2020年5月 2日 (土)

Dream Factory 2020 希望の春(応援メッセージ②)

「夢」が 脈を打って

 いつも そばにあった日々…

卒業生から送られてくる、一つひとつを読んで、返事を書きながら思うことは、本気でインターハイを目指す者たちにとって、「インターハイ」とは「大会」ではないんだな、ということです。青春期の若い魂を燃やして全力で目指した「夢」そのものなんだと思います。「生きがい」という言葉は、お年寄りに対して使うことが多いと思いますが、18歳には18歳の「生きがい」があるはずだ、と、ある場所で強く言ったことがあります。「生きがい」とは、「生きている甲斐」つまり、生きる目的、生きるパワーの源泉です。

思うに、「夢」とは幼い頃は、自分から遥か遠く離れたところにあるものでした。そして、多くの生活や責任とかかわらざるを得ない社会人になっていくと、「夢」は(子供のころの憧れとは違う次元で)また少し自分から離れたところに行ってしまうような気がします。

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その「夢」が長い人生の中で、一番自分自身に接近するのが青春期なのです。本気で求めれば求めるほど、「夢」が自分の中で息づき、脈打ち、あまりの鼓動の強さを感じて時には逃げ出したくなるけど、苦しい道を敢えてたどることでそこに近づいているんだと信じ切れる時代。息苦しいほど全力で生きている実感に胸が震える日々。イノセントで純粋な魂の飛翔への希求。

その日々は人生のたった2年と少しの短い間だけど、あの時期、確かに自分の花なるべきを信じて全力で生きた、その実感を覚えているからこそ、「中止」の報道が流れた時、立ち尽くし、料理の手を休めてTVを見つめ、思いを馳せ、悔しさに共鳴し、思いがあふれてメッセージをくれたのだと思います。

今回、北越の卒業生が次々とメッセージをくれる中で、ある教え子からメールが入りました。

それは、僕が30代のころに勤務していた新潟東高校の卒業生で、高橋優実さんといいます。優実さんは今、千葉県で小学校の先生をしています。

優実さんは、東高校に入学し、中学校の時テニス部だったというくらいの理由でソフトテニス部に入ったことで、同じ年に転勤してきた僕と出会ってしまった人です。

新潟市立東石山中学校時代は、全く無名どころか、自分が何番手だったか覚えてない、7番? 8番? という感じです。「先生、ロブって何ですか?」と聞かれたことを印象深く覚えています。初心者の方がまだ教えやすいくらいの、ゼロから、否マイナスからのスタートでした。優実さんは新潟市のジュニア合唱団にも所属していて、高校生ですからリーダー格でした。

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「インターハイ出場」という「夢の種」を自ら望んだわけでもなく植えられた優実さんはとても悩んだ末、「インターハイ」という見たことも聞いたことも想像すらできない「夢」に、自分の青春をかけることを選びます。そして3年生の夏、ペアの伊藤さん(後述)と組んで地獄リーグ(インターハイ出場の5位6位決定リーグ)を全勝で勝ち抜き、「夢」を咲かせたのです。平成11年、指導者としての僕を初めてインターハイに連れて行ってくれた子でした。その優実さんからのメッセージです。

ご無沙汰しています。お元気ですか?東高校でお世話になった優実です🌻

インターハイ中止の速報を、夕飯を作っている時に夫から聞きました。迷った末、やむにやまれずメールした次第です。インターハイの舞台を目指していた、特に3年生にとってどんなにやるせない気持ちか。考える間もなく、感情の方が先にグッと込み上げてきました。魂が覚えてるんだなぁと思いました。

北越に入ってきた子たちは、私とは違って、もしかしたら最初から目指していたのかもしれません。悔しくて切なくて、名前も顔もわからなくても、夢をもって目指しているたくさんの人たちのことを思うと涙が勝手に出てきます。

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夢を追ってきた3年間という貴重な時間、その最後の年に目標を失った高校生に私には何ができるか、考えずにはいられませんでした。何ができるか考えても考えても思い浮かびません。

高校卒業して何年たっても3年間の記憶は濃いままだし、今でもその時のことが今の自分を支えています。人生という長いものさしてみたらインターハイは通過点で、一瞬なんですよね。その一瞬が輝かしいものになるようにずっと磨いてきたわけだけど...だから、磨いてきた日々がとても尊くて…

うまく言葉が見つからないのですが、どうか腐らないでほしい。

ッカリして悔しくて泣いてしまうときがあったとしても、腐らないでほしい。

折れないでほしい。プツンと緊張の糸が切れてしまわないように。

私はインターハイ行きが決まった後にプツンと切れてしまったというか、逃げてしまったというか、真っ直ぐなみんなに真っ直ぐでいられなくなってしまった…。

心配で北越のテニス部のHP見ました。

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驚きました。3年生グッと踏ん張っていますね。腐るどころか後輩を育てようと引っ張る気持ち、強いです。私は弱かったなぁ。引っ張っていくことは昔からうまくできません...が、支えになりたいなぁと思っています。

花を咲かそうとしていた場が消えて不安に思うこともあるでしょうけれど、どこでどうなるか、人生わかりません。時期が来るまで、辛抱強く、力をためて、咲く日が来るとことを信じて、強く美しくいてほしい。

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つぼみのままで終わることなく、必ず咲く日がくると信じて。たとえどんな咲き方であっても、花になろうと自分と向き合ってきた3年は絶対に無駄ではない! 尊い日々なのです。

「花」である以上、咲かないわけがない。咲く運命なのです。

く時期が今じゃなかっただけ。

どんな色に咲くか、どうやって咲くか、咲く日を楽しみに待ちたいと思います。
『咲かない花はない』だから、枯れないで!腐らないで!諦めないで!

そう生徒さんにお伝えください。

(津野からの返信)

優実、久しぶりです。
温かく、そして熱いメッセージというより心そのものをありがとうございます。
感動しました。

ホームページも見てくれたのですね。

優実、このメッセージ、HPに載せてもいいですか?

北越生だけじゃなく、全国の高校生アスリートへの応援メッセージとして。



優実、逃げ出したなんて言わないでよ
青春時代なんて揺れ動いてなんぼだよ。あなたの合唱団をやめて僕を信じてテニスにかけた、その決意と潔さがあなたをインターハイに連れて行ったのだし、夢が叶った後の落ち込みがあるから、また今こうしていたたまれずに連絡くれるわけでしょ。すべては波なんです。

僕にとって、スタートからゴールまで一番高低差があったのは優実です。
君は僕に勇気と可能性を示してくれたんですよ。
決してネガティブにあの時代をとらえないでくださいね。

光と影、どちらにも意味、いや意義があり、両方を経験した人が一番貴いのです。

(優実さんからの再返信)

光と影・・・いつも先生は私が失敗したな、と思うことを、自分のことが嫌いになりそうな弱い部分も受け止めてくれて、それでもいいと言ってくれる。そして、真剣に向き合うべきところで目を背けようとすると、それは違う!と気づくまで待ってくれる。

ありがとうございます。

私のメールが少しでもお役にたてるなら、いくらでも!

一粒の雫となって、花が咲くお手伝いができるのなら、こんなに嬉しい話はありません。

先生、大事なことを伝え忘れていました。

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私、世代は違っても、レベルも学校も違っても、会ったことなくても、「夢を持ち、叶えようとしてきた」先生の教え子たちが、同じ仲間だと思えたんです。だから、何かできることは?と考えて考えて・・・気持ちを伝えることくらいしかできなかったんですけど。


先生、私はHPで、力をもらったんです。先生と北越高校のソフトテニス部の仲間から。3月の内容は「こんなときだからこそ」、最近更新の内容は「こんなときでも変わらず」ってメッセージを読み取ったのですが、合っていますか?

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色々ごちゃごちゃ考えて不安になっていたのに、大事なことはすごくシンプル。フッと余計な力が抜けた気がしました。そして、ちっちゃな人間になりそうだったなぁと。

変わらずに踏んばっている3年生に力をもらいました。先生からも大事なことを思い出させてもらいました。迷い、不安になったらきっとまたHP見ると思います。何度も何度も。



変わらず頑張っている姿は、エネルギーいっぱいですね。ありがとうございます。

 

2020年5月 1日 (金)

Dream Factory 2020 希望の春(応援メッセージ①)

「どんな時も北越魂を持って!」 

 

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インターハイ中止! の報道を聞いて、高校時代にテニスコートで「夢」の実現を信じて毎日ボールを追い続けたかつてのDream Factoryのメンバーたちから、多くのメッセージが届いています。

すべては紹介しきれませんが、北越高校生を超えて、「夢」を亡くした高校3年生に、小出しにして先輩たちからの応援歌と絆を届けたいと思います。

第1弾は、つい数か月前まで、同じコートで成長を見守ってくれていた水澤と冨樫から。

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From 水澤奈央さん(令和2年3月卒業)

こうやってチーム北越に参加することが出来てとても嬉しいです。
佐藤からインターハイ中止の次の日に連絡が届きました。今までの感謝、そしてまだまだ頑張るという決意が文章からもすごく伝わってきました。そしてその後に先生が書いたドリームファクトリーを読ませて頂いて、自然と涙が溢れました。こんなにみんなは苦しい時も前を向いて、ひたむきに泥臭く頑張ってるんだなと私自身とてもエネルギーを貰えました。
ありがとうございます。

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私は今埼玉県の方で生活しています。部活動は8月まで出来なくなってしまいました。ですが、4月30日からWebでの授業が始まるので、この機会にたくさんの本を読んだり、苦手な古典を勉強しています。最初はトレーニングを毎日したり、プレー動画を見たりしてソフトテニス中心の生活を送っていました。ですが、この状況だからこそもっと自分の視野や知識を広げるべきだと考え、勉強にも力を入れて今は過ごしています。


先日、大学の部活動の活動で、ペップトークというものをオンラインで勉強させていただきました。その中で今の状況を受け入れ、とらえかたを変更し、どう行動すべきかを考え、実行することが大切だと痛感させられました。後輩のみんなはそれをやってくれていると思います。


励ましやメッセージよりも私からはみんなに感謝を伝えたいです。みんなは尊敬出来る後輩であり、希望の光です。たくさんのエネルギーをありがとう。3年生はその魂をまだまだ燃やし続けて一緒に頑張っていきましょう。またいつか一緒にテニスがしたいです。

津野先生も体調にお気をつけてお過ごしください。
コロナがおさまったら練習にも参加させていただきたいです。

失礼します。

From 冨樫春菜さん(令和2年3月卒業)

お久しぶりです。
コロナでインターハイも無くなり、莉穏、唯香はとても悔しいと思いますが、去年のインターハイの悔しさがきっとあるはずなので、2人を全国でもう1度も戦わせてあげれなくなったこと、私もとても悔しく思います。

徳島に来て、1ヶ月が経ちます。
有難いことに徳島は、部活は禁止ですが自主練は自由に出来ます。北越のみんなからしたら、とても羨ましい状況だと思います。

しかし、時間も短く楽しくやっている人の方が多いです。私は何よりも目標があるので、他の人よりも厳しくきつくやってしまい長い時間練習してしまいます。だけど、一緒になって自分から厳しくやる人は中々いないです。そこが大学の難しいところです。なので、周りを上手く巻き込みながらやっています。1人でサーブをしたり、もっと打ちたいけど、他の人は終わってしまう時は、プラスに考え、部屋でタクティクスやテニスの勉強をしようと考えました。

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そして、毎朝30分のランニングと夜のストレッチ、筋力トレーニング、練習後のRUNの追い込みなど1人でやれる事はやってます。
私は宮崎インターハイで勝てなかったこと、自分を表現出来なく、たくさんの人にコートで恩返し出来なかったこと、仲間をもっと戦わせてあげれなかったこと、今でもずっと悔いがあります。それが今、私の原動力となっています。悔しさをどんな時も忘れない為に、団体で負けて整列している写真をコピーして、壁に貼り毎日見えるようにしました。後は、生活面でも整理整頓をする事やみんなの使う炊事場を自ら掃除したりしています。
今は、大会も無くなってしまいましたが、コロナがおさまれば、また戦いが始まります。
絶対に大学でリベンジできるように、後悔のない1日1日を生きたいと思います。
どんな時も北越魂を持って、泥臭く、誠実に生きていきます。
また、北越のみんなとどこかで会えることを楽しみにしています。
失礼します。

2020年4月27日 (月)

Dream Factory 2020 希望の春

明日世界が滅びるとしても、

私は花に水をやる

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これまで生きてきた中で、いくつか心に大切に息づかせている言葉たちがあります。

これもその一つです。

もとはあの宗教改革をしたマルチン・ルターの言葉だとされている「世界が明日破滅に向かおうとも、今日私はリンゴの木を植える」です。ルターが闘ったものの大きさ(世界そのものだ)と成し遂げた偉大な業績と重ね合わせると(宗教改革? ルター? というポンツクはすぐウイキペディア!)、この言葉の重さがズシンと来ますが、僕は表題のように変えたイメージが好きで、この言葉で格納しています。

インターハイが中止になりました。

この状況でできるわけがありません。

そして後ろを振り返っても意味がありません。近未来を見ましょう。希望とは可能性のことです。

問題は、今の高校3年生のこれまでの研鑽をどう形にしてやれるか、我々指導者が知恵を結集すべきはこの1点に尽きます。厄介なのは、感染の終息状況が読めない中で3年生の残された時間だけは刻々とカウントダウンしていることです。ですが、厄介なだけです。問題を放棄するexcuseにしてはなりません。我々の競技はウインターカップもありませんし、春高も、選手権もありません。国体も今の状況であれば難しいでしょう。まずは夏の終わりか秋口にかけて、都道府県レベルで何らかの舞台を準備すべきだと考えます。高体連が厳しいなら連盟。それも難しいなら…知恵を集めます。必ず希望はあります。見ようとすれば、必ず「その状況その条件での」可能性が見えてきます。

その上で、高校3年生には、いつも通り「花に水をやれ」と伝えたい。

「水やり」を放棄すれば、その花の成長は止まります。未来に咲く花も咲きません。「花」は希望であると同時に「君たち自身」です。

毎日走っている人は今日も走ろう。昨日の自分よりほんの少しだけペースを上げよう。坂道に差し掛かったら自らを励まし、ぐっと重心を前にかけよう。

家で筋トレやアジリティトレーニングをやっている人は、ほんの少しだけ強度を上げよう。回数を先週より3回増やしてみよう。

イメージトレーニングや素振りをしている人は、集中力を高めてから(黙想したり、理想のプレーヤーの動画をみたりして脳内イメージをクリアにしたり)始めよう。

「自分への水やり」だけではなく、自分の周囲の人に感謝されたり、周囲が明るく前向きになるような言葉を伝えたり行動したり、後輩の成長を促したり、自分とかかわる「他者への水やり」も、いつも通り続けよう。

そして、希望を消さずに日々を誠実に生きる。

こういうメッセージはいつもチームには、特に上級生になる生徒には「必要な責任」として伝えています。北越の3年生は、毎年そのことを理解してくれます。

3年生の鈴木と佐藤は、毎朝、人のいない6時ころに自発的に走っていますが、その後にメールをくれます。インターハイが中止になった昨日の様子を今朝のメールでこう伝えてくれました。

ついにインターハイが中止になってしまいました。悲しいし悔しいです。だけど、そんなことこの大会にかけてきた全国の高校生みんなが思っていることで、自分だけじゃないんですよね。

