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てやれよ!」そして長いラリーが続き、ファイナルに入った。シングルスだからすごいセルフトークをした。ファイナル前のベンチでは頭の整理をして、今何をすべきか確認した。何回も気持ち入れ直してギアを上げた。相手も負けたくない気持ちを出して攻めてきた。でも完全に自分との戦いだった。もうラケットを振り切ることしか考えなかった。セカンドのレシーブはとにかく「攻めの選択」をし続けた。序盤からしっかりラケットを振っていたことで、ファイナルの競り合いでも思い切ってラケットを振っていくことができた。でもファイナルP3-6で相手のマッチポイントになった。でもそのことが気にならないくらい戦いに集中していた。キーワードを言って目の前の一本一本を全力で戦った。そしてP7-6逆マッチポイント。最後の1球は自分でも「ここだ!」と思った所に打ち切れた。

苦しいときこそ逃げずに相手に向かっていく大切さをとうとう実感できた。

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2回戦も競り勝って、昨日のダブルス優勝の若月さんとの戦いになった。まだまだ話にならないレベルで負けた。でも新潟へ来て初めて自分の力で全力を出し切れた。そして、先生に「今日は感動したよ。 団体ももう一度おまえにかけてみる!」と言ってもらえてすごい嬉しかった。かけてもらったチャンスなんだから、絶対にもっともっと向上してつかみきってみせる。これからも苦しい時は絶対にある。でも今日の試合と同じだと思う。苦しいからそこから逃げたらその後の感動はない。その苦しさに自分から向かっていく。苦しさや自分の弱さから逃げない生き方をしたい。

さて、このような1年生の成長の陰には、その成長を見守り支え叱咤激励する3年生の存在があります。ちなみに斉藤を「バディ」として指導するのは3年の清野です。この秋の地区大会直前の清野のノートです。

悔しい。こんなに悔しく思うのは久しぶりだ。斉藤をあそこまで下げてしまった。私の指導のレベルの低さ。キーワードを伝えても、なぜそれが必要なのかを指導しても斉藤はやれない。指導者としての悔しさ。先生はいつもこういう気持ちになっているんだろうな。だからこそ、先生は「やらない」瞬間を逃さない。全力で伝える。だからみんな必ずいつか進化する。私にはその熱がないのか。

「清野、おまえ、斉藤頼むわ」 そうやって初めて信頼されて任されたのに。斉藤を任せられて一緒にバディを組ませてもらって、指導者としての楽しみもわかってきた。斉藤は思いに応えようとしてくれるから、一緒の時間は楽しいし、向上があるとすごくうれしい。

けど今のままじゃダメなんだ。私の言葉は相手の心に届かない。斉藤も斉藤であまりにも問題意識が低すぎる。このバディ、今のままじゃダメだ。自分がどれだけ必死でも、相手の心に届かない必死さなら、それは一人よがりで意味ない。岩田のように、もっと熱く。もっと本気になれ!

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先生から借りた資料の中で、なるほどと思ったことがある。「同じリズムで打つ」ということ。斉藤の大問題の三つの他に、「リズム」ってことを課題にした方がいいのかもしれない。どんなボールにも同じリズムで入れるように「準備を早くすること」。私も1年生の時に「リズムがない」って伝えられた。その時に先生から「リズムを自分のものにするには半年はかかるよ」とも言われた。私は実際もっとかかった。斉藤には、目の前の課題を克服させながら「リズム」をいつも感じさせよう。

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北越には「恩送り」という伝統があります。これは自分が下級生の時に先輩から親身になって指導していただいた、上級生になって「恩返し」をしたいけれど恩を返したい先輩はすでに大学や就職で目の前にいない。返したい恩を下級生に「送る」=「贈る」それが「恩送り」です。もう十年も続いています。日本一の水澤でさえ1年生の時に大きな恩を受けており、その恩を何倍にも膨らませて下級生を指導しています。大きな才能がありながら、不器用でその才能の発揮の仕方を知らない1年生の星野を辛抱強く指導しています。また、北越は新入生にいろいろなことを教え指導するための「バディシステム」を取り入れています。一人の1年生に一人の上級生がつく。北越のテニスはかなり緻密で身体の内部操作の習得にも時間がかかるので、その一つひとつを丁寧に教え伝える必要があります。その責任を担うのが上級生バディです。バディを務めながら上級生は教育と責任を学んでいきます。その姿を見ていると、引退してからこれほど「人として」成長するのか、と驚き感動する場面がたくさんあります。

