2022年1月 2日 (日)

Dream Factory 2022 冬

何も咲かない寒い日は

下へ下へと根を伸ばせ

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センバツ県予選が終わり、今年のチーム北越は県予選で敗退し、春の全国センバツへの戦いが終わりました。

レギュラー6人のうち、4人の3年生が抜けた穴を埋めることができませんでした。

決勝リーグ、1勝1敗で迎えた最終戦、優勝した巻高校との戦いで勝てば三つ巴でチャンスはありました。こういう場面でこれまでのチーム北越は、持っている力以上の集中力を発揮して夢を手繰り寄せてきたのですが、今年のチームはその北越魂が育っていませんでした。観客席から全力で応援してくれている3年生のパワーも借りて共に戦い、「感謝の力」で勝利を届けることもできませんでした。

ただ、その最終戦は、この新チームとしてはベストの戦いができたので、その上で夏から力をつけてきた巻高校に敗れたのですから、実力負け、というのが正しいと思います。

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負けて泣いていたね。

でも、泣いても何も変わらないよ。

全国センバツへ行けなくて悔しくて泣いていただけなら、ほしいものが手に入らなくて泣いている幼な子と変わりはしない。相手だって日々努力しているのだよ。打倒北越で練習を重ねているのだよ。まずは、その努力に唇を噛みしめながら敬意を持つべきだ。

相手は強くなったんじゃなくて、自分を強くしたんだよ。

少なくとも君たち以上に集中し、チーム力を上げ、声を掛け合い、弱さを克服しながら、チームとして自分を強くしてきたんだよ。

その上で、君は自分に何を認める?

「己を知る」

今の君たちには、ここができないのだと思う。

だから、日々の練習が身にならない。力に換わらない。

自分の弱さは何か。

自分は何から逃げているのか。

周りのサポートにもかかわらず、なぜ自分は大事な場面でベストを出せないのか。

力を借りているつもりで、ただの依存になってはいないか。

戦いの現場は最終的には自立した力だけが頼りだ、その力を日々つけているのか。

そもそも、君は自分で大きな夢を本気で叶えたいのか。

「己を知る」とは「自分と向き合う」ことだ。

自分の弱みを知るからこそ、自分の強みにも気づいていく。

おそらく逆はない。この順序だ。

弱みに目を向けない「強み」など、傲慢か無知か臆病かのいずれかだろう。

自分の弱さと向き合うのは、絶対的な希望に裏打ちされた強烈な意志が必要で、それは簡単なことじゃないんだよ。

元日に、こんなコメントが書かれている賀状をいただきました。

先生、私、去年から自分に向き合うようになって、そして新しい道に進んでみようと思い始めて、新たに勉強を始めたんです。自分と向き合うと、逃げてた自分と戦わなきゃいけないので、手ごわいです。

もうお子さんも小学生になっているのですが、きっと心に期するものがあって、今の自分を脱皮して何かに挑戦するんだと思います。

人間、いくつになっても、新しい道に舵を切る時には、今までの自分と「向き合う」必要があります。それは「逃げてた自分」と面と向かって対決しなければならないことで、だからこそ「手ごわい」のです。

この年賀状は、かつての教え子で、新潟東高校キャプテンとしてでっかい夢を叶えた佐藤由樹さん(旧姓 小林さん)からのものです。

由樹さんの中学までの実績はゼロと言っていい。高校2年生の冬までも惨敗の連続。県大会に自力で行ったことなどありません。

何人もの仲間や後輩が諦めてドロップアウトしていく中、夏に咲くヒマワリを自分に重ねて弱い自分を鼓舞し、チームに力を与え続けた人です。

しかし春も惨敗が続きます。地区大会でやっと16本に入って県大会出場がやっと。

そして、迎えた3年の県総体。ノーシードのパッキングから這い上がり、シード選手をいくつ破ったでしょうか。最後は前年のインターハイ選手を撃破してベスト8。それだけでも十分奇跡ですが、翌日の地獄リーグでも、当時の巻高校のエースに奇跡的勝利を果たしてインターハイ出場の夢を叶えたのでした。新潟東高校の創部以来、初めての快挙でした。

由樹さんは、中学から6年間のソフトテニス競技人生で、もらった個人戦の賞状は市内大会も含めて1枚しかありません。

それが、インターハイ出場切符である県総体6位の賞状です。

君たちは全員が、少なくとも由樹さんよりも実績も経験もあり、恵まれた環境にいて、たくさんの人から応援されている。

決定的に違うもの、それはどんなことがあっても最後には「夢の花」を咲かせたいという揺るがない意志、そして自分の弱さをわかり、さらけ出し、それと向き合い続ける実行力とその継続力だ。

由樹さんが惨敗を続けていた厳しい冬、繰り返し伝え続けた言葉があります。

2000年のシドニーオリンピックで、日本初の女子マラソン金メダルを獲得した高橋尚子さんが、無名の高校時代に恩師から授かったという言葉です。

何も咲かない寒い日は

下へ下へと根を伸ばせ

やがて大きな花が咲く

高校時代実績のなかった高橋尚子選手は、卒業後、小出監督と出会い鍛えられ世界的なランナーに育っていきました。ずっと座右の銘にしてきたそうです。

それを由樹さんとそのチームに教えたのです。

そして、由樹さんは翌年の夏、奇跡のインターハイ出場の夢を叶え、その次の年、高橋尚子さんはシドニーで金メダルを獲得するのです。いずれも、冬に伸ばした根に「史上初」の快挙を咲かせたのです。

さあ、冬に負けた人たち。

もうダメかも、と諦めかけている人たち。

今するべきは、花を咲かすことではありません。

自分と向き合い、「下へ下へと根を伸ばす」ことです。

泣いているだけなら、根は縮こまり腐ってしまいます。

自分を強くしたいのなら、自分の弱さを見据えることです。

夢を叶えたいのなら、今こそ自分が逃げているものに立ち向かうことです。

もちろん簡単なことではありません。

敵は自分の中にいます。

「手ごわい」ものです。

冬だからいいのです。向かい風だからいいのです。

負けた直後だからチャンスなんです。

春は芽吹く季節、春から伸ばした根では大きな花は咲きません。

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敗者たち、結果が出ないからといって、現実を諦めにつなげてはいけない。

それは、人間として大事な尊厳を自ら損なうことです。

悔しさは力の源泉です。

ただし、正のエネルギーにも負のエネルギーにも、どちらにも変換できるものです。

だから、君はそれを燃やしてプラスに向かうエネルギーを得てください。

「負けから這い上がる」

「挫折から起き上がる」

その湧き上がる力より価値のある力なんてありません。

誰もがその力を持っています。

諦めるから現れないだけです。

チーム北越。

今年の冬は、少しずつ少しずつ、厳冬の中、下へ下へ根を伸ばしていきます。

また来る春を信じて。「大きな花」が咲く夏を信じて。

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一粒の向日葵(ひまわり)の種を蒔きしのみに荒野を我の処女地と呼びき

   by  寺山修司

2021年11月 8日 (月)

Dream Factory 2021 秋

北越の秋

・・また来る春に向けて・・

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秋季新潟地区大会

〇ダブルス

1位 入澤瑛麻・本間友里那

3位 高橋寧々・須貝若菜

〇シングルス

2位 本間友里那

3位 入澤瑛麻、三浦瑞姫

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新潟県新人選抜大会

〇ダブルス

1位 入澤瑛麻・本間友里那

〇シングルス

2位 本間友里那

3位 入澤瑛麻

秋の大会が終わりました。

8月にチームを引き継いで3ヵ月、ダブルスで部長とキャプテンとしてチームを率いる本間入澤が、決勝戦マッチポイントを握られながらもなんとか勝ちきって優勝した以外は、ベスト8の壁を破れませんでした。シングルスは1年生の時は全く相手にならなかった巻高校の石山さんに、本間がファイナルを戦うまでに成長しましたが、ファイナルで突き放されました。

今年も「もがきの秋」です。

練習が「習ったこと」の「練り上げ」にならない。

これから団体センバツにシフトしていくのですが、これほどone for all の意識が低くて、どうやって団体戦を勝ち抜いていくのか。

ほぼ毎日、伝え続けていますが、なかなか浸透しません。

苦しい秋の道です。

新チームの部長を託された本間友里那のノートから

For theチーム

この思いがわかる人が、今どれだけいるんだろう。

県新人選抜大会を前にして、これほどチームに気魄がないってこと、今までの北越じゃないってこと、わからせてもらって良かったのかもしれない。

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もちろん、本当はよくないよ。

チーム北越。

数々の奇蹟を作り上げてきたこのチーム。

ねえ、北越らしさって何?

勝てば良いってのは違うよね、瑛麻。

試合中だけ元気出せばいいっていうのも違うよね、麻央、優芽。

何を目標にここに来たの?

私は、ここに入ったのなら、全力で自分の限界超えたいし、中学以上の結果を、日本一を獲りたいって思った。

その思いは、入学以来、ブレることはない。苦しい時も、自分は今のままでいいのかって悩む時も、ここで日本一になりたいっていう夢は変わらない。

実際はまだまだだし、今のスキルやタクティクス、そしてフィジカルでは全国トップにはなれないことはよく分かっている。けど、だからこそ、こだわり続けたいんだ。

瑛麻(入澤)には伝えたことが全て。

瑛麻が今のままでいいなら、チームは私が作る。

でも、そうじゃないはずなんだ。

キャプテンを任されたなら、キャプテンがチームのことをど真ん中に据えて考えないなんてありえない。誰よりもチームが力をつけることにこだわるべきだよね。

麻央、優芽。

自分のスキルが整わないからっていうのもわかるけど、北越の上級生ってそうじゃないよね。

チームのことは、役職関係なく、新3年がやるんだよ。

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今日届いたマガジンで林田・島津ペアの特集があった。

インカレが2年連続で中止になった。全日本もない。頑張ってきた自分を表現する場がなくなった。そこで林田選手が口にした言葉。

私はずっとこれが最後のつもりで準備してきたので、本当に悔いはありません。

いつも次はないと思ってやりました。

だから、最後だから頑張るというのはありません。最後は誰でも頑張るからです。

最後ではない、何でもない時にどれだけ頑張れるかが、他の人と差をつけられるコツだと気づきました。

本当にすごい。

これを読んだとき、チャンピオンってこういうことなんだな、本当のアスリートってこういうことなんだな、って思った。

こんなに自信を持って悔いはないですって言えるくらい、毎日毎日全力でテニスを生きてきたんだな、って思う。

私が今、ここでもう残りの試合はすべてありません、と言われたとしたら、悔いしかない。

日本一になる夢を叶えてもいないし、何より部長を任されてチームの心を一つにできていない。

私は、この林田さんの言葉を絶対に忘れない。

私もこの言葉を言えるようなアスリートになりたい!

(部長 2年 本間友里那)

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部長ゆえの苦しさ、リーダーが背負う重さ。

新部長は、逃げることなく、その困難性と向き合い続けています。

その新部長に、旧部長の斉藤がエールを送ります。


今日も、チームとしても個人としてもたくさん学ぶことがあった日だったと思う。

本気で、チームとして勝ちたいと思って戦っているか

ここがすごく大きいと思う。

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2年生は「自分たちのチームなんだ」という自覚をどれだけ持っているか。

部長の本間の苦しさは、先生も伝えてくれていたけど、本当によくわかる。

何で? どうして? の繰り返し。

何でわかってくれない?

どうすれば心を一つにさせられる?

どうしたらもっと本気になってくれる?

もちろん、一人で悩む苦しさは理解できる。だけど、それじゃあ前へ進まない。

どうして? ばかりじゃ変わらない。

リーダーは苦しいが、そこで進むべき方向を示すのがリーダーだ。

こうやったら意識が変わるかもしれない。

こう伝え方を変えてみたら分かってくれるかもしれない。

こういう取り組みを提案したらチームの心は育つのかもしれない。

地道に考えて、悩んで、提案する。

本当に少しずつの積み重ねで前へ進むしかないのだと思う。

そうする中で、なかなか思うような成果が出ないと、自分がやっていることは本当に正しいのか、チームへの伝え方が間違っているんじゃないか、とか、疑って悩むこともあるだろう。

だけど、絶対正解なんてないし、リーダーがどんなチームとして戦いたいか、その意志が明確なら、その方向に向けて間違ってるかもしれないけど、やってみるしかない。

先生に、組織を改革するのに志を同じくする者が3人いたら成功する、って伝えてもらって、その同じ日に、本間以外に提案や行動を誰もしないのを見て、私も悔しかった。

本間はもっと悔しいだろう。

けど、これが現状。受け止めるしかない。

先生が言ったから、次の瞬間からチームが変革できる、そんなわけはない。

今日、須貝が失敗してそれでも決意を伝えに戻ってきた。

仲間がどんな失敗をしようと決して見捨てない、それが北越の良さだ。

そのことを梨果が全員に伝えてくれた。

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先生は、本間も受け入れようという心がないと伝えていた。

本間の気持ちは痛いほどわかる。本当によくわかるよ。

私も部長をやっていて、そういう場面は何度もあった。

チームの皆も、がっかりしてる。またか…って思っている。それは空気として感じる。

だけど、私までもが受け入れなかったら、誰が鍵を開けてその子を受け入れるの、って思って私が言葉をかけてきた。

もちろん、それは苦しいことだ。

そして、また失敗した仲間を受けとめ、最初に言葉をかけて受け入れたからには、私に責任があると思っていた。次に同じ失敗をしたら、私の責任でもあるんだなって思った。

だから、リーダーなんだ。

リーダーとして試される苦しさってここなんだな、そう自分にも言い聞かせた。

先生も伝えてくれたけど、調子の良い時なんて、誰がリーダーでも変わりはしない。流れに乗ればいいだけだから。

だけど、リーダーが必要なのは苦しい時だ。苦しい時にチームを思って逃げずにその状況に立ち向かっていけるか。

自分が逃げずにチームをつくるんだって思って、行動しつづけていれば、必ず仲間も本気になってくれる。それを信じて、一人でも自分で悩んでもがいて、前へ進むしかない。

苦しいって思うだけじゃ、何にも変わらない。

その時、何を提案できるか、何を行動できるか。

今も、それが試されている。

頑張れ、本間!

(前部長 3年 斎藤菜月)

一方、部長・キャプテン以外の2年生、特に佐藤麻央の奮起を3年の近藤は促しています。

上手くいかないことが続くと、ネガティブ思考になる。

そんな空気がチームに広がってる。

先生の話を受けて、私の2年前のノート、1年生の秋のノートを開いてみた。

私もずっと下手だったから、上手くなれるのかって疑ったこと何百回もある。

ある日のノート。

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Aチームのコート、もしくは全体練習に入りたいけど、今の私が入れるレベルじゃない、そう自覚はしていて、最後のミーティングで奈央先輩が「チームに食らいつきがない」って伝えてくださった。

でも、その時の私が思ったのは、私が入ることでAチームに迷惑がかかるんじゃないか、っていうこと。

それを奈央先輩に相談したことが書かれてあった。

その時、奈央先輩から贈られた言葉、今でもアリアリと覚えている。

北越は、上手いか下手かの基準じゃなくて、やる気があるかどうかが重要

この時、私は視野がすーっと広がった感じがした。

よし、じゃあ、いつか、近藤と打ちたいって仲間や後輩が思ってくれるように、気持ちを前に出して頑張ろうって思えた。

そして、3年間を終えた今、奈央先輩の言うとおりだったと納得する。

その1年後、2年生の秋。一つ上の先輩で秋に「恩送り」でコーチできたのは二人だけだったから、私に担当コーチなんてつくわけもなく、一人で毎日悩み、必死に言語化して、食らいついていた。菜月も同じだったはずだ。

自分から動かないと何も得られないし、2年にもなって成果を出せないなんて相手にしてもらえないと思って、必死だった。

今の麻央は、ほぼ私がつきっきりで面倒を見ている。

麻央から食らいついてくることはほとんどなく、圧倒的に私の方から指摘している。

麻央は自分もチームを引っ張りたいと言うけど、仲間も後輩もすべて3年生が恩送りで見ている。それは正直、怖くもある。

2年生の秋、仲間や後輩のことで悩むこともなく、人任せにして自分のことに専念できる。それは一見幸せだけど、3年になった時に「強さ」が身についているか。苦境になった場面で、後輩に頼られる場面で、責任とともに強さを表現できるか、私の「怖さ」とはそこだ。

麻央が言葉だけじゃなく、本当にこのチームに欠かせない人として、本間や入澤と一緒にチームを率いてほしい。リーダーの名札はなくとも、リーダー学年としての自覚を持って行動してほしい。

(3年 近藤梨果)

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その佐藤。

受け身で甘ったれですが、近藤から伝えられていることはよくわかっています。

明らかにノートは変わってきました。思いの強さは育まれています。

春までに固い殻を破って、ドラマを創ってほしいです。

今日、合同練習会で久しぶりに去年の3年生のDream Factory(卒業記念につくるフォトムービー)を見た。

3月の卒業祝賀会で見た時と同じ映像なのに、想いが全く違うことに驚いた。時の経過をすごく感じた。

3月に見た時は、「私もこのDream Facoryの一員なんだ!」って思ってとても嬉しく誇らしい気持ちになった。

でも、今日はまるで違う。

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3年生が(卒業生)何度も何度も壁に跳ね返され、それでも「責任感・自覚・妥協しない毎日」を力に換えて成長していく姿、それを自分に問いかけるように見ていた。

3人しかいない卒業生だったけど、それぞれが自覚を持ち、チームを任された2年の秋からはチームの為に本気で生きて、責任感と自覚を深めたからこそ、県の新人選抜から、二人は戦えるようになった。そこから、不利な状況下で県選抜を勝ちきり、北信越選抜での奇蹟の優勝、そして全国選抜出場の夢を叶えた3人。

私はどうだ。

今までどれだけのターニングポイントがあったことか…。

未だに自己ベストで戦えたことがない。

先輩たちと何が違うのか。

新3年生としてチームの核になって、仲間や下級生を導かなければならないのに、その責任感がないから、ここぞという場面で自分の強さがないんだ。

私はいつまで同じ場所に留まっているのか。

私は、自分のスキルよりも何よりも、チームに関わっていくことが大事なんだと思う。

県新人選抜の時、決勝を金網の後ろで見ていて思ったことがある。

あの試合、本間と入澤は追い詰められた。

入澤のミスが続き、ベンチに戻ってきて、また(県大会個人戦と同じように)泣いていた。

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でも、本間はブレずに戦い続けた。そして苦境を乗り越えて優勝した。

私はあの試合で、本間の底力を見た気がした。常にチームに対して本気で向き合ってきたからこそ、あのような場面で自分の中に閉じこもることはないんだ。ペアが落ちてもブレない強さがある。それは日々の生き方なんだ。

団体メンバーで戦うということは、後ろで応援する人が必ずいるということ。その時、その後ろの仲間たちとチームとしてどう生きてきたか、そこが力になる。

責任感が逆境で力に換わるんだ。

(2年 佐藤麻央)

毎年恒例の、秋のもがき、停滞、挫折…

でも、新チームの秋というのは、これが健全なんだな、と思うようになりました。

優秀な選手だけが集まっている「特殊な」チームではありません。夏に咲いた花の後は、1年後の満開を目指して、また土壌づくりから始まるのです。「作物」とて、昨年とは違うものですから、こちらの土壌改良も必要ですね。

この「北越畑」に興味を持って根を下ろしてくれた未熟な苗たちを育て、鍛え、花を咲かせること、それが私の営為です。

今、早朝、合宿先の外のベンチでこの文章を打っています。

近くに仰ぐ妙高山は白く冠雪しています。そこに朝焼けの光が輝いて、息を飲む美しさです。

コナラ、ミズナラの木々が晩秋の風に吹かれて、カサカサと葉を落としています。

間もなく、ここにも雪が降りてくるのでしょう。

その落葉の下で、1年生が息を白くはきながらダッシュしたりラケットを振ったりしています。

木々もこの子たちも、来年の芽吹きと命の輝きを誓って、冬を迎えようとしています。

秋の挫折と向き合い、幼い自分をそぎ落とし、雪の下で新たな心をはぐくみ、春に備える。

命の輝き、青春のど真ん中。

ガンバ!