昨日の夜、朋恵先生からもメールをいただきましたが、ある意味、今が本当のアスリートになれるチャンスなのかもしれません。インターハイがなくなった。とすれば、インターハイのためにテニスをする、っていうことは意味がなくなります。先生は先日、この日が来ることがわかっていたかのように、こう言ってくださいました。

「必ず、お前たちの日々の努力を表現する舞台を用意するから」

インターハイがなくなるからといって、自分たちの努力が無になるわけじゃない。チームや自分自身の向上こそが目的だ、それが真のアスリートなんだと思います。

インターハイ中止のニュースが流れた後も、会った人にちゃんと挨拶する、そんな小さなこともやりました。自分は先生を信じて真のアスリート目指して、またやっていきます。自分たちの夢の実現はまだまだ終わりません。

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昨日は1年生も入れた2グループでミーティングを持ちました。自分たちの進行役は星野でしたが、星野の1年生に伝えることがズレます。こうやって1年生に伝える側になってのズレは自分だけの問題じゃなく、1年生に混乱が広がっていったり、間違ったことが伝わったりしてしまうので、2年になったということを自覚して成長してほしいです。

私の反省としては、1年生を発表の形でしか取り込むことができなかったということです。1年生をどうやってディスカッションの輪に含めていくか、それは1年生の問題じゃなくて私たち上級生の問題です。その問題も「問題解決」が必要なことですから、2,3年生でも話し合っておきます。

近藤(2年生)がタクティクス(戦術)の考え方で疑問があるので、一緒に同じ試合を見て勉強をしたいと言ってきました。そういう前向きな姿は3年生としてすごく嬉しいです。チームとしてタクティクス力もつけていきます。

(3年 キャプテン 鈴木唯香)

昨日、インターハイの中止が決まりました。いろんな思いもありますが、先生たちを信じて前に進んでいきます。

昨日はチームでDream Factoryの内容を読んで、グループに分けてLineディスカッションにチャレンジしました。ですが、私のグループはうまくディスカッションを作ることができませんでした。

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原因としては、進行役の2年生がすぐに「まとめ」に入ってしまったこと。その「まとめ」から色々と質問してしまったことで、ディスカッションがごちゃごちゃになってしまいました。なので、途中から私も入って進めていきました。

終わってから、2,3年生で「振り返り」ミーティングをしました。私が入る前のディスカッションについて、高橋と斉藤はどうにかしようとして頑張ってもがいてくれましたが結局うまくいかず、そのことについて私に前向きな質問をしてくれました。

でも、司会に立候補した鷲尾はしゃべらず、今日の自分について積極的に振り返って失敗を生かそうとしているようには見えませんでした。もう2年生なので、鷲尾にはそういう姿勢について伝えました。その後2年生だけで話し合ってくれたみたいです。

2年生は、まだ臨機応変に会話をつないで、全体の意志を広げてまとまていく、ということができません。もう少し準備をさせて全体ミーティングに臨ませようと思います。

(3年 部長 佐藤莉穏)

こんな絶望的な状況にあっても、二人は「花に水をやり続け」ています。もちろん「いろいろな思い」は交錯するでしょう。それは当然です。その中で「今、自分がやれること」を明確にして、日々を誠実に生きている3年生を誇りに思います。

ルターのものだと伝わっている言葉のイメージを、僕が変えて心に留めているのには少し理由があります。「リンゴの木を植える」は将来実るかもしれない希望を信じて新たに行動するイメージです。不毛の地に苗を植えるイメージ。目を閉じて、実際に自分が明日世界の終わりだという前日に「リンゴの木を植え」ている姿を想像してみてください。

明日世界が滅びるとしても、私は今日リンゴの木を植える

どうですか?

では、次に、これを「花に水をやる」に換えてみます。同じように目を閉じて想像してください。

明日世界が滅びるとしても、私は今日花に水をやる

どうですか? 

その花はいつも世話をしている命です。自分が水をやらないと枯れてしまう、自分と強い関係性を有した命たちです。たとえ世界が破滅に向かっているとしても、自分が関わっているものに自分ができることをする、その「ちっぽけだけど大切な行為」の価値が浮き彫りになってきませんか。

これだけ状況が気になるとネットニュースを見ることも多いでしょう。しかし、あのネット上にはヤフーニュースのサイト上にさえ、フェイクニュース(ニュースの形をとった自己主張のPRやCM)も居座りますし、人々の不安につけこんだ刺激的なコメントが多数載っています。どうか、そんな無責任な言動やゴシップに左右されず、今、なすべきことを誠実に積み重ねていってほしいです。(新聞を読みましょう。ウラをとってないものは記事になりませんから。TVはワイドショーは見ずに《あれはショー=ニュースをネタにした娯楽です》決まった時間にニュースを見ましょう。)

最後に、2年生が送ってくれたメールの中に、こんな素敵な話があったので紹介します。

こんばんは。

今日は15分の追い込みを午前に2回やって、午後4回やりました。今日は、15分の中で、一つひとつの動作に、どこで使う動作なのか、何のために自動化すべき動作なのかを考えてイメトレしました。けど、パッとそれが頭に浮かぶものと出てこないものがあります。出てこないものをしっかり復習します。それから、今日は家の掃除をしました。自分の部屋だけじゃなく、リビングも寝室も掃除しました。

暗くなってから最後の追い込みを終わって空を見ると、空はすごく星が透き通っていました。その中で一つだけとても輝いている星がありました。何という星なのかわかりませんが、その星からすごくエネルギーをもらった気がしました。その星みたいに誰かに力を与えられるような人って素敵だなって思いました。

この出会いは、こんな状況じゃなかったらあり得なかったかもしれません。他者視線、そして環境、その二つが人を集中せざるを得ない状況にしてくれます。それが、監督やコーチという存在であり、部活という環境です。部活に行くということはその二つによって、集中環境を得ていたのです。その助けがない今、オリンピック選手でもない限り、毎日毎日、自主自律で自分を鍛え上げることは高校生には難しい課題です。

そんな中でも、自分を励まし、ラインでチームとつながり、心で監督と信頼しあうことができるのであれば、甘さに流れてしまった1日を終える時、後悔が生まれると思います。小さな後悔と次の日の決意そして実行。その波の中で、人は成長していくのでしょう。

きっとこの2年生のこの1日は「やり切った日」だったのではないでしょうか。だからこそ、輝く星の光が「透き通って」見えた。星はこの日だけ特別に輝くことはありません。星に透明な光を見た君こそが輝く1日を生きたのだ。僕はそう信じています。

高校3年生、心で連帯しよう。

令和2年度の18歳、君たちにしかできないことがある。今も、将来も必ずある。君たちこそが「希望」なのだ。

まだまだ「終わり」じゃない。

今日も自分と世界に「水をやろう!」

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2020年3月13日 (金)

Dream Factory 2020 闇春

できないことを嘆かず

できることを1日1日精一杯生きよう!

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タイトルを「闇春」とした。梅が開き、桜のつぼみも膨らむ三月、とんでもない事態になっている。この事象はきっと世界的な混乱として未来の歴史の教科書に載るだろう。政治、経済、文化、教育、あらゆる人間の営みがストップしている。

レンズを絞っていけば、県内学校の臨時休校は3週目に入る。君たちとやっとの思いで獲得した全国選抜への切符も幻のものとなった。当然あったはずの未来が消えていく。

昨日、世界保健機構はパンデミックを宣言した。この混乱がいつ収束するのかも見えない。世界も、その一部である僕らも、出口の見えないトンネルから抜け出ることができない。

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そんな中でも季節は巡り、越後の野原はヒメオドリコソウ、オオイヌノフグリ、オランダシシガシラ、早春の野花たちが一斉に美しく春を告げている。

こんな複雑な浅春の1日を君たちはどう生きた?

センバツ高校野球も中止になったが、その報道の中で、ある出場予定校の監督が憮然として「子どもたちの夢を大人が奪って・・」という発言をしていた。驚いた。それは間違っている。間違っているというより、そんな短絡的で子どもじみた見解を監督が口にすべきではない。その学校の選手たちは単純な世界観でしか状況をとらえられなくなる。そのような見方は、これからの人生でたくさんの夢や挫折を経験していく若者にとっては有害でしかない。

だから、メッセージを送ろうと思う。日本中、世界中、いろんな夢がある。夢が絶たれたのは日本の高校野球選手ばかりではない。

・・

伝えたいことは、思いがけず不幸な目にあったりコントロールできない混乱に見舞われたときに、僕らは何をすべきで、何をすべきでないのかということに尽きる。

・・

センバツが中止になった。研修大会も中止。合宿も不可。部活再開のメドも立たない。市内の体育施設はすべて利用できない。学校も休校が続く。やれないことだらけだ、と思ったらその通りになる。悲しんで嘆いているから、嘆くような世界しか見えてこないのだ。悲劇として状況を見れば悲劇的世界が広がっていく、君たちの脳や心にだ。これはソフトテニスの試合において、相手がシード選手でゲームカウント0-3という絶望的状況と一緒なのだよ。絶望的と捉えれば「絶望的」にしか見えない。だが、今何が起こっていて、この状況で自分がやれることは何で、今まで試みていない選択肢がいくつ残っているか、つまり「やれること」「やらずに残っていること」に焦点を合わせれば、決して絶望などしている暇はない。やれることを見つけてそれをやる、それは「希望」なのだよ。そして、その「希望」は、未来を信じているからこそ生まれる「力」だともいえる。

・・

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君たちは成長の途中にいる。テニスの技術だけではなく、精神的にも、人間的にも、まだまだ成長しなければならない。いやMUSTの考えはよくないね。成長することで必ず世界が広がる。協働して成し遂げられることや領域が大きくなる。大会がなくても、学校に集まれなくても、このパンデミックの中でも成長すべきだし、むしろ成長するチャンスだ。

先日、フランクルの『夜と霧』を久しぶりに読み直した。20代の学生の時、アパート近くの古本屋で買ったものだ。まだその時の値札が挟まっていた。30年以上たっている。

フランクルはあのアウシュビッツ収容所から奇跡的に生還したユダヤ人の医師です。『夜と霧』は、アウシュビッツ=ユダヤ人を消滅させようとした大量殺りくの生々しい現場=凍てつく冬でも乏しい食糧とぼろきれのような服しか与えられずに過酷な土木工事に1日中駆り出されて、人間が人間性を失っていく「地獄」のただ中で、人間の心はどうなっていったのか、そしてこのような絶望的状況の中でも、人としての尊厳を失わずに生きるとはどういうことなのかを熱く語りかけている世界的名著だ。えっ、まさかアウシュビッツを知らない…。ウイキペディアで今すぐ検索!

この本は悲劇を語った本ではない。悲劇的状況の中での人間の希望を語った書だ。いつか、ぜひ読んでみてください。

フランクルは言う。「どんな絶望的な状況でも、我々は生きる意味がある。将来君を待つ誰かだったり、君が為すべき仕事だったり、そこに『今』はつながっている。期待が持てない状況であっても、決してあきらめず、今を生きぬくことに誇りをもってほしい」

希望が持てないと思われる環境で、多くの者はパニックになり、プライドを捨て、悪魔的に自己中心的になったり、人を貶めたりする。そんな中でも、1日に一片しか支給されない固いパンを瀕死の仲間に分けてやったり、絶望して自死に向かう仲間に希望を灯したり、蔓延する伝染病で死を覚悟しながらも尊厳を捨てなかったりする多くの例をフランクルは書き記す。そして言う。

「精神的人間的に崩壊していった人間のみが、収容所の(非人間的な)世界の影響に陥ってしまう」「内面的な拠り所を持たなくなった人間のみが崩壊せしめられた」

身の周りを見てほしい。マスクや消毒液の買い占め。デマに踊らされてトイレットペーパーを買いあさる人たち。各国で起こっているので、文化や宗教は関係ないようだ。くだらないので読みはしないが、「中国の陰謀説」なるものもネットには載っているし、アジアから広がったことで当初アジア人に対する偏見や差別が生じた。過去の歴史を紐解けば、中世のペスト大流行の際にはユダヤ人陰謀説が広がってユダヤ人が虐殺されたり、日本でも関東大震災の時は「朝鮮人が混乱に乗じて犯罪や暴動を企てている」というデマが流れ、多くの朝鮮人が町中の自警団等によって追い詰められ殺された。

かくも人間の心は弱い。フランクルの上の言葉と混乱した人間たちのとった(とっている)行動とを重ねてほしい。

我が家は一つのことを決めた。トイレットペーパー・消毒液は、店頭に商品が並ぶまで買わないし探さない。そう決めると、使う量はいつもの半分以下で済むし、手はよく洗えば消毒液やアルコールも必要ない。小さなことだが、落ち着いてやれることをやる。パニクって混乱を拡大させない。それからネットは必要な情報を集めるだけにすること。

・・

君たちはこの危機的な状況をどう生きている? 

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こういうときは、普段ならできないことを積み重ねて、必ず訪れる「光」を待つべきだ。

家の仕事はもちろんやっているね。掃除、洗濯、食器洗い、春になるから窓ふきもいいね。小さなことでも心を込めてやることだ。一つひとつ、丁寧に少しでもよくなるように。こういう時だから庭に花を植えようか。種を植えて初夏を想うのも素敵だ。小さな工夫を見つけたり、こういうことが楽しくなってきたら、その仕事は君に寄り添ってくる。つまり君を求めている。つまり君に価値が生まれる。仕事ってそういうものだよ。家の小さな仕事もタフな職業上のプロジェクトも変わりはしない。

読書。リストを渡して休校中最低3冊と言ったけど、休校が延長になったから5冊以上行けるでしょ。これもMUSTでやらないこと。実際、50頁読んでも、全く心に入ってこなかったり、拒否感が強かったりしたら、きっぱり読むのやめて、別な本に移った方がいい。君にとって、その本は旬ではないのだ。ただ、とっておいてごらん。あとで旬になったりすることもあるから。描かれている世界と波長が合ってきたなら、作品の中で心が込められている箇所がいくつかあるので、そこを流さないで、知的好奇心や感情をMAXにして作品の世界と深く交流しよう。映画やテレビと違って、味わう時間をコントロールできるのが読書の最大の利点だ。僕は『夜と霧』を再読しながら、何度そういう箇所で本を閉じ、目を閉じ、思いを過去へ、ポーランドへ、今へ、自分へ重ねたことか。

大学受験する人は1年間の復習をやる絶好のチャンスだ。1日何時間と決めて取り組むこと。わからないところは誰かにきく。わかるまでやる。テニスと同じだ。

・・

さて、テニス。まず何がやれるのか。ここは科学的な事実を大切にしよう。

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コロナウイルスの感染は、感染者のくしゃみや近距離での会話で空中に飛ばされる飛沫を吸い込むことによる「飛沫感染」と、感染者がウイルスの付着した手で触ったところに接触することから感染する「接触感染」この二つだ。空気中にウイルスが漂っていて、それを吸い込むことで感染する「空気感染」は起こらない。だからあの関東の満員電車でも感染はないのだ。とすれば、外を走ったり、空き地等でボールを打ったり、壁を見つけてサーブ練習をしたり、公園でフィジカルトレーニングをしたりするのは何の問題もない。自分を鍛えるとき、「何のメニューをやるのか」ではなく、「何の力をつけようとしているのか」を明確にすることだ。持久力を落としたくないのか。体幹を強くしたいのか。フットワークの敏捷性を高めたいのか。関節の可動域を広げたいのか。下肢と上肢の連動を自在にしたいのか。そう考えるだけで、全くトレーニングは違うものになる。フィジカルで一人で自分を追い込むのは難しいが、誰も見ていないからこそ、鍛えられることもある。