今年の3年生は6人います。このブログの中で、水澤、冨樫、田中、今井は団体メンバーとして活躍し、何度も名前が出てきていますが、清野美穂と入江ゆいほという二人の存在なしでは、今年のチームは語りつくせませんし、新チームの成長も決してありません。

3年間、北越というフィールドを全力で駆け抜け、そして今、全力で1年生を育てている二人にスポットを当てて、チーム北越の魂を別な角度から紹介してみようと思います。

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清野美穂は、新潟市立大江山中学校出身。ソフトテニスは中学から始め、中学時代の実績はなし。チーム北越との接点は冬に毎年行っている新潟市協会さんが選出する新潟市(旧新潟市内)強化メンバーとしての合同練習です。これも「恩送り」の一環として中学生強化にチームとして毎年協力しています。清野はそこに参加して、いわばカルチャーショックを受けたのです。チーム全員が(これが一番大きな衝撃のようです)、全く手を抜かず全力でしかも笑顔で元気で厳しい道のりを歩んでいる。しかも手のかかる中学生に対しても全力で誠心誠意声をかけながら指導してくれる。こんな世界もあるんだと感動して、周囲の反対を押し切りチーム北越のメンバーになった子です。

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入江ゆいほは、新発田市立本丸中学校出身、本丸中でレギュラーを務めていましたが、高校の上位でやっていくには相当の努力が必要なレベル。前衛でしたが正面ボレーができない前衛でした(笑)。北越との接点は当時の顧問の先生が熱心な先生で何度か練習を見に来たり合同で練習したことがあり、その時にやはりいい意味でのカルチャーショックを受けて自らの進路を電撃的に定めてしまった子です。周囲は「ついていけない」と反対しましたが、ブレることなく意志を貫いて仲間になりました。

僕は時々不思議な気持ちになります。この二人よりもはるかに実力も実績もあるのに、北越に誘っても「自信がない」という理由で自分の才能や経験を伸ばそうとしない子が毎年います。とても残念に思います。

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一度しかない人生、一度しかない青春、もし少しでも才能や秀でるものがあるのなら、それを全力で生きなきゃ生まれてきた甲斐がないじゃないか。この二人には才能はありません。実績もありません。あるのは意欲と意志とカルチャーショックから来た感動です。僕の尊敬する評論家で武道家の内田樹氏がどこかの本でこんなことを言っていました。「人が人生を主体的に豊かに生きるために大事なことの一つは、自分に何かが訪れた時に、それを天恵(天から自分に贈られた恵み)だと信じられるかどうかだ」言葉は違うでしょうが、このような意味のことを書いておられて、僕は深く共感しました。自分の人生、周囲の人の生き方を見ていても本当にそう思います。ある扉のキーを目の前に置かれた時、勇気をもってそのキーを手にし、扉を開けるかどうかは、知識でも実績でもなく、自分に訪れたこの機会は天が自分にくれたギフトだ、そう考えることができるかどうか。自分はそこまで…、そう言って無難な道だけを積み重ねていったところで、その先にはまた無難な道が続いていくだけです。永遠に平坦な道…。それって生きてますか?

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周りの反対を押し切って、Dream Factoryチーム北越の仲間になった二人ですが、現実はそれほど安易なものではありませんでした。1年時は試合にすらならず、技術の習得、フィジカルの成熟、メンタルの整え方、大失敗の連続でした。1年時から、この二人で組んできたのですが、お互いのちっぽけなライバル心が悪い方向にはたらいてしまい、とにかく仲が悪い。いつまでたっても我を立ててお互いを受け入れられない。2年目も上ったり下がったり、自分と向き合う日々が続きました。

大きく変化が見られてきたのは、3年になって(北越は新1年生が練習に参加する1月からは3年生です)、自分のバディが決まってからだったでしょうか。テニスノートを見ていると、その兆しが形になり、実際の思いになり、お互いへのリスペクトと信頼につながっていく様が、よく理解できて、読みながら何度も感動させられました。