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2021年8月10日 (火)

Dream Factory 2021 盛夏

2021チーム北越

戦った! 競り合った!

信じて 立ち上がり続けた 最後のインターハイ

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ずっとチームを支えてきた近藤梨果のノートから

第4シード 和歌山信愛に負けた。

目標にしていた「決勝」に行けなかった。

もちろん、選手を責めているのではない。選手たちは最大限やれることをやり切って負けたんだ。

全国から選手を集める和歌山信愛に食らいついていく姿に鳥肌たったし、声を出しての応援は禁止されていたけど、それでも声が出ちゃうくらい心を一つにして戦えた。今思い返しても、とても充実してかけがえのない経験だった。

第1対戦のキャプテンペア星野・高橋。

中盤のG2-2までは互角の競り合い。相手がJAPANであろうと決して引かずビビらず、強い思いと気迫で向かっていく姿は北越らしかったし、とてもカッコよかった。

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隣のコートで同時進行で戦っていた入澤と本間。

G1-3と追い詰められても、今回は1本1本、強い意志を崩さずに挽回してくれた。

ファイナルの1球1球に、入澤の強い意志を感じたし、自分の強気を前に押し出して戦い続ける本間の姿に感動した。

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1-1の三番勝負。

高野は戦ってくれた。

ウイナー(トップ打ち)を何本相手のコートに突き刺したんだろう。ノーミスでラケットを振り切る高野を見て、3番勝負、高野で良かったって、素直に感動した。

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凛の気迫がコート中にあふれていた。最後の最後、全国の大舞台で、自分を信じて戦えた、それは凛にとって、とてもデカいことだと思う。北信越で団体メンバーから途中交代させられて、インターハイでその自分にリベンジした、そのドラマを見れて私も幸せです。

信愛戦で、高野・鷲尾を3番に使うというのは、先生が二人の成長を認め、チームの思いを背負って戦ってくれるって信じたんだと思う。

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ほとんどのゲームで競り合える。競り合えるけど大事なポイントで甘い。そしてG0-3、後がなくなったベンチで、先生は高野に強く伝えた。高野の甘さを先生は見逃さない。

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その直後から高野は変わった。信愛の後衛と互角の打ち合い、本当に激しい打ち合いだった。凛は全く逃げなかった。そのハートに鷲尾はついていけてないように見えた。鷲尾も悔しいだろうけど、私も悔しい。

ミーティングで先生が話してくれたように、明日からの個人戦、団体戦の延長としてチームのために戦ってほしい。

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(8月2日 近藤梨果)

8月2日~個人戦。引き続き、近藤のノートから。

個人戦1日目。

星野・鷲尾。二日目に残るための最後の戦いが、またしても和歌山信愛だった。

団体メンバーではないが、和歌山県大会で2位。

G3-0から、相手は戦術を変えて挽回していき、ファイナルへ。

私は二人のファイナルの死闘を決して忘れないだろう。

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何本のマッチポイントを握ったんだろう。それでも勝たせてくれない信愛。

それでもあきらめず、また挑み続ける北越。

先生が言っていたことがよくわかった。

ファイナルの強さは 人間力の強さ

少しでも自分を疑ったら、少しでも気持ちが引けてしまったら、すぐにGame Set。

最後は⑫ー10。

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実績的、技術的には相手が上だったかもしれない。でもファイナルの強さは別のところにある。

一緒に3年間やってきたからわかる。星野はファイナルに弱かった。自分を超えられないでいたからだ。そして星野はずっと自分の弱さと戦ってきた。直前合宿でも自分の弱さに泣いていた。でもそういう日々がこういう場面で何倍もの強さと自信になる。

試された。そして乗り越えた。

ありがとう星野。

鷲尾は…

昨日の団体戦とは全く違った。

星野の強気と一体となっていた。二人の心がつながっていた。

鷲尾は今度こそ「鷲尾で終わり」にしたくなかったんじゃないかと思う。それが鷲尾なりの意地だったのかもしれない。

ここで攻めろ! という場面で、今までの鷲尾なら無難な選択をしていたのに、今回は敵の裏をかくような選択、動きがたくさんあった。

今日の朝、鷲尾は先生に「心に他者を置け」と伝えられていた、それを最後の最後で実践してくれたんだ。何度強く伝えられても心を重ねられなかった鷲尾が、最後の最後で表現したこと、それは先生の願いであり、私たちの願いだった。

ありがとう、鷲尾祐稀。

(8月3日 近藤梨果)

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「2021チーム北越」を支え、応援してくださった皆様、ありがとうございました。

心より感謝申し上げます。

新チームもよろしくお願いします!

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最後に、部長 斉藤菜月のノートでこの1年間を締めくくります。

3年間、ありがとうございました。

私たちのチームの戦いは今日で終わりました。

日本一を目指してやってきた3年間。でも届かなかった。

私たちも本気でやってきたけど、まだまだ全国で夢をかなえるまでにはなれなかった。

先生はずっと「今年はチャンスだ」って言ってくれていた。

確かに、戦ってみて、第4シードの和歌山信愛にも1-1の3番勝負。ジャパンの選手にも星野・高橋で中盤までG2-2の互角。個人戦では、星野・鷲尾が和歌山の2位ペアにファイナルジュースの末に勝ち切り、二日目の4回戦では、団体優勝メンバーの東北高校にも競り合える。

入澤・本間は4回戦まで圧勝。5回戦、ハイジャパ準優勝で団体も準優勝の三重高校のエースに互角の戦い。

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先生が繰り返していたことだけど、全国の頂上って、遥か雲の上ではない。決して届かないところではない。

届かない相手ではないけれど、勝ち切ることができない。

「戦える」と「勝ち切る」の違い。

「互角の力」と「負けない力」の違い。

この差に、きっと3年間の日々の積み重ねの違いがあるんだと思う。

3年間、日本一をまっすぐに思って自分と向き合った者と、頑張ってはきたけど最後の年になって本気になった者と、そこに大きな差があるんだな。

毎日毎日の少しの積み重ねの差、練習の中での少しの意識の差、いろんな小さな差が積み重なって、最後の夏、超えられそうで決して超えられない壁として現れる。

これから後輩への「恩送り」になるけれど、こういうことをしっかり伝えながら指導してあげたいなってすごく思う。

今日の夜にも話が出たけど、私たち、今の意識のままもう一度3年間をやり直せたら、絶対に変わっていた。もっともっと全国で激しい戦いができた。決勝にも行ける力もつけれたと思う。だけど、そのことをやっと実感できた時、もう私たちに時間は残っていない。

やっぱり悔しいです。

ただ、3年生、この6人で、よくここまで来れたな、って正直思います。

いろんなこと伝えてもらい、教えてもらって、いくつも回り道したけど、逃げずにこの場所へ来れたこと、やっぱり嬉しく思います。

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広島から新潟に来て、この5人の仲間に出会えて本当に良かった。

こんなドラマを一緒に生きれて嬉しかった。

先生、改めて、本当にありがとうございました。

「恩送り」と「受験」、頑張ります。

これからもよろしくお願いします。

(8月4日 部長 斉藤菜月)

2021年7月 8日 (木)

Dream Factory 2021 紫陽花

北信越総体 団体 準優勝

秘められた まさか過ぎるドラマ

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梅雨の候、紫陽花が綺麗です。

あの微妙な色合いは、光が薄くて柔らかな梅雨空でこそ映えるのですね。

雨に濡れた花は輪をかけて美しく艶やかです。

このDream Factory 、毎年北信越大会を省かせてもらっています。勝っても負けても、インターハイへのTry 大会と捉えているからです。

ただ、今年は省くわけにはいかないドラマがありましたのでUPします。

前回の「2021初夏」でも記した通り、裏方でチームを支え続けてくれた3年生の斎藤と近藤を北信越の団体で使う、というサプライズを予定通り1回戦で実行しました。

もちろん、ただのご褒美ではなく、勝負できると判断してのことです。

初戦、地元IH開催権=石川県のベスト4、金沢商業との試合。

近藤・斉藤を第1対戦に使いました。

二人とも、初めての団体戦がいきなり北信越大会。緊張するなという方が無理です。

固いスタート。ぎこちない笑顔。苦戦が予想されました。

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リードされてベンチに戻ってきた時、二人に言いました。

いいか、おまえら。

北越に来て、レギュラー目指し続けて、

「団体で期待を背負ってコートで戦う」それがずっとおまえらの夢だったんだろう。

二人は強くうなずきます。

今がその舞台ぞ。

今が夢そのものなんぞ。

今、ここが、憧れ続けてきた「夢」の真ん中ぞ。

勝ち負けじゃない。

精一杯、夢を生きろ!

斉藤の目も、近藤の目も、瞳がぐっと深くなりました。

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中盤から敵の弱点も見えました。

戦う。ガッツポーズをベンチに送る。

戦う。目を合わせる。

最高の笑顔で今を生きる。

表現していました。

二人の3年間。二人の友情。チームへの思い。Bチームへのみんなへの強いメッセージ。

逆転で④ー2勝利。

ペアとしての自己ベストで、最初で最後のチーム北越の団体戦を戦いきりました。

3年間の自分にプライドと喜びを感じる試合でした。

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普通は、これで終わりです。僕の筋書きはここまででした。

近藤とも強く握手して、「ナイスゲーム!! さあ、後はサポート頼むぞ」、そう言いました。

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しかし…

これが終わりじゃなかったのです・・・

まずは、近藤梨果という選手がどんな風にチーム北越で生きてきたのかを知ってもらいたいです。入部~北信越大会までを駆け足でたどります。

県の上位で戦う技術はほぼ無しでした。憧れだけで北越に来た不器用な子です。

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サーブはメチャクチャ。ストロークは力任せ。リズム感無し。中でもフットワークがひどすぎて、これは身体の異常な固さもあって、目も当てられない状態。一歩先のボールを空振りすること数万回。

感情は豊かですが、頭は固い。思考に柔軟性がなく感情が余っていると、思い込みや勘違いが起こりやすいんです。技術的にも他者ができて自分ができないことだらけですから、当然劣等感や嫉妬が溢れます。そのネガティブな自分の心が、真っ直ぐな思いを澱ませる。近藤の3年間は、ほぼ自分との「もがき」です。

ただ、近藤の長所は、真面目な努力家であるということ。本当に努力家です。これは日本一レベル。

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もう一つの長所は、他者へのかかわりに情熱があるということ。特に人間的に成長した3年になってから、感情の豊かさと相まって、仲間や後輩へのシンパシーが半端ないです。もっとありますね。もがきながらも、最終的に意志はブレないということ。

それから感情の豊かさの良い面として、人の深い話を心の深いところで受け止めて感動できるということ。その感動をエネルギーに換えられるということ。感情は厄介なものですが、ネガティブな面をコントロールして、ポジティブな面を生かしていけたら、豊かな人生を送れるんだよな、と近藤を見ていてよく思いました。

そんな近藤が、個人戦で県総体を勝ち抜いて北信越大会に出場するきっかけは、2年生の終わり頃だったでしょうか、自分で「もう団メン(団体メンバー)を諦める」と宣言して、個人戦でのIH出場に目標を切り替えたこと。これは本当にすごい。自らによる戦略的撤退です。他者との比較ばかりしてネガティヴマインドを発生させる、その源を切った。選択的集中を自分で作ったんですね。十年以上前の先輩(石井・依田)がBチームからインターハイに出場した、そのドラマに心底憧れていて、その二人のDream Factoryを繰り返し読んでいました。

それから、近藤は秋まで斉藤と平行陣を組んでいたのですが、不器用な近藤は雁行陣で大きなテニスをする方が性分に合っていると判断して、後輩の丸山と組ませたことだと思います。

近藤はどんどん丸山に情熱を注いでいきます。近藤の中で丸山が生き始めていました。当然、丸山の中にも近藤が息づき、二人は強い絆で結ばれていきました。

丸山と組んでの初の公式戦=4月のハイジャパ予選のノートへ遡ってみます。

今シーズン最初の大会=県総体のシード大会、ハイジャパ予選。

村上高校に私で負けた。

私のイージーミスであっと言う間にG0-2。ここから丸山に救われて立て直して、G3-3のファイナルに追いついた。それなのに、また私が戦えなくて敗退…

ファイナルに弱いのは人としての弱さ。

本当にその通りなんだ、って身に染みる。

どうして私はこんなにクソなのか。

誰と組んでも、後輩と組んでも引っ張っていく3年生の強さが出るわけでもなく、逆に丸山に助けてもらっている。先生が伝えてくれたことって、すべて私にとって図星で・・・

今日の朝錬も放課後練習も、私は私の練習よりも丸山の練習の方に時間を割いた。後輩だからというのもあるけど、ペアとしてやっぱり私が中心ってのは違うと思うからだ。

でも、そうやって私は私の弱さから逃げているんじゃないか。弱点を前面に出して超えようとしてないから芯が弱いんだと思う。後輩の弱点はすぐ見える。だから練習する内容もわかる。けど、自分の弱点はさらさない。そしてすぐ折れる・・・

私は変わりたい。

こんな自分で、ラストまた同じような負け方をして、涙を流して寝落ちして、腫れあがった目で朝を迎える…

これが地区大会だったらと思うと怖い。こんな自分で引退??

3年目の4月17日現在、これまでの先輩のような「北越3年の強さ」は、私にはまだ分からない。

3年の重さは「思いの強さ」だって先生は言う。

だけど、私はその「重さ」に自らが負けてる。

(4月17日)

思いは強いが、実際のファイナルの競り合いで、近藤はチャンスボールでラケットを振れず、置きにいくようなロブに逃げました。

こんなに苦しいんですね。

丸山がノートの1ページ目に毎日書いてくれていた「梨果先輩とIH!」。このページがいったんなくなるって思うと悔しくて情けなくて…

誰と組んでも私は弱いんです。

浅いチャンスボールをウイナーとして叩き込めず、ロブで逃げてしまうくらい私は弱い人です。

今日も野倉と宮川(共に1年生)を真剣に強化しました。ちゃんと伝わって教えたところはすぐ上手くなりました。でも複雑です。人を強くすることはできるのに、私自身を強化することができない。

今、3年生誰もが苦しいと思います。

高橋も、鷲尾も、星野も、高野も、斉藤も。

3年だから湧き上がる「北越3年の強さ」、6人誰一人わかってないと思います。だから苦しい。

先生は、地区大会へ向けての選手発表の時、Aチーム以外はペアとして名前を呼ばなかった。まだチャンスはあるんだ。

今は苦しいけど、絶対丸山とIH!

(4月18日)

これまでの近藤と丸山の深い絆を見てきていますから、県大会までこのペアで行くつもりでしたが、まずは真面目な近藤が、自分の戦えないビビリを隠さないで表に引っ張り出し、おまえと戦うぞって宣言しない限り、県総体の厳しさは乗り越えられないと思っていました。近藤のノートに、この日こんなコメントを書きました。

戦えない人間が選手から外れるのは、それは勝負の世界では当たり前です。そこは情緒的な世界ではありません。でも君は今、情緒的ですね。

自分は強く戦えない人間だ。

それをまず感情を入れずに認め、大事な場面でこそ強く戦い抜く選手になろうとする。

それしかないのですよ。

シンプルなのです。

練習って自己強化ですよ。

次の日から、近藤はその日の1ページ目に

ビビリ脱却!

と大きく書くようになりました。

そして、しばらくすると自分がビビッて固くなり、ボールを置きにいった写真を敢えてノートに貼り付けて、超えていくべき自分を見据えます。

自分の弱さをさらけ出す。それが強くなる第一歩。

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朝伝えてもらったことを大切にして、毎日誠実に「強い人」になれるよう生きていきます。

もう戦えない自分、チャンスに逃げたりビビったりする私、本当に嫌です!

去年の代替大会:巻の長井・小林に負け。

秋地区大会:再び巻の長井・小林に負け。

県インドア大会:村上の関根・水澤に初戦負け。

ハイジャパ予選:村上の安城・佐久間に負け。

いつもいつも、少し格上の相手に対して負ける。相手にじゃない。自分に負ける。

挽回はできても、ファイナルまで競り合っても、勝ち切れない。

すべてが自分の甘さだと結果が教えてくれる。

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たとえば後輩の本間は、冬に負けた巻のエースにリベンジするために、毎日弱い自分をさらけ出して戦っている。本間から学んだことってたくさんあるけど、改めて思ったことは、

「私の戦うべきは『メンタル』だけど、私の技術の『正確性』をアップさせることが大事なんだ。いつでもどんなメンタル状況においても、ちゃんと戦える、信じて使える技術の『正確性』」

これを追究しないで、精神論ばかり言っててもダメなんだ。

(4月21日)

近藤の誠実な取り組みはノートを見るとよくわかります。

まるで『ベイビーステップ』のエーちゃんのノートです。

ただ、エーちゃんと違うのは、近藤のはノートは素晴らしいけど、実際のプレーの向上、メンタルの向上になかなかつながらないことでした。それは、近藤がやっぱりどこかで、ノートを僕に出していたからなんだと思います。自分が強くなりたくて書いているのですが、感情が強い近藤は、どうしても読み手を想像する。先生を想像する。褒められたい、認められたい。もちろん、それは発達過程で必要な段階ですが、アスリートはそこを超えていかねばならない。「アスリート的巣立ち」が必要でした。

僕は近藤のノートへのコメントは極力短くして、逆に近藤が書くノートのページ数を4ページまでに制限しました。知らず知らず「いいノート」を書くことが手段ではなく目的になってしまっていた近藤はとまどったでしょうが、これも巣立ちには必要なことだったと思います。

僕の意を理解した近藤は、その4ページを純粋な自己強化、ペア強化で埋めていかざるをえません。情緒的、感情的な感想を書くスペースがほとんどありません。(それでも字を小さくして近藤は書いていきますが…)

不思議なことに、そうすることで、近藤のノートは格段にレベルアップします。そして自分のスキル向上とつながってきます。

そのうちのいくつかを載せますね。

(クリックすると大きくなります。参考にしてください。本人了解済です。)

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メンタルコントロールに問題を抱えている選手が何人もいましたので、メンタルレクチャーをしました。メンタル指導って特別なことに聞こえますが、要は自分を知る、そして必要なことをする、それに尽きるのです。それが難しいのですが、でも専門家にしか扱えない臨床心理学的なものではないのです。それを話しました。

今日も改めて「チーム北越」の価値について、先生が熱を込めて伝えてくださった。今日は特に心の底で受け取ることができた。

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私たちのチームは人間性と日々の生き方にこだわっているからこそ、それをチームの力として発揮できる。自分の弱さを直視して、それを認めることから生まれる「強さ」「潔さ」。そういう仲間たちをリスペクトするからこそのチーム力。心と心の深いつながり。

こういうチームで、3年前の「あと2ポイントで団体日本一」の地点を超えていきたい。

先生はそう言い切った。

絶対、私たちの代で叶えたいって思った。

今日みたいな「先生の熱い思い」を私たちは忘れたり薄れさせたりすることなく、心で感じて思いを育てていく集団になりたい。そういう集団として日本一になりたい。

昨日、先生がメンタルレクチャーをしてくれた。それを生かして今日の試合形式はうまくコントロールできた。

「まずは『気づき』から」

本当にその通り。自分のメンタルの崩れに「気づく」から、次にするべきことにつながるんですね。

(5月3日)

昨日のメンタルコントロールの成功を力にして、今日は実際の練習試合で成長を感じたかった。

けど、三浦・斉藤にゼロ負け。

どうしてコントロールが効かなかったのか。

私のすべてのスタートは1本のイージーミスだ。

そんなことはよくあるし、そのミス自体はそれほど重いものじゃない。けど、これを「自分一人で取り返そうとするから、攻守の判断がなくなる」

挽回したい。その気持ちが「無理する」リスクにつながる。ミスが無謀を呼び、無謀が混乱を招く。そしてコントロールできなくなって、どん底へ行く。

今日がすごく悔しいし、また1mmも前へ進めなかった自分が嫌い。

そう思って、もう真っ暗になって絶望していた。

先生、最後に伝えてくれてありがとうございます。

「絶望がない限り、希望は生まれない」

今の自分、絶望的に嫌だから、今年のスローガンの通り

「信じて立ち上がる」

絶望の中から希望が生まれるのだとすれば、それを「信じる」しかない。

(5月4日)

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5月のゴールデンウイーク中、近藤は絶望の中にいました。

地区大会目前になっても整わない自分のスキル。4番手争いの相手、三浦・斉藤に連敗。しかも「わかった」はずのメンタルコントロールの失敗…

全体へ(実際は目がうつろになっていた近藤に向けて)、「絶望と希望」の話をしました。

絶望は希望の一部である。

これは、中世の哲学者で神学者のトーマス・アクィナスの考えの断片です。

とても深く感動したので、それを高橋にも(前回のDream Factory)、近藤にも伝えました。

13世紀に生きたトーマス・アクィナスの愛に満ちた洞察が、僕を仲介者にして絶望している若い二人に染み入っていくのを見て、こっちも深く感動させてもらいました。

そして、地区大会を迎えます。

近藤・丸山は、4回戦で第5シードの巻高校、長井さん・小林さんのペアと当たります。

これまで、近藤は競り合うけれど、いつも自分に負けて敗退。三度目の正直です。

今回も競り合いました。G3-0になるはずのイージースマッシュを丸山が空振りして、一気に流れが相手に行きました。

ファイナルの競り合い、いつもここで出るビビリ。今回の近藤は違いました。中盤のウイナーをミドルに打ち切ってノータッチ。その後逆に相手が崩れていきました。

崩れそうなところで、粘って耐えて、そしてチャンスで攻める。そのメリハリがありました。

大きな成長です!!