是非この機会に自分で育ててほしい「目」があるんだ。

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トレーニングで自分を高めるためには、あと一歩、あと3回、あと1秒と OVER THE TOPを実現しなければならない。つまり追い込まなければならない。これは苦しい作業で、強い意志を持たないと続けられない。その時に背中を押してくれる力が、仲間であり、先輩後輩であり、コーチである。それにタームを当てはめれば、「環境」と「他者視線」ということになろう。部活動というのは、それが当たり前に存在する。知らず知らず、君たちはその力に押されて自分を鍛えている。ところが、今、その力がない。「環境」の力もなく「他者視線」の力にも頼れず、では何の力で、あえて重い荷物を持つのか、あえて急な坂道を選択するのか、誰も見ていない、楽な道を選んだ方がきつくない。そこで試されるのが「自分の中の目」だ。フランクルはそれを「態度価値」と言う。

「価値」ととらえるのはとても興味深い。飢餓状態の中で持っている固パン一片は「大いなる価値」だ。タバコ1本は1日1杯しか配給されないスープ1杯と交換できたという。「物自体の価値」。もちろん、財産、お金、家、教科書、食糧…すべて「物としての価値」。次に「体験という価値」があるという。物ではないが、実際に新しいフィールドでの経験は、どんなことであれ「価値」がある。その経験を自分を広げたり社会や他者に還元できたりするからだ。

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そして最後にくるのが「態度価値」。これは「物」でもなく、「体験」でもなく、つまり何かと交換したり、数値化できたり、他者へ還元できたりするものじゃない。この「態度」は他者に見せるものではない。死を悟った患者が死の間際で同室の人への配慮を医師に願う。絶望的な境遇にあっても自己保身に走ってナチに取り入ることはしない。困難な状況にある時、自分だけいい思いをすることを慎む。直接的には何の利益も自分にはもたらさないが、そういう態度をとることはそれだけで「価値」だというのだ。決して人に見せるための行動ではないが、そのような態度で生きている姿は、逆の方向に流されようとしている多くの他者(普通であれば良き市民であるような人たち)に勇気と希望と与え、我々は何のために命を授かったのか、我々は今何をすべきなのか、人として本当に大切なことは何なのか、そういう実存的問いを投げかける。小さなことかもしれないけれど、人としての尊厳を保とうとする意志、選択、行動を「態度価値」とする。ただ「物の価値」と「態度価値」はしばしば対立する。トイレットペーパー、マスク騒動がその例だ。その時、問われるのは「自分の心の目」なのだ。誰も見ていない中で、どのような態度を選択し、信念とし、行動するのか。だから、「環境」も「他者視線」もない中で、どのようなトレーニングをどこでどれくらいの強度でやるのか。今、「自分の心の目」を鍛えていくことが大事なんだと思う。実際、テニスでも、追い詰められた場面で「何をすべきで、何をすべきでないのか」、それは自分で判断し自分で実行していくしかない。最終的には「孤独」で静謐な世界がそこにはある。そこで頼れるのは、今まで鍛えてきた「自分の内面の目」なのだ。別な言葉で言えば「プライド」だ。日々積み上げてきた「態度価値」、その集積こそが「プライド」になる。

・・

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さあ、今日も決めたことをやりきろう。朝走っている者もいるが、たとえば、休校が続くから起きる時間が少しずつ遅くなりスタートの時間も遅くなっていく。実行はしているだろうが、これでは「自分の目」は閉じたままであり、すなわちプライドに繋がらないだろう。そういうことが1日の中で無数にあるのだ。

・・

・・

明日も休校が続く。

世界は混乱が続く。

君たちはどう生きる。

・・

コロナの混乱があったから、自分はその時期に強くなったことがある。

君たちにはそう言ってほしい。そして、そうなるべきだ。

センバツで戦う夢は失われたが、君たちの夢は決して失われない。

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2020年1月22日 (水)

Dream Factory 2020 新春

北信越選抜大会 2年ぶりの優勝

3年連続で全国選抜へ

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ONE TEAMで戦い切った。

今でも信じられない思いだ。こんな弱小チームが北信越優勝なんて。

1年の星野、高橋、鷲尾、高野。本当にやってくれた。

福井商業に敗れて崖っぷちに立たされた後の高岡西戦。1年ペアの星野・高橋が追いつかれそうになりながらも勝ち切って、私たち2年生に回してくれた。そこでの3番勝負。なぜか北越の声しか聞こえてこない。先生、チーム、家族の思いを信じて戦い切った。

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そして最終戦の能登高校戦。3番勝負で、敵のエースと戦うことになった鷲尾・高野。一進一退の序盤~中盤、そしてファイナルゲームでの1本1本。そのすべてが攻めの姿勢で貫かれていた。その1球1球すべてに私は心を持っていかれた。攻めの思考回路が完璧だった。ありがとう、高野、鷲尾。

福井商業戦で自分のクソが出てチームを崖っぷちに追い込んでしまったけど、それを1年生が救ってくれた。一つひとつの戦いをチーム一丸で戦うことができた。このチームで全国を戦えること。このチームが3月末まで続くこと。それが何より嬉しい。(2年キャプテン 鈴木唯香)

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勝ちに不思議な勝ちあり 負けに不思議な負けなし

知将 野村監督の名言ですが、今回の北信越選抜優勝はまさにこの言葉通りの勝利で、ちょっと説明できないのです。04

北信越5県の1位校がリーグ戦で戦う形で、初戦は長野県代表の長野俊英高校。第1対戦で敗れ第2対戦も敵のマッチポイントが3回ほどあったでしょうか。初戦から薄氷の勝利でした。続く第2戦の福井商業戦は1年生星野と2年生佐藤のペアでエースを倒したのですが、他の2ペアは途中で萎れたような負けで1-2敗退。

第3戦はそこまで全勝の富山県高岡西高校。負ければ1勝2敗となり全国は限りなく遠くなります。しかし北越はここから驚異的な執念を見せるのです。12_2

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敵のエースにはこちらの高野・鷲尾の1年生ペアが瞬殺されますが、星野・高橋の1年生ペアが後がない状況を逆に力にするかのような勢いでG3-0リード。そこから巻き返しを図る高岡西に2-3と迫られますが、そこを振り切って勝利。3番勝負、2年生ペアの鈴木・佐藤に託します。

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今年の夏まで全く戦えなかった鈴木・佐藤でしたが、自分と向き合うことを通じてこのような場面で強さを表現できるようになっていました。緊迫したラリーの応酬が最後まで続きましたが、ファイナルの末、競り勝って、全国への命をつなぎました。

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最終戦の相手はそこまで2勝1敗で、負けても3位以上を確定させている石川県能登高校。北越も2勝1敗ですが星取の関係で、負ければ4位で全国大会への夢は途切れます。しかし勝利すれば優勝というまさに「天国と地獄」の戦いです。この北信越選抜のリーグ、そして毎年のブロック国体でも同じ形式でリーグを戦いますが、「勝てば優勝、負ければ4位」という状況で最終戦を戦うのは初めての経験でした。

それなら開き直れたからだろう、と普通は思いますし、確かにそういう部分はあったでしょう。しかし、能登の選手たちはジュニアから鍛えられて「有名」な選手たちで、しかもオーダーは敵が3番手に石川県の個人準優勝のペアを置く布陣。こちらの3番手はここまで全敗で中学時代の実績もない1年生ペア。3番に回れば石川絶対有利の状況です。そして3番勝負になったのですから、いくら開き直ったと言っても、これは奇跡でも起こらない限り勝利はないと、普通は思います。

その勝負を高野・鷲尾は互角に渡り合い、マッチゲームを握られても取り返してファイナルに追いつき、ファイナルも弛むことなくすべて攻め続けて歓喜の瞬間をチームにもたらしたのです。

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二人は自己ベストどころか、150%の戦いです。練習でも練習試合でも見たことがありません。広い小松ドームで唯一戦いが続いているこのコートは、光に照らされたステージのようでした。そのステージ上で、ファイナルゲームの序盤の競り合いから抜け出し、1本1本、頂点に向かって力強く歩んでいく二人は自分の力で戦っているというより、チームの魂が乗り移っているかのようでした。

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高野・鷲尾は今までのDream Factoryで紹介しているような「乗り越えた」選手ではありません。まだまだ幼く、自分の弱さと向き合うことすら怪しい成長の入り口にいる「ひよっ子」です。ですから、結果として凄いことをやってくれたのですが、成長の結果としてのドラマではない。無心無欲の勝利でしょうか。それとも「恩送り」をしてくれている3年生も含めたチームの魂が二人を変貌させたのでしょうか。

「勝ちに不思議な勝ちあり」ではありますが、そこには何かが託されているのだと思いたい。全国で戦うチャンスをもらったのですから、この二人も含めて、今年も北越らしく、自分と向き合いながら、人間的な成長を伴って、確かな道を歩んでいくチームを目指していきます。この次に高野・鷲尾の記事を書く時には「不思議な勝ち」ではなく、これまでの北越のような「確かな勝ち」として紹介できるよう、選手も監督もチームも毎日を一歩一歩踏みしめるように進んでいきます。

この最終戦は、地元石川の人たち、さらに優勝を決めている能登高校の男子チームも加わっての大応援団の中で完全なアゥエー状態でしたが、新潟県で一番元気のある小千谷高校の選手たちが最後まで残って応援してくれました。ベンチの選手は「こんなに応援の声大きかったっけと思って後ろを見たら小千谷の人たちが一緒になって応援してくれていた、本当に嬉しかった」とノートに書いています。小千谷高校の皆さん、ありがとうございました。

県選抜大会 第4シードから優勝

3年生のために! ONE TEAMとしての勝利

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やっと私たちは言えるんだ。

「ありがとうございました!」

ただ嬉しさと感謝で一杯だ。

この1週間、本当にいろいろありすぎた。まず大会1週間前、海外研修旅行のオーストラリアから帰ってきての「ぶっ壊れ」。感覚が全く戻らない。このままじゃ佐藤莉穏が夢を終わらせる…

すがる思いで冨樫先輩にお願いして朝早くからボールを出してもらった。冨樫先輩は胎内市からの電車通学。本当にあり得ないお願いだけど、先輩は私のわがままに精一杯付き合ってくださった。それなのに校内試合でさえ現れるビビリー。またかよ…。こんなに真剣に乗り越えようとしているのに、それでも出る自分の弱さが嫌で嫌でどうしようもなかった。その時に先生にかけてもらった言葉が私の世界観を変えた。

「ビビリの自分を受け入れろ」

ビビることがダメなんじゃなくて、そいつと一緒に戦うということ。そして全体ミーティングでもレクチャーしてもらった「男脳・女脳」の話。自分という人間をより深く考えることができた。こうして自分を客観的に見ることで、自分の頭がとてもスッキリした。

大会が迫るにつれて、私は「誰かを信じて戦いたい」という思いが日増しに強くなっていった。最悪の1週間前から、少しずつ変わってきている自分を感じていた。冨樫先輩から毎朝出してもらった数多くのボール。それをただ「この人のために」と思ってやりきる自信のようなものがついた気がした。

勝負の巻高校戦、3番勝負を託された私と星野、マッチポイントで上がった深いロビング。追った。迷いがなかった。私の後ろには日々の積み重ねがある。3年生への感謝がある。もうやれる自信しかなかった。

巻に競り勝った後は、村上、そして最後は全勝対決で長岡商業。もうここは1年生の成長パレードだった。1年生…、毎日のように現れる幼さ、チームの停滞。でも戦う心はもう北越魂だ。毎日伝えられてばかりだっただろうけど、泥臭く逃げずにやりきってくれてありがとう。苦しい場面もあっただろうけど、向き合い続けてくれてありがとう。1年生、本当にありがとう。

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柳先生から「前衛らしくなってきたね」と言ってもらった。ようやくイメージする前衛に少し近づけたような気がします。津野先生、私を北越に呼んでくださり本当にありがとうございます。

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私はずっと憧れていた。コートで、選手として、後ろの応援を背に、すべてを信じて戦うこと。やり切って後ろを振り返ってチームや応援してくれる人たちにガッツポーズをすること。それに応えてガッツポーズを返してくれる先輩たち仲間たち…こんなにも幸せなんですね。だからこそ、私もっと頑張ります。もっともっと強くなります!(2年 佐藤莉穏)

2019年10月13日 (日)

Dream Factory 2019 野分

秋季地区大会

 今年は大きな出遅れからのスタート

 それを支える3年生の「恩送り」

台風19号が日本を襲い、裏側であるはずのここ新潟も各地で河川が氾濫、私の住む場所にも避難勧告が出ています。当然部活は中止し、時間ができたので、ブログを更新します。

秋の地区大会が終わり、茨城国体も終了し、水澤と冨樫は最後の戦い=来週末の全日本(天皇杯・皇后杯)、新チームは進路が決まった3年生の力を借りてその次の週の県新人戦に向けて、日々精進の毎日です。チームを引っ張ってきた3年生が抜けて、まだまだ本物の力がない新チームは、地区大会でジュニアの経験豊かでセンスのある選手が多い巻高校に惨敗しました。今年の新チームのドラマは、久しぶりに大きなビハインドからのスタートです。同じ地区内でもずっと前を走っている巻高校、背中はまだ遠いです。問題は山ほどあり、それゆえ課題は常にあるのですが、1年生2年生の意識がかなり進化してきて、その成長に驚くことが多くなってきました。人としての成長、それがテニスの大事な場面で生きる、だから自分の小ささ、自分の幼さ、自分の至らなさに気付き向き合うことが何より大切なんだ、こう考えるのがチーム北越です。夏を越えていく中で、先輩や仲間からの多くのエネルギーと思いをしっかりと受け止め、受け入れ、自分と向き合う力に換えていける子が多くなってきました。失敗はいいのです。何度失敗したっていいんです。その自分を超えていこうとする思いが本気ならば。その思いさえ日々紡いでいけば、必ず花は咲くのです。悔しさと強い向上心、特にこの思春期にその経験が深いほど、人はたくさんの人を振り向かせられる美しい花を咲かせるのだと思います。この力が必ずテニスにも人生にも大きな力となって、将来、どんな世界に生きようとも状況をプラスに変えていける人になっていってほしい。これが決してブレることのないチーム北越の願い=哲学です。

秋季新潟地区大会 

シングルス 1位  鈴木唯香 

      3位 星野結衣

ダブルス  3位 星野結衣・佐藤莉穏

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新潟地区では巻高校に大きく出遅れている北越の新チームですが、あちこちに来年の花の気配が(まだつぼみですらなく気配ですが)現れてきています。

まず優勝した巻のエースに、1年生ペアの高野凛・高橋咲羽が準々決勝で競り合えたこと。二人は中学からテニスを始めた子で、巻のエースとの中学時代の実績を相撲で例えて比べると大関と序二段ほどもあるでしょう。G2-3のP3-0、あのゲームを取り切ってファイナルを戦えると面白かったと思いますが、まだまだテニスの力不足、「人として」の力不足です。