3年になってからの清野のノートです。

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入江と私は今日の練習で1年生に間違った指導をしてしまった。それを伝えてもらった後、驚いたのは入江の涙だ。入江の心の中で、強い後悔が生まれていたんだろう。その後、入江は自分の練習にも入らず、ずっと付きっきりで1年生に回り込みのステップを教えていた。入江は昨日も遅くまでノートの書き方を教えていたし、今朝もどうすれば分からせてあげられるか真剣に悩んでいる。本気でバディの1年生を成長させようとしているんだなって、入江の姿を見ているとよくわかる。だから、今日のコーチングの失敗は悔しくてたまらなかったんだと思う。

さっきのミーティングを通して、今までの自分は本当に何やってたんだってくらい、自分の小ささを感じた。ああやって一人ひとりが自分の思いを話して、私は3年生の変化を強く感じた。田中が鷲尾に涙を浮かべて伝えていた姿。冨樫の言葉には一言一言に情熱があって、ミスが続いて落ち込んでいた今井には「風花は逃げないで北越を選んだんだよ! でも3年になっても弱い心でコート立ったら、長商との決勝戦で、高校を選んだ時の勇気も風花の進化を信じて一緒にやってきたチームの心も全部壊してしまうことになるんだよ! 」って熱く伝えていた。その言葉はそのまま私に言われてるようで苦しかった。

私は3年にもなって、まだ自分を信じられないの?  自分でもよく分からなかった。本当に苦しい… 思いはあるのに、どこかで引っかかっているような… 

改めて考えてみる。

自分は何で北越に来たのか?

まず、中学でやりきれなかったからだ。テニスが好きで、好きだから精一杯やりたかったけど中学ではできなかった。冬の合同練習に参加させてもらって驚いた。あれだけ全員で本気でテニスに打ち込める北越のチームに入りたくて入りたくてどうしようもなくなった。自分が好きだって言えること、それは私にとってソフトテニスだ。それをとことんやり切ってみたかった。やり切らないまま諦めたくなかった。先生方には「おまえじゃ無理だ」「続かない」と言われた。両親には反対された。でも、周りの全ての反対を押し切って、両親に頼み込んで北越に来た。そしてこうしてずっと夢だった憧れの場所でテニスができてる。それなのに、まだ疑う心が自分を支配して、真っ直ぐにラケットを振り切ることができない。こうして最悪な形で高校テニス人生の幕を下ろすのか!

3年間北越でやってきて身に付けた力は必ず全国で通用する。それは中学校で実績がなかった多くの先輩たちが証明している。その可能性を封じているのは、全て自分自身なんだ!

なぜ、私は自分を信じて戦えないのか? 自分が勝ちたいとしか考えてないからじゃないのか。

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庭野先輩は3年として、いつだって団体の夢を一番に考えていた。その思いがこのチームを全国の決勝まで導いたのではなかったか。私は今まで3年として団体にかける思いはどれだけあったか? 私が団体の選手かどうかは関係ない。何が3年だ! 結局、私は自分の個人戦のことしか考えていないじゃないか! 「この先輩たちと戦い抜きたい!」って私は1年生に思ってもらえているか。そういうチームを作っているか。そうでなければチーム一丸となって戦うことはできない。

私だって北越の3年だ。もう一度自分の姿を見直そう。周囲への声掛けはできているか? 自分に集中し過ぎてないか? 団体で日本一、そこにどれだけエネルギーを注げているか? 

3年の春季地区大会。二人にとってはラストの地区大会です。

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入江は1年生の斉藤と組み、斉藤をよくリードして、巻高校のシードペアを破り自己ベストのベスト8に入りました。マッチポイントは入江の渾身のノータッチサービスエースです。一方の清野は期待をして2年生の佐藤と組ませて勝負させたのですが、ここでも上にある通り、自分を信じ切れずに競り負けてしまいました。

地区大会は、それぞれが下級生と組むことでペアに頼らず苦境を乗り切って戦い、その上で最後の県総体、と思っていましたが、一人はやりきり、一人はやり切れなかったという結果です。

その日の入江のノートです。

今日、地区大会が終わって、県総体のペアをどうしたいか、先生から聞かれた。ベストで戦えた1年生の斉藤と組むか、1年生の時から組んで二人でIHを夢見てきた清野と組むか。