できた! 私にもできた!

巻の長井・小林に3度目の正直で勝利した。

ずっと、ノートに「ビビリと戦え」と書いてきた。

ハイジャパ予選の恥ずかしい試合の画像を毎日貼り付けて、ここを超えるんだって、自分に言い聞かせてきた。

超えたかった自分=①リードすると弱くなる ②競り合うと弱くなる ③ゲームポイントを握ると無難になる

もちろん、今日だってビビってる自分もいた。でも、いつもここで自分に負けていたから、「ここだ、ここだ。」って言い聞かせて、信じて立ち上がれたと思う。

G2-0リードから追いつかれてまたしてもファイナル。でも競った時に弱い自分をとことん見ているから、粘って粘って耐えて耐えて、自己ベストでファイナル戦いきれた。

絶望がない限り希望なんてない。

私はあの言葉が自信になったんです。

でも同時に痛感したこと。

ただ、戦えただけじゃ、県総体は簡単に倒されてしまう。

「ビビリと戦う」だけじゃダメだ。そこを超えていかなくちゃ。

さあ、いよいよ、私の最後の勝負=県総体。

絶対ベスト8入って、IHの夢叶える!

(5月10日)

今回、団体戦の第3対戦は、基本的に星野・鷲尾ペアで行くことに決めました。

自分の小ささと向き合うことを通して自己コントロール力を身に着けた星野、それからセンスと決定力に優れた鷲尾に3番勝負を託したい。ただ、不安もありました。鷲尾の不安定さです。突然おかしくなります。そのほとんどは集中力の途切れか、やるべきことの抜け落ちです。近藤にヘルプパートナーをお願いしました。意気に感じてくれる近藤ですから、自分やペアの丸山へ集中するエネルギーにプラスして、団体戦のキーマンである鷲尾にも本気で心を注いでくれました。

4ページのノートに、さらに「鷲尾ヘルプ」コーナーが割り込みます。

近藤は誰にでも本気です。情熱を持ってかかわります。

あと23日で私たちのここでの命は終わるかもしれない。

鷲尾は、そういう状況で、この選択でいいの?

絶対このままじゃ後悔するって、自分でもわかっていると思う。このままじゃダメだって。

センスがあって、試合でも感情に左右されずメンタルは安定して戦うことができる、鷲尾の長所。私には羨ましい限りだ。

でも、今まで起こしたことと同じ道を歩んで最後の戦いに臨めば今までと同じ結果になるに決まっている。

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北越の団体の強み、それはセンスじゃないって鷲尾ももうわかっているはずだよね。センスだけじゃ絶対に落とし穴にはまる。北越を選んだんだから、鷲尾も絶対に変われる。変わろうよ!

ただ変われるかどうか、それはある意味、鷲尾自身が今の自分にどれだけ「絶望」できるかだと思う。何度もチームを失望させてしまう自分と、もがいてもがいて、悩んで、それでやっとやっと光が見える・・・

そんなドラマみたいなキレイごとなんてあんのか⁉って思うかもしれない。

でも、あるんだよ。本当にあるんだよ。

私でさえあったんだよ。

きっと、もがいてるみんなそうなんだよ、信じてほしい…

私たちの部訓

あらゆることから力を集めて光を放て!

私、やっとその本当の意味がわかったよ。

鷲尾が団体メンバーだから言っているんじゃない。

一人の仲間として、鷲尾祐稀に伝わってほしいから言っている。

届け!!

(5月13日)

今日も私と菜月を中心にして鷲尾に伝えた。私的に鷲尾には「思いを送っている」と思ってやっていたけど、想像以上に鷲尾には届いていなかった。

でも、以前と違って受け入れてくれてるから、放課後も先生と話したみたいで、自分を立て直そうと今日は動いてくれていた。

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考えてみると、今までは「なんで⁉」って思うことが多くて、ちゃんと鷲尾に寄り添えてなかったのかもしれない。でも、今は鷲尾のこと先生に頼まれているからとかじゃなくて、チームとして仲間として、私は鷲尾を理解して、真のチームとして心一つに戦いたい。

大事な試合、3番勝負になって「頼んだぞ」って信頼できて、応援できる鷲尾祐稀になってほしいんだ。

何度でも言う。

このチームの10連覇のキーパーソンは鷲尾祐稀。

鷲尾が深く自分のリスクを自覚すること、それがチームのエネルギーとなり10連覇を達成するんだ。

私も全力を尽くす!

(5月20日)

この近藤の情熱と二人三脚の行動の積み重ねが、鷲尾を「注意深い」アスリートにしていきました。

最初は「決められたこと」としてやっていた行動も、鷲尾は近藤の思いをくみ取って、自分から進んで努力するようになったと思います。

二人で4つの項目を毎メニューの前に確認してメニューの後に振り返る、これがやっと浸透してきて、良い方向に行きつつあるのを感じる。

特に、「やらかしてしまいやすいこと」を予め二人で確認することで、本人も意識できていると思うし、そもそもあの「絶望ミス」が起こりにくくなっているんだと思う。

これも北越の団体戦を戦うチームとしての「練り上げ」なんだと思う。団体は団体の選手だけで戦うのではない。チーム全員で戦うんだ。

3年間、鷲尾はいろんな人にエネルギーをもらってきたはず。少なくとも真剣にかかわってくれたいろんな先輩の熱量はわかると思う。その思いの込められた熱量を受けているからこそ、ラストの団体戦でチームに花を咲かせてほしい。

私は団体メンバーに1回もなったことないから、祐稀の気持ちは分からないかもしれない。でも、だからこそ、私にできる精一杯を祐稀にあげて、一緒に戦いたいんだ。

(5月25日)

私は今日練習していて、最初から最後まで鷲尾の声がこっちのコートまで響いていたことに驚いたし、嬉しかった。あの鷲尾が言われたわけでもないのに、どこまでも響く声でずっとチームに声をかけていたことが、ただただ嬉しかった。絶対絶対、このチームで10連覇したい。そう心から思えた。

今日は高野がメンタル的に崩れた。私はその場にいなかったけど、星野と鷲尾が帰りに「その選択(高野の行動)自体が逃げなんじゃないの?」ってちゃんと伝えていて、いつもこういう時に退いていた星野や鷲尾が、仲間の弱さから目を背けないで、仲間としてちゃんと一緒に向き合っているのが、なんかとってもいいなって思えたし、これ絶対に団体戦で力になるんだって感じた。私たち、いつの間にか、あちこちでこうやって自然と仲間の弱さに向き合えるようになっているんだ。

さて、私。私はビビリだから、怖い気持ちも不安な気持ちもある。でも、それ以上に「やってやる!」って思う気持ちが強い。私の3年間の夢はあと5日後に決まる。咲くか散るか。

今日の練習ではAチームの中に入っても、しっかりラリーの形になった。それが自信にもなった。

Bチームからインターハイ。絶対絶対インターハイ!

3年間の私を、朋恵先生に見てもらいたい。本番の試合で恩返ししたい。

(5月30日)

あっと言う間に県総体です。

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今日は学校での練習がラストだった。

すごい集中の中でみんなやっていて、時間がたつのがあっという間だった。

ラストの学校練習って意味を考えると、次ここに戻ってきた時、「引退が決まって後輩指導に切り替える私」か、「夢を叶えてIHへ向けてさらに自分を鍛えていく私」か、そのどちらかだということだ。

これ現実なのかっていうくらい、この日が来るのが早かった。

もちろん不安もあるけど、その何倍も「信じれる確かなもの」が私の中にある。

ビビリな私だけど、それを認めてオープンにして生きてきた今の自分に自信があるんだ。

待ってろ、インターハイ! ビビリーがそこに行ってやるよ!

想いの強さは誰にも負けない。

いつでも全力で生きた。

私には信じれるものが山ほどある。

だから、何度でも立ち上がって戦う!

(6月2日)

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今、新潟県は新潟地区にポイント選手が偏在しています。地区ベスト8の近藤・丸山では、県総体でシードを獲るまでに至りません。ベスト16決め=北信越決めで、ハイジャパ予選3位の村上高校の選手と当たり、それに勝つと、またしても因縁の巻高校、長井さん小林さんとベスト8決めを戦う厳しい組み合わせでした。

村上高校戦では、お互いが意識する中での意地をかけた戦いになり、1本1本、身を削るような苦しい戦いでしたが、近藤・丸山が競り勝って勝利! 夢の実現まで大きな一段を上りました。

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ですが、ベスト8決めでは、前回勝ち切った長井さん小林さんにリベンジを果たされ、近藤の長い長い、熱い夢は終わりました。

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先生、たくさんたくさん伝えて信じてくれてありがとうございます。

IHの夢、叶えられませんでした。

村上のエースを倒して、勝負の巻、長井・小林戦。

リベンジされた。

悔しすぎる…

でも、ちゃんと成果も出た。

私の3年間をかけた勝負、もうビビッて終わるようなことはなかった。

苦しい場面でも、ベンチ見て、丸山見て、キーワード言って、信じて戦えた。

「試されてる」

そう書いた左手を何度も見て、その時の状況から逃げずに向き合えた。

負けた後、IH決定戦リーグでの長井・小林を見ていた。地区大会から、何倍も強くなっていた。

このペアに結局、1勝3敗。

このペアが私の壁であり、目標だった。絶対に超えてやるって思い続けた相手。

表彰式の後、長井に声をかけた。

「インターハイ頑張ってください!」

この二人がいたから、私は強くなれたんだ。

本当にありがとうございました。

(6月5日)

今、こんな選手って、近藤以外にもいるんでしょうか。

友達でも知り合いでもない、毎日倒すべき敵と見据えてきた相手に、表彰式の後に歩み寄っていって、祝福と激励を伝える、、、

これだけでも、近藤が目指してきた夢と、その道程が素晴らしいものだったことがわかります。

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この後は、県総体の団体戦。

一つ前の、「Dream Factory2021初夏」につながります。

未読の方は、いったん読んでから、またここへ戻ってください。

近藤が心配しながら一緒に戦った鷲尾は、自己ベストで巻高校との厳しい3番勝負を勝ち切ってくれました。近藤と準備した「当日ベンチに置いておく注意書き」を何度も何度も見ながら、そして近藤と約束したプレー中のキーワードやポイント間のイメージトレーニング、すべて鷲尾は近藤と二人で戦い切ったと思います。

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さて、冒頭に綴った「斉藤との最初で最後の団体戦」をメモリアルに戦いきったつづきがこれからです。

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時計を北信越大会の前日の夜に戻させてください。

思い出してみると、不思議なことを僕が口走ったことに思い至ります。

近藤もノートに書き留めていました。

日ミーティングで先生が団体戦の戦いについて話をしていた時に、県総体の個人戦は近藤は長井・小林に敵わなかったけど、もし団体戦に近藤が出て同じ相手と当たったとしたらどうだったかな。北越って団体の時に出る大きなパワーがあるから、勝っていたんじゃないかな、そう言ってくれた。

私もそう思う。もしくは、もっと競っていたと思う。

こう思うから、なおさら悔しくもある。

私があの負けた試合を団体戦だと思って、チームのために戦えたら、もっと違うパワーが出ていたんじゃないか。

あの日、G1-3で追い込まれた時、私のバディだった麻央が「梨果先輩。姿で見せてください! 私見てます!」ってフェンス越しで、熱のある言葉をかけてくれた。麻央の言葉があれから、ずっと私の心で消えない。この子の思いを私は受け取って一緒に戦えなかった。Dream Factoryの星実里さんのように、後輩のために私は頑張り切れなかった。

だから、あれは私の自己ベストじゃない。

後輩の思い、チームの思い、それを背負って炎のように戦いたい。

明日の団体戦は、私がチーム北越の第1走者として勝ち切って、2番手にバトンを渡す。

これが私のインターハイ

先生が伝えてくれたこの言葉。明日、腕に書いて戦う。

この言葉に込められた思いを力に換えて、泥臭く北越らしく戦う。

私は上手くない。上手くなくても強い自分で戦いぬく!

(6月19日)

確かに僕はそう口にしました。

でも、まさか、それが現実になるなんて、全く微塵も思っていませんでした。

団体戦、2回戦。

長野県2位の上伊那農業高校。

毎年、チーム一丸となって思いきりラケットを振ってくる熱いチームです。

ここから、県総体のメンバー高野・高橋に戻しました。

ところが、高野の弱さがまた出ます。

地区大会の団体決勝で出た弱さです。

高野は近藤よりもフィジカル力もありますし、サービス力も展開力もあるはずでした。けれど、近藤のように、高橋や斉藤のように、自分の弱さと本気で向き合うことを避けてきました。自分では向き合っているつもりなのですが、実際は儀式的なものだったかもしれません。

それが、大事な試合で露呈します。

その場でいくつかの手を打ちますが、縮こまったハートには何も伝わりません。

他の2ペアが勝ってチームとしては勝利しましたが、高野の「戦わない弱さ」はチームとしてダメージが大きすぎます。次は準決勝、おそらく巻高校が上がってくると踏んでいました。

北信越大会は、県総体で優勝を狙っていて果たせなかったチームが最後に戦う団体戦です。これが私たちのインターハイだ、という強いハートでリベンジを誓う大会で、実際、県での準優勝校が北信越で優勝という例は何度もあるのです。

しかし、県総体で勝ち切った相手に、2週間後リベンジを食らうようではインターハイを勝ち抜けません。

近藤を呼びました。

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近藤、おまえ準決勝、戦ってくれるか?

目が止まりました。

(目が点になる、ってこのことなんですね、って感心している場合じゃない!)

近藤は、少し驚いて、少しためらってから、小さくうなずきました。

もう一回聞きます。

本当にいいか。

さっきより力強く

「はい!」

まさか過ぎる展開です。

ついさっき、引退したばかりなのに、今度は負けられない巻高校のリベンジを受ける戦い⁉

準決勝。

整列。

両チーム、顔を上げて相手を確認。

第1対戦 近藤・高橋 vs 長井・小林

第2対戦 入澤・本間 vs 石山・神保

第3対戦 星野・鷲尾 vs 山本・久保田

第1対戦は、なんと長井さん小林さんとの再戦。昨日、ふと口にしたことが、次の日に実際に起こる。しかも全くの想定外の条件がいくつも掛け合わさって。

神はいる。もしくは言霊の仕業か。

こんなスリリングなドラマ、オカルトも推理小説もすべて凌駕しています。

人生はかくも驚きと感動にあふれている・・・

幸せすぎます、、、

エース対決となった第2対戦ですが、この日、個人戦の決勝を午前中に戦っているのです。

その個人戦では、入澤・本間は石山さん神保さんのリベンジを退け、北信越初優勝を遂げていました。

それが同じ日の数時間しか経っていない状況での再戦。

これも鳥肌が立つ展開。

両チームのプライドをかけた戦いになりました。

団体戦をこのメンバーで戦うのはこれが最後です。

2面展開で行われたこの試合、どちらも一進一退の競り合いとなりました。中盤リードしたのは両コートとも巻高校。リベンジに燃える巻高校の底意地を感じました。ぐっぐっと土俵際に追い詰められていく感じです。

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数時間前に優勝旗を手にした入澤・本間。やはりやりにくそうです。実力が拮抗している場合、直前に負けた方が次の試合で勝つ確率はかなり高いのだそうです。心理的なものでしょう。それでもファイナルに持ち込んで手に汗握る1本1本を戦っています。

さて、近藤・高橋。

1ゲーム目は取りましたが、G2-0にできるところをミスで落としてG1-1。ここで近藤のビビリが顔を出します。「高橋を生かす」という方針が、逆に「高橋に決めてほしい」という依存に変容していくことに自分も気づかない。ラリーを続けていけば高橋が決めてくれる。いや決めてほしい・・・ここに弱さが現れます。

G2-3でチェンジサイズ。

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いいか、近藤。

おまえが引っ張ってきたBチームCチーム、みんな後ろで応援してる。BCチームだったおまえが3年の最後に団体メンバーに入って、ベストで戦ったら、やつら、どんだけ勇気と希望を持てるか。

裏方の気持ちを分かって本当に裏方と一緒に戦えるのは、ずっと裏方だったお前にしかできないんだ。

近藤の目が再び、すーっと透明度を増しました。

近藤のノート

G2-3のところで先生に熱く伝えてもらって、サイドをチェンジして巻側のサイドへ行った。正面には北越のベンチ、そしてずっと一緒にやってきたBCチームが見えた。

レシーブゲーム。ポイントの合間、ずっとベンチとその後ろを見ていた。麻央も見えた。この子たちの思いを力にして、この子たちの分まで戦う、そう強く思えた。

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ファイナルに弱かった近藤。

北信越の団体の準決勝という晴れ舞台で、一番強いファイナルを戦いました。

キャプテン高橋も、チームの思いを背負って、力強く戦いぬきました。

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今回は、麻央の思いも受け取って戦い切れた。

県総体でできなかった、後輩の思いを力にして120%で戦いきる。

先生、私にもできました。

北越の団体戦。

夢に見続けた団体戦。

思いも責任も背負って、私、戦い抜けました。

すごいですね。

もう戦うこともないと表彰式で祝福した長井・小林と北信越の団体で戦うなんて。

すべてが奇跡で、すべてが夢のようです。

ずっと応援してくれていた朋恵先生。

朋恵先生、私にも、チームのために全力で力を出し切る、思いを力にして団体で貢献する、北信越のコートで表現できました。

本当にありがとうございました。

エース対決は、巻高校に軍配が上がりました。

結果として、近藤・高橋の3番手勝負がどれだけ価値があったかということです。

3番勝負の星野・鷲尾は実は負けゲームです。

G0-3になってもおかしくなかった3ゲーム目。流れは完全に巻高校。

星野の起死回生のバックハンドストロークが2本決まって、流れを引き寄せました。

決勝の能登戦の3番勝負の不甲斐ない試合も含めて、二人は県総体で「やり切った感」に開放されすぎたのだと思います。周りからも祝福され続けて、研ぎ澄まされたアスリート魂を失ったのだと思います。

でも、負けは負けとして学ぶべきことが必ずあります。この決勝での敗退も必ず何かにつながるのです。何につながるのか、それはわかりません。ただ、前を向いて自分のベストを毎日生き切ることでしか、その「何か」にはつながらないことは確かです。

今まで、2年生エースの入澤・本間が必ず1勝して、勝ち上がってきました。今回、初めてエースが団体で負けた。「ボロクソ3年生」で2勝しなければ勝ち上がれない。その危機的状況を3年生4人とベンチの強い絆で乗り越えた経験はとても大きいと思います。

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近藤のこの信じられないドラマを、同じ会場で行われる石川インターハイに僕らはつなげていきたい。

近藤は「奇跡」と言いました。

でも、僕は近藤の「軌跡」なんだと思います。

近藤が1年生の頃だったでしょうか。

「なんだかんだ言って、北越だってスキルじゃないか」

そう吐き捨てたことがありました。

努力しても努力しても、自分よりもずっと努力の薄い人がスキルが高いからって団メンになっている。Dream Factoryなんてキレイごとだというわけです。

僕は県総体が終わった日、北信越の切符を手にした近藤のノートに、ただ一言こう書きました。

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努力は必ず報われる   

これから後輩たちに伝えていってね

僕の中じゃ、1年生の時の近藤のネガティブな言葉への返答としても書いたつもりです。

でも近藤の並外れた努力は、個人戦北信越出場だけの報いじゃ割が合わなかったのでしょう。

「奇跡」じゃない。近藤自身の「努力の軌跡」の延長にこのドラマがちゃんと用意されてあったのです。

近藤が憧れて何度も何度も読んだ、10年前の石井・依田の物語。

次は、後輩たちが近藤梨果の物語を憧れて読むようになるのです。

北越Dreamのリレーですね。

6月、1年で一番太陽高度が高くなる日差しの強い季節。

日向で光をいっぱいに浴びて輝く花たちもいます。

でも、梅雨交じりの曇りがちな空のもと、Bチームとして裏方で精一杯生きてきた花が美しく咲く日もある。

今回の北信越は梅雨空の下での試合でした。

近藤には紫陽花が似合います。

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2021年6月23日 (水)

Dream Factory 2021 初夏

新潟県大会 団体10連覇!