その高野のノートです。

ダブルスのベスト4決めで巻高校のエースに負けた。G2-3のP3-0、あと1本でファイナルだ。そこで私のトップ打ちが力んでネット。ここだって時に決めきれない。

今年の県総体団体決勝。1-1の三番勝負の緊迫した試合。流れが相手に行きかけた時に、田中先輩が打ち込んで相手が全く動けなかったトップストロークに憧れて、今まで磨いてきた。前日の練習でも一番最後に田中先輩にボール出してもらって合わせた。そして技術も確認した。田中先輩には「明日、試合で使うんだよ! 頑張ってね!」って言ってもらっていた。それなのに、また力んでネット…。自分の壁を自分でわかって乗り越えていくのが「北越」。私はそれを超えられなかった。もっともっと自分を追い込んでスキルを上げていかなくちゃ。

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シングルスの2回戦、相手は中学生の時どう頑張っても勝てなかった子だ。夏これだけ頑張ってきたんだから絶対!と思って臨んだ。長いラリーになった。攻め続けていた。けど、やっぱり最後は自分の力み。ダブルスと同じことが起こる。今回の大会でわかったことがある。自分は同格や格上の相手との試合で競っている場面で力みやすいということだ。成果としては最後までキーワード言いながら気迫出して戦えたことだ。トップ打ちも何回打ち返されても泥臭く相手のコートに打ち込んだ。そこはこの夏を通して成長できたような気がします。

北越らしさ、私は表現できた所もできなかった所もある。シングルスでの唯香先輩(鈴木)の優勝は、私たちに「北越らしさ」を見せてくれた。準決勝→決勝、相手は巻高で、前日のダブルスの決勝を巻の同校対決で戦ったスキルの高い相手だ。唯香先輩はチェンジサイズの時ノートを必ず開いていた。後で聞いたら、「冨樫先輩の思い、そして何度も自分に負けた悔しさ」その思いを確かめて絶対超えてやると思って気を引き締めていたそうだ。泥臭く粘り強く、1球1球に思いを込めて、だからこそチーム全員で一つになれる。こういう戦いを春には全員ができるように、秋の悔しさを絶対に忘れない。

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シングルスでびっくりしたのが、1年生の近藤が前日ダブルスの優勝ペアの一人に勝利したことです。初戦だったので相手も油断していたと思いますが、勝ち切るまで集中を切らさずよく頑張りました。ただ、番狂わせを演じたのに次で負けるのは本物の力ではない証拠です。

近藤は本当に全く実績のない選手で、ただただこのチームに憧れて北越に来た子です。身体も固く、頭も固い。固いことだらけですが、意志も固いのです。「人として」の力にも大きな潜在力を感じます。人間は何もかもダメなどということは絶対になく、必ず素晴らしいものを持っています。それを芯にして自分の幹を作っていけば、3年間のドラマの中で必ずいいことありますよ。

それから、これも1年生の斉藤菜月が前日のダブルスでベスト8に入ったスキルの高い選手にファイナル3-6のマッチポイントを握られながら、一つひとつ挽回して逆転で勝利した試合には感動しました。斉藤は広島から来た子です。北越はインターハイ前に「どんぐり北広島チーム」に行き、そこで力をつけてもらうことが多いのですが、その際地元の中学校が練習に来ていたことがあり、斉藤の一つ上の岩田栞という子が北越の練習をコーチと二人でじっと見ていました。

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こんなチームで自分もテニスを続けられたらと思ったそうです。普通は思っただけで終わるのですが、コーチにも勧められてはるばる北越に入部したのです。とても感受性が豊かで、学力も高く、自分の思いや考え、将来の展望もしっかり自分の言葉で伝えられる素晴らしい子です。新潟高校と合同練習をした時にいくつかのテーマでディスカッションを組んだのですが、一番生き生きと楽しそうにテーマを掘り下げていたのは岩田でした。新潟高校の監督の石崎先生(元日体大キャプテンで、私の恩師です)にもとてもかわいがってもらっています。ここで人間形成を学びながら学力をつけ、将来は世界の平和と貧困の問題に貢献し、そして最終的には地元に戻って先生になりたいという夢を明確に持っています。今、チームの部長を任せています。

斉藤は同じ北広島町立豊平中学校の後輩です。岩田も斉藤も広島での実績はありません。強くなりたいなら、広島にも強い学校はありますし、中国近畿はソフトテニスの強豪校がひしめいています。なぜ北越に? コーチがおっしゃるのは「北越みたいなチームって、全国いろいろ探しましたけど、ないです。だから北越でテニスをやらせたい。」ご両親も意志を尊重してくださって、寮生活をしながら一歩一歩、夢へ向かって成長しています。上半身主体の動きを下半身主体に、そしてインナーマッスルを使えるようになることが今の課題です。ハートがある子で、意気に感じることができる。

斉藤菜月のノートです。

今日はシングルスだった。初戦の相手は経験もセンスもある相手だった。昨日のダブルスでもベスト8に入っている。でも先生から「昨日見ていたらスキルもセンスも高い。でも間違いなくおまえの方が毎日自分と向き合ってきているから、粘って競り合いになれば勝つチャンスは必ずある。こういう相手に競り勝ったら、もう一度チャンスあげるから、意地見せてこい!」と言ってもらった。

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プレーボールから気迫だけは一番出して「北越らしく」見ている人が元気をもらえるような試合をしようと思った。G2-0でリードしたが、調子を出してきた相手に次々とポイントを決められG2-3と逆転された。このゲームが一番苦しかった。しっかりやろうと思っているのに連続ダブルフォルト。今までの私ならここで自滅していたと思う。でも今回は自分の中から闘志が湧いてきた。

「こんな所でなんで自分に負けてんだよ!」「意地見せ

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てやれよ!」そして長いラリーが続き、ファイナルに入った。シングルスだからすごいセルフトークをした。ファイナル前のベンチでは頭の整理をして、今何をすべきか確認した。何回も気持ち入れ直してギアを上げた。相手も負けたくない気持ちを出して攻めてきた。でも完全に自分との戦いだった。もうラケットを振り切ることしか考えなかった。セカンドのレシーブはとにかく「攻めの選択」をし続けた。序盤からしっかりラケットを振っていたことで、ファイナルの競り合いでも思い切ってラケットを振っていくことができた。でもファイナルP3-6で相手のマッチポイントになった。でもそのことが気にならないくらい戦いに集中していた。キーワードを言って目の前の一本一本を全力で戦った。そしてP7-6逆マッチポイント。最後の1球は自分でも「ここだ!」と思った所に打ち切れた。

苦しいときこそ逃げずに相手に向かっていく大切さをとうとう実感できた。

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2回戦も競り勝って、昨日のダブルス優勝の若月さんとの戦いになった。まだまだ話にならないレベルで負けた。でも新潟へ来て初めて自分の力で全力を出し切れた。そして、先生に「今日は感動したよ。 団体ももう一度おまえにかけてみる!」と言ってもらえてすごい嬉しかった。かけてもらったチャンスなんだから、絶対にもっともっと向上してつかみきってみせる。これからも苦しい時は絶対にある。でも今日の試合と同じだと思う。苦しいからそこから逃げたらその後の感動はない。その苦しさに自分から向かっていく。苦しさや自分の弱さから逃げない生き方をしたい。

さて、このような1年生の成長の陰には、その成長を見守り支え叱咤激励する3年生の存在があります。ちなみに斉藤を「バディ」として指導するのは3年の清野です。この秋の地区大会直前の清野のノートです。

悔しい。こんなに悔しく思うのは久しぶりだ。斉藤をあそこまで下げてしまった。私の指導のレベルの低さ。キーワードを伝えても、なぜそれが必要なのかを指導しても斉藤はやれない。指導者としての悔しさ。先生はいつもこういう気持ちになっているんだろうな。だからこそ、先生は「やらない」瞬間を逃さない。全力で伝える。だからみんな必ずいつか進化する。私にはその熱がないのか。

「清野、おまえ、斉藤頼むわ」 そうやって初めて信頼されて任されたのに。斉藤を任せられて一緒にバディを組ませてもらって、指導者としての楽しみもわかってきた。斉藤は思いに応えようとしてくれるから、一緒の時間は楽しいし、向上があるとすごくうれしい。

けど今のままじゃダメなんだ。私の言葉は相手の心に届かない。斉藤も斉藤であまりにも問題意識が低すぎる。このバディ、今のままじゃダメだ。自分がどれだけ必死でも、相手の心に届かない必死さなら、それは一人よがりで意味ない。岩田のように、もっと熱く。もっと本気になれ!

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先生から借りた資料の中で、なるほどと思ったことがある。「同じリズムで打つ」ということ。斉藤の大問題の三つの他に、「リズム」ってことを課題にした方がいいのかもしれない。どんなボールにも同じリズムで入れるように「準備を早くすること」。私も1年生の時に「リズムがない」って伝えられた。その時に先生から「リズムを自分のものにするには半年はかかるよ」とも言われた。私は実際もっとかかった。斉藤には、目の前の課題を克服させながら「リズム」をいつも感じさせよう。

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北越には「恩送り」という伝統があります。これは自分が下級生の時に先輩から親身になって指導していただいた、上級生になって「恩返し」をしたいけれど恩を返したい先輩はすでに大学や就職で目の前にいない。返したい恩を下級生に「送る」=「贈る」それが「恩送り」です。もう十年も続いています。日本一の水澤でさえ1年生の時に大きな恩を受けており、その恩を何倍にも膨らませて下級生を指導しています。大きな才能がありながら、不器用でその才能の発揮の仕方を知らない1年生の星野を辛抱強く指導しています。また、北越は新入生にいろいろなことを教え指導するための「バディシステム」を取り入れています。一人の1年生に一人の上級生がつく。北越のテニスはかなり緻密で身体の内部操作の習得にも時間がかかるので、その一つひとつを丁寧に教え伝える必要があります。その責任を担うのが上級生バディです。バディを務めながら上級生は教育と責任を学んでいきます。その姿を見ていると、引退してからこれほど「人として」成長するのか、と驚き感動する場面がたくさんあります。

今年の3年生は6人います。このブログの中で、水澤、冨樫、田中、今井は団体メンバーとして活躍し、何度も名前が出てきていますが、清野美穂と入江ゆいほという二人の存在なしでは、今年のチームは語りつくせませんし、新チームの成長も決してありません。

3年間、北越というフィールドを全力で駆け抜け、そして今、全力で1年生を育てている二人にスポットを当てて、チーム北越の魂を別な角度から紹介してみようと思います。

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清野美穂は、新潟市立大江山中学校出身。ソフトテニスは中学から始め、中学時代の実績はなし。チーム北越との接点は冬に毎年行っている新潟市協会さんが選出する新潟市(旧新潟市内)強化メンバーとしての合同練習です。これも「恩送り」の一環として中学生強化にチームとして毎年協力しています。清野はそこに参加して、いわばカルチャーショックを受けたのです。チーム全員が(これが一番大きな衝撃のようです)、全く手を抜かず全力でしかも笑顔で元気で厳しい道のりを歩んでいる。しかも手のかかる中学生に対しても全力で誠心誠意声をかけながら指導してくれる。こんな世界もあるんだと感動して、周囲の反対を押し切りチーム北越のメンバーになった子です。

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入江ゆいほは、新発田市立本丸中学校出身、本丸中でレギュラーを務めていましたが、高校の上位でやっていくには相当の努力が必要なレベル。前衛でしたが正面ボレーができない前衛でした(笑)。北越との接点は当時の顧問の先生が熱心な先生で何度か練習を見に来たり合同で練習したことがあり、その時にやはりいい意味でのカルチャーショックを受けて自らの進路を電撃的に定めてしまった子です。周囲は「ついていけない」と反対しましたが、ブレることなく意志を貫いて仲間になりました。

僕は時々不思議な気持ちになります。この二人よりもはるかに実力も実績もあるのに、北越に誘っても「自信がない」という理由で自分の才能や経験を伸ばそうとしない子が毎年います。とても残念に思います。

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一度しかない人生、一度しかない青春、もし少しでも才能や秀でるものがあるのなら、それを全力で生きなきゃ生まれてきた甲斐がないじゃないか。この二人には才能はありません。実績もありません。あるのは意欲と意志とカルチャーショックから来た感動です。僕の尊敬する評論家で武道家の内田樹氏がどこかの本でこんなことを言っていました。「人が人生を主体的に豊かに生きるために大事なことの一つは、自分に何かが訪れた時に、それを天恵(天から自分に贈られた恵み)だと信じられるかどうかだ」言葉は違うでしょうが、このような意味のことを書いておられて、僕は深く共感しました。自分の人生、周囲の人の生き方を見ていても本当にそう思います。ある扉のキーを目の前に置かれた時、勇気をもってそのキーを手にし、扉を開けるかどうかは、知識でも実績でもなく、自分に訪れたこの機会は天が自分にくれたギフトだ、そう考えることができるかどうか。自分はそこまで…、そう言って無難な道だけを積み重ねていったところで、その先にはまた無難な道が続いていくだけです。永遠に平坦な道…。それって生きてますか?

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周りの反対を押し切って、Dream Factoryチーム北越の仲間になった二人ですが、現実はそれほど安易なものではありませんでした。1年時は試合にすらならず、技術の習得、フィジカルの成熟、メンタルの整え方、大失敗の連続でした。1年時から、この二人で組んできたのですが、お互いのちっぽけなライバル心が悪い方向にはたらいてしまい、とにかく仲が悪い。いつまでたっても我を立ててお互いを受け入れられない。2年目も上ったり下がったり、自分と向き合う日々が続きました。

大きく変化が見られてきたのは、3年になって(北越は新1年生が練習に参加する1月からは3年生です)、自分のバディが決まってからだったでしょうか。テニスノートを見ていると、その兆しが形になり、実際の思いになり、お互いへのリスペクトと信頼につながっていく様が、よく理解できて、読みながら何度も感動させられました。

3年になってからの清野のノートです。

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入江と私は今日の練習で1年生に間違った指導をしてしまった。それを伝えてもらった後、驚いたのは入江の涙だ。入江の心の中で、強い後悔が生まれていたんだろう。その後、入江は自分の練習にも入らず、ずっと付きっきりで1年生に回り込みのステップを教えていた。入江は昨日も遅くまでノートの書き方を教えていたし、今朝もどうすれば分からせてあげられるか真剣に悩んでいる。本気でバディの1年生を成長させようとしているんだなって、入江の姿を見ているとよくわかる。だから、今日のコーチングの失敗は悔しくてたまらなかったんだと思う。

さっきのミーティングを通して、今までの自分は本当に何やってたんだってくらい、自分の小ささを感じた。ああやって一人ひとりが自分の思いを話して、私は3年生の変化を強く感じた。田中が鷲尾に涙を浮かべて伝えていた姿。冨樫の言葉には一言一言に情熱があって、ミスが続いて落ち込んでいた今井には「風花は逃げないで北越を選んだんだよ! でも3年になっても弱い心でコート立ったら、長商との決勝戦で、高校を選んだ時の勇気も風花の進化を信じて一緒にやってきたチームの心も全部壊してしまうことになるんだよ! 」って熱く伝えていた。その言葉はそのまま私に言われてるようで苦しかった。

私は3年にもなって、まだ自分を信じられないの?  自分でもよく分からなかった。本当に苦しい… 思いはあるのに、どこかで引っかかっているような… 

改めて考えてみる。

自分は何で北越に来たのか?

まず、中学でやりきれなかったからだ。テニスが好きで、好きだから精一杯やりたかったけど中学ではできなかった。冬の合同練習に参加させてもらって驚いた。あれだけ全員で本気でテニスに打ち込める北越のチームに入りたくて入りたくてどうしようもなくなった。自分が好きだって言えること、それは私にとってソフトテニスだ。それをとことんやり切ってみたかった。やり切らないまま諦めたくなかった。先生方には「おまえじゃ無理だ」「続かない」と言われた。両親には反対された。でも、周りの全ての反対を押し切って、両親に頼み込んで北越に来た。そしてこうしてずっと夢だった憧れの場所でテニスができてる。それなのに、まだ疑う心が自分を支配して、真っ直ぐにラケットを振り切ることができない。こうして最悪な形で高校テニス人生の幕を下ろすのか!

