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2015年6月

2015年6月15日 (月)

DREAM FACTORY 2015 春(県総体 2)

県総体 団体4連覇達成!

県総体01

Episode 2  選手として=人間としての成長

今回の団体4連覇達成は、無敵の長岡商業のエースに真正面から戦いを挑んで勝ちきった、和田栞璃・田辺なつきペアの金星が全てだったと言っても過言ではないと思います。
地区大会ベスト16、ぎりぎりで県総体出場を果たした1,2年生ペアが、なぜ県総体の団体決勝、つまりは県内大会で一番大事な試合で、この3日間負けなしの県内最強ペアに勝ちきれたのか。
もちろん、3年吉藤を中心としてチームが一つになったことは大きな力として、彼女たちのプラスアルファのエネルギーになったことでしょう。ですが、それ以上に、2年生 和田栞璃の人間的な成長がこの大金星につながったと断言していいと思っています。
あの試合、1年田辺のサービスが安定していれば、④-0もありえたほど、和田の逃げないで向かっていく強さは際立っていました。ゲームカウント2-0のカウント2-0から、田辺の2連続ダブルフォルト。それで相手は息を吹き返して2-1。それでも安定したレシーブから次のレシーブゲームをキープして3-1。流れはこちらにあり、和田のテンポの速い配球で圧しながらも田辺のサーブが入らず、3-2。今までの和田なら、このストレス状況に耐えられずに無謀な戦術を選択して自ら崩れていくか、一つのミスから自分を見失っていくか、サーブレシーブが乱れ始めるか、そのいずれかで敗退していったと思います。でも今回は、折れなかった。
第6ゲームは手に汗握る攻防でした。⑪-9というほぼ3ゲーム分を費やしたせめぎ合いで、敵のゲームポイントは5回、それを4回は必死でしのぐ中、こちらのマッチポイントは3回ありました。中でも3回目のマッチポイントは決定的で、センターからの相手のシュートを田辺がポーチ、ドンピシャのタイミングでしたが、焦ったのか田辺はチップしてしまい、会場全体がため息と歓声に包まれました。その直後、敵がここぞとばかりにギアを入れて長い第6ゲームを奪取。試合はファイナルゲームへと入りました。
最後の1分間のベンチワーク、和田は極度の気持ちの高ぶりと激しい闘志がないまぜになっていて、涙があふれていました。もう一度、自信を持って堂々と逃げずに打ち合うことを再確認し、背中をたたいて送り出しました。田辺には吉藤がエネルギーを与えてくれています。ただし、押し気味に試合を進めながら、決定的チャンスを逃しており、ギアを入れてファイナルへ持ち込んだ敵方に流れはあります。案の定、ファイナル序盤は敵の攻撃が冴え、カウント3-1。しかもその3ポイント目は、相手のきれいなクロスポーチボレーが突き刺さり、ゲームの勢いは決定的に長商へと移ったかに見えました。
しかし、ここからゲームセットまで6本連続で和田・田辺はポイントを取りきるのです。
今回の勝利、それは、何よりも、数多く与えられたストレスの強くかかる状況、正面からの戦いをかわしたくなるストレス状況下において、和田が決して逃げなかったこと。そして経験の浅い田辺が、ダブルフォルトを連発しながらも決して小さく縮こまることなく、和田と共に敵にひるまず挑み続けたこと。それに尽きます。

県総体10 県総体27 県総体09

チェコ出身の偉大なテニスコーチ、リチャード・ショーンボーンは、アスリートの自信について、アスリートの健全な自信は自己修養がその土台となると述べ、その自己修養として「つらい訓練の課題をこなすこと、ストレス状況を克服すること、戦術を守ること、スポーツに適した栄養をとること、毎日の日課を守ること、時間を守ること、自分自身に正直になること」を具体的な例として挙げています。
そして、この健全な自信が形成されていないと、「危険に対して臆病になったり、不安定な動きをしたり、試合中のストレス状況にも立ち向かえない」と強調しています。

和田は、これまでいつも、自分の技術の不安定さや敵前衛の動きやペアのミスや試合状況の変化等のストレスに対して、「臆病になったり、不安定な動きをしたり」、戦術を忘れたりして、自滅していました。
3週間前の地区大会で、ベスト16で敗退した試合後も、マッチポイントで自信を持って打ちきれなかった自分を棚に上げて、未熟な1年生ペアのミスの多さに言及したので、さすがに叱りました。

