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2022年1月

2022年1月29日 (土)

Dream Factory 2022 厳冬

日々新面目あるべし

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コロナ第6波の感染拡大が止まりません。

皆さんの地域ではどうですか。

新潟県はまん延防止等特別措置が適用され、学校行事も中止や延期を余儀なくされています。部活動も2月13日まで平日の活動が90分程度に限定され、土日祝日の部活動は禁止となりました。

活動は制限されましたが、闇雲に教育活動をロックダウンした過去の愚を繰り返すことなく、90分とはいえ感染防止に留意しながら日々の活動を認めた県の英断を支持します。

約2週間の短縮活動を経験し、一昨年の教育ロックダウンの暗黒期と比べてみると、毎日の継続というものがいかに大切なのかがよくわかりました。

「競技力向上」だとか「勝負」だとか「夢」だとか、そういうカラー付け以前に、部活動は人間教育なのだと改めて気づかされます。技術であれ戦術であれ人間的な成熟であれ、成長期の子供たちは真剣になればなるほど、自分の未熟さに悔しがり、小さなゲインに喜び、仲間の変化に影響を受けて育っていくものです。SCHOOLという語の語源(集団、集まり)に遡るまでもなく、人は人との関係性の中でしか成長できないのですね。

考えてみれば、春先に蒔いた種が芽を出し、ぐんぐん成長する初夏に突然真っ黒な箱を被せられてしまえば、太陽光を浴びることができず大事な時期の成長が止まる。取り返しのつかない「失われた数か月」になってしまう。教育ロックダウンとはまさにそういうことなのだと思いました。大人のリモートワークとは話がまるで違います。

前回のDream Factory 2022冬でもお伝えした通り、チーム北越は県予選で敗退し、今ひたすら地中へ深く確かな根を張ろうとしています。

リーダーの本間と入澤が先頭に立ってチームをけん引する姿が日々力強くなってきました。

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3年生がコートに来てくださるのが最後の日となった。

まずは、本当にありがとうございました。

3年生が去年の3月、全国選抜で敗退してから、最後の夏に向けて見せて下さった本気と強い意志を鮮明に思い出します。

本気で外シードの和歌山信愛を倒しにいった石川の夏。でも、かなわなかった。そして引退してからは、「春からじゃ間に合わないよ」って何度も何度も伝えてくださった。

それなのに、幼く未熟な私たちはそれを本気で受け止めることができていない。

「負けた」という事実だけ悔しがってしまい、自分の何が足りないのかに本気で向き合おうとしない。もしくは分かったといいながら、本気で現実を変えようとしない。まだまだ暗中模索です。

けど、私は今日、やっと少しだけ、光が見えた気がします。

その光が何かって言われたら、言葉にはできないけれど…

「毎日、悔いを残すな。でも残ってしまう悔いとしっかり向き合え。」

私が訴えたこと、みんなわかってくれたように思う。

悔いを残さずやってほしいけど、結果的に毎日毎日、悔いは残る。

けど、その悔いを「悔しさ」としてとらえられなかった、もしくは、悔しさを感じてもその場だけで終わってしまう。そんなことばかりしていた。

だから、上手くなりたい、強くなりたい、と言っても結果が伴わない。

今日は、みんなミスした時に悔しそうな表情や、「またこれだ!」って自分から叫ぶ姿があった。そうやって、地道に自分という人間に向き合っていくしかないんだ。

県総体まで、約4ヶ月。

本当にあっという間に春を迎え夏になる。

この冬、私は、どれだけ私の弱さとチームに向き合ってきたかが試されている。

先日届いたマガジンに日本代表に選ばれた選手の名前が載っていた。

U-17女子を見ると、中学校の時も選ばれていたようなセンスのある子ばっかりだ。

羨ましいという感情よりも、私はむしろ、早くこういう相手と思い切り勝負したい。

ジュニア時代からのセンスと実績 vs ひたむきに努力してきた不器用者

この夏、思い切り戦いたい!

おばあちゃんが、会津八一の言葉を私に贈ってくれた。

「日々新面目あるべし」(常に新しい自分を求め続ける)

努力で培ってきた私をインターハイの舞台で必ず表現したい!

去年のような「勝てた試合だったね…」なんて言わないために…。

「悔いが残らないように(=強い悔いを残しながら)、日々を生きる!」

   (部長 本間友里那)

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友里那が提案してくれたことをみんなで取り組んだ初日。

いつも本気でやっているつもりだったけど、1本も悔いはないかと言われれば、そんなことは絶対になく、何本も悔いは残る。本気さってことでも、まだ残った状態で終わった気がする。つまり、私はいつも自分で自分に限界を作っていたんだなって感じた。

だから、いつもなら何気なくやり過ごす1本も、本気になれば新たな課題になる。そこに今日気づけたなって思う。

たとえば、ボレー&ボレー、私たちは上達していると思っていた。でも、今日久しぶりに外でやったら悲惨すぎた。高いレベルを求めれば、インドアと違って摩擦が使えないから、もっとフットワークを磨く必要がある。

そういう気づきをみんなはどれくらい持てただろうか。

もう一度、今日で最後になった3年生のメッセージを思い出して!