3年間北越でやってきて身に付けた力は必ず全国で通用する。それは中学校で実績がなかった多くの先輩たちが証明している。その可能性を封じているのは、全て自分自身なんだ!

なぜ、私は自分を信じて戦えないのか? 自分が勝ちたいとしか考えてないからじゃないのか。

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庭野先輩は3年として、いつだって団体の夢を一番に考えていた。その思いがこのチームを全国の決勝まで導いたのではなかったか。私は今まで3年として団体にかける思いはどれだけあったか? 私が団体の選手かどうかは関係ない。何が3年だ! 結局、私は自分の個人戦のことしか考えていないじゃないか! 「この先輩たちと戦い抜きたい!」って私は1年生に思ってもらえているか。そういうチームを作っているか。そうでなければチーム一丸となって戦うことはできない。

私だって北越の3年だ。もう一度自分の姿を見直そう。周囲への声掛けはできているか? 自分に集中し過ぎてないか? 団体で日本一、そこにどれだけエネルギーを注げているか? 

3年の春季地区大会。二人にとってはラストの地区大会です。

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入江は1年生の斉藤と組み、斉藤をよくリードして、巻高校のシードペアを破り自己ベストのベスト8に入りました。マッチポイントは入江の渾身のノータッチサービスエースです。一方の清野は期待をして2年生の佐藤と組ませて勝負させたのですが、ここでも上にある通り、自分を信じ切れずに競り負けてしまいました。

地区大会は、それぞれが下級生と組むことでペアに頼らず苦境を乗り切って戦い、その上で最後の県総体、と思っていましたが、一人はやりきり、一人はやり切れなかったという結果です。

その日の入江のノートです。

今日、地区大会が終わって、県総体のペアをどうしたいか、先生から聞かれた。ベストで戦えた1年生の斉藤と組むか、1年生の時から組んで二人でIHを夢見てきた清野と組むか。

美穂(清野)はこの地区大会、また自己ベストで戦えなかったという。私は菜月(斉藤)と組んで戦いきった。正直言うと、菜月と組んで出たらさらに自己ベストを更新出来るんじゃないかと思った。

でも、私だけ自己ベストで気持ちよく戦っても意味ない。美穂とは3年間本当にいろいろあった。一度も心を一つにして戦えたことはない。でも、庭野先輩が引退してからの夢が「清野と入江をインターハイへ」だった。私はこうしてたくさんの人に支えてもらった。迷惑も一杯かけた。ここで私が私だけの幸せを考えてしまったら、たくさんの人たちに申し訳ない。そんな生き方はダメだ。だから、私は清野とチャレンジすべきなんだ。目の前の勝利が大事なんじゃない。もっともっと大切なことがある。北越でそういうことを学んできたじゃないか。

先生、私、美穂と組んで最後の戦いをさせてください。お願いします。

その思いを清野に伝えた時、清野は嬉しくて申し訳なくて悔しくて、貴い涙を流しました。

入江は自分の決意に命を与えるべく、毎日を必死で生きます。清野はどうしても、申し訳なさがあるのか、退いてしまう。県総体1週間前。練習試合の帰り、上越市での調整練習の時、清野はチームとして取り組んでいることを忘れていて、1年生に申し訳ないから今日は打たないでチームのサポートに回りたいと言います。この時期にそんなことはありえない。僕が言う前に、入江が動きます。

3年としてチームにエネルギー与えられてないから、今日は打たない?

馬鹿なことを言うな!

打たないでサポートに回る時期か!  打たないでコートで玉拾いすることが何でチームのエネルギーになんの⁈

そういう女々しいこと、もう考えんな!

私が伝えたかったのは、美穂が大事なポイントが抜けていたことは、確かに1年生に見せる姿じゃないけど、でもそうだったという事実は仕方ないんだから、潔く認めて、次にどうしていくかを明確にしてほしい、ということ。

私が帰りのバスの中で話したのも「ブラックの(周りが見えなくなる短所)私と、女々しい美穂が、どう力を合わせて最後の県総体を戦っていくか」そういう前向きなことを話したかったんだ。

私は、もう昔と違って美穂の欠点や短所を否定しない。ただ、前を向いていこうと呼びかけている時は、それを感じて、ちゃんと私の目を見てほしい。精一杯プラスに向かうように伝えているんだけど、心に響いてないのは表情見てわかった。

でも、美穂、こんな状態でも、私、諦めたくないから!

私たちは、今試されてるんだよ。こういう状況でも前を向いて、1%でも2%でもIHに近づくために、心が一つになれないとしても、お互いの良いところを合わせて協力していこうよ! 北信越決めで当たる長商のレギュラー、二人で心を一つにして戦わなきゃ100%勝てないんだよ。

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ただ、強く言うだけじゃ、私たち以前と同じだ。少し考えてみよう。美穂はたぶん、引っ張られるより引っ張っていく方がイキイキするタイプだ。1年生への指導とか見ていても、指示されるより指示していく方が良いんじゃないないかなぁ。それなら私は、上から伝えていくお姉ちゃんじゃなくて、妹をたてていくお姉ちゃんになろう。だから、あえて妹に頼って、頼んで、素直に「ありがとう」って微笑んで。そうしたら私たちうまくいくんじゃないか。

今日、いや今までも、私が美穂に上手く思いを伝えられなくて悩んでいた時、仲間はたくさん声をかけてくれた。

奈央、風花、莉穏、本当に本当にありがとう。こんなにも本気で、こんなにも心ある幸せな環境にいる。

私は、絶対チームのエネルギーとなるよう、全力で生きます!

美穂、この最高の仲間のためにも、私たち頑張るよ!

そして迎えた、最後の県総体個人戦。

練習ではもう一流選手並みのストローク力をつけた清野(実際、フォアストローク技術としては水澤の次まで成長したと言っていい)ですが、勝ち切った経験がないので、どうしても不安がぬぐい切れません。

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初戦は負けるはずはない試合ですが、清野は相手と戦わず、自分と戦っています。それを救ったのは入江でした。1、2年生の時の入江ならば、自分が一人で何とかしようとして無謀な選択を繰り返してドツボにはまるか、相手に流れが行くので焦って一緒にミスを重ねるかのいずれかだったと思います。成長していました。二人は何度もベースライン上でしゃがみ込み、心を一つにしようと精一杯努力していました。入江は心の底から清野を励まし、エネルギーを与えつづけ、自分は冷静にラリーを続け、フットワークが浮ついて地に足がついていない清野のためにキーワードを叫びつづけました。ベンチには柳先生が入ってくださっていて、柳先生のこの言葉もとても効いたと思います。

「いいんだよ、3年間かけてきたんだから、そうなるんだよ。そうなったからダメなんじゃない。そうなっている中で何ができるかなんだよ!」

本当にその通りです。思い通りにならない時、誠実で真面目な子ほど、ああまただ、自分はまたダメだと思ってしまいます。それはダメなんじゃなくて、誰よりも自分と向き合い、自分の青春をかけてきたからこそ、緊張もし重くもなるのです。でも向き合ってきた強さは、その状態でも自分は何ができるか、ベストでなくても、今のベターを見つけてシンプルにそれをやり切る。そういう中で光が見えてくることもあるでしょう。

入江と柳先生、そして保護者の皆さんの応援で、清野は少しずつ落ち着きを取り戻していきました。そして逆転勝利!

1回戦。ここにも深い青春ドラマがありました。本当に「素晴らしい戦い」だったと思います。

2回戦は、北越の美しいストローカーとしての本領発揮、清野ものびのびと戦い快勝!

ついに、優勝候補の一角、長岡商業との決戦に臨みました。二人は精一杯、北越らしく、3年間の誇りをかけて戦い抜き、敗れましたが、二人のドラマを自己ベストで締めくくりました。

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入江のノートです。

夢、叶えられなかった…

悔いがないなんてことはない。でも最後をベストで戦えたっていう清々しさがある。

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私は高校最後の試合を美穂と組んで戦えて本当に良かった。あの時、美穂を選んで本当に良かった。

正直、1試合目はどうなることかと思ったけど…  美穂も最後の長商戦は信じて打ち切れたね!

3年間、ケンカばっかりしてたね。本当にいろいろあった。でもここまで来れた。こうして最後の試合を美穂と戦って楽しかった!  ありがとう! Dsc_2970

応援してくださったたくさんの保護者の皆さん、先生方、庭野先輩、ずっと気にかけてくれたチームのみんな、本当にありがとうございました。私はここにいて、ここで戦って、本当に幸せ者です。たくさんの心、本当にうれしかったです。

さあ、いよいよ団体戦だ。「今年のチームは私たち6人のチーム。」奈央がずっと言ってくれてる言葉だ。3年の選手4人が、1年生のこと、チームのこと、私に任せたよ!ってくらいに頼れる存在になってこのチームを下支えする。それが私の団体戦だ。そしたら選手たちは思い切り相手と戦ってくれる。

よし、心を一つにして6人で宮崎IHへ!

ニュースにも話題にも賞状にも、何にも残らないけれど、こんなに素敵なDreamが今年花開いたのです。不利がささやかれながらも団体は圧勝。それは団体メンバー3年生4人だけで成し遂げたものでは決してありません。脈々と引き継がれている「北越魂」それは「泥臭く自分と向き合う強さ」です。

「自信がない」と言って自分の才能を磨こうとしない若者は、ひょっとするとこの「泥臭く自分と向き合う」ことを避けたいのかもしれません。確かに昭和的ですし、カッコよく見えないのでしょう(僕的にはメチャクチャカッコいいですが)。もっと「自由に」「スマート」にやりたいのかなあとも思います。でも、このスマートで便利で合理的な方向へすでに振れすぎている現代文明という水質の中で、それでも我々は「命」として他の「命」とかかわっていかねばならない。「命」と「命」が深く分かり合い結びつきあうためには、言葉が必要です。ただ、言葉が上っ面を滑らかにすべっていくのではなく(それでは信頼は成立しない)、他者の心に入っていくには、そこに深い経験が伴わなくてはならないでしょう。深い経験とは自らと向き合うこと以外に獲得できるものではない。いくら辞書の言葉をたくさん覚えても、いくら外国語の語彙や様々な知識を頭に入れても、人の心を動かすことはできません。他者の中に勇気と希望を生み出すことはできません。大切なことを他者に伝えたいのなら、自分と他者との関係の中で、自分が伝えたい言葉や考えと格闘することです。

小学校からすべての教室にエアコンが入り、高い気温の下で運動をさせれば親から苦情が寄せられ、朝は皇族のように学校の玄関前まで送迎され、教師は思いがどうであれ強い言葉で生徒を刺激してはならず、部活動の時間も「当局」の指導によりどんどん制限される。子供たちは小学校からスマホを持ち、バーチャル空間こそが本音であってリアルは「つくろう」世界であるかのように振る舞う。現代の子供たちが置かれる環境は、どんどん樹脂のように滑らかになり、凹凸は拒絶され、リアルなざらつき、泥臭さは敬遠されてゆくのかもしれません。しかし、dream factory の卒業生はとても精神的に自由で、ほぼ例外なくリーダーを任され、社会に開かれて生きています。人生の「観」を作る大事な思春期にしっかりと自分と向き合うことは、「生きていく根源的な自由」を手にすることなのだと信じて疑いません。

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私が教室やコートで出会う若い「命」たちに、全身全霊で「命の何たるか」を伝えるのも、あと数年となりました。私は最後まで「泥臭いFactory」でありたいと思います。時代の流れに反するそのエネルギーの源は、実際の生徒たちの変容です。今回紹介した清野美穂は言葉は悪いですが、入ってきたときは「ただのクソガキ」でした。憧れだけは強いけれど、何もわかっていない幼稚な子どもだったと思います。それがこのFactoryで育ち、泥臭く自分と向き合い大きく成長していった。彼女は学校からも推薦され看護の道を歩むことになりました。

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看護の実際の現場は、まさに文字通り「命」に係わる誠実な言葉と行動が求められます。自分の弱さと格闘し、自分の闇も光も経験した彼女は、きっと「命」に届く心を持つ素晴らしい看護師さんになるでしょう。入江ゆいほは北越で過ごした3年間で、やはり自分はスポーツの世界で誰かの役に立ちたいと思うようになりスポーツトレーナーの道を歩むことにしました。

すみません。時間があるからと、かなり筆が走りすぎました。

最後に「恩送り」に誠実に取り組んでいる清野のノートを紹介して今回のブログを閉じたいと思います。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

今日はフリーだったので、夕方中学校へ行って卒業時に担任だった先生と話をしてきた。その先生は、他が全員反対の中で唯一私が北越でテニスをすることを応援してくださった、本当に私の信頼する先生。最近、自分の気持ちの中に、自分の言葉が後輩の心に届かないという「もやもや」があって、それを相談しに行った。答えはシンプルだった。「相手に変化がないのは、自分自身に問題がある」ということ。「相手のこと本当に理解しているか?」と聞かれた。私は後輩の問題は知っている。けれど、どう思っているのかというところまでわかってあげられていない。

一番は信頼関係。そして、相手を変えたいなら、まず自分自身が変わること。

先生は、私の何百倍何千倍ものたくさんの様々な経験をしてきている。だから、あらゆる方法や道を提案できる。逆に言えば、私は先生の何千分の一の経験しかない。私が希望する進路は人に希望と元気を与える仕事だ。私自身、もっともっと知識をつけて、いろんな見方ができるようになりたい。だから、今、本を読みたいと強く思う。広い視野を身につけたい。

そして、もう一つ。たとえ変化がなくてもその人がダメだと思ってはいけない。そうすると、相手の悪いところしか見えなくなってくる。良いところを見失ってしまう。その結果、相手が変わろうとするきっかけの瞬間を見過ごし、相手も変わろうとする気持ちが薄れるということ。このことは逆に、いかに信頼関係が大切かということだ。津野先生も庭野先輩も担任の先生も、信じているから心に言葉がしみ通ってくる。そのくらいの揺るぎない信頼関係を築くためには、まだまだ自分が変わっていかないとだ。

※ 練習見学、進路相談、受け付けています。

  北越高校 025-245-5681

  メール  seiji.tsuno@gmail.com

2019年8月13日 (火)

Dream Factory 2019 盛夏

チーム水澤 宮崎IH報告

団体戦

2回戦 北越 1-② 脇町(徳島県)

    鈴木・佐藤 0-④

    水澤・今井 ④-0

    田中・冨樫 3-④

宮崎での暑い真夏の戦いから2週間。国体選手はブロック国体突破を目指し、新チームは新たに鈴木唯香キャプテンの下、新チームの基礎作りに励んでいます。2週間前、初戦で敗れた宮崎IH、すでに遠い昔のようにも思えます。団体戦、2回戦で徳島県脇町高校に1-2で敗れました。思い返せば1年前、三重IHの初戦も非常に危ない試合でした。勝ちを意識するが故の初戦のぎこちない戦い、相手は1回戦を勝ち上がってきた勢いと慣れがある、その危うい試合で勝ちを拾えるかどうか、それが導火線に火が付くか、付かずに消えるか、大きな分岐点であり、その明暗が昨年と今年、勝負は紙一重なのだと思います。

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選手たちは特に3年生が「最後」のパワーを発揮して戦ってくれました。キャプテンでエースの水澤奈央のみならず、県総体の記事でも紹介した今井風花、田中遥奈、すばらしい気魄で北越魂を表現しました。負けた後、悔しさでしばらく正気に戻れなかった冨樫春菜も決して戦いから逃げたわけでも弱気になったわけでもありません。強気にラケットを振り、持ち前の気魄を出して戦いましたが、最後のところで小さなミスと判断ミスが重なりました。この「炎の3年生」と少しでも長く戦いたいと願っていた2年生の鈴木唯香、佐藤莉穏、この二人は選手として出場しましたが、チーム北越として戦うことはできませんでした。いろいろ敗因はあげられますが、今年のチーム北越の3年生が、北越らしく「自分と向き合い」「人間としての成長を果たし」「誰かのために」全力で戦い抜いた結果ですから、そこに至るまでの日々、そして最後のIH、これからの人生、

すべてにSAY YES! 