美穂(清野)はこの地区大会、また自己ベストで戦えなかったという。私は菜月(斉藤)と組んで戦いきった。正直言うと、菜月と組んで出たらさらに自己ベストを更新出来るんじゃないかと思った。

でも、私だけ自己ベストで気持ちよく戦っても意味ない。美穂とは3年間本当にいろいろあった。一度も心を一つにして戦えたことはない。でも、庭野先輩が引退してからの夢が「清野と入江をインターハイへ」だった。私はこうしてたくさんの人に支えてもらった。迷惑も一杯かけた。ここで私が私だけの幸せを考えてしまったら、たくさんの人たちに申し訳ない。そんな生き方はダメだ。だから、私は清野とチャレンジすべきなんだ。目の前の勝利が大事なんじゃない。もっともっと大切なことがある。北越でそういうことを学んできたじゃないか。

先生、私、美穂と組んで最後の戦いをさせてください。お願いします。

その思いを清野に伝えた時、清野は嬉しくて申し訳なくて悔しくて、貴い涙を流しました。

入江は自分の決意に命を与えるべく、毎日を必死で生きます。清野はどうしても、申し訳なさがあるのか、退いてしまう。県総体1週間前。練習試合の帰り、上越市での調整練習の時、清野はチームとして取り組んでいることを忘れていて、1年生に申し訳ないから今日は打たないでチームのサポートに回りたいと言います。この時期にそんなことはありえない。僕が言う前に、入江が動きます。

3年としてチームにエネルギー与えられてないから、今日は打たない?

馬鹿なことを言うな!

打たないでサポートに回る時期か!  打たないでコートで玉拾いすることが何でチームのエネルギーになんの⁈

そういう女々しいこと、もう考えんな!

私が伝えたかったのは、美穂が大事なポイントが抜けていたことは、確かに1年生に見せる姿じゃないけど、でもそうだったという事実は仕方ないんだから、潔く認めて、次にどうしていくかを明確にしてほしい、ということ。

私が帰りのバスの中で話したのも「ブラックの(周りが見えなくなる短所)私と、女々しい美穂が、どう力を合わせて最後の県総体を戦っていくか」そういう前向きなことを話したかったんだ。

私は、もう昔と違って美穂の欠点や短所を否定しない。ただ、前を向いていこうと呼びかけている時は、それを感じて、ちゃんと私の目を見てほしい。精一杯プラスに向かうように伝えているんだけど、心に響いてないのは表情見てわかった。

でも、美穂、こんな状態でも、私、諦めたくないから!

私たちは、今試されてるんだよ。こういう状況でも前を向いて、1%でも2%でもIHに近づくために、心が一つになれないとしても、お互いの良いところを合わせて協力していこうよ! 北信越決めで当たる長商のレギュラー、二人で心を一つにして戦わなきゃ100%勝てないんだよ。

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ただ、強く言うだけじゃ、私たち以前と同じだ。少し考えてみよう。美穂はたぶん、引っ張られるより引っ張っていく方がイキイキするタイプだ。1年生への指導とか見ていても、指示されるより指示していく方が良いんじゃないないかなぁ。それなら私は、上から伝えていくお姉ちゃんじゃなくて、妹をたてていくお姉ちゃんになろう。だから、あえて妹に頼って、頼んで、素直に「ありがとう」って微笑んで。そうしたら私たちうまくいくんじゃないか。

今日、いや今までも、私が美穂に上手く思いを伝えられなくて悩んでいた時、仲間はたくさん声をかけてくれた。

奈央、風花、莉穏、本当に本当にありがとう。こんなにも本気で、こんなにも心ある幸せな環境にいる。

私は、絶対チームのエネルギーとなるよう、全力で生きます!

美穂、この最高の仲間のためにも、私たち頑張るよ!