その考え方、その姿勢こそがおまえが勝ちきれない根本なのだ。
全国大会の決勝を戦ってもおかしくないくらいのストローク力とフィジカルの強さをおまえは持っている。
けれど、上手い選手と強い選手は違う。強い選手が必ず持っている、勝負所でその勝負を背負う、ある種の責任感が今のおまえには欠けている。
重圧のかかる場面において、敵のミスを期待したり、戦術を無視して手早く1点を欲しがったり、真正面からぶつかりあうのを避けたり… 
もしくは自分自身が耐えられなくてミスを連発したり…
そういう弱さは、まず、自分がそのような弱さを抱えていることを自覚して、それを乗り越えようと強く思わない限り、決して克服できないのだよ。
勇気をもって、その弱さと向き合いなさい。

和田自身の人生においても、ここは大事なところなので、魂を込めて伝えたつもりです。
ただ、正直、今年は間に合わないかもしれないなとも思いました。
もう1年、しっかりと人間を一緒につくって、来年が勝負かな、と。

しかし、地区大会終了後、和田は新たな取り組みを始めました。
和田は寮生です。北越高校はふかふかの気持ちいい人工芝をグランド全面に張ってあります。朝、誰もいない緑のグラウンドは、朝日を浴びてとても美しく輝きます。
「自分づくりノート」、テニスノートとは別のノートをつくり、朝走りながら自分を見つめた内容を記録し始めたのです。

5月11日
今日から、朝走ることにした。
私は自分に甘い。
自分の意志で、確かな人間性を創るために、毎日やる。
今日は走りながら、去年の夏を思い出していた。IH直前合宿でストロークが壊れた。そして千葉IHでは、皇子先輩と選手交代した。結局、千葉IHに出ていないのは同学年で私だけ。
大事な局面が近づくと崩れていく自分。今までずっとそうだった。
私は自分を変えたい。
必ず続ける。今まで自分に負け続けていることを忘れない。
弱い自分を乗り越えるために。
県総体まであと18日!


5月12日
今日は、北信越選抜大会にインフルエンザで出ることすらできなかった自分を振り返った。
あの日の朝のことはよく覚えている。これから戦いに出発だ、という日の朝に発熱した。
自分は頑張るべきところで、いつも踏ん張れない。それがここでも現れたということか。
自分の乗り越えるべき課題や弱さと毎日向き合ってそれを乗り越えていく、そんな毎日を過ごしていたら変わっていたのだろうか…。
結局、チームは県選抜では勝った村上に決定戦で敗れ、全国選抜を逃した。
だが、そのことを月日が経っても忘れずにリベンジを誓って過ごす、そういう責任が、あの日から今までの自分にはなかった。
恵理先輩(卒業生 田辺恵理)のように、1年生の新潟IHの時の負けをずっと忘れずに3年間取り組んできた、という強い思いがなかった。
思いが長続きしない。それが自分だ。
もうこんな失敗はしたくない。それをしないための日々だ。
全力で毎日を生きる。
県総体まであと17日!

5月14日
今日は、地区大会の個人戦の負けについて考えながら走った。
この負けは、今ならわかる。完全に自分の人間性の負けだ。私はまた自分に負けた。
自分の方がストローク力はあった。でも大事なところで振り切れずに負けた。
北越らしさ、和田栞璃らしさが発揮できなかった。
苦しみながらも迎えたゲームカウント3-2のカウント3-1で、私の連続ミス。
でも私は、試合後の反省でなつき(ペアの1年 田辺なつき)のミスの多さをまず先生に言ってしまった。
先生に、それが強くならない根本の原因なんだって強く伝えられて、やっとわかった。
私は、逃げているんだ。
まだ1年生だ、ミスが多いのは当たり前だ。それなのに、まずそのことを口に出す自分。
逃げる自分、自分の弱さと向き合わない自分…。
こうやって、走りながら、今度こそ、強い自分を作りたい。
地区大会の負け、この負けは忘れてはいけない。
県総体まで、あと15日!

5月15日
なつきと組んで、しばらく経つ。
最初、気を遣いすぎて、ちゃんと伝えることができず、どうしても優しくなっていた。
でも、今は違う。だんだん、なつきに本気になれるようになった。ペアとして本気、自分も本気。
だから、なつきのことなのに、何かができないと、何でだ?って、本気で悩む。そして、できると嬉しくて仕方ない。
やるべきことをやらないと、どうして行動しないのかって、悔しくなる。
最近はペアで話すことも多くなってきた。でも、なつきはまだ完全に私に心を開いているわけじゃない。
時々、伝えすぎて、なつき大丈夫かなって、心配にもなる。
今は、ほぼ一方的に私からなつきに言っているが、なつきからも言ってくれると嬉しいな。
二人でちゃんと話す時間をつくるのもいいなって思う。
なつきとの関係も本気でいたい。
ここからも逃げない!
県総体まで、あと14日!