チーム北越、チーム水澤、よく頑張ったな!

キャプテンとしてエースとしてチームを率いた水澤の前日と当日のノートです。

明日がいよいよラストのIH団体戦。すべてはこの日のためにやってきた。1年生の時はなつき先輩と「次は絶対!」の思いで戦った。2年生になってキャプテンとしての責任を果たす厳しさと楽しさを知った。そして3年目。1,2年生の時よりもスキル、フィジカル、タクティクスも高め、ブレインもハートも強化してきた。

その3年間すべてをラストのIHでコート上に表現しきる!

私はこのチームで、この仲間と一緒に戦えること、何よりもそこに感謝したい。先生、キャプテンを任せてくださってありがとうございました。「北越高校に来て良かった。この仲間と本気で全力で夢を追ってきてよかった。」その思いをコートで表現します。

すべての感謝、思いを一球に込めて!

最後のミーティング、みんなの熱い思いを感じることができた。今年のチームスローガン「やり切って日本一」、それぞれが「自分のやりきること」を宣言したけれど、言ったならやれ! 宣言は自分自身への誓いだ。

去年の先輩たち、苦しい時こそラケットを振っていく姿が本当に格好良かった。あれくらい本気であれくらい泥臭く戦い抜くことが「北越らしい」。

私たちを応援してくれている人たちがたくさんいる。

勝負強いかどうかは「執念の差」

私には意地がある。キャプテンとしての意地がある。絶対に負けられない、だからこそ面白い。ベストを出したい。

今日の個人戦も「ここで終わってたまるか!」と思ったら(6回戦で敗退)、すごく何かエネルギーが湧いてきて、どんなボールも拾っていけた。

明日はチーム水澤として最後の最後。悔いなく戦い切る!

「やりきって日本一!」

(7月31日)

◎南九州インターハイ団体戦 令和元年8月1日

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日本一の夢が終わった。ずっと団体日本一を目指してやってきた3年間。本当にあっという間だった。もちろん準決勝、決勝を見ながら、「この場で試合をしたい」「エースとして思いっきりかけひきしたい」と思った。もっとこのチームで夢のような時間を楽しみたかった。悔しい…

でも最後の戦いで、私は自己ベストで戦った。そして何よりも風花(団体ペアの今井)が、ベストで戦ってくれたこと! スマッシュもコートを突き刺して次々と決めてくれたし、かけひきでも常に攻め続けた。今年の団体ペアとしての水澤・今井、今までで一番攻めていく姿を見せられたかなと思う。コートの上で、風花がスマッシュを決め、アタックをばっちり止めて、もう鳥肌が立った。いままでどれだけ弱気になり、自信を失うプレーをしてきたか…。それがこのラストでの強気の姿。本当にうれしかった。

ガッツポーズをして観客席を見ると、お父さんが大きな声でガッツポーズをして喜んでくれている。一緒に戦ってくれている人がいる幸せ、誰かのために戦うことの楽しさ、それを実感できた。やっぱり北越の団体ってなると、何か自然にゾーンに入っていける。だからこそ、五十嵐さん(毎年北越を応援してくださり、プロ級の写真を多数贈ってくださっていた五十嵐広之さん。昨年暮れに逝去)に日本一の風景を見せてあげられなくてすみません。「誰かのために」それを力にできる北越、後輩たちがいつか必ず実現します。

2年生の鈴木、佐藤は今回の失敗経験から大きく変わってくれることを期待したい。インターハイのその1球、その判断、すべては日ごろの自分が全部出る。

後輩に改めて伝えたい。やってきたことだけしかできないんだよ。日ごろから「やれませんでした」「やりきれませんでした」という人間にIHの舞台でできることなど一つもないから。

私の最後のIHは一生忘れられない悔しい思い出になってしまったけれど、改めてこの3年間やってきたことは間違ってなかったと実感する。北越でテニスをやる価値っていうのは、日本一を目指せるということじゃなく、日本一を目指しながら人間的に大きく成長するということだ。1、2年生はそこに早く本当に気づいて、自分の人間的な課題に真剣に取り組み、人を幸せにする努力を積み上げてほしい。それが「日本一」にも「人生」にも大事なんだってわかってほしい。

このIHの悔しさからもエネルギーを集められる。それが北越。

「あらゆることから力を集めて光を放て!」

後輩チームは来年へ向けての戦い、私自身は、国体、日韓中国際大会、全日本、まだまだ戦いは続く。

「やりきって日本一!」このスローガンは、まだ私の胸の中に生きている。

(8月1日)

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最後に、この水澤のノートに僕が書いた返事を載せます。

日本一を目指して本気で生きた毎日、その妥協のない一瞬一瞬。君が育った道のり、君から教わった選手としての生き方。そのすべてが光にあふれたものであり、これで終わりかと思うと寂しくもあり、同時にやりきったという清々しくもあります。

最後は戦いの途中なのに先へ進めなかった、という終わり方だったけど、日本一という目標を本気で叶えようとして全力で生きた日々は紛れもない事実だと胸を張って言うべきです。その結果、叶った夢もあり、叶わなかった夢もある。叶った夢だけが貴いのではありません。本気で生きた日々こそが貴いのです。

君はいつも、どんな状況にあっても、どんな苦境にあっても、決してあきらめなかった。自分を信じ、チームを信じ、幼い後輩たちの成長を信じ、真っ直ぐ前を向いて、あらゆることの推進エネルギーを燃焼させ続けてきました。

誰よりもガッツを前面に押し出し、他人には優しく厳しく、自分には厳しく厳しく、心技体智、すべてを磨いて、人間的にも深くたくましく思いやりのある人に成長しました。

僕は、あなたのような人が全日本のキャプテンになるべきだと思います。あなたがエースとしてキャプテンとしてアジア大会やオリンピックで金メダルを獲ること、その日を楽しみにしています。

全国区の高校からの誘いも断り、地元新潟で自分を磨くことを選択し、そして手にした二つの日本一とキャプテンとして導いたインターハイ団体準優勝。君が示した生き様は、たくさんの地方で頑張る選手や家族に希望と勇気を与えるものだと思います。

素晴らしい3年間でした。

本当にありがとう。

君に出会えてよかった。

◎今年のIH旅行は憧れの屋久島へ行ってきました。

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2019年6月26日 (水)

Dream Factory 2019 初夏

2019 ハイジャパ シングルス

水澤奈央 女子で史上初の連覇!

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無欲で戦って届いた去年の日本一。狙って果たした今年の日本一。

水澤奈央が、札幌で行われたハイスクールジャパンカップ2019 シングルスで、高校女子史上初の連覇を達成しました。

 ※結果は北海道ソフトテニス連盟のハイスクールジャパンカップのサイトに載っています。

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スコア上では競った試合は一つもないのですが、初戦から厳しい試合が続きました。本人曰く「全てファイナルを戦った感じ」の試合。ベスト4に残った1日目、脚部疲労を聞いたら「脚は大丈夫ですけど頭が疲労です。」と言うのです。それほどの神経戦。敵の良さを理解した上でそれを封じ込め、多彩なショットで相手を追い込んでいく。最後は相手に試合をさせないでゲームを支配していきました。

ストロークのボールのスピードだけなら、水澤より速いボールを打つ選手はたくさんいます。脚の速い選手もたくさんいる。しかしシングルスの強さは総合力だと、彼女の試合を見ているとよくわかります。フォアハンド・バックハンドストロークの正確性、フットワークの使い方、テンポコントロール力、身体の敏捷性とバランス感覚、ショットのバリエーションとその構成力、さらに予測能力、最後にメンタルタフネス。その全てを彼女は昨年の「予想外の」優勝から、1年かけて磨いてきました。昨年度優勝はしましたが、明らかな課題としてクローズアップさせられたバックハンドストローク、柔らかいタッチのドロップショット、スライス、そのすべてを向上させて、同じ日本一でも進化した日本一だったと思います。

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うちのチーム内に水澤と互角に打ち合える選手はいません。この時期、シングルスの練習に多くの時間は割けません。それでも正しい理解と問題解決型の練習の積み重ね、そして何よりもチームや後輩の様々な欠点や不足をキャプテンとして真剣に考え、適切なアドバイスをしながら、その過程をも自身の成長に組み込んでいく。そのような日々の充実こそが水澤の強さの源泉です。

今回の決勝の相手、岩国商業の山田さんも地元で頑張っている選手だと聞いています。素晴らしいファイターで決勝に来るまでの間に何度も窮地があり、その厳しさを高いコートカバーリング能力と精神力で乗り越えてきたように感じました。全国区の学校ではないチームの選手同士で決勝を戦えたことを嬉しく思います。水澤は以前から山田さんを知っていて、ひたむきで誠実な練習態度に共感して「決勝で会おうね」とお互い言い合っていたそうです。

水澤のテニスノートから

連覇って自分に言い聞かせてきたけど、苦しい時期もあった。不安な時期もあったし、自信を失いかけた時もあった。だけど、そうやって苦しみながらもチームのことを第一に考える中で自分の時間を見つけてシングルスの技術を磨いてきた時間は、今振り返ってみて、やっぱり幸せな日々だったと思う。こうやって連覇できたこと、それは本当に本当にいろんな人の支えがあったからこそ。先生、朋恵先生、チームのみんな、家族、友達、いつも応援してくれるすべての人たちから、いつもエネルギーをもらって頑張れた。本当にありがとうございました。でもダブルスの優勝は叶わなかった。この夢は必ずインターハイで実現してみせる。まだまだ、お前は弱い! もっと本物になってみんなを日本一に導いて、ダブルスでも冨樫と日本一になる。今のままじゃまだまだ。もっともっと上へ。

今年のハイジャパは天候不順で、土曜日の日程がすべて中止→延期になりました。せっかくなので、北海道博物館と隣接する北海道開拓村へ行ってきました。

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北海道開拓の歴史は本当に奥が深かった。先住民のアイヌの人たちの大地を和人たちが侵略し、貴重なアイヌの文化が失われたというイメージをずっと持っていた。博物館でもその思いは強くなって人間の文明の広がりの裏にある負の面を思い知らされたけれど、その後連れて行ってもらった北海道開拓村では開拓していく人間のエネルギーと活力を感じることができた。

伝統と進化。どちらも大切なんだと思う。北越に来るまでは新しいもの大好きで、古いものにはあまり興味ない人間だったけど、先生の好みの「古き良きもの」に触れていく中で、伝統の継承と新しいものの追究がどちらも大切なんだと思うようになった。革新ばかりにも保守ばかりにもとらわれることなく、どちらも大切にしていく人間になりたい。

ダブルスは、水澤奈央・冨樫春菜がベスト8。まだまだ課題山積みです。夏の宮崎に向けてまた宿題をたくさんいただいてきました。あと1カ月、日々精進、日々ベスト、一歩ずつトップのチームに追いついていきます。

北越は夏のヒマワリ。冬~春にかけてチームみんなで耕した極上の畑で、これからぐんぐん伸びていきます!

遅ればせながら…

県総体 8連覇!

3年生6人で引き継いだ「向き合う強さ」

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県総体 団体決勝

 北越 ②-1 長岡商業

戦いが終わった夜、北越の関係者ではない方から、メールをいただきました。

夜分すみません。おめでとうございます^_^お疲れ様でした!
今年の試合は、多分私が初めて見る北越でした。津野先生でした。あの厳しい中をどう戦い抜くのか本当に楽しみでした。崖っぷち。背水の陣にあえて布陣を敷いて臨む闘将。そして信じて突き進む選手。私にはそう見えました。勝手な解釈すみません。でも感動したんです。あんな水澤見たことない。緊張と責任感と。そしてアップ中の冨樫。もしかして1番強いのは冨樫選手かもしれない。そう強く感じさせられました。今井の苦しみ。田中はほぼノーミスですか。あれだけ調整に苦しんだ彼女が選んだ道はペアを信じて黒子に徹したプレー。支えるという役。いい戦いでした。ありがとうございました。

今年はシード大会の結果から、第2シードとなり、第1シードの長岡商業に挑戦する形の県総体になりました。厳しい状況でしたが、県総体で見せた3年生の姿はやはり、この北越Dream Factoryの魂をしっかりと受け継いだものでした。

団体戦、特に決勝の長岡商業との試合の主役は、前日の個人戦優勝:水澤、冨樫ではなく、3年生の今井風花、そして田中遥奈です。

別な方からいただいたメールにはこうあります。

特に今井のプレーに感激しました。というより、驚きました。あそこまで力を出せる選手だとは思っていなかったです。インターハイでも是非熱戦を繰り広げてください。応援しています!

第1対戦で、1年生の星野・高橋が善戦及ばず長岡商業のエースに負けて、0-1の崖っぷち。そこで見せた第2対戦、今井の一つひとつのプレーは気魄あふれるものでした。ベンチにいても、鳥肌が立ちました。気弱で逃避体質だった今井が大舞台で見せた闘志あふれる堂々とした戦いぶり。向き合い続けた2年間を経て、彼女も北越魂をしっかり身に着けていました。一番大事な場面で自分の一番を出せる、そのために彼女が弱い自分と向き合ってきた日々の一端を紹介します。

北越は新入生が入部してくると、バディとして担当の上級生をつけます。バディの下級生の指導を上級生が責任を持って行う。その中で新入生もそして何より上級生の自覚と責任感が育っていきます。今井も例外ではありませんでした。バディの1年生は多くの問題を抱えていて、今井は悩みます。でも、その悩みの中で自分に眠っていた責任感と自尊心が芽生えていきました。

今井風花のノートから

今日は1年生が入学して初めて全学年が揃って練習した。改めて、もう3年か…と思った。北越に来てもう2年が経つ。3年としての自己改革に取り組んで1週間。2年の時は、教室とテニスコートとの違いをなくそうと努力したけど、今はそれほど差はない。体育祭の係を決める時、今回は真っ直ぐ手を挙げて「はい!」と言った。私はどうしても周りの空気が気になる。でも、1年生の鶴巻とバディになって鶴巻に課題を出しているんだから、私が自分の課題から逃げるわけにはいかない。まずは自分がいうべきだと思ったことは、たとえ空気が固まってしまうとしても言うこと。(4月8日)

信じて戦う選手に! 3年としての思いを姿で見せる! コソコソ人間脱却!