ボロクソ3年生が見せた「信じる強さ」

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令和3年の県総体。準決勝でライバル巻高校を退けて、2面展開で行われた決勝戦。

思い切りラケットを振って向かってくる長岡商業を、2年生エース本間・入澤が跳ね返して先勝。隣のコートでもキャプテンペアの高野・高橋がG3ー0のアドバンテージでマッチポイントを迎えていました。

右ストレート展開から、高橋の矢のようなポーチボレーが決まって、県10連覇を達成しました。

長く苦しい冬でした。

Dream Factory 2020秋〜冬〜2021春と、季節は巡りましたが、今年のチームのツボミは全然膨らんできませんでした。

リーダー不在。託されたリーダー自身が責任を背負えない。3年生が入れ替わり立ち替わり自分の弱さに負けてチームの核になれない。言葉では「らしい」ことを言うけど、全くの言行不一致。ボロクソです。

何とか立て直して全国選抜の切符は取ったものの、その後、全国へギアを入れるべき時に3年生が責任と自覚を持てない。

とうとう2年生にキャプテンを任せて全国センバツを戦うことになりました。

本間は当時まだ1年生。部長の斉藤と精一杯努力してくれましたが、3年生の誰一人キャプテンの責任を背負えないチームが勝負になるわけがありません。あっさり初戦敗退して新年度を迎えます。

このボロクソ3年生チームにようやく芽吹きが訪れたのは、高橋咲羽が覚悟を決めてキャプテンを「する」ようになってからだと思います。

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高橋との出会いは3年前の中学校の新潟地区大会です。確か初戦だったと思います。

相手はその年の県中学校No1後衛でしたが、高橋は果敢に取りに行きまくるのです。技術はありません。実力差は圧倒的です。全く触らせてもらえません。それでも怯(ひる)まず、諦めず、追い続ける。 

こういう選手を育て上げたら、どんな風景見させてあげられるんだろう。

そう思いました。

1年目は幼いながらも順調に成長して、インターハイのメンバー入り、冬の県センバツ〜北信越センバツではレギュラーの一人として優勝に貢献しました。

しかし、その後のコロナ休校から2年生のほぼ丸1年、高橋の夢は「夢」ではなくなりました。 

「夢」とは、何であれ、すぐに手に入るものではないですから、本気で手に入れようとすれば困難性が伴います。本気じゃなく夢を語っている時、夢はシャボン玉のようにふわふわと自分の周りを漂っているでしょう。ですが、本気で「夢」を見据えた時、シャボン玉はスーッと遠のき、星のように遠くで仄かに光るのです。その時、人は初めて「夢」までの遠い道のりに慄(おのの)き、その遥かさに困難性を実感するのです。だからこそ、「夢」は「希望」であり続けるわけですが(すぐに手に入るものへのアプローチは「欲望」といいます)、その困難性=厳しさを忌避するのであれば、もはやそれは「夢」ではない。

アスリートとは、この困難性を自ら追い求めて「夢」を全力で掴みにいく者のことです。

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トップクラスに立った経験のない子がトップの「夢」を目指し続けられるには、強い意志力か、「君ならやれる」という指導者のメッセージを信じる力か、そのいずれかが(最終的にはどちらも)どうしても必要だと思っています。

高校部活動の世界でアスリート魂を育てるにあたっては、高校2年生というステージがとてもキーになるといつも感じさせられます。

1年目はがむしゃらに行ける。3年目は最後の追い込み歯車が回る。その間の高校2年生。多感な時期に溢れかえる情報と誘惑の氾濫、この1年間を、コーチが選手とどう関わり合い、どう「夢」に舵(かじ)を切らせ、どう精神的に成長させられるか。それはとても難しく、それ故とてもやり甲斐のある「生の燃焼」(うまい対応語が見つかりません)だと思います。

高橋がようやく「夢」へ真っ直ぐ舵を切ったのは3月になってからです。無論、全国センバツに間に合うわけもなく、名古屋では1ゲームも取ることが出来ず敗退します。

自らに今何をすべきかを問わなかった人間に、全国の舞台でできることなど何一つない。

水澤選手の言葉通りです。

県10連覇をかけた県総体までは、たった2ヵ月しかありません。

それでも、高橋が持っている「光」を諦めるわけにはいきません。

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途中でバトンを落とそうが、何度も転ぼうが、思春期ですから、すべてに意味があります。どんなに遅くとも「自ら何をすべきか」この時期に真剣に向き合うことは、人生において計り知れないほどの価値があると思います。

このボロクソチームのもう一人のキーパーソンは部長の斉藤菜月です。前にも紹介した広島から北越に来た子です。

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技術的には伸び悩みましたが、リーダーの責任を果たしながら人間的に大きく成長しました。斉藤は誠実で努力家で、心が豊かで仲間や後輩の面倒見がとてもいい。何よりも基本的にポジティブで建設的。ボロクソだった3年生の「良心」と言っていい存在です。何度も「やらかす」仲間や後輩たちに、愛情を持って妥協せず向き合います。自分自身の弱さも十分に理解しているので、仲間たちの弱さにも寄り添ったうえで一緒に乗り越えようとします。6人の3年生の中で、斉藤と近藤の二人がBチームや1年生を指導し、北越の心を伝え続けてくれました。

キャプテン高橋と部長の斉藤。二人のノートを軸に、ボロクソチームがアップダウンを繰り返しながら、チームとして意志力と信じる力をはぐくみ、熱い絆を築きあげて、10連覇へのチャンピオンシップポイントを高橋が鮮やかなポーチボレーで決めるまでの日々を追っていきます。

全国センバツから3週間後、県総体のシードに大きくかかわるハイジャパ予選の前日。高橋のノートから。

こうやって1日1日振り返って、時には過去も振り返って、言葉にして記述していることが私のエネルギーになっているし、自信にもつながっています。きっと私だけじゃなく、ノートを読んでくれている先生にもエネルギーを与えているんだと信じます。

「信じる」これをパワーワードとして、明日戦います。

高校でテニスを続ける「縁」をもらって、夢を追っていたつもりだったけど、1年間の闇に阻まれた。それを春の選抜の完敗で思い知って、今真っ直ぐ努力している。そして再びチーム北越のキャプテンを任されている。私には私のストーリーがある。

今は光へ向かってもがいている状態だけど、私はそれを超えて、光をコートの中に放ちたい。

星みたいに誰かにエネルギーを与えられるように☆☆

次こそ、口だけじゃないことを証明したいんだ!

(4月16日)

しかし、ドラマはそれほど簡単ではありません。

高橋は星野と組んで戦いますが、ライバル校の巻のレギュラーと当たる前に、冬の練習試合では簡単に勝っていた村上高校の2年生に負けて(コケて)しまいました。

序盤、思い切り高橋にぶつけてくる戦略に混乱してしまい、我を失ってしまいます。何とかファイナルまで挽回しますが、ファイナルの中盤に高橋の不安定で意志の感じられないプレーが続いて敗退します。

真っ直ぐになれなかった1年間、きつい場面になると逃げるようにして過ごしてきた日々が、もともと弱くはなかったメンタルタフネスをすっかり台無しにしてしまいました。

村上の2年生にファイナルで負けた。悔しいを超えて自分が嫌いだ。正直、光は私からは見えない。もう「光!」って自信持って言えないし、何のために頑張っているのかわからない。私が「信じて」ベストで戦って勝つことがみんなへの恩返しだと思ってたのに、それが叶うことはない、きっと。

闇がよみがえってくる。これからどうやって光を探していけばいいかわからない。どうやって姿を見せればいいかわからない。だって次の大会でもまたライバルの巻と当たる前にコケるのわかっているから。もう不安100%で自信ゼロ。

(4月17日)

物事が上手くいっている時は、強気になれるし、ポジティブでいられるけれど、それが阻まれると一気にすべてをネガティブに捉えてしまいます。こちらの指導も仲間の励ましもすべて自分の非を咎(とが)めるものとして敵対してしまう。失敗や挫折は必要なことであり、糧となるものですが、逃避マインドが心にあると「嫌」という感情と結びついてしまうのですね。ただ、高橋はネガティブを引きずらないカラっとしたところもあり、その回復も早いのです。

晴れのち嵐のち快晴、夕方には豪雨警報・・・春先の高橋はそんな感じです。なかなか難しい…。

10日後のノートは、一転して希望に満ちています。

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最近、私は「信じるPOWER」で戦っている私を想像してから、眠りについています。いつか夢で出てきてそれが「正夢」になることを待ちわびています。そのために足りないこと必要なことを全力でやり抜いていきます。

今日は1年生にしっかりと強く伝えた。部活に来る時間、ノートの書き方について。もちろん1年生は元気があっていい面もあるけど、調子に乗ったりゆるい感じがあるから、3年生の意志としてしっかり伝えた。

それから、クラスの子と部活の話をよくするようになった。その子は準備が遅かったり雰囲気が悪かったりする時に、1年生やチームに対してズバッと言える人がいないんだ、って言ってた。

私自身は、そういうこと伝え合うのが当たり前だと思っていたけど、それは北越女テニだからなんだなって改めて思った。

その子には、チームにとってプラスでしかないんだから勇気出して言ってみるか、仲のいい仲間にその悩み話してみて二人で伝えたらいいんじゃないって言ってみました。

私がこんなこと言うなんて、違和感ありありだけど、改めて、私、いろんなこと見る視点とか色々変わったなって思う。

その子の悩みはプラスへ向かうものだから、一緒に悩んでいきたいと思った。

(4月26日)

アップダウンを繰り返しながらも、高橋のメンタルは着実に健全な方向に育ってきているのを感じていました。

草木も人も日陰にいたら育たない。命は光を浴びて育つものです。

リーダーとしての自覚も徐々に表れていきました。そして、自分を対象化することも、それを言葉にして他者へ開くことも、自然とできるようになってきました。以前の高橋からは考えられないことです。

今日は、私、自分の弱さを(多分初めて)オープンにした。

どうなるかがわかっているはずなのに、自分に負けてやってしまうのが弱い私。今は光へ向けて生きているけど、苦境の中で弱い私が現れる。上手くいっている時は、どこに弱さがあるの?ってくらいポジティブで攻めの発想の中にいられる。それが私の「弱さ」のやっかいなところ。試される場面は多くない。だからこそ、その時に「来たぞ、弱い私。ここだぞ」って思えるかどうかだってことをチームにも伝えたかった。

伝えたいことを話すと気持ちいい。

伝えたいってことは、その弱さを対象化できているってこと。私自身が認めて、その弱さに対する準備ができているってこと or すでに私がやっていること。弱さであっても強さであっても、こうやって姿で見せて、伝えていきたいんだ。

(4月29日)

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それでも、まだ苦境に立つとネガティブな感情をコントロールできません。些細なことから始まるのですが、自らどんどん状況嫌悪→環境否定→自己否定に陥ります。

昨日の夜は、とてもネガティブになってたと思います。すごく思い出してくるというか、自分の闇がフラッシュバックしてきて、なんか胸が苦しくなって部屋でノート書いてたのですが、外のベンチに行って泣きながらノート書きました。

コメント、本当にありがとうございます。

昨日、ネガティブになった時、もう前と違って、隠さず現れた感情をすべて先生に吐き出しました。ひどい言い方したと思います。すみません。

あの少しの壁を超えられない。元気に返事する。笑顔でいる。深く呼吸する。これだけでネガティブワールドに行かないのに、それができない…。もう自分でコントロールが効かなくなって…。

でも、先生が言うように、あれが希望の一歩なのですね。

信じます、今日の日、今日のあの時が、希望の光につながる一歩だということを。

(5月6日)

僕は真っ暗闇にいる高橋に「これ、希望だよ」と言ったのです。

これまでの高橋は自分を開けなかった。ネガティブな闇を内に押し込めて、表面上「らしい」ことを言って誤魔化していたのです。それが自分を歪めてしまう。今回は、それを吐き出しました。

「それは絶望ではなくて希望でしょ。」

希望を持つから絶望があり挫折がある。リアルに希望を抱けなければ、絶望せずに逃避するはずですから。疑いなく「絶望」は「希望」の一部です。

春季地区大会直前のノート

今日はとても1日、楽しかったです。

こうやって練習の中で起こる事を日々言語化、対象化していくことが、強さにつながっているんだって実感します。

地区大会では、まだまだ未完成だけど、少しでも強くなった自分と出会いたいです。ラストの地区大会、私は挑戦です。メンタルも今まで積み上げてきた技術もタクティクスも。信じて戦うのみです。

朋恵先生が帰られる直前に私のところに来て声をかけてくださいました。

「高橋が日々、自分を対象化して変わろうとしているのはよくわかるよ! だからこそ、苦しい時に自分でどう頑張れるかだね。そういう時に高橋に集まるみんなの目は決して敵じゃないよ!」

ネガティブに陥る私は、自分を見失って人格が変わったようになってしまいます。もしそうなったとしても先生方は全力で本来の私を取り戻そうと力を貸してくれる。そういう環境にいることを本当に感謝して日々生きたいと思いました。

(5月8日)

地区大会。個人戦は、巻のレギュラーにペアの1年生後衛がラリーにならず高橋は何もできませんでしたが、団体戦は、同じ相手に対してポイントしまくりました。後衛の高野が中盤から相手にも状況にもビビってしまってファイナルで負けましたが、高橋の精神的成長がプレーにつながってきました。試合後のノートでもそのことを実感しました。そして弱さに負けた高野へ語り掛ける言葉は、ストレートです。

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地区団体優勝!

お疲れ様でした!

今日はバイザーに「勇気」「信」って書いてもらいました。大事な場面に手で触ってすごくエネルギーをもらえました。

決勝戦の巻戦。

あれは私、完璧に「ゾーン状態」だったと思います。

相手が見える。心が見える。予想が外れない。身体が勝手に反応する。超集中でした。

心配していた厳しい場面での人の目、全く気にしなかった。

新潟市庭球場で1面だけ残った決勝戦、リードしていて追いつかれて逆転される嫌な展開。いつもなら人の視線が気になるような場面だったけど、今日は全く気にもせず敵に集中できていた。

昨日の個人戦で鷲尾が先生のアドバイスを信じてやりきったって話を聞いて、それが私に火をつけた。一番信頼されているはずのキャプテンが信頼してくれる人を信頼しないなんてあり得ない、そう思った。信じて戦う姿を表現したかった。

個人戦の近藤と斎藤の姿は本当に凄いというか、これが3年だっていう姿だった。

斎藤の県総体代表決定戦でのファイナル2-6からの逆転劇。相手のネットインさえ走りきって返球してポイントした。諦めないへこたれない北越を表現してくれた。

私たちも、団体決勝、ポイント2-6だった。

前日の菜月の姿を思った。「諦めない、私たちも…」

敵のセカンドアタック!

身体が反応した。

バッチリ止めた。

3-6。

でも次のポイントで、凜が振り回されて簡単にサイドを割った。

凜、ハートが弱い。凜の弱さは序盤~中盤はあまり出ない。けど終盤に出る。競ってくるとハートがどんどん弱くなる。「信じて戦うよ」って口では言っていても、自分の中に芽生える不安や怖さにどんどん負けていく。「信」が「疑」に負ける。自分を疑う心。疑心暗鬼。つまり自分に負ける。

凜、ラストの県総体まであと1ヶ月だよ。

私も死ぬ気で強くなっていくから、凜も死ぬ気で頑張れよ。

誰の手を借りてもいいんだよ。そんなの恥ずかしくなんかない。

先生の力も借りて、弱い自分を対象化して、本気で向き合い、やるって決めたことを全部やって、時には闇に入りそうになっても、弱音吐いても、自分を隠さないで、強くなろうよ。

本当に変わった凜と、ラストの県総体、勝負したいんだ!

(5月11日)

一方の斉藤。自ら選んだ後輩の三浦とインターハイを目指しますが、地区大会の3回戦で自滅敗退してしまいます。その後の敗者復活戦の最終決定戦もファイナル2-6と追い詰められましたが、そこから驚異的な粘りを見せて、逆転勝利。何とか県大会への出場権をもぎ取りました。

斉藤のその日のノートです。

斉藤は喜ぶどころか、本戦で出た自分の弱さに涙します。

今日は高校最後の地区大会だった。

結果は本戦で負けて、県大会出場枠をかけた敗者復活戦を勝ち上がって、本当にギリギリの県出場だった。

最後まで苦しかった。本当に苦しかった。だけど、この苦しさは私に課せられたハードルとしか思えない。決定戦最終戦はファイナル2-6の相手マッチ。

負けたくない、その思いだけだった。

そこから1本1本、逆転勝利して、みんなみんな喜んでくれた。

でも、私は弱い。

今日は今までに泣いたことないくらい、悔しくて情けなくて泣きました。

県10連覇に向けて、部長としても強くならなければならない。

チームのために、私、毎朝走ります。そしてどんな時でも北越ホールの下で夜イメトレします。

今日の姿だけは表現したくない。

戦うべきものは自分自身。演じる強さではなく、本物の強さを。

(5月10日)

翌日の団体戦。

今日は地区の団体戦。

巻との一騎打ちだ。

勝ったけど、咲羽が最後のミーティングで伝えてくれたように、決して気持ちのいい勝ち方ではなかった。

ただ、昨日の個人戦も含めて、本間・入澤はエースとしての姿を表現してくれた。本当にありがとう。

二人は冬に巻のエースに負けてからペアを解消し、この地区大会から再結成した。入澤はずっと自分の甘さと向き合っていた。本間だって、自分を変えたいとずっともがいていた。

向き合ってきた者の強さって本当にすごい。何でこんなに強いんだろうって思うくらいエネルギーになって現れる。

咲羽も今日は強さを表現してくれた。高野が小さくなってもチームを救う勇気あるプレーを何度も見せてくれた。キャプテンとして本当に頼もしかった。

二人で作ってきた今年のチーム。県10連覇に向けて、リーダーとしてもまた頑張っていこうね!

凛(高野)、最後の最後でこうして弱さが出るんだね。

3年になって戦う団体戦は今までと違う責任を背負っての戦い。だからこそ、それを背負えるだけの生き方をしてきたかどうかが必ず試される。本当にその通りなんだ。

でも、もう一度チャンスをもらったんだよ!

だからこそ、絶対後悔しない選択を日々していこうよ!