こうして迎えたH27県総体。
個人戦では、圧倒的に敵に打ち勝ちながら、大事なところで1年生ペアの田辺のミスが続き、ベスト16で終わってしまいます。
どうしても今年こそはインターハイへ行きたいと強く願っていた和田は、唇をかみしめて大粒の悔し涙を流していました。
けれど、もう1年生のミスを口にすることはありませんでした。
気持ちを切り替えて、仲間や後輩に精一杯の声援を送り続けていました。
僕は、団体戦、和田・田辺を使おうと、ここで決心します。

県総体最終日の朝の和田の「自分づくりノート」から。
5月31日
朝、宿舎なので走ることはないけど、いつも通りに朝早く目が覚めてしまう。癖になっているんだな。
そして、朝、このノートを書くと落ち着く。
昨日のミーティングで、チームの心は一つになった。
皇子先輩を今日で引退させるわけにはいかない。
私は自信を持って戦う。
巻! 長商! 負けない。
苦しい場面は絶対にある。その時は、毎朝自分と向き合ってきたこの時間を思い出せ!
必ず優勝する!
行ってきます。


県総体25 県総体19 県総体22

もう一点。和田の成長は、未熟ですが才能豊かな1年生田辺なつきとペアを組んだことによってもたらされたようなものです。
人は、他者を成長させることによって、一番確かに成長を遂げると思います。

その1年田辺なつきのテニスノートから。

「誰かのために」プレーすることは、とても大きなエネルギーを生むんだって思った。
決勝戦、長岡商業。個人戦の結果から見ると圧倒的に長商有利。でも、絶対このチームでIH行きたいって強く思った。
入場前の整列で、私たちの相手は個人戦優勝ペアだとわかった。「絶対気持ちで向かっていく。大丈夫!」って自分に言い聞かせた。
一つひとつのポイントでのベンチやサポーターの応援、ムード、すごかった。すごくエネルギーになった。
でも、やっぱり大事なところでダブルフォルトを繰り返す自分…。
チェンジサイズでベンチに戻った時、皇子先輩がすぐに自分の所に来てくれた。
「お前ならできるぞ、自信持て!」って力強く言ってくれた。
よっしゃ、やってやる!
皇子先輩のために絶対に勝ってやる!
言葉には出さなかったけれど、強く思った。
ファイナルゲーム。
1-3で長商がリード。そして、自分のサーブ。
でも、なんだか負ける気がしなかった。
ギリギリの場面はたくさんあった。
その場面で思ったこと。
コートに立って見えるみんなの顔…
コートに立って聞こえるみんなの応援…
「チーム吉藤」やるしかない!
やっと迎えたファイナル6-3のマッチポイント。
ふとベンチの後ろのスタンドが目に入った。
他の高校の人たちが応援してくれていた。
手を握っていた…
そして、ポジションに立った時、ちょうど皇子先輩と目が合った。
ビッグスマイルを送ってくれた。
「チーム吉藤!」ここで終わらせるもんか…
心の底からそう思った。
(1年 田辺なつき)


県総体24 県総体21 県総体20

2015年6月11日 (木)

DREAM FACTORY 2015 春(県総体 1)

県総体 団体4連覇達成!
3年吉藤を核に炎になった北越魂

県総体02

2日目の個人戦が終了した時点で、今年の県総体の本命は長岡商業だということがはっきりしました。長岡商業の3年生エースは無敵で個人優勝。どのペアもファイナルにもちこむことさえできませんでした。後衛高井さんの重くて速いストロークと運動センス抜群の前衛長谷川さんのペアの充実ぶりは今大会秀抜でした。また長岡商業の2番手は新入生のダブル後衛ですが、二人とも安定したストローク力と運動量豊富なコートカバーリング技術を持ち、準決勝の同士討ちで高井・長谷川組に負けるまで、やはりファイナルゲームまでもつれさせずに勝ち上がりました。一方で、北越は2年生エース松浦・大原が準々決勝でその長岡商業の1年生ペアに自滅負け。ダブルフォルトからリズムを崩し、最後は自己コントロールも失って自ら戦いを下りました。地区個人準優勝の3年吉藤皇子と2年岡崎のペアも、去年IHまで駆け上がった勢いはもはやなく、戦いの中で自己ベストも出せずに敗退しました。IH決定リーグ(通称 地獄リーグ)を何とか勝ちきって、松浦・大原ペアが5位、1年の鈴木・保科ペアが6位で、インターハイ出場にすべりこむのがやっとという状況。勢いは長岡商業にあり、その破竹の勢いに楔を打ち、どう立ち向かっていくかが、最終日、団体戦の鍵となりました。