私は団体戦で戦いたい。でもこの願望だけでは3年にのしかかる重さに勝てない。それが高校のスポーツなんだと、今はよくわかる。思いがいくらあっても、口でいくら強い言葉を言っても、不誠実なことを見逃していたら、一瞬で夢は後悔に変わる。

全国選抜の後、田中は先生と話して覚悟を決めた。そして「信じて打ってみろ」と言われて、そこから信じて打ち切れるようになったと言っていた。たった一言だけだけど、心がこもった言葉を心で感じれるようになった。私は悔しいけど、まだそこにはいない。

でも私はそこに行きたい。

最後の団体戦決勝で、北越の3年として、ただ勝つだけじゃなく、北越らしい桁違いの気迫。たとえミスがあったとしても、私はここにボールを突き刺す!という意志を持ってプレーし続ける。チームも巻き込み、周りの人たちも一緒に巻き込む試合。

私は今まで周りの人をガッカリさせる試合ばかりしてきた。これを変えたいんだ。みんなが両手を突き上げて「ウォー‼︎」と喜びを爆発させる試合。その日に向けて、全力で頑張りたい。バディの鶴巻も私が出した課題をやっているんだって思えば、毎日決めたことはやりきらなきゃ!

このノートを記したのが4月の中旬です。その50日後、ここに書いてある通りの試合を彼女は現実にしたのです。あまりのイメージの一致にこちらが驚きます。Dreamがまず強くあり、そこに向けて日々を力強く誠実に生き抜く。それが北越の強さだと思っています。

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(キャプテン水澤とマネージャー2年の岩田のノートをコピーして全員に配った翌日、今井はそれを自分のノートに貼り付けてこう書きます)

風花は最近、少々身体が調子悪くても「○○が痛い…」って弱音を吐かなくなった。今年が最後の全国チャレンジ、絶対一緒にIH行こうね! でも今のままじゃ無理だよ。小さな小さな自分から抜け出さないと! 鶴巻に風花が言っても伝わらないのに、栞(岩田)が言うと伝わる。何でかわかる? 風花が甘いからだよ。もう人からどう思われるかなんて気にしなくていいから、風花が正しいと思ったこと、伝わるべきだと思ったこと、その人のために、チームのために、なにより風花のために、熱く伝えるんだよ。(by 水澤) 

これを読んだだけで、私=今井風花という人間がどういう人間かがわかる。

2年から団体戦では奈央と組ませてもらっている。その最後の戦い、同じ瞬間を同じコートで喜びあいたい!

栞も熱く熱く伝えてくれた。

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風花先輩、もうラストですよ。先生が来てくださって、その挨拶の時に、1年生に向けて風花先輩の例を出されて話をしてくださいました。それは先輩へのメッセージも含まれていたと思います。そう強く感じました。風花先輩、今年の日本一へのキーは先輩が握っていると思います。去年の悔しさと感動を思い出してください。このままでいいわけはない。言ってやりましょう、やってやりましょう!  今年、あの舞台で最高の笑顔でガッツポーズをしているのは私だ! と。(by 岩田)

先生、今のこの状態では信用してもらえないかもしれません。でも、私は去年の木村先輩のように、先生を信じて戦い抜きたい!  チームのために、私自身のために、何度失敗しても見捨てないでチャンスを与え続けてくれた先生を信じて、今井風花を表現したい! (4月15日)

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こんなにストレートに自分の熱い心を表現できるようになっただけでもすごい進化なのですが、それでも、今井の臆病は形を変え品を変えて現れ、彼女やチームを失望させます。ただ、今井の真っ直ぐな心は3年生になってからは一度もブレたことがありません。七転び八起き、決して苦境にへこたれない北越魂が今井の心に宿り、育っていた証拠です。

県総体の個人戦、田中と組んでIH行きを決定した後でも、まだ自分と闘っていました。そして迎えた崖っぷちでの団体戦。

戦いの最中に何度もペアの水澤が口にしました。「ホントありがとう。マジ助かった!」 今でもアリアリと思い浮かびます。プレーボール1本目の気魄あふれるアタック止め! 誘いこんでのはじき出しボレー。ローボレーはノーミス。最後はスマッシュフォローでゲームセット。

見ていた人を感動させた彼女の県総体前日の思いです。

今日は県総体前日。

今日1日、ずっと緊張していた。3年の県総体って、こんな気持ちになるんだ。胸が高鳴って、落ち着きがないのを自分でも感じる。

でも、楽しみだとも思う。

チャンスをつかめなかった1,2年の頃、私は北越の良さに気づけなかった。今ならよくわかる北越の厳しさと優しさ、幼稚だった自分にはそれが苦しかった。

でも今の私は違う。

私自身の技術はまだまだだけど、信じて戦い抜くってことが少しずつわかってきた。向き合い続けてきた強さってのもわかる。一人の問題をチームで向き合う。だから一人の成長はチームの成長だ。

木村先輩からもメッセージをもらった。

「風花はたくさん乗り越えてきた」

とてもシンプルな言葉だけど、この言葉は私に強さをくれる。Img_6242_2

北越の強さと誇り、私が長岡のコートで表現する‼︎  北越に来て良かった。それをコートで表現して見せる。

県総体で元ペア(中学時代のペア)と当たるのは運命だ。

お母さん!  いつもいつも期待を裏切ってごめんね。でも今度こそ、この一番大事な舞台で今井風花をコートの外で応援してくれるお母さんに見せるから。大きくガッツポーズして「ありがとう!」って心で叫ぶからね!

私は誓います。

今井風花は、どんな状況でも、北越の誇りを胸に戦いきります!  (5月30日)

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もう一人の主役、田中遥奈。

田中の最初の覚醒が2年の夏だったとすれば、2度目の覚醒は春の全国選抜の後だと思います。

初戦で優勝した就実高校に0-③で敗退した夜、田中を部屋に呼んで、じっくり話をしました。叱るとか説教するとか、そういうことではなく、才能ある選手がその才能を磨ききることなく最後の戦いを迎えるのはどうしても納得いかない。就実と一番戦えたのは田中・冨樫ペアでした。しかし、さあ、ここからだ、というギアを入れるところで、いつも田中は思いが逆回転するのか、イージーミスが入って崩れていきます。第6ゲーム(G3-2かG2-3)の奪取率が極めて低い。それはテニスコートの練習だけではどうにもならない、一人の人間と一人の人間が丸ごとのぶつかり合う、そのせめぎ合いが一番顕著に現れる場面での弱さ=我慢弱さ、要はメンタルタフネスが弱い。そこをしっかりと伝え、日々の自分、テニスコート上での自分の技術練習以外での責任について話しました。

田中遥奈のノートから

ようやくわかった。今度こそわかった。「私には我慢がない。それは技術の問題じゃない。」

今日の全国選抜での就実との試合、攻めの姿勢を貫いて戦った。だけど、どんなに良いプレーがあっても、最後は我慢できなくて、みずから試合を降りる。敵にかなわないのではない。自分から敗退の道を降りていく。6ゲーム目の弱さこそが私の弱さ。先生が去年の夏からずっと伝えてくれたことがようやくわかった。

私は伝えてくれていることを信じ切らずに中途半端で生きてきた。だから、こうやって誰もが「ここ頑張れ! ここ我慢だ!」って思っている時に踏ん張れずに自滅…

あと4ヶ月、私が変わらない限り、日本一なんてありえない。

私には「我慢が必要!」

普段の生活からもう一度見直しだ。そして時間を有効に使うこと。私には日本一の夢に関係ない意味のない時間が多すぎる。まずはここからスタートして、大事な場面で頼れる選手になるから。今度こそ、奈央と2枚エースになる!

この日、選抜までのチームの解散式で、田中は自分について皆の前で語ります。その目、その声、その表情は、今まで見たこともない田中の姿でした。この世界(スポーツを通じての自己向上を果たす世界)にいさせてもらって、一番感動を覚える場面です。一人の人間の精神的脱皮の瞬間、本当に人間にも「変態(幼虫→成虫)」はある。そう確信します。ヤゴの殻を破って瑞々しい羽根を広げる、あの蝶の誕生の瞬間と同じドラマが人間にもある。しかし、青春期に「変態」を果たさないで大人になっていく若者たちの何と多いことか…。

僕は、その日のノートにこうコメントしました。

遥奈、君のミーティングの言葉にとても感動しました。君の声がどれほど澄み切って真っ直ぐに響いていたか。2枚エース、本当にやりきろうな。

その後、田中はノートに毎日色ペンでこう書くようになりました。

宮崎IHまであと○○日  決めたことをやりきる!

攻めてるのに負けた選抜  相手マッチに弱い私を超える!

「甘く、女々しい田中脱却!」

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センバツの後のYONEX杯で、田中はこんな風に記しています。自分のことなのに自分のことだけに焦点を絞って書かない。自分を客観視し、自分はチームによって自分たりえていることに気付いていきます。

冨樫はミスをしたりして、気持ちが落ちやすいところで決してへこたれない。私は調子良ければ安定しているが、上手くいかないと「負けじ魂」が小さくなる。今日、埼玉平成と試合していて思ったことがある。上手くいかなくて、いつもだったら精神的に落ちているところ。もし、またこれまで通り戦いから降りたら、1年生に合わせる顔がない。バディの1年生だって見ている。そんな姿見せられない!って強い気持ちが湧き上がってきた。こんな風に感じたことなかった。なぜか考えてみた。たどり着いた答えは「チームと一つになった強い意思」があったからだ。逆に言うと、私は今まで団体戦のレギュラーとしての考え方が大きくズレていたってことに気づかなかったんだ。

そして、4月7日のノートに記念すべき「脱皮の証明」が書かれます。

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今日、家に帰って家族と話していたら、話し方が変わった、とお父さんに言われた。正直驚いた。少し前に先生にもバスの中の声が変わって響くようになったって言われていた。全てが繋がっているんだ。振り返ってみると、やっぱり私は自分に自信がなかったんだと思う。それが交替でキャプテンを務めるようになって、チームのことを第一に考えるようになって、皆に言ったからには自分がやらなきゃ信頼なんて絶対されない。そういう毎日から自信がついてきたんじゃないかって思う。

そうなのです。「変態」は全人間的に起こるので、テニスと離れたところでも変化が現れます。それはクラス内でも同じです。

今日は体育祭の係決めがあった。ほとんどが男子で決まっていった。これじゃバランス悪いから女子もリーダーに入ってほしいと言われたが、誰も動く気配がない。ならば私がやろうと思った。自分でも不思議なことだった。今までの私なら絶対に手をあげていない。放課後には保健委員会の集まりがあり、そこでも副委員長に立候補した。こういう面でも、私変わったなって思う。でもこれで満足しないで、責任を果たすってこと、強い意志でやり抜きたい。

次の日のノート。

今日の手帳(担任と生徒が交換しているスケジュール管理手帳)に担任の後藤先生が「いろいろなことを引き受けてくれてありがとう」とコメントしてくださった。今までこういう責任の伴う仕事なんていつもスルーしてきたから、こんなことを言われたことがなかった。奈央は前に「責任を背負って戦うのは厳しいけど楽しい」って言ってた。少しわかった気がした。楽しいってわけじゃないけど、こうやって生きていくのも嫌じゃないなって思えた。こういう生き方を奈央や冨樫はずっと前からやっていたんだね。私も遅れて参加だけど、こっから人生変えていきたい。

こうして日々、自分と向き合って迎えたハイジャパ予選。

田中は1年生の鷲尾と組んでダブルスに出場、経験のほぼない鷲尾をリードしてベスト4に駒を進めて長岡商業のエースと対決します。G3-1から勝ち切れず、ファイナル5-⑦で惜敗します。シングルスも長岡商業の選手にベスト8で敗退しました。どちらも勝ち切れなかったのですが、僕も本人も手ごたえを感じていました。ダブルスではファイナルは相手に流れが行き1-5まで離されますがそこから5-5に追いついた末に敗れました。シングルスではG2-3で相手マッチをしのいでファイナルへ。「ここ頑張る!」という場面で踏ん張りが利くようになりました。次の課題はファイナルのしぶとさ、そして最後には勝ち切るたくましさです。

そして、いよいよ、令和元年 新潟県総体です。

個人戦で今井と組んで初日ベスト8に入り、IH決定。2日目は準々決勝で長岡商業の金箱・池田ペアと当たります。ここでは今井が固くなってミスが続き、G1-3まで追い込まれます。脱皮前

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の田中ならそのままズルズルと負けていく場面。ペアも小さくなり、孤軍奮闘の状況です。そこから強くなりました。本当に強かったです。ペアを励まし、自分を鼓舞し、敵のナイスボールにもひるむことなく反撃しつづけて、ファイナル突入!

課題だったファイナルです。進化していました。組み立てられていました。最後はテンポの上がった鋭いパッシングショットでゲームセット。すばらしい戦いでした。右の写真はそのショットの瞬間です。体重が乗り切って、迷いがない。試されていたんだと思います。その試練を苦しんで我慢して投げ出さずに泥臭く粘り抜いて、初めてつかんだマッチポイントファイナル6-5からの魂のショットです。

最終日の団体戦。決勝は、水澤・今井の気魄あふれる試合で1-1の3番勝負。

さあ、8連覇のかかった運命の試合。

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最初に紹介したメールの中にもある通り、田中は「ほぼノーミス」でした。G3-0になる決定的なスマッシュを冨樫がミスしてG2-1。4ゲーム目も流れが相手に行きかけている中、風上から相手が動けないほどのトップストロークをミドルに決めて、流れを引き戻したのも田中です。

生まれ変わって、頼もしくたくましいアスリートがそこにいました。

前人未到の県8連覇。

今年もその栄光には、3年生の力強い成長ドラマがありました。

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2019年1月14日 (月)

Dream Factory 2019 新春

2年連続で全国選抜へ

 北信越選抜大会 鍵となった石川戦で見せた1年生の成長

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前回のDream Factory 2018冬で、2年生の成長ドラマを紹介しましたが、実はその陰で1年生は自信を失っていました。期待していた1年生ペア鈴木・佐藤は、プレッシャーからラケットが振れず、イージーミスを繰り返し自滅していきました。翌日の個人戦でも、今度は相手にではなく自分に負けて戦いから降りてしまいました。鈴木はその後、ショックでラケットも握れない状態。佐藤も落ち込んで練習になりません。

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北越でテニスをやるというのは、新潟県では特別な意味があるのでしょう。県7連覇。インターハイ3年連続入賞。県内の他の学校の目標が「打倒北越」であり、すべて向かってこられる立場の中で戦わなければなりません。1年生の脆弱なハートでは、まだ荷が重かったようです。ただ、僕はこういう「壁にぶち当たる」経験はとても大切だと思っています。人は順風満帆で強くなんかなれません。小説や漫画の主人公だって、ゲームの主人公だって、数々の試練を通して成長し、経験値を上げ、たくましく強く優しくなっていくものです。それが人生の王道であり、競技テニスだって同じです。楽して手に入るものなど、何物であろうとロクなものではありません。成虫になるためには「蛹(さなぎ)期」が必要。「蛹期」とは「人生観、人間観、テニス観の変容期間」。その期間中はこれまでの自分を一旦壊すことになるので「いも虫」的には苦しいし逃避したいもの。でも、だからこそ意味がある。これは僕の確固たる「成長観」です。

鈴木も佐藤も、初めての「蛹期」を経て、少したくましくなりました。

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初戦の福井商業戦では、国体強化で強くなった福井県選手に一方的に攻められて敗退しました(対戦は②-1で勝利)が、勝負となる次の金沢学院戦で、この1年生ペアがファイナルの競り合いを制して勝ち切ったのです。しかも2面同時進行で行われていた隣のコートでエース水澤が(ペア今井)敗れるというチームとして絶体絶命の状況下で、ファイナルゲームがスタート。一進一退でポイント5-5の後、つかんだマッチポイントで、鈴木が逆クロスに渾身のトップストローク、上がってきたミドルのロブを佐藤がジャンピングスマッシュで決めるという劇的な勝利でした。