(5月11日)

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地区大会でライバルの巻高校に勝ちはしましたが、二人のノートにも書いてあるように、団体メンバーの高橋以外の3年生は、自分を出し切れていない、もどかしさの残る戦いでした。最後の歯車が回るはずの3年の情けない姿を見て、2年生の本間が熱いメッセージをノートに綴ってくれたので、それをみんなで読みました。

本間って、ここまでチームのこと考えてくれてるんだなって思った。

3年生の問題をチームの問題として考えてくれている。本気でメッセージしてくれている。

本間のメッセージは「自分の弱さをオープンにして、それを自分が認めて、そして自分自身を切り拓け」ということだ。

変わってほしいという願い。

このチームが好きだからこそ、一緒に夢を叶えたいという希望。それゆえの厳しさ。

そこから本間は逃げない。

逃げるとすれば、私たち3年だ。

2年生が私たちにこれだけ退かないで、熱く訴えかけてくれている。

それを熱く受け止めないとすれば、それはもうチーム北越じゃない。

本間のメッセージ、それをノートに書くのにどれだけの決意と勇気と願いと希望があるのか、それを私たち3年生は噛みしめるべきだ。

友里那、いつもチームのこと本気で考えてくれて、ありがとう。

私たち絶対変わるからね。

下級生が「自分の弱さを認めて、新たな自分を切り拓け」と語りかけたメッセージから、斉藤は自分と向き合います。

私の弱さについて

本間から伝えられて、私は今日、思ったことがある。

私は自分の中で強いものから壁を作ってしまうことがある。これは1年生の時に、練習帰りのバスの中で先生に伝えてもらったことだ。でも私はその弱さと今まで向き合ってこなかった。今回の地区大会の負けもこことつながっていたなって今になって思う。

練習中だったら、Aチームと打ち合う時に感じてしまう壁。一緒にやった方が強くなるのはわかっている。だけど、また打ち合えないんじゃないか、また元の打ち方に戻ってしまうんじゃないか。そんなネガティブな感情が自分の中に湧き上がるのを感じていた。それを感じるから、その感情を強引にねじ伏せて、押し殺そうとしてきた。でも、これは向き合うのとは違う。戦っているつもりで、実は強引にねじ伏せようとしている、何とかして蓋をしようとしているだけだったんだ。

梨果(近藤)は、練習のラストがかかると、自分からAチームコートに行って「〇〇、ラストお願いしていい?」って大声で頼んで自分を向上させている。でも自分は梨果って凄いなって思っているだけ。

梨果、ごめんね。

あなたが、本気で強くなりたいって思っている行動をこんな風に受け取ってしまっていました。

これが私の弱さです。

だから地区も、追い込まれて打てなくなる。強いプレッシャーに飲み込まれて逃げたんだ。

三浦(ペア)が弱いだけじゃない。

今まで、このことをこのノートに書いたりして向き合うのを避けてきた。

ラストの県総体、もう後悔だけは嫌だ。

もう自分を中途半端にしたまま、自分に負ける戦いだけは絶対にしたくない。

(5月15日)

本間のチーム愛にあふれた熱いメッセージを受け取って、他の3年生も深く考えました。県総体まで2週間余りとなった中で、3年がどう責任を背負ってチームを前へ進めるのか真剣に話します。チームメイトにどうすれば本間の思いが伝わるのかという点で、斉藤と近藤、そして高橋がぶつかり合います。

その日の高橋のノート

今日、私は初めて仲間に本気で反論しました。

自分の思ってることを吐き出すって、本当に勇気がいることだと思います。

私がこうして自分の思っていることに素直になれたのも、先生との信頼関係を築いていく中で、いろんなものが良い意味で吹っ切れているんだな、って感じます。

先生に今回のこと、言葉にしてもらって深く納得しました。性格とか長所とか傾向とか、人それぞれで全く違うんですね。いろんなことを広く見れてすべてにかかわれる人もいれば、私みたいに自分が大事だと思うことに特化してエネルギーを集約する人もいる。それぞれ、良い悪いじゃなくて個性なんですね。個性がそれぞれであるゆえに、時にすれ違いも起こる。ぶつかり合いも起こる。とてもよく理解できました。

幼い頃の言い合いとは違って、なんだかぶつかり合うことで逆により深いものが見えた気がします。だから、今日はぶつかり合ってみんな成長できた日なんだと思います。

これまでの私は、一方的に伝えられて、「はい…」とか、言い訳みたいなことを言ったりして、クソな感じだったけど、なんか、今は自分自身もチームの夢に向かって精一杯生きてきてたから、自分を否定されるようなことに対して黙っていられませんでした。凛も思っていることがあるなら、はっきり言った方がいいのにと思いました。自分の思いがあるなら吐き出せ!って思っていたくらいです。

(5月21日)

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同じ日、斉藤のノート

今日、先生がみんなに伝えてくれたこと。

自分とは違うけど本気の仲間をリスペクトする

それぞれ戦っていることがあって、思っていることだって違うけど深い。

レギュラーは自分たちが10連覇の戦いを背負うっていう強いプレッシャーの中で自分を磨いている。咲羽は咲羽でキャプテンとして本気で考えていることがある。毎日提案型で生きようとしていることもよくわかる。もう以前の咲羽じゃない。

先生に直接伝えてもらったように、私の中でも考え方の進化が必要なんだな。

部長として、キャプテンとして、それぞれ全力を尽くすことがある。立場が違えばエネルギーを注ぐ場所も違う。

今日、先生に「自分で問題だと思ったことを、他の仲間にも加わってもらって伝えようとすることがお前の弱さだ」と伝えてもらって、自分の中でもスッキリしました。

リーダーとしての潔さ。それは信頼と自信そのものだ。

部長として、これでいいのかな、いつもそんな風に私は考えていた。みんなが一番納得する道はどれだろう、って。

ここまで本気のメンバーがそろって最後の大会を目の前にすれば、いろんな考えがあるのが当たり前。部長として、自分の考えを覚悟を決めて伝える、それが逆にみんなが私に求めていることかもしれない。信頼がそこにはある。自分の中のモヤモヤがなくなりました。

自分がこれから生きていく中で、こうやって面と向かって「これが君の弱さなんだよ」って伝えてくれる人っているんだろうか。大人になったら、もうこんな機会はないのかもしれないと思ったら、とても幸せなんだなと思います。

確かに、莉穏先輩は、チームに何かを伝える時、いつも一番本気で、一番熱があった。

でも、それって覚悟と信頼があるからなんだ。部長として本気でチームに伝え続けるって、苦しいことでもあるって、この立場になってよくわかる。でも、莉穏先輩はそういう苦しさはチームに見せなかった。私たちが見えないところでもがき苦しんでいたんだと思う。

自分の中だけで考えているだけじゃ、変わらない。思っているだけじゃ、変わらない。人も自分も。

いかに行動として切り拓いていくかに尽きるんだと思う。

チームに対しても、まだ切り拓ける部分はたくさんあるんだろうな。

咲羽、ぶつかり合ったけど、咲羽は今まで通り勝つためのチーム作りに力を尽くしてね!

県10連覇を達成するため。石川IHで決勝に行くため。

チームの団結は私に任せて。私が変える。私が切り拓く。

今日、こうやって3年生でぶつかり合った。

改めて、みんな本気なんだな、って思った。

この仲間と本気で勝ちたいって強く思った。

強い思いはみんなが持ってる。そこにリスペクト。

どこの学校よりも絆は間違いなく一番強い。

さらに強い「チーム高橋」にするために、私は残された日々を全力で生きる。

(5月21日)

青春映画そのものですね。このぶつかり合いを機に、3年生がぐっとまとまったように思います。斎藤は、この件から、さらに自分自身への洞察を深めていきます。

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今日は本を読みました。広島カープの新井さんの著書です。その中にリーダーのことについて書いてあって…

心を鬼にして言うべきことを言わなければならない時もある

とあった。

先生がこの前伝えてくれた部長としての覚悟。

莉穏先輩のようなリーダーになるためには、この考えも必要なんだな。

県での10連覇。

強力なライバルがいるからこそ、チームが引き締まって戦う環境を作りたい。だからこそ、私に覚悟がいるんだ。

部長をやっていてすごく感じるのは、伝えられる方も苦しいが伝えている方はもっと苦しいんだっていうこと。

責任もあるし、プレッシャーもある。

莉穏先輩、そして今までの9連覇、それぞれの代にリーダーで苦しんでいた人がいたはず。その先輩たちの偉大さを思う。

私は10回目のチーム北越のリーダー。

この苦しさがチームを強くし、私自身を強くする源だ。

(5月24日)

今日は、持久力トレーニング。

考え方を変えた。

いつもはあと何分だということに意識がいく。それから前に誰々がいて、すぐ後ろは誰々。

もう私は自分のベストに集中していない、雑念だらけの人間だった。

抜きたい、抜かれたくない。いつも他者との比較。

でも、表現したいのは自己ベスト。

試合に置き換えて考えれば、ポイントは〇対〇、あと何ポイントでゲームが取れる、ゲームを失う。相手は誰々で私より強い、弱い…

そんなことばっかりが意識に上る。

そうじゃないんだって!

今、自分ができる目の前のことを、全力でやる。

今を全力で生き切る!

自分が走る30分間、肩甲骨の振り、重心の位置、呼吸、これだけに集中した。

すると、いつもよりずっと集中して自分のペースで走れたし、いつもよりずっと自分自身を追い込めた。

そうなんだ。こうなんだよ。

集中するってこういうことなんだ。

(5月26日)

今日は県総体前の最後の休日練習。

昨日、愛香先輩(鈴木愛香:教育実習中)に厳しく伝えてもらって、私は「気魄タイム」を作って1年生に見せた。こうやって気魄を込めて戦うってこと、私たちが先頭に立ってチームをリードしていかなくちゃ。そして練習の一つひとつ入る前に、チームで心を一つにする時間を提案した。練習中もまずは私が一番気魄を出すんだと誓いながらやりきった。

男子はまさかの敗退。優勝は巻。2位は長商。どちらも角シードではない。団体は何があるかわからない。巻は男女アベック優勝って思って向かってくるに違いない。だからこそ、もっともっとギアを上げて、跳ね返す力を表現する。やってきたことはどの学校より自信があるって言えることが北越にはたくさんある。あとはハートだ。だから想いの強さを表現することだ。

(5月30日)

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今日で学校でできる県総体前、最後の練習が終わった。

本当にあっという間だったなって思う。

練習中ペアの三浦のサーブが入らなくなって、コート外で一緒に見てやっていたら、1年の船山が近づいてきて、「菜月先輩、最後の試合なのに、自分のことはいいんですか…」って、泣きながら話しかけてくれた。こんなに感性豊かな1年生が一緒にいるんだって思ったら、私の方こそ泣きそうになってしまった。

先生も伝えてくれたように、私たちが1年生の時は、ただ連れて行ってもらったインターハイだった。だけど、今年は自分たちがこの1年生を「連れていく」番なんだ。

本当にいろんな事があった6人だけど、この6人だからこそ、っていうことだってある。

今までやってきたこと、向き合ってきたこと、伝えてもらってきたこと、たくさんの宝物がある。

新潟県のどこよりも、私たちは真っ直ぐ夢に向かってきた、それだけは断じて言い切れる。

だからこそ、自分たちを信じて戦うだけだ。

どこだって、打倒北越で向かってくる。

かかってこい!

相手がどこであれ、私たちは私たちの目標に向けてまっすぐ生きるだけだ。

(6月2日)

雨の中の県総体初日。

斉藤は地区大会をギリギリで抜けてきたためポイントがなく、厳しい組み合わせでした。最終的にベスト8に残るペアのパッキングで、2回戦が勝負でした。

これまでの斎藤は、誠実な人間が強く勝ちたいと念ずることによって生じる「縮こまり」に悩まされていましたが、この日はすべてラケットを振りぬきました。タクティクスも駆使して中盤のG2-2まで互角です。次のゲームで脚が止まっての失点が響き、そのまま2-④で敗れました。硬式テニスでいう1ブレイクです。敗れましたが戦って敗れました。自分に負けたのではない。ベストを尽くして敵に負けました。

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最後の県総体が終わってしまったけど、まだ全然実感がないです。

今日の試合はずっと先生がベンチに入ってくださった。本当にありがとうございました。中越(高校)戦、勝ちたかったです。

最後は私が狙われた。三浦は自己ベストで戦ってくれた。

地区大会であの情けない試合をしてから、本気で自分の弱さを認め向き合ってきた。

あれから自分ができることすべてをやり切ったと思う。

自分を変えるというのがいかに難しく覚悟のいることなのか、そのことに最後にやっと気づいた。

宿に帰ったら、お父さんから連絡が来ていた。

部屋で電話した。悔しくて、なかなかしゃべれなかった。

「菜月が自分で新潟に行くことを決めて、3年間やり切ったこと。本当に誇りに思う。一緒に夢を見させてくれてありがとう。」って言ってくれた。

お父さんの夢、現実にしてあげたかったな。

最後に、「3年間、ありがとうございました。」って伝えた。

電話越しにお父さんも泣いているのがわかった。

小学校からテニスを始めて、こうやって新潟に来させてもらって本当に感謝している。

中本監督やどんぐり北広島の選手とのかかわりもお父さんがいたからだ。元々サッカーのコーチをしていたのに、私がソフトテニスを選んだら、いつの間にかソフトテニスのコーチをしていた。本当にすごい人だと思う。

こうして振り返ってみると、本当にあっという間だった。

1年生の時は逃げてばかりの私だった。でも、2年生になってリーダーを任されて、私が逃げたらチームが終わるんだって思えるようになった。

最後の戦いで、三浦とペアを組んでよかったです。三浦には人一倍厳しいことも言ってきて、みんなの前ではああやって言っているけど、三浦を信頼しています。三浦ならわかってくれる、必ず思いを込めて一緒に戦ってくれる、その思いはずっとあった。三浦と組んで、私も成長できました。これからはチームだけに集中します。

先生、私、北越に来て本当に良かったです。ありがとうございました。

きっとこれから先、まだまだたくさん壁が出てくるのだと思います。

向き合ってきたことを信じる、その力は本当に強いんだなって、改めて思っています。

その信念を頼りに生き抜いていきたいと思います。

(6月4日)

時計を1週間戻して、高橋のノートです。

今日の疲労感は、今までにないものでした。

やっぱ、1日1日の生き方が以前と全く違うんだなって改めて実感しています。

最近、駆け引きがめっちゃ楽しいんです。やっと莉穏先輩が「楽しい」って言っていた意味がわかってきました。

県総体の団体戦は、私が勝利して10連覇決めたいです。

3年生のこの時期になって、こんなにも日々やってきてることが「自信につながる」とは思っていなかった。

ハイジャパ予選の暗黒の負けが、自分にとっては大きな成長のきっかけだったような気がする。そこから、このノートに書く「思いの綴り」も深くなったし、こうして毎日自分自身を対象化して言語化していることが、今の自分を確かなものにしているんだと思う。

最後の時に、自分を100%信じれるかどうか、それはこうした日々の積み重ねなんだ。

絶望から大きな希望の花を咲かせるために、日々進化し続けたい。

(5月24日)

勝負の日が近づくにつれて、高橋のノートは「なりたい自分」「表現したい自分」のイメージが明確になってきます。「~したい」という強い思いが言葉になって溢れます。

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県総体まで、あと5日。早い…

今日1日は、何かいつもと違った。県総体のことを考えると、ワクワクするし緊張もするし、少し不安もあるし、いろいろ複雑な気持ち。

団体戦は誰と組むかわからない。でも今の私なら誰とでもいける。

誰よりも激しく勝負して、莉穏先輩のように県でNo1の前衛を表現したい。

絶対、マッチポイントは私が決める。見ててください!

3年になって、私は真っ直ぐこのチームの夢に生きてきた。真っ直ぐに信じて立ち上がったんだ。勇気持ってやるだけ。

絶対大丈夫! 私ならやれる!

先生が信じてくれる「私の光」、表現したい!

(5月31日)

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プロ野球選手の「ホームラン宣言」のようです。確率はずっと小さいはずですが…

しかし、実際にそうなるのです。

このノートに書いたとおりになるのです。

チーム北越は、こういうこと本当によくある…

ただの願望を書いたのではありません。

強く強く思うことは実現する

思いの純度が極限まで高まるとそれが現実になる

今日、ミーティングで先生が2年前のDream Factory(卒業生に贈る3年間のフォトムービー)を見せてくれた。

何か、今までと全く違う心境だった。

ドックン!と突き刺さる何かがあるように、重いし、緊張するし、何よりも深い感動があった。

2年前、あの田中先輩のマッチポイント、ノータッチウイナーは凄い。凛も見て泣いていた。絶対に強く何かを誓ったんだと思う。

私たちも先輩たちみたいに、苦境になっても戦い続ける人になってみせたい。3年生の力を見せつけたい。

絶対に絶対に苦しくても逃げずに戦いきる!

信=勇気

先生が書いてくれた言葉。

やってきたことを信じて、それを勇気に換える。

(6月4日)

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みんなが最後に私に渡してくれた優勝旗は、とても重かったです。

団体メンバー、そしてサポート、全員が本当に自己ベストで戦ってくれました。

3年間の総決算の団体戦。勝って嬉しかったが、ホッとしたというのが正直な思いです。

準決勝の巻戦は、本当にタフな戦いだった。

冬の北信越選抜を圧勝したエースがいる巻高校。しかも地区大会の巻き返しで勝負をかけてくるに違いない。思いと思いのぶつかり合いだ。

3番勝負になった。心配していた祐稀。初めて見る気魄。

スマッシュを打つ時のキーワード。インパクト時の気魄。表現してくれた。

本当に嬉しかった。

2年生エースの入澤・本間。

試合をしていく中での、瑛麻の成長。本間のブレない強さ。この重圧にも屈しない強さを身に着けていたね。何度もベンチに向かってガッツポーズしてくれた。

決勝戦の高野と咲羽。今回の団体戦は3年の思いもすごく伝わってきた。

絶対に石川IHに行くんだって戦ってくれた3年生4人、本当に頼もしかった。

最後に先生からのサプライズニュースは何がなんだか最初はわからなかった。

私を梨果を組ませて北信越の団体を戦う!?

一昨日引退したつもりだったのに、頭が整理できなくて、抱き着いてきて大泣きしている梨果のテンションに追いつかなくて…

でもだんだん状況が理解できて、嬉しさがこみあげてきた。

チームのみんなも笑顔で祝福してくれた。

私の寿命、もう少し伸びたんだね。

そして3年生全員で戦える北信越。しかも苦楽を共にしてきた梨果とペア復活!

先生、本当にありがとうございます。

選ばれるからには、他の2本に頼った「おまけ」になんかならない。

梨果と二人、泥臭く北越Bチームの意地見せて戦います!

(6月6日)

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個人戦 入澤・本間 県チャンピオン奪還!

同士討ちで星野・鷲尾が銅メダル

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巻高校のエース、石山さん神保さんのペアとの決勝対決は去年の代替大会以来何度目になるのでしょう。二人によると中学校時代からだそうで、中学時代は敵わなかったそうです。

高校に入って力をつけた二人は1年時に3連勝しました。

夏の代替大会、秋季地区大会、県新人選抜です。

しかし、12月に行われた県インドアの大会で敗れました。巻ペアは、確実にこちらの弱点を研究し、一方で自らの弱点はしっかり修正してきており、決して「たまたま」ではない「実力の逆転」を感じさせる勝負でした。

1月の北信越インドアでも巻ペアがほぼ敵なしの状態で優勝。このままやっていても翌年の春~夏に再逆転は難しいと判断して、このペアに大ナタをふるうことにしました。

まずはしばらくの間ペアの解消。ジュニア時代からのペアですから、お互いをよく知っているがゆえのなれ合いとマンネリが生じていました。冬の間、様々な経験をさせることで、自分の強みと弱みを徹底的に洗い出させて、春を待ちました。

春のハイジャパ予選は、入澤は3年生の鷲尾と組んで決勝で敗退。本間は入ってきたばかりの1年生の高橋寧々を教育して引っ張って、ベスト4入り。お互いがしっかり結果を出してきたので、春季地区大会から再結成させました。

冬に突かれた弱点はむしろ強みに変わっていました。

そして、県総体。

ベスト4決めで、入澤の未熟さが露わになり、マッチポイントを握られるまで追い詰められましたが、本間はその状況を跳ね返す強さを身に着けていました。

決勝は初めて完勝と言っていい内容の勝利。

県チャンピオンのポジションを研究と努力、そして人間的な成長を伴って奪還しました。

この2ペアのライバル関係は理想的だと思います。

お互いを超えようとすることで、2ペアの力が上がっていく。

石山さん、神保さんに敬意と感謝を伝えたいと思います。

3年生の星野と鷲尾は充実したパフォーマンスで勝利を積み上げました。

翌日の団体戦の準決勝=巻高校戦では、お互いのエースが勝っての3番勝負、個人戦の3位同士の激突になりました。

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自分と向き合いながらメンタルコントロール力をつけてきた星野。そして、これまで何度も集中力を欠いたようなミスからチームを危機的状況に招いていた鷲尾でしたが、3年生の近藤と斉藤が試合に向けた準備と実際の戦いの場で起こるリスクをしっかりマネージしてくれました。それから鷲尾自身も、自分の性格の弱みから目をそらさず、仲間のヘルプを素直に受け入れることで自分が強くなれることを理解して、団体戦としての自己ベストを表現してくれました。

星野結衣のノート

3番勝負に強い3年生。

ひとまず県総体で表現できました。

先生、私に自信をつけさせるご指導、ありがとうございました。

いつも熱く伝えてくれてありがとうございました。

団体優勝したが、なんだか実感がわかないのはなぜだろう。

あのクソな3年が4人も入って優勝? 10連覇?