「春からじゃ間に合わない。」

久しぶりに外コートから部室の窓の県総体までのカウンターを見た。

3年生の引退から1年あると思っていたのが、もうこんなにカウントダウンが進んでいる。

もうすぐ2月だ。

チームリーダーとして、私自身も危機感を持ってやっていこう!

   (キャプテン 入澤瑛麻)

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本間のおばあさんが贈ってくれたという会津八一の言葉は知りませんでしたので、調べました。

新潟市出身の歌人・書家の会津八一が東京で旧制中学校の教員をやっていた折、新潟から上京してきた受験生数人を書生にして同居していたことがあったという。その書生のために八一は四か条の「学規」(学ぶ心得)を自筆で書いて壁に貼ったそうです。結局、受験勉強に夢中の書生たちは誰一人として目もくれず、八一は自分にのみ言い聞かせる処世訓になってしまったと後年記しています。

「日々新面目あるべし」は、その四か条の最後の文句で、その前の三つと合わせて噛みしめると、とても深い教えになっていることに気づきます。

こんな素敵な教えが壁に貼られていたのに、下ばかり見て受験勉強あけくれていた書生たち…

もったいないですね。

学ぶとは、学芸に励むことで己を知り、日々自分を新しくしていくこと。

友里那のおばあさん、そして友里那、こんな嬉しい出会いを橋渡ししてくれてありがとうございました。

秋艸堂學規

一 ふかくこの生を愛すべし
(自分に与えられたこの生のかけがえなさに深く気づき、一度しかない生を大切にして悔いなく生きなさい)
一 かへりみて己を知るべし
(自分というものについては自分自身が一番よくわかっていないものです。自分の弱みも強みも自分を日々省みて考え、自分自身をよく知ることです)
一 學藝を以て性を養ふべし
(自分がこの世に生まれ何をなすべきか、その特性は何かに一生懸命になってこそわかるものです。学問や武芸、自分が選んだ道に励み、自分が天から与えられた特性に気付いてそれを磨いていきなさい)
一 日々新面目あるべし
(そのようにして日々生きれば、毎日何かしら新しいことを発見できるはずです。今日のあなたは昨日のあなたと同じでいいはずはありません。どんなちっぽけなことでも、新たな気づきを得て日々成長しなさい)
 
※(  )内の現代語訳は筆者:津野がつけたものです。
 

北信越大会 個人戦

入澤瑛麻・本間友里那

ダブルス夏冬連覇

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※ 地域で地道に夢を目指している指導者や生徒のみなさん。前向きな興味がありましたら交流しましょう。私は時代遅れの人間です。ツイッターもフェイスブックもラインもやりません。そもそもスマホを持っていないです(docomo等が時代遅れの人間を完全に切り捨てるまでこのままです)。郵便かその電子バージョン(メール)で連絡ください。その場合は必ずお名前と所属をお知らせください

郵便→北越高校 津野宛で

メール→seiji.tsuno@gmail.com

2022年1月 2日 (日)

Dream Factory 2022 冬

何も咲かない寒い日は

下へ下へと根を伸ばせ

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センバツ県予選が終わり、今年のチーム北越は県予選で敗退し、春の全国センバツへの戦いが終わりました。

レギュラー6人のうち、4人の3年生が抜けた穴を埋めることができませんでした。

決勝リーグ、1勝1敗で迎えた最終戦、優勝した巻高校との戦いで勝てば三つ巴でチャンスはありました。こういう場面でこれまでのチーム北越は、持っている力以上の集中力を発揮して夢を手繰り寄せてきたのですが、今年のチームはその北越魂が育っていませんでした。観客席から全力で応援してくれている3年生のパワーも借りて共に戦い、「感謝の力」で勝利を届けることもできませんでした。

ただ、その最終戦は、この新チームとしてはベストの戦いができたので、その上で夏から力をつけてきた巻高校に敗れたのですから、実力負け、というのが正しいと思います。

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負けて泣いていたね。

でも、泣いても何も変わらないよ。

全国センバツへ行けなくて悔しくて泣いていただけなら、ほしいものが手に入らなくて泣いている幼な子と変わりはしない。相手だって日々努力しているのだよ。打倒北越で練習を重ねているのだよ。まずは、その努力に唇を噛みしめながら敬意を持つべきだ。

相手は強くなったんじゃなくて、自分を強くしたんだよ。

少なくとも君たち以上に集中し、チーム力を上げ、声を掛け合い、弱さを克服しながら、チームとして自分を強くしてきたんだよ。

その上で、君は自分に何を認める?