平成27年度 新潟県総合体育大会 (5月29日~31日 新潟市庭球場)
団体戦

準々決勝 ②-0 新発田
準決勝  ②-1 巻
決 勝   ②-0 長岡商業
 和田・田辺 ④-3 高井・長谷川
 鈴木・保科 ④-3 北川・山崎
 吉藤・松浦      吉田・若月



厳しい試合でした。2試合で2時間半かかったそうです。久しぶりに、激戦を制したという決勝でした。
チーム北越のドラマは今年も健在でした。
優勝が決まった瞬間、会場にいた皆さんはどこをご覧になりましたか? 
優勝を決めた1年生ペアの喜ぶ姿でしょうか。最高潮に盛り上がるベンチでしょうか。それともベストを尽くして敗れた敵軍でしょうか。
あの時、すべてのエネルギーを使い切ったように、一人コートに崩れ落ちた人がいました。
その人こそ、今回のドラマの主役です。

県総体04 県総体05 県総体08

Episode 1 吉藤を核とした3年生と1年生の深い絆

県総体の約3週間前、新潟地区大会が行われました。
結果は次の通りです。

<団体戦>1位
<個人戦>
 1位 松浦明彩加・大原未来
 2位 吉藤皇子・岡崎楓
 ベスト8 鈴木愛香・保科葵
 ベスト16 和田栞璃・田辺なつき、渡部那菜・鷲尾玲稀

1年生鈴木は全中5位の実績の持ち主です。全国トップの高校からの誘いを断って地元新潟で頑張ろうと北越に来てくれた選手です。これだけの実績を持っていると、どうしても自分で「勝たねば」の呪縛をかけてしまう。日本一になるのは3年生の時でいい、と言っても、「負けられない」という思いがプレーを固くしてしまいます。地区大会の個人戦は、ディフェンシブに高くボールをつないでくる選手を攻めあぐみ、敗れてしまいました。
こんなに泣くんだ、というほど自分の不甲斐なさに悔しくて泣いた日の夜のことでした。

地区大会個人戦、結果ベスト8。最後の2試合は教えられた打ち方で打つことに自信がなくて、全部手打ち、上半身主体の前の打ち方に戻っていた。それには試合中から気づいていた。が、やっぱり自信がなくて手打ちになった。だからボールが短かった。それからは焦りと不安で逆に自分を追いつめてしまった。高校では、あの手打ちでは通用しないと言葉で伝えられていたけど、今日は実際に痛感した。これからは、今度こそ骨盤と下半身をしっかり使った打ち方で打てるよう自信をつけるまで練り上げようと心の底から実感した。
先生も言っていたが、タクティクス(戦略・戦術)の勉強は本当に必要だと思った。葵と研究・追究しよう。こんなに悔しい思いをしたのは初めてかもしれない。
夜、皇子先輩(3年 吉藤皇子)からメールがきた。
「明日の団体戦は、自分の今できることをやろう!」
「自己ベストで戦うことだ。迷うな!」
「困ったらベンチ見ろよ! みんなついてるから」
涙が出た。今は完璧じゃなくていいんだ。できることをやればいいんだなって、気持ちが軽くなった。
皇子先輩は昨日だって、校内戦で自分が吉藤・岡崎に負けて、課題練習をしていた時、もっとこうしたらいいよ、これはこうしちゃダメだよ、って何回も教えてくれた。次の日、個人戦で対戦するかもしれないのに、3年だから負けられないはずなのに…。
皇子先輩は本当に尊敬する。いつも仲間のことを想って、自分を犠牲にしてまでサポートしている。いつもすごいなって思う。自分も今は自分のことでいっぱいいっぱいだけど、他の人のために何かするってこと、増やせるようにしていきたい。
北越は「誰かのために」っていつも思ってやっている。今日の県総体出場決定戦での琴音(1年 吉藤琴音)と佳矢乃(1年 猪俣佳矢乃)の試合は感動したな。負けた友恵先輩(3年 斉藤友恵)を県総体に出してあげたいって思いで戦っていた。(勝利すれば自力で県総体出場になり、学校枠を斉藤にプレゼントできる)そして勝利。琴音・佳矢乃、ありがとう。
振り返って、今日、私は、誰かにエネルギーを与えられたか、勇気を与えられたか、勇気を持ったプレーをしたか? まだまだだ。
北越高校に入学して、初めての公式戦。このチームは、チームの誰かがナイスプレーをした時には、みんなが自分のことのように一緒になって喜ぶ。試合をしていて、一人で戦っているんじゃないんだって思える。このチームっていいなって思う。私は中学校の時の実績から、変なプライドがあって、勝たなくちゃとしか思っていなかった。地区大会で負けるくらいなら北越に行った意味ないって思う人もいるかもしれない。だけど、私はこの地区大会を通して、北越に来て本当に良かったと思う。いろいろちゃんとわかってくれて一緒に本気で日本一を目指してくれる先生、成長を一緒に喜んでくれて、逆に苦しい時には声をかけてくれる先輩やチームの仲間。自分って幸せだなって思う。だからこそ、このチームで奈良IH行って、目標を達成したい。来年、再来年じゃない。このチームは今年しかないんだから。(1年 鈴木愛香)