本当にひどかった私たち3年生。

私たち勝負できるのか? 何度目かのつまずきの時そう思った。

ただ、いつか本間がつぶやいた言葉を先生が拾って伝えてくれた。

「巻のエースに1本負けても他の2本で勝って優勝って、何か違う気がする」

私はこの言葉が深く心に刻まれた。

そしてずっと、巻のエースを自分も倒すんだって誓って日々を積み重ねた。

毎日、渦のように沸き起こる様々なこと、不安や悔しさ、いろんなことが混ざり合いながらも、私たちは1日1日を精一杯生きてきたと思う。

県総体前の練習で、OGの愛香先輩、なつき先輩、玖瑠実先輩が本気で伝えてくれた。

「気魄がない」「北越らしくない」

あの時、伝えてもらって火がついた。

あの次の日、菜月が提案してくれてチームの気魄は上がっていった。

先輩、ありがとうございました。

菜月に最後、優勝旗を渡した。

何だろう、何て言ったらいいんだろう。

このチームの結束力。つくづく感じる。

目に見えないずっと深いところでつながっている感じ。

それが根っこのように張り巡らされて、最後に花が咲く、って言えばいいのかな。

先生が前に伝えてくださった通りになる。

本当にすごい。

信じて戦える

こういうことなんだって実感する。

でも、まだまだ今日の力では、3年前の先輩が行ったところまでは行けない。

分かっている。レベルが違うんだ、全国は。

エリートだらけの全国、そこに雑草魂を持った北越が挑む。

こっからがスタートなんだ。

(6月6日)

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ベンチの後ろから、近藤が「祐稀、やれるよ! 祐稀も信じて戦える!」これまで「やらかしていた」場面で何度も何度も、祈るように、仲間の心に深く届くように、響かせていた声が印象的でした。

最後に、団体戦途中からの出場になった、高野の決勝戦での気魄も10連覇になくてはならないものでした。

「ボロクソ3年生」が失敗するたびに「信じて立ち上が」って築き上げてきた絆が、団体10連覇と2年生エース入澤・本間のチャンピオン奪還に深く寄与したと思います。

2021年、今年も3年生のドラマがあって全国Dreamの切符を力強くつかみました。

ここからが本編です。ここがスタートです。

2021年1月21日 (木)

Dream Factory 2021 冬

倒れて 立ち上がって 全国選抜へ!

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令和3年1月16日  北信越選抜大会  inこまつドーム

🔶各県1位リーグ

北越 1-② 高岡・高岡西(富山)

北越 0-③ 能登(石川)

北越 ③ー0 長野俊英(長野)

北越 ②ー1 福井商業(福井)

2勝2敗 得失ゲーム差で2位

(詳細は石川県ソフトテニス連盟のホームページに掲載されています)

勝負と踏んだ1試合目の高岡・高岡西戦をトリプルマッチから落とした後、地元IHを控えて戦力充実の能登に力負け。5チームリーグで2敗。優勝どころか、全国選抜出場も遠のいていきます。唇を噛みしめる選手たちを集めて告げました。

終わったことは変えられない。一方で最悪の結果を予想してネガティブになっても何の意味はない。確かに現実は厳しい。だが全国選抜へのチャンスがなくなったわけではない。ここで発揮する力は何だ?

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「レジリエンス!」

そうだ。まずは今、目の前の試合に全力を尽くすこと。崖っぷちでもネガティブにならず、ひたむきに頑張り続けること。「このチームならチャンスあげてもいいな」って女神が思ったら扉が開くかもしれないじゃないか!

そして、長野戦で③-0勝利。

その後、リーグ全体の星取りが動いて、最後の福井戦で③-0勝利か、②-1でも得失ゲームで大きくゲインすれば2位~3位が見えるという状況になりました。ただし負ければ4位確定です。

ある意味、去年と同じ。最終戦に全国選抜出場かこのチーム終了かがかかるという運命の戦いになりました。

さあ、ずっと自立できなかった2年生の成長が試される場面です。

昨年もこの舞台に立っている高橋、星野、鷲尾。この三人のアスリート度の成熟が全国切符獲得の成否を握るというドラマです。

このドラマで、存在感を示してくれたのが星野結衣でした。

星野は高いポテンシャルがありながら、ネガティブな感情に飲み込まれて自滅していく試合を繰り返してきました。昨年のこの北信越選抜の戦いや夏の代替大会でのパフォーマンスは素晴らしいものがありましたが、いずれも一つ上の先輩、佐藤がうまく星野の感情をコントロールしてベストを引き出した結果です。佐藤が引退した後、星野が最後までメンタルを統御してベストを出し切った試合はありません。

高橋と組んで第3シードで臨んだ冬の県インドアも、ちょっとしたミスや相手のカットサーブに手こずったことから、ネガティブの渦に飲み込まれて1ゲームも取れずに自己崩壊。北信越の出場権すら手に入れられませんでした。

その後、ペアを組み替えて1年生と組ませることで、自立を促してきました。

「自分のことしか考えないから、自分に飲み込まれていく」このパラドックスに気づくことから、星野は再出発すべきだと考えたからです。

弱さゆえに負けていく。それが技術であれフィジカルであれメンタルであれ、勝負とは単純です。弱いから負ける。だから自分を強くしたい。強くなりたい。それはそうなのですが…。

「自分が、自分を、自分は、自分に・・・」そうやって主語、目的語に自分を置いて、自分にこだわっている限り、永遠の自己円環を抜け出すことはできないと思います。

「自分が強くなりたかったら、後輩を強くしろ」よくそう言うのですが、自己円環の中で周回している者に、トラックの外は「風景」であり、自分が強くなることと直接関係はない世界です。(実は関係大ありなのですが)だから、仲間や後輩よりも自分。つまり自分のトラック走路しか見えません。でもそれこそが自分で限界を作っている。そのことの意味を深く了解するためには、深い「気づき」の経験が必要です。

星野はまだまだ自立から程遠い1年生の三浦と組むことによって、必然的に主語・目的語を「自分」から「三浦」に変更せざるを得なくなりました。当然、自分の練習時間は少なくなりましたが、不思議なもので、そういう日々を積み重ねることで、星野の内部で何かが変わっていきました。それは表情、言葉、空気、あらゆるものから感じ取れるものです。

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人って、やっぱり関係性によって成長していく生物なのだとつくづく思います。

星野の3日前のノートに遡ってみます。

練習後のミーティングで、先生は「この大会で、それぞれが試される場面が必ず来る」とおっしゃった。私はメンタル! 私がいくつもの大会で負けてきたのは、ここ。いつもいつも敵ではなく自分に負けてきた。この大会は後輩と組んで団体戦に出る。なおさら責任は重い。そういう条件で私は試される。だけど、神様は超えられない人には試練を与えないという。

私は超えたい。だから、心も身体も準備を怠らない。

去年のこの大会、莉穏先輩が私のベストを引き出してくれた。だから三浦のベストを引き出すことは莉穏先輩への恩返しだ。どんなに苦しい状況でも私は私に負けない。へこたれない!

(1月13日)

今日は練習中、気持ちにすごく波があった。ボレーで少し上手くいかなくなったことで急激に気持ちが落ちていった。自分でもびっくりする位の波で。でも、同時にその波を跳ね返そうとしている自分もいた。自分の顔が暗くなっていったのもわかった。だけど跳ね返せない。波に飲まれそうになる…

でも、

「この表情のままでやっていて何になる??」と思えた。

三浦が見てる。三浦はうまくいかない部分があっても普通に頑張ってるじゃん!

「私、こんなんでどうする!」って、喝を入れる自分も出てきた。

そして、気づくと元気に声を出して動きも変わっている自分がいた。

これがレジリエンスか…

でも、もっとすぐに開き直れるようにならなくちゃ!

ある意味、今日のはポジティブに考えれば「大会前の予行演習」だったんだと思う。大会当日、何か嫌だなって不安な感じからネガティブになっていくのでなく、その嫌な感じに気づいたら、どう行動するか、どう選択するか。その「演習」を神様が私にやらせてくれた。

ありがとうございます!!

(1月14日)

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この14日のノートを見て、僕は深く感動しました。

ここには客観的な自己理解と、表面的でない自己変容のためのメンタリティ(考え方)の進化が現れているからです。

ソクラテスは「無知の知」と言いました。

自分のことを自分はよく知らなかったのだと知ること。それが「知」の第一歩だと。

古代ギリシャの哲学者の洞察は、倫理の教科書に載るためにあるのではなく、いつの時代になっても、若者の成長を促すために語り継がれているんですね。

『ベイビーステップ』というマンガを読んだことがありますか?

作者の勝木さんは、綿密な取材に基づいてアスリートとしての成長のために必要な技術、フィジカル、メンタル、考え方、向き合い方を描いています。

このマンガから、向上のヒントを得ようという目的で書かれた文章にとても興味深く、今回の星野の成長と重なる記述があったので紹介します。

メンタル面での「気づき」は、その瞬間から改善に取りかかることができる

気づきを「心技体」の3要素に分けて考えてみましょう。

技術面と体力面に関して試合中に「気づき」が得られたら、選手は練習やトレーニングで課題を克服しようとつとめます。例えば、ラリーについていくだけのスピード、あるいはスタミナがなければ、それらをトレーニングで補おうとします。

一方、メンタル面は、即効性があるというか、気づいたらその場ですぐに実行できる要素でしょう。プレーヤー特有の(あるいは自分自身の)心の動きをよく理解した上で、試合の中で何か「気づき」があれば、すぐに「やるべきこと」を実行する機会があるはずです。

 皆さんにも身近な例では「感情をコントロールする」ということが挙げられます。荒谷君(『ベイビーステップ』の登場人物)は感情の起伏が激しいタイプですが、「怒りは空に放つんだ」という名言を残しています。カレは感情的になることが試合にマイナスになると気づき、それをコントロールしようと常に試みています。技術的、体力的な改善は時間が必要ですが、このように、メンタル面は「気づき」の瞬間から徐々に改善を図ることが可能です。

『ベイビーステップ』は気づきと成長の物語と言えます。登場人物は作中、テニスプレーヤーとして成長していきますが、その都度、彼らの「気づき」の場面が描かれます。丸尾(主人公 エーちゃん)の場合は、挙げていけばきりがないほど常に「気づき」の連続。ジュニア国内トップの清水亜希は、コーチである母親から自立することの必要性に「気づく」。宮川卓也はエーちゃんとの試合の中で「油断しないで確実に勝とうとしたこと、それ自体が油断だった」と思い知る。「気づき」から課題を得た選手たちは、克服しようと努力、成長していきます。そうしたエピソードが多く描かれるのは、テニスの競技特性として「気づき」の場面が(成長やスキルアップには)非常に重要だからなのかもしれません。

荒谷君はエーちゃんとの戦いで、目の前の相手に向かい合うこと、感情をコントロールすることの大切さに気づき、それをきっかけにプレーがよくなります。彼はもともと悔しさの塊のような選手で、それが成長を妨げていたのだと思います。しかし、エーちゃんとの試合を通じてその部分を解き放つことができたようです。これはとても興味深い描写です。こうして、いろいろな関係の中で、「勝ちたい」という欲求と戦いながら、試合の中で彼らのメンタリティが成長していくのです。

(元Under18テニスナショナルコーチ 笠原康樹さんの文章より)

荒谷君はエーちゃんとの戦いで「気づき」を得た。星野は三浦との関わりの中で「気づき」を得た。一方は敵であり、他方はペアですが、両者とも「他者」との関わりの中で自己成長していくのです。他者と関わるとなぜ自己了解が深まるのか、それは「自己円環」から抜けて、自分自身を外から見る目を獲得するからでしょう。他者との関係の中で自分を知ることができる、不思議なパラドックスですが、ここに「人間」の人間たる所以があるように思います。

今日は大会前日の会場練習だった。

小松ドームに入った瞬間、去年の光景がよみがえってきた。

本部に並んでいる優勝旗と代表旗。

あの優勝旗を私たちは去年獲得したんだって思うと、すごく重い物を感じた。

奇跡的と言われた去年の優勝。でも、今年は「本物の力」で獲得したい。

私は、県インドアの自滅から、確実に少しずつではあるけど、自分に負けない人間に近づいていると思う。まだまだだけど、そう言える自信もある。それは何より、後輩の三浦と組んだことが大きかった。もう自分にどっぷり浸かっている余裕なんてない。三浦は手がかかる。一つのことをわからせるにもやらせるにも時間がかかる。こっちの忍耐もいる。工夫もいる。大変なこと、たくさんあったけど、どうにかやってきた。三浦も成長してきた。同時に自分も成長できた気がする。

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私たちのドラマが、新たなDream Factoryの1ページになるように、自分と戦って、打ち克って、全国選抜の切符を絶対勝ち取ってみせる!

明日、私はメンタル面で絶対に試される。でも私はへこたれない。後輩と組んでいるんだ。「ごめん」なんて、本当にいらない。どの状況で何をするか、それだけ。この指針を忘れるな!

最後のミーティング。

先生は「二つの力」が必要と伝えてくれた。

一つはレジリエンス=復元力。私は訳を「反発力」と言ったが、折れそうなところでぐっと復元していく力だ。もう一つは「突き放す力」。リードしているのに勝ちきれずに追いつかれてしまうのでなく、リードしたら「突き放す」。

今度こそ、私はできる!

このチームはできるんだ!

(1月15日)

この二つの力を発揮する場が、最終戦で訪れました。

相手の福井商業も負けられない戦いです。ここまで2勝1敗。勝てば全国です。

負けても得失ゲームで可能性はある。

北越は負けたら4位確定です。

第1対戦

三浦・高橋 3-④ 

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敗退しましたが、しがみついて3ゲームをもぎ取り、得失ゲームは「-1」

第2対戦

入澤・鷲尾 ④-1

初戦の富山戦で、トリプルマッチを逃したペア。そこから歯車が狂いました。

鷲尾に星野のような「気づき」はまだ訪れません。先輩や指導者に言われないと「自分の問題」がわからない。まだまだ自分から自己を洞察できません。常に戒められていないと自分のすべきことも明確にならない。このままでは才能が持ち腐れになってしまいます。ただ、鷲尾が北越に来たのは、姉がこのチーム北越で大きく変化したのを妹として驚きとともに目の当たりにしたからだそうです。中学時代の自分では後悔が残る。私も姉のように大きく変わりたい、それが入部動機です。それなら…と何度も思い、促しているのですが、まだ転機が訪れません。キャプテンの高橋と共に、この冬に「気づき」を得て、自分の何をどう変えたいのかを星野のように明確にして、もがき続けてほしいと思います。

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ペアの入澤。すごい才能の持ち主です。ただ、まだまだ精神的に幼く「気づき」を得られていないので、その才能を伸ばしきれない状態です。でも、この大会直前、入澤の成長のきっかけになるかもしれない事件が起こりました。個人戦の負けも含めて、自分の戦うべきものに「気づき」、日々の生き方に目覚めてほしいです。

この才能はあるけど精神的に幼い二人を、部長の斎藤、団体メンバーから外れた高野、裏方で力を振り絞る近藤の3人が叱咤し続け、励まし続け、この厳しい戦いを勝ち切らせました。5人で勝ちきった感じです。

これで2ペア合わせて、得失ゲーム「+2」!

第3対戦 星野・本間

ペアは変わりましたが、後輩の本間と組んで、全国選抜への運命を託しました。

進化している星野を信じました。

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星野、今のお前なら、本間のいい所も引き出せる、さあ、自分を信じて夢を勝ち取って来い!

星野はベストゲームでした。無心で振り切ったボールが次々と敵コートを突き刺し、ポイントを重ねていきます。

それまで自分を超えられず小さくなっていた本間もラケットを振り切って戦いました。

星野・本間 ④ー0 勝利!

準優勝で全国切符獲得!

優勝という形で恩返しできませんでしたが、先生、私は自己ベストで後輩を引っ張っていくという姿は表現できたと思います。

私は、今日1日、何かグッと強い芯が心の中にあり、どんな状況でも私自身を折れさせなかった。自分のプレーもチームへの思いも。

初戦の高岡西戦では、私たちが1勝して、隣の鷲尾・入澤のペアもG3-2のP3-0トリプルマッチポイントだ。そこから逆転負け。3番勝負の高橋・本間も自ら退いていくような敗退。チームにとって最悪のスタートだ。そして続く能登戦では0-③の負け。選抜出場が消えてゆく…

その後、みんなで集まった。でも、みんなの顔が死んでる。

これではダメだと思った。私が火を燃やし続けなければ…

ここがチームのレジリエンスを発揮する場面だって強く思った。優勝はなくても、まだ全国のチャンスはある。高橋にも強く伝えた。

この時の私は、今までにない感覚だった。崖っぷちなんだけど、同時に「やってやろう!」っていう前向きな気持ち。むしろ楽しいっていうか、グッと何か心の中で燃えるものが生まれた。

本当に不思議な感覚だった。「信じる」ってこういうことか。

そして、その後チームは2勝して、結果は2位。

私たちは全国への切符を手にした。

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ただ、優勝した能登に北越DNAを表現できなかった。互角に打ち合っていても勝ちきれなかった。それでも、夏までには追いつける、私もそう感じた。

この大会、確かに私自身、成果ありだったけど、絶対に過信しない。

チーム北越、前へ!

(1月16日)

🔶北信越インドア大会(ダブルス個人戦) 1月17日 in小松ドーム

3位 高野凜・鷲尾祐稀

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自分の「質」に負けて、団体メンバーから外れた高野でしたが、その悔しさを個人戦にぶつけたのでしょうか。僕は試合前、高野にこう言いました。

本来なら団体で戦うべきものを自ら手放したのだから、おまえにとっては、ここが団体戦のやり直しだ。そう思ってチームに姿見せろ!

4回戦、第2シード 能登のエースに④-0勝ちしたのは正直驚きました。堂々とした勝ちっぷりでした。その後の準決勝では優勝した巻高校のエースには全く歯が立ちませんでしたが、二人とも石川のエースに勝ち、新潟のエースに負け、そこから自分の為すべきこと、向き合うべきこと、大きな「気づき」を得るきっかけにしてほしいと願います。

鷲尾も久しぶりの雁行陣でしたが、教えてもらったスキルを大事な場面で発揮してくれました。ただ、鷲尾も高野も自分の戦うべきものに「気づき」、それを超えての勝利ではないと自分に言い聞かせるべきです。ここを錯覚すると、春に大きなしっぺ返しを食らいます。力はある。チャンスはある。それを教えてくれた結果であると同時に、これが自分で勝ち取った実力だと誤解すれば暗闇の春が待っています。まだまだ君たちは超えていない。

無知の知。まず自分を知ること。そして自分の中に戦うべきものがあることに「気づく」こと。

そこを見据えて、日々ひたむきに超えていこうと精一杯もがき、努力すること。

それが強くなるということだ。

そして、その姿が何よりも美しいのだよ。

冬来たりなば春遠からじ

今年の冬は大雪です。新潟は雪に埋もれています。

しかし、最後の決戦はもう雪雲の先まで近づいています。

君たちのドラマ、精一杯生き切りなさい。

 

2020年11月 3日 (火)

Dream Factory 2020 秋

「未熟」集団、ようやく出航!