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全勝対決で臨んだ高岡西戦ではチームも敗れましたが、2週間前の「あの二人」からは想像もできない変身により、北信越2位で全国選抜の切符をつかみました。二人は長野商業戦でも安定した戦いで勝利し、この北信越で2勝2敗、立派な戦いぶりでした。この陰には、技術的も精神的にも諦めずに励まし支え続けてくれた3年生、そして同じ1年生の岩田の存在がありました。岩田は「チーム北越」に憧れて広島から入学・入部してきた子です。今はプレーイングマネージャーとして日本一のチーム作りに貢献してくれています。県選抜の後、早めに帰省させたのですが、鈴木と佐藤が心折れてしまい、岩田は広島から熱いメッセージを二人に送りつづけます。いろんな人の励ましやエネルギーが二人の再生、復活、進化を促しました。そして今回の姿です。ドラマですね。

「あらゆることから力を集めて光を放て!」 北越の部旗に書いてある部訓です。鈴木、佐藤、この意味、ちょっとだけ深められたかな。

佐藤のテニスノートから。

優勝はできなかったけど、確かにつかんだものがある。

私は、今日、県選抜のあの情け無い自分を超えられた。私は初めて「自分を超える」ことの意味を知った。

県選抜の後、唯香(鈴木)が心折れた。私も自分から逃げ出したくなった。それでも栞(1年生岩田)が帰省先からいっぱい心を伝えてくれて踏ん張れた。そして唯香も戻ってきてくれた。

今日の唯香は今までと全く違った。目が違う。ミスしても落ちることがない。いつも笑っている。前衛も気にしてない。だから、ポーチでポイントを取られても、その後ボールを入れにいったりってことがない。

夕ごはんの時に唯香も言っていた。「心が折れて自分が逃げていた時に、こんな自分でも何人もの人が自分を見捨てずに声をかけてくれた、あれから自分は人の言葉を心で感じられるようになったと思う。」だから、今日の唯香は強打に固執しないで、ラリーで展開を作ってくれた。

金沢学院戦、隣のコートで奈央先輩達が負けた。私達が負けたら全国が遠くなる。そんな時のセカンドサーブ、すごい緊張だった。だけど、心の中で木村先輩の顔を思い浮かべた。そうすると絶対に入る。木村先輩の存在が私に力をくれた。スマッシュもあの日のようには崩れていかなかった。「木村先輩に見せたい、届けたい。」そんな思いで今日一日戦えた。「思いの強さ」ってこういうことなんだ。

木村先輩は、何もわからない前衛初心者の私に、一から基本プレーを文字通り手取り足取り教えてくれて、私のたくさんの問題を一緒に悩んでくれた。

木村先輩、先輩は今日ずっと一緒に戦ってくれました。心強かったです。

私は最高のコーチに出会えました。ありがとうございました。でも、まだまだ問題がたくさんあります。全国選抜に向けて、今よりもポイントを取れる前衛になってチームに貢献できるようになります。

私は、強くなりたい!  またよろしくお願いします!

そして、先生。初戦のクソ試合の後、金沢学院戦でも私を使ってくれてありがとうございました。あの試合が私に自信をつけさせてくれました。

今日の2年生の先輩たちは何度も何度も苦しい場面を踏ん張っていた。宿では奈央先輩と冨樫先輩が同じ部屋だけど、戻ってきてから本気で悔しがっていた。笑っていたけど、心では本当に悔しそうだった。それだけ強い思いで戦っているんだって感じた。

私も、もうすぐ上級生になる。今みたいに先輩が苦しいことを引き受けて、私たちはのびのびとやっていい、もうそんなもんじゃなくなる。私たちが、今度は責任を引き受けよう。そして1年生がのびのびとやれるように。私たちが北越の「思い」を引き継いで表現しよう。(1年 佐藤莉穏)

◎個人戦

 優 勝  水澤・冨樫

 スト8 田中・今井

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翌日の個人戦(ダブルス)では、水澤・冨樫ペアが富山県、石川県の1年生県チャンピオンを激戦の末に退けて、2年ぶりに優勝カップを北越に奪還しました。今年の北信越女子は多くの県で1年生の力が秀でており、5県の中で2年生の県優勝ペアは新潟県 水澤・冨樫だけでした。思いきりぶつかってくるフレッシュな1年生ペアは才能豊かで、よく鍛えられており、準決勝も決勝も厳しい戦いになりました。
決勝では先にマッチポイントを何度も握られ、こちらのミスも出る中で、それでも二人は相手の向かってくる気持ちにも、不利な状況にも、アウエー的な環境にも、決してひるむことなく、自らの

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強さを表現しつづけました。決勝戦の逆転勝利は、どんな感動的な映画よりも深い感動と勇気を見ていた人に与えた試合だったと思います。それを引き出した金沢学院高校の1年生エースのテニスも本当に素晴らしいものでした。その試合のベンチ(SS席)で感動的な試合を一緒に戦いながら、「僕はこの子たちに生かされているんだな。こんな劇的なドラマの中に重要な登場人物として命を与えられているんだな。」という思いが何度も湧いてきて、深く感じ入りました。

ありがとう。

2018年12月27日 (木)

Dream Factory 2018 冬

長いトンネルを抜けるとそこは・・・

01_2県選抜 団体優勝!

ホームページが新しくなりました。どんどん進化する北越高校、いいですね。北越高校は新潟県の、否、日本のトップランナーを目指して日々イノベーションしています。

ただ、昭和世代の私は、技術革新について行くのがやっとです。若手のホープたちから教わりながら頑張りますので、これからもよろしくお願いします。工事中で更新できなくてすみませんでした、というのは真っ赤な嘘で、優先順位を後回しにし続けた末、ホームページの全面的リニューアルを迎えてしまった、というのが真相です。要はさぼりです。すみません。

真っ赤な嘘と言えば、競技力の向上に、この「嘘」って奴はかなりしぶとく、かなりの粘着性を持って絡みついてきます。ジュニア期ですと「疲れることはやりたくない」レベルの分かりやすい嘘になるでしょうが、「プレアスリート期=高校期」だと、自分が「嘘」と共犯してやるべきことをやっていない、という形で「嘘」が内在化し、競技力の向上を妨げるということがよくあります。「嘘」は「言い訳」とか「妥協」という自他共に見えにくい形状で潜在します。アスリートになりたくてなりきれない半端アスリートは、自分が「言い訳」していること、「妥協」していることに全く気づきません。全力で走らないこと。微妙に諦めること。うまくいかない理由を探究せずにメニューをこなしていること。気持ちいい練習ばかり無意識に選んでいること。今日まとめるべきことを明日以降に先送りすること。こんなことは無数にあり、それはテニスコートを離れても試され続けるものです。

やるべきだとわかっていながら先送りしたり、誰かに依存したり、日常のあらゆる場面、あらゆる場所で「やるor やらない」「yes or no」(noだとしっくりきませんね。明確にやらない!という意志ではないですから「yes or ignore 」でしょうか。)を試されます。今がやるべき場面だと当然理解して、Yes!の(目に見えない)ボタンを押すと同時に動き出す、それを繰り返していたら、必ず状況をコントロールできる強い心が育ちます。プレアスリートのコーチとして、選手のメンタルを強くするには、スポーツ心理学的なメンタルトレーニングをすることではなく、日常のあらゆる場面で「yes or ignore」を試されているのだと自覚させ(これをチーム北越的には「向き合う」といいます)、笑顔で「Yes!」を選択する心を培うことだと思っています。

その成果は必ず追い込まれた場面で現れてくるものです。勝負のかかった重要な時に、そのプレッシャーに耐え切れず、ラケットが振れなくなったり、無難な選択を繰り返したり、根拠のない一か八かの無謀なプレーを不必要な場面で選択したりして、自ら勝負を降りていく選手のいかに多いことか…。リードしていても、中盤まで競り合っていても、終盤でえっ?というくらい、あっけなく勝利を投げ出してしまうペアのいかに多いことか…。そうではなくて、どんな状況下に置かれても、自分がやるべきことを信じてやり切れるかどうか、たとえそれで何回かうまくいかなくても、信じると決めたことを信じ続けて、状況を打開していく、トップに立ちたいのならそこを追究してほしい。

その意味で、この秋に大きく進化したのが、2年生 田中遥奈です。

夏の鈴鹿IH、その時のブログで書いたように、その頃の田中はまだ幼く、3年生の阿部に引っ張ってもらわないと力を発揮できないジュニアアスリートでした。夏の終わりに田中はくじけかけました。新リーダーとして求められる課題と自分の現実を重ね合わせて、そのギャップをモチベーションにすることが難しかったのです。ただ、その苦境の中で自分には自分を待ってる仲間がいる、そう深く悟ることでもう一度コートに戻ってきた田中は、以前の田中ではありませんでした。もう、全く違います。少しのサナギ期を経て、これだけ劇的に進化するケースはあまり経験ありません。人間の成長って素晴らしいですね。挫折が人を一回りも二回りも大きくする。

昨今の教育を取り巻く環境にプレッシャーを受けて「優しい指導」(私的には「腰が退けた指導」)がひたひたと波のように広がっていますが、それはある意味、指導者の妥協でもある。以前、福岡で中村学園の外薗先生に教えを乞うた時、先生は「コートは私と子供たちの真剣勝負の場だ」と仰ってくださいました。この教えはそれから私の座右の銘になりました。

10月に行われた県新人選抜大会。本命の水澤が皇后杯出場で不在ではありましたが、田中はダブルス(ペア冨樫)、シングルスの二冠に輝きました。それでも満足することなく、全国レベルの水澤の背中を全力で追っています。二冠を獲った日のノートに、水澤の代わりに主将として二日間戦った田中はこんなことを書いていました。

「奈央はこんな責任の中でいつも戦っているんだ」

責任と自覚、それを背負いながらも、逆に背負って期待されるからこそ、もう一回り大きな自分と出会える、チャンピオンマインドのふもとにようやくたどり着いたのでしょう。

12月暮れの県選抜(団体戦)では、冨樫と組んで全勝。その時のノートで田中はこう書きます。

去年のリベンジっていう強い想いがあったから、逃げてのミスは無かった。去年名古屋で私の心の弱さからくるクソミスでゲームセット。そのリベンジのために、私が全勝する。だから逃げてなんていられない、そういう思いを持ってプレーできた。試合中、瑞希先輩を見上げて何度もガッツポーズをした。瑞希先輩も喜んでくれた。私がこんな風に戦えたのは、夏から瑞希先輩が本気で私を変えようとしてくれたおかげだし、直前の合宿でも私の中途半端さに気付いてくれて、どういう時にそうなるのかまで教えてくれたからだと思う。瑞希先輩に恩返しをするって強く誓っていたから、信じて戦えた。瑞希先輩、絶対去年の名古屋のリベンジしてみせます!

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この田中のノートに表れているドラマこそが、Dream Factory北越の真髄だと思います。

「本気」「誠実」「絆」「リスペクト」・・・

こうして、ただの名もないジュニアプレーヤーが、ハートを感じて、責任を自ら引き受けて、誰かのために夢を叶えてみせる。アスリートの誕生ですね。

もう一人、12月の県選抜、それから翌日に行われた県インドア大会(個人戦)で、ようやく長いトンネルを抜けて、コートの上で、北越のユニフォームを着て輝いた選手がいます。

今井風花です。

本当に長いトンネルでした。いくつもの大失敗を繰り返し、自分のスモールハートに負けて心も折れ、失意の日々が続いた後、ようやく前を見て進み始めた夏のインターハイ直前、身体の不調でドクターストップとなりました。秋地区も出られず、県新人も不出場。本人も辛かったと思います。ですが、ご家族の温かい励ましと今井自身の復活への強い意志で病を乗り越え、トレーニングを開始できたのは北風が吹く頃だったでしょうか。短い準備期間でしたが、今井の心は田中同様、以前と全く違うアスリートハートに進化していました。何より自分のスモールハートを公然と口にし、ノートにも毎回書き、隠さずに立ち向かっていきました。もちろん、日々その名残は色濃く出るのですが、先輩や僕から指摘される度に、悔しそうな表情で唇を噛みしめます。口で言わずとも、「私はもうこの自分の弱さから絶対に逃げない」と決意しているのがよくわかりました。今井は、県選抜では水澤と組んで全勝。その日のノートです。

今日の試合の成果は何と言っても「スモールハートゼロ!」小さくなったことはなかった。もちろん、レシーブが浅かったりして、技術的には完璧じゃないけど、私の代名詞だった「スモールハート」が出なかった。いつも奈央がカバーしてくれるけど、私は小さくなって戦えない、そんな試合を繰り返してきた。だけど今日はちゃんと二人で戦えた。なぜか。精神的にリラックスしていたし、何よりも「やるしかない!」って覚悟が決まっていた。今回、いつもなら身体を動かして気持ちも上げてきたけど、しっかりと落ち着く時間を作った。そして最終的には「よし、行くぞ!」って思ってコートに向かう。すごい自信にもなったし、嬉しかった。明日も、これからも「私は私をコート上で全部表現する」こうやって戦っていきたい。

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こうして今井風花という選手をこのDream Factoryのブログに記載できること、指導者として心から嬉しく思います。長いトンネルは君の進化の「さなぎ期」だったんだね。

ただ、この二人、田中・今井ペアは、個人戦で攻撃的ストローカーの巻高校平行陣ペアに敵いませんでした。田中のボールが浅くなったところをすべて今井に持ってこられ、そのテンポとスピードに今井が最後まで対応できませんでした。それでも今井も田中も前向きに悔しがっています。それでいいのです。課題を浮き彫りにしてもらえたわけだから、他の学校の選手たちの成長にも感謝すべきです。春にどれだけ対応できるスピードとフィジカルの強さを身に着けられるか、冬はいろんな意味で自分のベースを底上げするチャンスです。

今、チーム北越では、進路が決定した3年生(おかげ様で4人全員が第一志望で決まりました)が「恩送り」として選手の個人コーチになってくれます。今年の3年生は例年以上に熱くコーチングしてくれていて、その光で選手たちが次々と古い葉っぱを落としてレベルアップしています。北越は滅多に練習試合に出かけません。特にこの時期は技術の基本、というよりそもそもの技術の考え方をブラッシュアップし、身体を作り、今までの葉っぱを一旦落として再構築することに時間をかけています。その中で、自分と向き合いながら、強い心を養っていきます。雪国のチームですから。もう昔みたいにそのことをハンデだと思わなくなりました。僕も選手たちも冬は雪の中で根を張るのです。それでいいし、それがいい。夏の大輪の花をみんなで夢見て、今日もチーム北越、冬空の下で元気に頑張ります!

02県選抜インドア(ダブルス個人戦) 1位 水澤・冨樫   3位 田中・今井

秋~冬の大会結果

秋季新潟地区大会

〇シングルス

1位  水澤奈央  2位 田中遥奈  3位 冨樫春菜

〇ダブルス

1位 水澤・冨樫  3位 田中・佐藤  3位 鈴木・清野

県新人選抜大会

〇シングルス

1位 田中遥奈  3位 鈴木唯香

〇ダブルス

1位 田中・冨樫  

県選抜大会(団体)  優勝

県選抜インドア大会(個人)

1位 水澤・冨樫  3位 田中・今井

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