鈴木と吉藤では、素質は天と地ほどの差があります。でも吉藤は努力の人です。努力で積み上げてきたことばかりだからこそ、自信を持って「地」から「天」にも伝えられる。躊躇はありません。ズバッと言います。鈴木は過去に、指導者以外から、これほどズバッと「そうしちゃダメだよ、こうすべきだよ」と言われたことはないかもしれません。これがチーム北越の姿です。初心者であっても、下級生であっても、レギュラーにも誤りは誤りだと普通に伝える。そのことが鈴木は嬉しいのかもしれません。吉藤皇子は大地の人です。大地に根差した言葉は、魂があります。それが鈴木に力を与えます。
去年の千葉インターハイ団体戦で、吉藤は、田辺・岡村から、大事なバトンを渡されました。
「皇子、チームを任せたよ!」
日本一になった田辺・岡村から、あの日チームを引き継いだのは吉藤でした。
しかし、新チームの2年生(現3年生)はまとまりを欠きます。それぞれ自分のことばかりでチームは年が変わっても「心を一つ」にできません。そんな中での北信越選抜大会、このチームは全国選抜代表決定戦で敗退してしまいます。
それからの日々、吉藤は文字通り、身を粉にして何とかチームにハートを作ろうと孤軍奮闘しつづけました。
そして、春になり、新入生が加わり、ようやく3年生がまとまってきます。
県総体11 県総体12 県総体17
ただ、吉藤の努力を、感覚として一番確かに受け取ったのは、新入生の鈴木愛香だと思います。

県総体、2日目の夜、宿舎で、吉藤は入部してから今に至るまでの思いをチームに伝えます。
その日の鈴木のノートです。

皇子先輩の団体にかける想い…。それはどの高校の3年生よりも強くて大きい。それは、今まで一緒にいてよくわかる。あの誠実さ、部長としての責任とチームへの指摘、後輩の指導、いつもチームの中心となってチームをまとめてきてくれた。その皇子先輩は今年がラストの年だ。皇子先輩と一緒に戦えるのは今年だけ。何が何でも一緒に奈良IHに出て戦いたい。絶対に奈良IHの舞台に皇子先輩を立たせる。皇子先輩だけじゃない。いつもチームのことを考えて支えてくれている玲稀先輩、那菜先輩、友恵先輩。今日だって、3年生の本気の応援が心に伝わってきた。一緒に戦ってくれていた。3年生の4人とまだまだ一緒にテニスがしたい。まだいろいろ教わりたい。一緒に戦いたい。絶対に明日で終わらせない。団体戦に強い北越だ。会場にいる人たちにチーム北越の強さ見せつけよう。皇子先輩、3年生のために、絶対に優勝して、奈良IHにつなげます。おやすみなさい。(1年 鈴木愛香)


県総体06 県総体14 県総体07

団体優勝の日の保科のノートから。
私は苦しい場面で玲稀先輩(3年 鷲尾玲稀)の「みんなついてるからね!」って言葉に何度も救われた。そして、この言葉が私に勇気をくれ、私を強くしてくれた。個人戦も団体戦もこの言葉に助けられた。みんなで戦っている。自分だけで戦っているわけじゃない、チーム北越なんだ、ってすごく感じた。
喜ぶのも一緒、悔しいのも一緒、本当に大きな力… 個人戦でもIHに行けるのは、このチームのおかげだと思う。(1年 保科葵)


(つづく Episode 2 へ)

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