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夏の代替大会を感動的なドラマで締めくくった3年生からバトンを引き継いだ新チームでしたが、新リーダー学年の2年生のトラブル続きで、まったくチームとして前へ進めないでいました。

これもコロナ禍の余波なのかと思うことが多々ありました。毎日のようにいろんな問題が起こり、その対処に追われて「チーム一丸」を作れません。3月~5月、チームとしてのスタート時が空白になってしまった今年、そのツケが今に回ってきているのでしょうか。

ただ、これは問題が起こるたびに生徒たちにも伝え、自分にも言い聞かせるのですが、「成長過程にある者にとって失敗はつきものであり、失敗自体は経験値となるなら、むしろあった方がいい」。失敗も後悔も挫折もない部活動など無意味だと思っています。

思春期の人間の発達課題は、あえて言えば「経験から学んで前へ進むこと」しかない。「失敗から学ぶ」とすれば、その失敗と向き合う以外にないのですが、幼い精神は「向き合う」ことを嫌がります。自分の弱さと「正面切る」わけですから、それは覚悟がないとできません。

今年の新チームは、度重なる小さなインシデントごとに、「向き合える」チームであるか、「向き合える」くらい心は育っているか、を試されているように思います。

「日ごろから何を為すべきかを自らに問わない人間に、全国の舞台でできることなど一つもない」

これは2年連続で日本一になった水澤奈央選手の名言の一つです。本当に名言ですよね。全くその通りだと思います。「全国の舞台」を「主体的な人生」とか「目指していたポジション」とかに置き換えれば、大人にも深く刺さる格言になります。

「何を為すべきかを自らに問わない」新チームは、まず秋の地区大会で巻高校に今年も惨敗しました。地区大会でベスト4に巻高校が3ペア、北越は1年生の入澤・本間ペアが孤軍奮闘、優勝しましたが、2年生は次々と自分に負けていきました。

🔶秋季地区大会 R02.9.14  in新潟市庭球場

 ダブルス

  1 位  入澤瑛麻・本間友里那

  ベスト8 高野凛・鷲尾祐稀

普通は「心機一転」となるところですが、それでも船は出航できない。この結果でも、自分と向き合わない(向き合えない)ので、脱皮していきません。そもそもどんなチームにしたいのか、新リーダー学年がビジョンを提案できないのです。

ただ、そんな「もがきの日々」の中で確実に育っているなと思えたのが、「立ち上がる力」です。トラブルが起こってもそれを個人の問題だとしてしまえば、チームの力にはなりません。一人の未熟さをチームの課題ととらえられて、初めてチームは機能します。問題が起こるたびに2年生は練習後に自主ミーティングを開いてぶつかり合います。逃げずにぶつかり合います。そのエネルギーは確実にチーム推進力になっていく、そう思えました。

そして、チームは今年のスローガンを決めました。

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今年は強力なリーダーがいない。だからこそ、何度失敗しても、どんなに打ちのめされても、明日を信じ、今日やるべきことをやる。それがただ、「立ち上がる」ことしかできないとしても。今日「立ち上がる」ことで、明日につながる。明日を信じるから、今日「立ち上がる」。

過去は「教訓を得る」目的以外では振り返らない。目標は強く思うけれど、それが叶うかどうか未来予測はしない。どちらも、今どうにかできるものじゃないからです。今できることに全力を注ぐ。それが明日への扉を開ける。

自分で自分を成長させるって孤独な作業です。

いくらチームに属しているといっても、アスリートとは本来、孤独なものです。

高い目標に向かう時、人は孤独を生きる(孤独にではない)。その孤独さを実感して、それを避けるのでなく、何かにすり寄っていくのでなく、孤独を歩む自分を肯定できる時、人は「信じる力」に目覚めるのだと思います。

今、チーム北越は日替わり部長制を敷いています。一日交代で2年生が部長を務める。否が応でもチーム視点を持たざるを得ません。一日部長の検証も自分たちで行います。成果と失敗、成長と未熟、毎日検証しあっています。

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その中心になっているのが、近藤と斉藤です。二人は現時点でレギュラーメンバーではありませんが、サブチームの責任者として、日々1年生を指導してくれています。その親身さ、その誠実さは本物です。だからこそ、レギュラーメンバーの不甲斐なさに対してかける言葉に重みがあります。

二人は秋季地区大会では1年生と組んで出場しましたが、それぞれ自分の弱さを露呈して力を発揮できませんでした。その後ペアに戻して、県新人選抜に臨み、シードを二つ倒して初の県大会ベスト8入りを果たしました。

🔶 新潟県新人選抜大会  R02.10.17    in 新発田市五十公野公園テニスコート

  1 位  入澤瑛麻・本間友理那

  3 位  星野結衣・高橋咲羽

  ベスト8 高野 凛・鷲尾祐稀

   〃     近藤梨果・斉藤菜月

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<斉藤菜月のノートから>

地区大会の後、先生が「県新人は近藤・斎藤に戻して戦う。ベスト8目指して頑張れ!」と言ってくれた。

そこから、近藤と二人でずっとベスト8を目標に練習してきた。ドローが発表されてみると、下越地区の2位、村上高校ペアのパッキングだった。そこを倒すと新潟地区大会で私が1ゲームも取れずに負けた新潟商業のペア。簡単ではない試練だったが、そこを今度こそやりきって、第1シードの本間・入澤と思い切り戦いたい、そう思って戦った。

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梨果(近藤)、やりきったね!

新潟商業戦に勝ってベスト8が決まった時、ベンチに入ってくれた朋恵先生からも先生からも「ナイスゲーム」って笑顔で言ってもらって嬉しかった。

今まで梨果と組んで試合をして、こんなにタクティクスを考えて戦うレベルまで行ったことがなかった。いつも心が弱くて戦いきれなかったり、技術やフィジカルの問題が大きかったりして、戦術どころではなかった。いつもいつも悔しい思いばかりしてきた。でも、今日ははじめてタクティクスを考えながら試合ができた。テニスってこんなに楽しいものだったんですね。唯香先輩と莉穏先輩に伝えてもらったおかげだ。ありがとうございます。

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初めての舞台、県大会の準々決勝、目標だった本間・入澤との試合、スキルや経験は相手が上かもしれないが、チーム北越の誇りとして気魄と声だけは負けないと誓って戦った。先生や他の人からも、「すごい声聞こえてきたから、リードしてるんじゃないかと思ったよ」って言ってもらって嬉しかった。

これで、県インドアの出場権を得た。インドアでも北越らしい気魄溢れる試合ができるよう、これからも自分と向きあいながら、戦いつづける。

ありがとうございました。

(2年 斉藤菜月)

 

<近藤梨果のノートから>

新チームを受け継いでから、私たちは失敗だらけの毎日だった。

リーダーの準備不足。チームがやるべきことをやらない。リーダー学年である私たちの意識の低さ。

感覚的に達成と失敗の比率は1:9くらいなんじゃないかってくらいひどかった。

けど、その中でキャプテンが「へこたれない強さ」が北越にはあるって思い出させてくれた。

菜月(斎藤)、ありがとう。そしてベンチに入ってくれた朋恵先生、ありがとうございます。

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初めてです。菜月とポイントごとに状況を考えて、「次どうする!」って話し合って方針決めてタクティクスを中心に戦えたのは。次の1本にわくわくしながら戦いました。

今までは、どんなに練習をしても、試合になって大事な場面になると逃げてきた私。毎回、無謀な点の取り方をして、そのミスが引き金となって積み木崩しのように崩れて負ける。

でも、今日は違った。

ミスはあった。無謀な配球ミスもあった(3試合して3本だ)。

その時、「あ、出た!」って冷静に自分を見れた。

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ここで焦らない。こういう時に、自分は欲を出すんだって、私の「あるある」と向き合えた。

だから、最後まで自分を見失うことがなかった。

 

ようやくわかった。

先生が言っていたこと。

自分を知る

糸魚川合宿の帰りのバスで、自分でもこんなに泣けるのかっていうくらい泣いた。

ずっと私は「自分を知る」ことから逃げてきた。

正直「自分を知る」って、自分の見たくない部分を見ることで、怖くもあるし逃げ出したい気持ちにもなる。

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あの日、向き合ってよかった。

本当に逃げずに向き合えてよかった。

でもまだゴールじゃない。私と菜月の目標はインターハイに行くことだ。そして団体メンバーになること。

まだまだ。ベスト8じゃ届かない。

もっと力をつけないと。

 

そして、私が佐藤と丸山(1年生)を育てるんだ。

あの二人は今回の負けも軽く考えすぎだ。

悔しさのない負けからは向上などない。

私も伝えてもらったように、二人にもしっかりと伝えます。

(2年 近藤梨果)

もう一人、今回の大会で大きく自らを超えた2年生がいます。

高野凛です。

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高野はようやく自分と向き合うことができるようになりました。1年生の時とは、まるで違います。春の卒業生の田中遥奈が去年は3年生のバディとして高野に寄り添ってくれていましたが、その時は、成長した姿を見せることができませんでした。

自分の弱さから目を背けなくなりました。もちろん、まだ「やらかす」ことはあります。その弱さを誠実に認める「強さ」を持てるようになりました。そして、仲間の「弱さ」に寄り添いながら、それを「強さ」に換えていこうとする姿が一貫してみられるようになりました。

県新人選抜の戦いの中で、とても象徴的な「事件」がありました。

<高野凛のノートから>

県新人選抜、また私にとって高校最後となる大会が終わった。

チームとして秋地区の惨敗からリベンジを誓って取り組んできた。

「へこたれずに信じて戦うチーム」、これを表現するために、一人ひとりが超えたいことをはっきりさせて挑んだ。

戦えずに自ら落ちていった、あの秋地区のリベンジをチームとして果たせたと思う。

どのペアもラケット振れないとか、戦わないで自分から退くようなペアはいなかった。

けど、勝ちきれてない。

県のトップと「戦えた」だが「勝ててない」

ここが、今の私の位置だ。

戦って思うのは、やっぱり私たちは巻のエースに比べてタクティクス力が足りないということ。

中盤までは競ることができる。でも、そこでタクティクスに余裕がなく、突き放される。

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先生にも指摘されたけど、私にとって、大事なキーポイントが2カ所あった。あそこで組み立てることができずに、意味のわからないプレーが出る。

これだけジュニア時代から経験豊かで、スキルも高く、余裕のある相手に、大事なポイントでこっちが焦り、自分を抑えられなくなって敗者の道を進んでしまう。

もう一度、鍛え直し。

やっぱり日々の生き方からだ。

メリハリを持って、全体を見て、チームのことを考えて、そして何をすべきか明確にする。そういう日々を積み上げよう。

決勝戦、とても勉強になった。競り合いながら、それぞれの持ち味を出し切って戦う。

入澤と本間、プレッシャーもあっただろう。その中でポイントを取って取られて、それがゲームだ。その中での駆け引き。まだ私が到達できない世界だ。

でも、絶対に私はあのレベルで戦いたい。

いつか、必ず北越同士で決勝を戦いたい。それは私たち2年生の仕事だ。

ただ、準々決勝までの間にも、大きなドラマが私たちにはあった。

私たちは秋季地区大会で、巻高校のペアに自滅で負けた。地区大会は平行陣で戦ったが、突然祐稀(鷲尾)が崩れ、普通のストロークがネットネット。当然ボールを祐稀に集められ、慌ててグリップをいじってもアウト、ネット。もう何もできなかった。あのとき、私は祐稀を立て直すために何かすべきだった。けど、ムードを壊すのが怖くて、自分が伝えることで、祐稀のメンタルが崩れるのが怖くて、何もしなかった。そしてそのまま敗退した。

そして、迎えたこの県大会、先生が前におっしゃっていたが「神様っているとしか思えない瞬間がある」。

本当にその通りの場面が用意された。

長岡商業との戦い、きっちりと戦ってゲームカウント3-1のカウント3-1、圧倒的なマッチポイントだ。そこから、祐稀が簡単なハイボレーを2連続ミスでジュース。さらにストロークミスが続き、なんとマッチポイントから4本連続イージーミスでゲームカウント3-2とされた。

私は「神様に試されている」って、本当に思った。祐稀じゃない。私への試練だ。

もう逃げなかった。

強く祐稀に伝えた。

「祐稀、自分一人で戦ってるんじゃないよ。」

「ベンチ見て! 莉穏先輩を見て! ちゃんと見て! 祐稀一人の戦いじゃないんだって!」

そして、祐稀は変わってくれた。勝ち切れた。

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祐稀に日頃から本気でぶつかってきた。祐稀の問題はペアである自分の問題なんだって言い聞かせて、逃げずに戦ってきた。

だから信じれた。今の祐稀なら絶対変われる。私がぶつかったからと言って、祐稀はメンタルで落ちていったりしない、そう信じれた。

この人が向上するためなら、逃げずに伝え、そう伝えたからには、自分がその責任を背負う。そういう生き方を、私は北越の先輩たちから学んできた。そういう先輩たちの姿に憧れてきた。

私たちは、一歩進めたと思う。それは大きな成果だと思う。

そうは言っても、やっぱり巻のエースに競り勝てない。

まだまだなんだ。

できたこととできないでいること、両方あるけど、やっぱり思うことは、本当に日常の生き方って、大事な場面につながっているっていうこと。

そのこと噛みしめて、これからもへこたれず、信じて、自分とペアとチームに向き合っていきます。

(2年 高野凛)

最後に。部員が奇数だったため、地区大会~県新人選抜までの間、1年生の横山莉子さんに手伝っていただきました。横山さんはInt.特進コースに所属しており、毎日7限まで授業や講座で勉強しながら、2カ月間部員と一緒に、合宿にも参加して真剣に技術や心も鍛えて試合に臨んでくれました。あなたの純粋な笑顔にみんなが元気をもらいました。ありがとう。

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2020年8月22日 (土)

Dream Factory 2020 盛夏(2)

個人ダブルス 新潟地区代替大会

3年 岩田栞 自己ベストを大きく超えて有終の美!

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ノーシードからベスト8

第1シード鈴木・佐藤との「同士討ち」で幕!

8月1日(土)in 新潟市庭球場

◎岩田栞・三浦瑞姫ペア

🔶予選リーグ

 対 燕中等学校 0-④ 勝利

 対 巻高校(シード) 2-④ 勝利

→予選リーグ突破

🔶決勝トーナメント

 1回戦 対 巻総合 1-④ 勝利

 準々決勝 対 北越(鈴木・佐藤) ④-0 敗退

→大会ベスト8!!

◎優 勝  入澤瑛麻・本間友里那(北越1年)

 3 位  鈴木唯香・佐藤莉穏(北越3年)

 ベスト8 岩田栞・三浦瑞姫(北越3年・1年)

  同   星野結衣・高橋咲羽(北越2年)

  同   高野凛・鷲尾祐稀(北越2年)

(3年 岩田栞のノートから)

本当に私は今日幸せな時間を過ごさせていただきました。

昨日決めた「笑顔で感謝を伝える」という目標を、ペアの三浦の力も借り、ずっとベンチに入ってくださった先生の力も借りて、私は人生最高の試合でやりきれた。もう、本当に感謝しきれない。

試合に入るまでの待機時間に、感謝を伝えたい人ひとりひとりの名前と顔を思い浮かべた。

ミスもあった。イージーミスも犯した。

でも、その直後にその人たちのことを思って、自分のベストを出して絶対に笑顔で感謝を伝えるんだって思ったら、次のプレーに集中できた。

予選リーグ最大の難敵、巻高校のシードペア。

劣勢に立たされた。スキルもセンスも全然相手が格上。

チェンジサイズの時、先生から戦術の指示をいただいた。

そして私だけにこう言ってくれた。

「いいか、岩田。あの二人は高いセンスを持っている。センスじゃ絶対にかなわない。だけど、あの子たちは誘いを断ったが、お前は広島から信じてここへ来た。信じる心と高い志は絶対お前が上だ。思いっきりぶつかって来い!」

どんな状況にも諦めない心。論理的に教えてくださるスキル、そして相手に応じたタクティクス。北越で私はどこよりも濃くて充実した時間を生きてきた。とても上手だけど淡々とポイントを重ねている相手に、1年生の三浦も食らいついているのに、このまま負けられない!と思った。

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とにかく、監督を信じて、ペアを信じて、自分はやるべきことを明確にして、1本1本集中しよう。

G0-2。

そこから、1-2。→ 2-2。追いついた!

絶対に来る!と思ったアタック。

柳先生が動画まで紹介してくださってずっとボール出ししてくれたプレーだ。

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この巻戦で止められた!

G3-2。逆転‼︎

それからスマッシュ。

これも前日に柳先生にお願いして練習させてもらった。菜月にはアドバイスをもらっていた。

「手だけになっているから、もっと下半身で」と。

あの時は本当に無心に打てた。

習ったリズムのキーワードだけを声に出して無欲で打てた。

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三浦は最後まで私を真っ直ぐに見て信じてラケットを振ってくれた。

振り回されても必死に走ってカバーしてくれた。

そしてゲームセット!

決勝トーナメントの初戦にも勝利して、私は最後の大会で自己ベストを大きく超える結果を残した。

しかも、私のソフトテニス競技の最後の試合が、なんと3年間共に過ごしてきた唯香と莉穏との同士討ちのベスト4決めという、今でも信じられない夢のような1日だった。

こんなドラマみたいなことが、本当に実現するんですね。

技術もフィジカルもない、しかもハート面で後ろ向きな私が、やれることと言ったら、信じることと、気持ちを強く持つことしかなかった。そして練習で繰り返し確認した「今、やるべきこと」の明確化。

先生は、Aチームよりも、私たちペアに付きっ切りでベンチに入ってくださった。そして的確なアドバイスと励ましを与え続けてくださった。

私に光が集まりました。

本当に本当に、周囲の人の力で、私はあの場所に立ち、あそこまでやれた。

感謝しかありません。

ありがとうございました。

大会10日前、岩田は真っ暗な闇の中にいました。

コントロールできない感情、そこから派生する体調不良、思うように進まない受験勉強、不甲斐ない自分を責めては体調を崩し、眠れない夜を迎える。身も心もぐちゃぐちゃでした。

7月の連休前の前日「こんな自分では、真っ直ぐに夢を目指す仲間の足を引っ張るだけで迷惑をかける」と言って泣きます。

すべて泣き言を聞いてから、一言告げました。

「岩田、ダメだ。いいから来い。」

ネガティブな感情に包まれると、人はネガティブ世界の中に閉じこもり、外部との扉を閉ざします。ある意味、自己防衛なのでしょうが、閉じた世界、閉じた語法の中で、考えたり、悩んだりしても全く解決の道は開かない。

僕は思索的な人間だと思っています。20代の頃に激しく苦悩した時期があります。その時、思想に救われた経験が、その後の精神的バックボーンになりました。

「真実」なるものに疑問を持ち、それだからこそ「ホンモノの真」を希求し、また跳ね返され、自己嫌悪に陥り、でも光に吸い寄せられる蛾のように、また「真なるもの」を探し求める…熱病のようでした。なんとも若いですねぇ、、ああ、恥ずかしい…

その時、「若い」僕を救ってくれたのはフッサールの現象学とそれを解説してくれた竹田青嗣さんの著書でした。

キーワードは「判断停止」「生活世界」「関係性の束」

ずれているかもしれませんが、現象学的「還元」から僕が学んだ考え方はこうです。

真実だとか、本質だとか、正しさだとか、ホントウの自分だとか、そんな客観的なものは実はどこにもなく(どこにもないから求めるのはムダだとする相対主義とは違うのですが)、それを追い求めて闇の中を彷徨ったり、それを探し求めても、苦悩している時に使う語彙や語法の中で循環するだけで決して答えは見つからない。よって、一度スイッチオフ「判断停止」して、「客観世界」(だと思われる思考世界)から抜け出す。すると、たとえば、自分自身というのは、統一的な「ホントウの自分」があるわけではなく、様々な「生活世界」の中で自分と他者との「関係性」を生きているということがわかる。Aという世界(たとえば会社)での関係性とBという世界(たとえば地域スポーツクラブ)での関係性は同じ自分が関わる社会や集団だとしても異なるものだ。関係性が異なるのだから、それぞれの「正しさ」だとか規範だとか、振る舞い方や為すべき言動は変わってくる。だから、統一的な「ホントウ」を求めるよりも、それぞれの「生活世界」の中で、より良好で生産的な関係性を構築していく方が「より充実した生」を得られるし、そのような「関係性の束」の総体として自己は存在する。

このパースペクティブを得たことによって、僕の人生観は大きく変わったと思います。さらにこの考え方の射程は想像を超えた大きさを持っていて、人生観のみならず、仕事観、教育観、テニスのコーチングにも波及しています。