「己を知る」

今の君たちには、ここができないのだと思う。

だから、日々の練習が身にならない。力に換わらない。

自分の弱さは何か。

自分は何から逃げているのか。

周りのサポートにもかかわらず、なぜ自分は大事な場面でベストを出せないのか。

力を借りているつもりで、ただの依存になってはいないか。

戦いの現場は最終的には自立した力だけが頼りだ、その力を日々つけているのか。

そもそも、君は自分で大きな夢を本気で叶えたいのか。

「己を知る」とは「自分と向き合う」ことだ。

自分の弱みを知るからこそ、自分の強みにも気づいていく。

おそらく逆はない。この順序だ。

弱みに目を向けない「強み」など、傲慢か無知か臆病かのいずれかだろう。

自分の弱さと向き合うのは、絶対的な希望に裏打ちされた強烈な意志が必要で、それは簡単なことじゃないんだよ。

元日に、こんなコメントが書かれている賀状をいただきました。

先生、私、去年から自分に向き合うようになって、そして新しい道に進んでみようと思い始めて、新たに勉強を始めたんです。自分と向き合うと、逃げてた自分と戦わなきゃいけないので、手ごわいです。

もうお子さんも小学生になっているのですが、きっと心に期するものがあって、今の自分を脱皮して何かに挑戦するんだと思います。

人間、いくつになっても、新しい道に舵を切る時には、今までの自分と「向き合う」必要があります。それは「逃げてた自分」と面と向かって対決しなければならないことで、だからこそ「手ごわい」のです。

この年賀状は、かつての教え子で、新潟東高校キャプテンとしてでっかい夢を叶えた佐藤由樹さん(旧姓 小林さん)からのものです。

由樹さんの中学までの実績はゼロと言っていい。高校2年生の冬までも惨敗の連続。県大会に自力で行ったことなどありません。

何人もの仲間や後輩が諦めてドロップアウトしていく中、夏に咲くヒマワリを自分に重ねて弱い自分を鼓舞し、チームに力を与え続けた人です。

しかし春も惨敗が続きます。地区大会でやっと16本に入って県大会出場がやっと。

そして、迎えた3年の県総体。ノーシードのパッキングから這い上がり、シード選手をいくつ破ったでしょうか。最後は前年のインターハイ選手を撃破してベスト8。それだけでも十分奇跡ですが、翌日の地獄リーグでも、当時の巻高校のエースに奇跡的勝利を果たしてインターハイ出場の夢を叶えたのでした。新潟東高校の創部以来、初めての快挙でした。

由樹さんは、中学から6年間のソフトテニス競技人生で、もらった個人戦の賞状は市内大会も含めて1枚しかありません。

それが、インターハイ出場切符である県総体6位の賞状です。

君たちは全員が、少なくとも由樹さんよりも実績も経験もあり、恵まれた環境にいて、たくさんの人から応援されている。

決定的に違うもの、それはどんなことがあっても最後には「夢の花」を咲かせたいという揺るがない意志、そして自分の弱さをわかり、さらけ出し、それと向き合い続ける実行力とその継続力だ。

由樹さんが惨敗を続けていた厳しい冬、繰り返し伝え続けた言葉があります。

2000年のシドニーオリンピックで、日本初の女子マラソン金メダルを獲得した高橋尚子さんが、無名の高校時代に恩師から授かったという言葉です。

何も咲かない寒い日は

下へ下へと根を伸ばせ

やがて大きな花が咲く

高校時代実績のなかった高橋尚子選手は、卒業後、小出監督と出会い鍛えられ世界的なランナーに育っていきました。ずっと座右の銘にしてきたそうです。

それを由樹さんとそのチームに教えたのです。

そして、由樹さんは翌年の夏、奇跡のインターハイ出場の夢を叶え、その次の年、高橋尚子さんはシドニーで金メダルを獲得するのです。いずれも、冬に伸ばした根に「史上初」の快挙を咲かせたのです。

さあ、冬に負けた人たち。

もうダメかも、と諦めかけている人たち。

今するべきは、花を咲かすことではありません。

自分と向き合い、「下へ下へと根を伸ばす」ことです。

泣いているだけなら、根は縮こまり腐ってしまいます。

自分を強くしたいのなら、自分の弱さを見据えることです。

夢を叶えたいのなら、今こそ自分が逃げているものに立ち向かうことです。

もちろん簡単なことではありません。

敵は自分の中にいます。

「手ごわい」ものです。

冬だからいいのです。向かい風だからいいのです。

負けた直後だからチャンスなんです。

春は芽吹く季節、春から伸ばした根では大きな花は咲きません。

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敗者たち、結果が出ないからといって、現実を諦めにつなげてはいけない。

それは、人間として大事な尊厳を自ら損なうことです。

悔しさは力の源泉です。

ただし、正のエネルギーにも負のエネルギーにも、どちらにも変換できるものです。

だから、君はそれを燃やしてプラスに向かうエネルギーを得てください。

「負けから這い上がる」

「挫折から起き上がる」

その湧き上がる力より価値のある力なんてありません。

誰もがその力を持っています。

諦めるから現れないだけです。

チーム北越。

今年の冬は、少しずつ少しずつ、厳冬の中、下へ下へ根を伸ばしていきます。

また来る春を信じて。「大きな花」が咲く夏を信じて。

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一粒の向日葵(ひまわり)の種を蒔きしのみに荒野を我の処女地と呼びき

   by  寺山修司

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