« HOKUETSU Spirits ~2016 あと数cm~ | メイン | HOKUETSU Spirits ~2016 挑戦~ »

2016年6月13日 (月)

HOKUETSU Spirits ~2016 高木康士朗物語~

 北越高校ソフトテニス部には高木康士朗という男がいます。東新潟中学校出身で、中学時代は「地区2回戦負け」レベルの選手です。スポーツコースではなく普通コースの生徒です。入学当初は、体は小さく線も細い。唯一持っていたのは「きれいなフォーム」だけでした。

 気持ちが弱く、大会になると戦えない。そんな時期を長く過ごしてきました。ですが、勝ちたいという思いは人一倍強かったのかもしれません。自ら率先してトレーニングに通い、徹底して体作りをしました。

 2年生時の春地区は3回戦敗退。秋地区も3回戦敗退。県の新人戦も3回戦敗退。練習試合などでは少しずつ形になってはきたものの、大会では全く結果は出ませんでした。しかし高木は諦めず、トレーニングを続けました。

 4月に行われたハイジャパ予選。並々ならぬ気合を感じました。私から見ても、十分に戦えるレベルにあると感じていました。しかし、気持ちが空回りしてしまったのかもしれません。ペアの近藤も力が入りすぎ、足が動かない。結局初戦敗退。あの悔しそうな表情は今でも忘れません。

 5月はじめの新潟地区大会。ここで結果を出さないと県総体への切符すらつかめません。試合の入りが悪く、初戦からファイナルゲームの接戦になります。なんとか持ちこたえますが、次の試合も、その次の試合も敗北がちらつく試合内容でした。そしてベスト8を賭けた試合では巻高校の増田・小林ペアに敗戦。最後の地区大会をベスト16で終えました。
 なんとか県総体への出場権はつかみましたが、これでは県総体は戦えないと感じました。原因を徹底的に研究し、練習しました。いくつも試合をして、また振り返って、研究して、また練習しました。そして2人の戦いに少しずつではありますが、自信が生まれてきました。


 ついに県総体。高木・近藤ペアは快進撃を続けました。ベスト16賭けの長岡商業の渡辺・服部ペアとの対戦では、中盤で風を掴めずに苦戦しましたが、4-2で勝利。次のベスト8賭けでは増田・小林ペアに勝って波に乗っている県央工業との対戦でした。序盤は順調に戦っていましたが、アクシデントが起こりました。近藤のふくらはぎが攣ってしまったのです。タイムをとりましたが、十分に回復したとは言えませんでした。しかし2人の心は折れません。近藤は自分に出来ることに専念し、高木に託します。高木は近藤の分までコートを駆け回り、全身全霊でボールを打ち込み、相手を圧倒しました。
 準々決勝は村上高校の網代・遠山ペア。県内大会では常に結果を残しているペアです。運動能力が高く、技術も高いものを持っています。それでも高木・近藤ペアは戦い続けました。残念ながらファイナルゲームの末、敗れてしまいましたが、本当によく頑張りました。

6月3日
 今日はとにかく1試合1試合、相手のことを考えて、1プレー1プレーでペアと話し合って試合をするようにしていた。3,4回戦ではカウント3-0までいってから攻め切れなかったり、風下なのにきついボールでロブを使えなかったところがあって、その後ゲームをとられてしまった。攻めばかり考えすぎたところがあったのだと思う。攻めもするが守るときはしっかりと守れるように考えて打つようにする。
 5回戦から守(近藤)の足が動かなくなったため、ペア間で話し合ってプレースタイルを変えてプレーした。5回戦はフォロー出来るところは自分が打つようにしたが、6回戦ではフォローなどのミスが多くなって攻めてポイントがとれたところもあったが最後はミスの数で負けてしまった。とくにセンターのボールでのミスが多かった。
 明日はリーグがまだあるので、ひとまず自分にできることをやって勝てるようにしたい。団体ではチームが団結できるような、みんなが応援したいと思うような試合をする。


 2日目の決定リーグでは長岡商業の吉村・青柳ペアにファイナルデュースの末に勝利すると、石黒・中野ペアとの同校対決を制し、奇跡のインターハイ出場。2年前、「きれいなフォーム」を持っていただけの、ただの高校生が、夢の舞台への切符を手にしたのです。

6月4日
 今日はリーグ戦があってから団体の2回戦でした。リーグでは同校が3ペアいるなかでの試合でしたが、そこは考えずにとにかく勝つことだけを考えてプレーするようにした。
 リーグの吉村・青柳との試合ではゲームカウント1-3でマッチポイントをとられたときに応援の声がとても伝わってきて負けたくない気持ちが強くなった。そのおかげでなんとか勝つことができた。
 団体でもみんなの声が自分にものすごく伝わってきて、とても助かった。声があるとなぜか負ける気があまりしなくなって自分のプレーがだんだん出せてくる。
 明日は3日目で、石黒のためにも絶対に勝って、後悔のない最終日にしたい。


 そして団体戦。個人戦でインターハイを逃した石黒と一番仲が良かったのは、この高木です。自らの手で石黒をインターハイに連れて行くんだという強い思いを感じました。新潟産大附と長岡商業のエースペアをそれぞれ1,0で下すという快挙で北越を決勝にまで導きました。最後の県総体でまさに北越の『柱』となった男でした。
 
6月5日
 今日は団体戦3日目でした。石黒のために優勝を目指していたが決勝では自分の力をすべてだせなくて負けてしまった。
 4回戦の徳原・松嵜(新潟産大附)のときは相手がガンガン打ってくるタイプだったので最初のほうはクロスを主に使ってプレーして、後半はとにかく前衛の動きを見て攻めれるところが攻めるようにした。昨日と同じように自分たちのプレーをすることができた。
 次の試合も自分たちからとにかく攻めてペースを相手に握らせないようにした。風があったので、そこを考えてサーブやロブなどを使い分けるようにした。
 決勝では、みんながつなげてくれて、またとにかく攻めたら、全てといっていいほど前衛に止められてしまい、相手にペースを握られて負けてしまった。逆クロスや逆ストレートでのミスが多すぎた。石黒をインハイへ連れて行けなかった。とにかく悔しい。団結もしていたのに負けてしまったということは、自分の実力がまだ足りないということだ。逆コースが弱すぎる。石黒は連れていけなかったが、しっかりと切り替えてインハイでいいプレーが出来るように、また練習する。


「地区2回戦負け」の男がつかみとったインターハイ。我々にとって夢と希望を与えてくれました。やれば出来る。中学時代の実績なんて関係ない。高木の歩んだこの2年間が、それを証明しています。団体戦での敗戦が、さらに高木を成長させます。
 
          高木