そして迎えた、最後の県総体個人戦。

練習ではもう一流選手並みのストローク力をつけた清野(実際、フォアストローク技術としては水澤の次まで成長したと言っていい)ですが、勝ち切った経験がないので、どうしても不安がぬぐい切れません。

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初戦は負けるはずはない試合ですが、清野は相手と戦わず、自分と戦っています。それを救ったのは入江でした。1、2年生の時の入江ならば、自分が一人で何とかしようとして無謀な選択を繰り返してドツボにはまるか、相手に流れが行くので焦って一緒にミスを重ねるかのいずれかだったと思います。成長していました。二人は何度もベースライン上でしゃがみ込み、心を一つにしようと精一杯努力していました。入江は心の底から清野を励まし、エネルギーを与えつづけ、自分は冷静にラリーを続け、フットワークが浮ついて地に足がついていない清野のためにキーワードを叫びつづけました。ベンチには柳先生が入ってくださっていて、柳先生のこの言葉もとても効いたと思います。

「いいんだよ、3年間かけてきたんだから、そうなるんだよ。そうなったからダメなんじゃない。そうなっている中で何ができるかなんだよ!」

本当にその通りです。思い通りにならない時、誠実で真面目な子ほど、ああまただ、自分はまたダメだと思ってしまいます。それはダメなんじゃなくて、誰よりも自分と向き合い、自分の青春をかけてきたからこそ、緊張もし重くもなるのです。でも向き合ってきた強さは、その状態でも自分は何ができるか、ベストでなくても、今のベターを見つけてシンプルにそれをやり切る。そういう中で光が見えてくることもあるでしょう。

入江と柳先生、そして保護者の皆さんの応援で、清野は少しずつ落ち着きを取り戻していきました。そして逆転勝利!

1回戦。ここにも深い青春ドラマがありました。本当に「素晴らしい戦い」だったと思います。

2回戦は、北越の美しいストローカーとしての本領発揮、清野ものびのびと戦い快勝!

ついに、優勝候補の一角、長岡商業との決戦に臨みました。二人は精一杯、北越らしく、3年間の誇りをかけて戦い抜き、敗れましたが、二人のドラマを自己ベストで締めくくりました。

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入江のノートです。

夢、叶えられなかった…

悔いがないなんてことはない。でも最後をベストで戦えたっていう清々しさがある。

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私は高校最後の試合を美穂と組んで戦えて本当に良かった。あの時、美穂を選んで本当に良かった。

正直、1試合目はどうなることかと思ったけど…  美穂も最後の長商戦は信じて打ち切れたね!

3年間、ケンカばっかりしてたね。本当にいろいろあった。でもここまで来れた。こうして最後の試合を美穂と戦って楽しかった!  ありがとう! Dsc_2970

応援してくださったたくさんの保護者の皆さん、先生方、庭野先輩、ずっと気にかけてくれたチームのみんな、本当にありがとうございました。私はここにいて、ここで戦って、本当に幸せ者です。たくさんの心、本当にうれしかったです。

さあ、いよいよ団体戦だ。「今年のチームは私たち6人のチーム。」奈央がずっと言ってくれてる言葉だ。3年の選手4人が、1年生のこと、チームのこと、私に任せたよ!ってくらいに頼れる存在になってこのチームを下支えする。それが私の団体戦だ。そしたら選手たちは思い切り相手と戦ってくれる。

よし、心を一つにして6人で宮崎IHへ!

ニュースにも話題にも賞状にも、何にも残らないけれど、こんなに素敵なDreamが今年花開いたのです。不利がささやかれながらも団体は圧勝。それは団体メンバー3年生4人だけで成し遂げたものでは決してありません。脈々と引き継がれている「北越魂」それは「泥臭く自分と向き合う強さ」です。

「自信がない」と言って自分の才能を磨こうとしない若者は、ひょっとするとこの「泥臭く自分と向き合う」ことを避けたいのかもしれません。確かに昭和的ですし、カッコよく見えないのでしょう(僕的にはメチャクチャカッコいいですが)。もっと「自由に」「スマート」にやりたいのかなあとも思います。でも、このスマートで便利で合理的な方向へすでに振れすぎている現代文明という水質の中で、それでも我々は「命」として他の「命」とかかわっていかねばならない。「命」と「命」が深く分かり合い結びつきあうためには、言葉が必要です。ただ、言葉が上っ面を滑らかにすべっていくのではなく(それでは信頼は成立しない)、他者の心に入っていくには、そこに深い経験が伴わなくてはならないでしょう。深い経験とは自らと向き合うこと以外に獲得できるものではない。いくら辞書の言葉をたくさん覚えても、いくら外国語の語彙や様々な知識を頭に入れても、人の心を動かすことはできません。他者の中に勇気と希望を生み出すことはできません。大切なことを他者に伝えたいのなら、自分と他者との関係の中で、自分が伝えたい言葉や考えと格闘することです。

小学校からすべての教室にエアコンが入り、高い気温の下で運動をさせれば親から苦情が寄せられ、朝は皇族のように学校の玄関前まで送迎され、教師は思いがどうであれ強い言葉で生徒を刺激してはならず、部活動の時間も「当局」の指導によりどんどん制限される。子供たちは小学校からスマホを持ち、バーチャル空間こそが本音であってリアルは「つくろう」世界であるかのように振る舞う。現代の子供たちが置かれる環境は、どんどん樹脂のように滑らかになり、凹凸は拒絶され、リアルなざらつき、泥臭さは敬遠されてゆくのかもしれません。しかし、dream factory の卒業生はとても精神的に自由で、ほぼ例外なくリーダーを任され、社会に開かれて生きています。人生の「観」を作る大事な思春期にしっかりと自分と向き合うことは、「生きていく根源的な自由」を手にすることなのだと信じて疑いません。

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私が教室やコートで出会う若い「命」たちに、全身全霊で「命の何たるか」を伝えるのも、あと数年となりました。私は最後まで「泥臭いFactory」でありたいと思います。時代の流れに反するそのエネルギーの源は、実際の生徒たちの変容です。今回紹介した清野美穂は言葉は悪いですが、入ってきたときは「ただのクソガキ」でした。憧れだけは強いけれど、何もわかっていない幼稚な子どもだったと思います。それがこのFactoryで育ち、泥臭く自分と向き合い大きく成長していった。彼女は学校からも推薦され看護の道を歩むことになりました。

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看護の実際の現場は、まさに文字通り「命」に係わる誠実な言葉と行動が求められます。自分の弱さと格闘し、自分の闇も光も経験した彼女は、きっと「命」に届く心を持つ素晴らしい看護師さんになるでしょう。入江ゆいほは北越で過ごした3年間で、やはり自分はスポーツの世界で誰かの役に立ちたいと思うようになりスポーツトレーナーの道を歩むことにしました。

すみません。時間があるからと、かなり筆が走りすぎました。

最後に「恩送り」に誠実に取り組んでいる清野のノートを紹介して今回のブログを閉じたいと思います。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

今日はフリーだったので、夕方中学校へ行って卒業時に担任だった先生と話をしてきた。その先生は、他が全員反対の中で唯一私が北越でテニスをすることを応援してくださった、本当に私の信頼する先生。最近、自分の気持ちの中に、自分の言葉が後輩の心に届かないという「もやもや」があって、それを相談しに行った。答えはシンプルだった。「相手に変化がないのは、自分自身に問題がある」ということ。「相手のこと本当に理解しているか?」と聞かれた。私は後輩の問題は知っている。けれど、どう思っているのかというところまでわかってあげられていない。

一番は信頼関係。そして、相手を変えたいなら、まず自分自身が変わること。

先生は、私の何百倍何千倍ものたくさんの様々な経験をしてきている。だから、あらゆる方法や道を提案できる。逆に言えば、私は先生の何千分の一の経験しかない。私が希望する進路は人に希望と元気を与える仕事だ。私自身、もっともっと知識をつけて、いろんな見方ができるようになりたい。だから、今、本を読みたいと強く思う。広い視野を身につけたい。

そして、もう一つ。たとえ変化がなくてもその人がダメだと思ってはいけない。そうすると、相手の悪いところしか見えなくなってくる。良いところを見失ってしまう。その結果、相手が変わろうとするきっかけの瞬間を見過ごし、相手も変わろうとする気持ちが薄れるということ。このことは逆に、いかに信頼関係が大切かということだ。津野先生も庭野先輩も担任の先生も、信じているから心に言葉がしみ通ってくる。そのくらいの揺るぎない信頼関係を築くためには、まだまだ自分が変わっていかないとだ。

※ 練習見学、進路相談、受け付けています。

  北越高校 025-245-5681

  メール  seiji.tsuno@gmail.com

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