さて、岩田。若い頃の僕とも重なります。

去年のDream Factoryでも紹介しましたが、岩田は広島県北広島町から来た子です。毎年「どんぐり北広島チーム」へ行って強化していただいているのですが、その際に出会った子です。

高い理想を持ち、途上国での持続可能な開発に参画したい意志を持っています。ただ、このような高い志を抱いているのですが、完全主義者でもあり、小さな躓きが大きなマイナスのうねりとなって自分を飲み込んでしまうという弱点を抱えています。

今回も同じパターンでした。うまく回らない現実と高い理想に引き裂かれ、自己否定の嵐が吹き荒れていました。

こういう時は、「判断停止」して、その自己世界(客観世界だと信じているが、実は自分が作り出している創作世界)から抜け出すことが大事です。たとえ「受験世界」や「身体健康世界」でうまくいっていなくても、Dream Factoryの世界は、それとは別の「関係性」です。今、「別の」と言いましたが、「別」であるからこそ、こっちの関係性で自信を得たならば、他のうまくいかない世界でも必ず変化が生じるものです。「関係」は別々ですが、関連し合ってもいる。大切なのは、統合しようとしたり、「本来の自分」や「理想の自分」を措定しないことです。弱点や欠点を認め、落ちているなら、その世界を一旦スイッチオフにして、別な「関係性」の扉を開いてみることです。そして、誰かが自分を救ってくれたり、自分に有益なものを期待したりするのではなく(そんなことを望めば、「ここも私には合わない」などと評価してまたマイナススパイラルに陥る)、その関係性の中で自分ができる小さなプラスを積み重ねるのです。

岩田の長所に「素直さ」と「信じる力」があります。理屈的にも感情的にも全く同意できないのですが、「いいから来い」と言われると不本意ながらも「はい…」と言う素直さです。

岩田は僕に救われたと言いますが、この素直さが「蜘蛛の糸」であり、ネガティブな岩田を救ったのだと思います。

連休の初日、目をパンパンに腫らして来た岩田でしたが、いきなりチームビルドの準備不足を指摘された3年生の佐藤と鈴木が、深く反省しながらもチームを盛り立て、真剣に再構築しようとしている姿に触れ、生来の誠実さが目覚めていったように見えました。岩田の表情がみるみる変化し、動きも行動も変わっていきました。

自分は傍観者ではいられない。これは3人のドラマだったのだ。そのドラマの最終章を今3人で生きているのだ、そのことを言葉ではなく、実体として感じたのだと思います。

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4日間の強化練習の間、どこの誰が「参加できない」と泣いていたのかと疑うほど、岩田はチームに貢献し、佐藤と鈴木をサポートし、1年生、特にペアになる三浦の面倒を付きっ切りでみてやっていました。

3日目にチームはアップダウンのコースを持久走したのですが、トレーニングをしていない岩田はきつそうでした。「無理するな」と言いましたが、岩田は1周遅れ、2周遅れとなっても最後まで走り切り、チームから祝福されました。

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代替大会は、連休中親身に面倒をみていた1年生三浦とペアを組みました。予選は巻高校のレギュラーペアのリーグに入っていました。三浦は中学時代1度もこのペアの選手に勝ったことがないと言っており、岩田が最後の大会で予選突破するのは難しいかなと思いました。

なんの力が集まって、このDreamが叶ったのか、よくわかりませんが、4日間の生き様が厚い雲に覆われていた岩田の「強さ」を活性化させたのは間違いありません。自分だけの世界をスイッチオフして、他者に真剣になる。自分への評価は棚上げしてチームビルドに邁進する。そうすることで自己の「良さ」が花開き、他者も自分も幸せになる。このパラドックスを岩田はリアルに表現したのです。

1年生の三浦は自己ベストです。岩田が引き出しました。4日間の深い「関係性」が強い絆を育みました。岩田は今の自分にできることだけを誠実に、しかし精一杯やりました。そして勝ち切りました。

岩田栞もまた、この北越Dream Factoryのかけがえのない一人として、足跡を残し、後輩たちに勇気と希望を与えて、青春を終えました。

岩田栞さん、疾風怒濤の青春期をこのチームで過ごしたこと、そこで得た「光の種」を生きる力にして、いつか世界に羽ばたいてくださいね。

県団体戦9連覇を成し遂げた後の岩田のノートを紹介する前に、一言御礼を述べさせてください。

コロナ禍でインターハイが中止となったことで、たくさんの方々から励ましの言葉やお便りをいただきました。一部はこのブログに載せさせていただいた通りです。

ありがとうございました。

心配をおかけしましたが、今年の3年生は、立派に自分の青春を表現しきって終わることができました。「コロナ禍の残念な学年」ではなく「災禍の中でも夢と希望を決して失わなかった誇りある学年」として記憶されるべき生徒たちだと思います。

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すべてが終わって、この3年間を振り返ってみます。

広島からきて1年目、初めて北越の教えに触れました。緻密で論理的なスキルの説明、テニスノートの書き方、先輩方の熱い指導など驚きの連続でした。

ですが私はあまりにも下手で、先生からの指導を体で表現出来ない自分自身に消極的になる事もありました。

迎えた夏の県総体で先輩方が、弱さを抱えながらも、磨いてきた北越の教えをコート上で圧倒的に表現する姿に心奪われました。三重インターハイでは、あと2点で日本一という所まで行くも、惜敗

その後、新チームになり、私も本格的にマネージャーとなりました。しかし、マネージャーになって初めての大会である冬の北信越で、サポート面の大失敗をしてしまいます。その時先生に伝えられました。

「岩田のマネージメントで、チームは負ける」

この言葉が本当に悔しくて、ずっと3年の最後まで残る教訓になりました。

2年目の夏、宮崎インターハイ。大好きな3年生と戦う最後の団体戦で、鈴木・佐藤の2年生ペアは自分に負けて戦いにならず、3年生の力になることができませんでした。あの夏、私たち3人の2年生は、砂をかむような悔しい思いを経験しました。

「こんなんじゃだめだ!!」が私達の代のスタートでした。

私は3年生から指名されて部長を任せていただきましたが、チームの状態によって私の感情は大きく動いてコントロールできず、体調不良で休ませて貰うことが続きました。

部長の責任を全うできず、部長を莉穏に交代した後、コロナの休校による帰省で完全に心が折れました。一人だけ闇の中にいる気がして、後ろめたく、全く前向きになれませんでしたが、学校が再開してからの先生の言葉でマイナスの闇から救い出され、チームに戻りました。

こんな私でも快く受け入れてくれたチームの皆には感謝しかありません。その後も出てしまう自分の感情面の「質(たち)」も受け止めて、支えてくれました。

そして、あの代替大会の個人戦での奇跡のような戦い…

あんなドラマが私にも選手として作れるなんて、思いもしませんでした。本当にみんなのおかげです。

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感謝しかありません。ありがとう…

1週間後の団体では、怪我で離脱したキャプテンの為に、そして3年生の為にと皆が力を出し切ってくれました。唯香と莉穏が、苦しかった1、2年生のあの時期を乗り越えて、最高の笑顔でベンチに手を振る姿を見て、本当に嬉しかったです。3人で3年間頑張ってきて本当によかったです。

最後先生から「今日のサポートは完璧! 岩田のおかげで連覇できましたわ!」
と伝えて貰って、ずっと心にあった1年の冬、北信越で伝えられた事と真逆な言葉を最後に貰って、本当に嬉しく幸せでした。

私が北越で学んだ1番は「自分の弱さ認めた上で、自分が出来ることを精一杯やる」という価値です。私はここでこの一生の宝物をプレゼントしてもらいました。
完璧主義者で、自分に何かできないことや劣っていることがあると、それを苦にして前向きになれなくなる自分。でも、そんな自分の短所も全部ひっくるめたものが自分自身で、自分の「質」とつきあいながら、生きていこうと思えるようになりました。

こんなちっぽけな私でも、あのドラマのような感動を手にできたのです。

きっと、これから何度も私は「マイナスの雲」に包まれるんだと思います。その時は、この3年間を思い出して、最後には光が集まるよう、前を向いていこうと思います!

マイナスからだって「力」を得ることができる。

あらゆることから力を集めて光を放て!

3年間ありがとうございました。

(3年 岩田栞)

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2020年8月13日 (木)

Dream Factory 2020 盛夏(1)

怪我のキャプテンと「心は一つ」

夏の新潟県大会 団体9連覇!

8月8日(土)in 新潟市庭球場

準々決勝 北越 ②-0 長岡

準決勝  北越 ②-0 村上

決勝   北越 ②-1 巻

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5日前の重症でした。

靭帯付着部剥離骨折。ギブスで固めて松葉杖を引いてきた鈴木を見た時、これは無理だと思いました。鈴木は最後まで出場の望みを捨てずにいましたが、大会前日にギブスを外してコートに立ったものの、ランニングさえできませんでした。びっこを引きながら続けていたジョグをやめ、激痛が走り言うことをきかない足をみつめ、腰に手をやり、空をみつめ、また足をみつめて、それでもまた走り出そうとする鈴木にかける言葉などありません。

しばらくして、自分で私の所へやってきました。

軽く深呼吸をして、「先生、明日、無理です。すみません…」

そう絞り出すように口にすると、大粒の涙があふれて止まりません。

チームを集めました。

(キャプテン 鈴木唯香のノートから)

今日、自分が出ないことを決めた。

ギブスをつけた1週間、前日に外してテーピングで固めれば試合にも出られるという医者の言葉も信じたかったし、自分自身何が何でも絶対に大会には出ると周りにも言っていた。

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でも、ギブスを外してコートに立ったものの、ジョグから始めてみたけど走れない。

泣けてきた…

悔しくて悔しくて、それでも自分は北越のキャプテンとしてここにいる。

戦えないキャプテンが、目指してきた戦いの前日に何が言えるんだ…

自分を整理できなかった。

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でも、先生がみんなを集めて伝えてくれた。

「一番申し訳ない気持ちでいっぱいなのはキャプテンだ。明日の戦いのために一番チームを思って生きてきたのがキャプテンだ。そのキャプテンが直前の怪我で戦えなくなった。それでチームは支えを失ってガタガタになるのか。それとも逆にキャプテンの強い思いと一緒に一致団結出来るチームなのか。」

そして、栞も必死にみんなに訴えてくれた。

私の分まで戦おうって。

その話を聞くみんなの目を見ていたら、特に団体メンバーは心で受け止めてくれたって信じれた。

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明日の戦いに向かって今も時間は刻々と進んでいる。自分の感情に流されている暇はない。

最後の練習時間、私の代わりに戦ってくれる2年生の、星野、高橋、高野にボールを出した。「これ、明日使えよ!」って思いながら、ボールを出し続けた。


莉穏、最後の最後に一緒に戦えなくて本当にごめんなさい。

3年間、二人で数えきれないほど失敗ばかりしてきて、数えきれないほどぶつかりあってきたね。明日は高校テニス人生ラストの日だから、莉穏にはその全てを最後の舞台でぶつけてきてほしい。

私も栞も一緒に戦うから。

厳しい場面でも、一人一人がその厳しさに立ち向かっていく北越の戦いを全員がやり切って、9連覇を果たしてほしい…

みんな、ごめんね。

(3年 佐藤莉穏の前日のノートから)

いよいよ明日になった。

唯香、やっぱりダメだった。

みんなの前で必死に涙をこらえて話す姿、心が痛かった。

でも唯香が一番辛いはずだ。先生も言っていたけど、人生って何が起こるかわからない。

「何で?」っていう不運や不幸に見舞われた時、嘆き悲しむのは当然だけど、大切なのは、そこから立ち上がって前へ進むこと。チームは試されている。

先生は私たちに問いかけた。

キャプテンでエースが欠場する中でもチームは誇りを持って戦い続けられるか?

これは何より、私に対する問いだ。

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コロナでインターハイが中止になってからも、唯香はこのチームにエネルギーを与えてくれたよ。

戦うみんなの心に唯香はいる。栞もいる。だから、私が先頭に立ってチームの心を引き出してみせる。団体で強い北越を表現してみせる。

3年間、本当にいろいろあった。

たくさんの人の力を借りて強くなってきた。

そして明日が最後の戦いだ。

私には、先輩たち、先生、チーム、みんな後ろについている。

唯香と栞の分まで、私がコートで3年間の全てを表現する!

優勝旗を二人へ! 二人とも、待っていてね。

そして見ていてね。これが私たちの北越での3年間だよ!

Dscf5848_2(令和2年8月9日 新潟日報より転載)

9連覇 達成!

本当に、ただ嬉しくて、たくさんの方への感謝で一杯です。

唯香と栞に優勝旗を渡すことができて本当に良かった。

今日の1日を改めて振り返ってみる。

初戦から、私も含めて少し固かったが、徐々に本来の私たちを取り戻していった。

そして迎えた準決勝、村上高校戦。

オーダーは自分たちで決めた。

もちろん、私が絶対に当たりたかったのは、秋冬の個人チャンピオン日野・伊藤組。

整列したら正面だった。バッチリだ。あっちも笑ってた。

さあ、いよいよ試合開始。

このペアにリベンジするために練習してきた。

秋も冬も1ゲームさえ取ることができずに完敗してきた相手だ。冬の北信越個人戦、向こうは準優勝でこっちは初戦負けだ。

ベンチで唯香の眼をグッと見て、ハイタッチしてコートに出た。

1球1球、唯香と一緒に戦った。

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1本1本に思いを込めて、自分のすべてを出し切った。

その思いをペアの星野も感じてくれて自己ベストで戦ってくれた。

そして④-0勝利!

やっと、

やっと、

リベンジしたね、唯香!

さあ、ついに決勝戦。

やはり巻高校が上がってきた。

本当は敵の1年生エース石山たちとやりたかったけど外れてしまった。

3面同時展開。先に2勝するだけ。

私がまず1勝して、後を後輩に託したい。

私は真ん中のコートで戦っていた。両隣りのコートで後輩たちが闘志を前面に出して戦っている。

2年生ペアの高野・高橋も、敵のエース、ユースアジアチャンピオンに食らいついている。あの高橋が気魄を込めて向かっていってる。

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1年生ペアの入澤・本間もベンチに向かって大きくガッツポーズしている。数か月前には想像もできなかった姿だ。唯香と二人で入澤と本間を指導してきた。感覚だけでテニスをやらないこと。教わったことを丁寧に学び実践すること。そしてコート上では自己表現すること。その一つ一つがいろんな人への感謝の現れになるのだということ。

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ベンチでも唯香が、栞が、後輩たちが、チーム応援できない中でも、精一杯の思いを重ねてコートへ力を送ってくれている。

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私は、表現のしようのない充実感と感謝に包まれて試合をしていた。

そして1ゲームも渡さず勝利した。

入澤・本間も勝利して優勝が決まった!

どのチームよりも強い思いがあること。どのチームよりも信じ切れる力があること。

それが全てだと思っている。

2年生と1年生には本当に感謝している。キャプテンが直前の怪我で戦えなくなった逆境に負けず、私たちを信じて、私たちの思いを感じて北越らしく戦ってくれた。

私はこのチームを誇りに思います。

コロナで叶わなかった全国選抜、インターハイ。

先生、そんな中でも、私は1年前の宮崎インターハイのリベンジはできたでしょうか?

コロナでインターハイが中止と決まっても、先生のことを信じて最後までやり切って本当に良かったです。

今回、こうして大会を開催してくれた高体連の先生方、何とか私たち3年生の表現の場を作っていただいた多くの方々、ありがとうございました。

津野先生、朋恵先生、柳先生。

3年間、たくさん指導していただきました。

悔しくて、情けなくて何度も何度も泣きました。

でも今になれば全てがわかります。その一つ一つがかけがえのない大切な成長の場だということが。

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北越って本当に素晴らしい世界でした。

先生たちがここまで寄り添って一緒に歩んでくれる、そして大きな夢と人としての成長が得られる。

日本一のスキル、フィジカル、タクティクス、そして「人」を教えていただきました。

「日本一」の舞台に立つことはできませんでしたが、いつか必ず後輩たちがやってくれると信じています。そのために、これからは「恩送り」として、私が受けた恩を倍にして後輩に返します。

先生、悔いは何もありません。

私はここへ来れて本当に幸せでした。応援してくれた両親にも感謝しています。

私をここまで育ててくださってありがとうございました。

(3年 佐藤莉穏 8月8日)

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2020年5月28日 (木)

Dream Factory 2020 新緑

若き指導者との対話①

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緊急事態宣言が解かれ、学校もまもなく再開されそうです。
まずは「密」を避けての分散登校で短縮授業で徐々に日常へ戻る階段を用意しての再開です。
では部活動は… 
 
部活動を「課外活動」だと強調する向きがあります。これが部活動に対するネガティブな文脈で使われると、どうしようもない徒労感と違和感に苛まれます。「授業」が「正課」であり、部活動は「課外」だ、という言葉はとてもバイアスがかかっている。これはひとえに「正」と「外」という言葉のマジックのようです。部活動は「学校教育活動の一環として学習意欲の向上や責任感,連帯感の涵養等に資するもの」(学習指導要領)であり、れっきとした学習活動です。それが主体的学習活動であるからこそ、しっかりその場を整えてあげるべきでしょう。

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「知育・徳育・体育」すべてが教育であり、そのバランスこそが人格形成の核であるということは論をまたないと思います。決して思考停止になってはなりません。全国の指導者の皆さん、議論を尽くしましょう。孤独に闘っている先生、夜明けは遠くありません。子供たちの夢の最前線にいる者として、共に頑張っていきましょう。
 

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北越の部長を務める3年生の佐藤莉穏は、先日「今年の県総体、6月24日に実施決定!!」という朝刊のニュースを見て泣いて喜んでいる、という夢を見たそうです。そして、夢から覚めてがっかりしながらも、気を取り直して支度をし、いつものように玄関のカギを開け、静かに戸を開き、まだ誰もいない道路を走り始めるのです。
もう、言葉になりません。
 
僕は、青春をかけて生きている人間の伴走者として、また、かつてその同じ18歳をブカツにかけて生きた人間として、共にこの夏を全力で燃焼したい、そのためにできることを精一杯やります。

さて、先日、ある県の中学校の先生からメールが届きました。とても熱心な先生で、行間から情熱がほとばしっています。生徒の夢を叶えたい、日本一を取らせてあげたい、純粋な思いです。

その先生とメールをやり取りしながら、不思議な気持ちになりました。なんだかかつての自分自身とメールをしているような錯覚に陥ったのです。
僕もかつて、こんな風に情熱の塊で指導していた時代がありました。経験不足、力不足を実感するがゆえの焦燥、そして苦悶、それを情熱で燃やして前へ進むしかなかった、不器用で純粋で無鉄砲な愛すべき時代です。でも、今だから言えます。その時代の闇雲な燃焼がなければ、決して夢の頂点を見ることはなかった。
 
僕は今年で59歳になります。来年は還暦です。公立高校なら間もなく退職というところです(北越高校は定年がもう少し先です)。少し前から、僕の中で、若い先生に何か伝えられるものがあれば伝えていきたい、という思いが強くなってきていました。今年に入ってから、他にも同じような熱い心を持った先生からお便りをいただきました。

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僕は選手としてはどこにでもある地方の雑草でしたし、大学も体育会で鍛えたわけでもありませんし、指導者になってからも誰かのもとで指導を学んだわけでもありません。技術や戦術であれば、他の有名な方々に聞いた方がずっと有益だと思います。そんな中で僕が伝えられるとすれば「哲学」なのかもしれません。地元の選手で日本一を目指す、その方法ではなくて、その考え方、その夢を駆動させる「観」を求めて、若い先生たちが扉をたたいてくれているのだと思います。
そのような情熱ある若い先生との対話を通して、次の世代の指導者、ひいては次の世代の選手たちとつながることができるとすれば、とても嬉しいことです。
また、現役の選手たちは、先生たちはこんなことを考えて指導してくれているんだと思い至ることができれば、時に目の前の物事を短絡的にとらえがちな幼い心を少しだけ広くしてあげられるかもしれません。
 
 
はじめまして。
〇〇中学校でソフトテニス部の顧問をさせていただいています、〇〇と申します。
 
DREAM FACTORYを読ませていただき、ぜひご質問をさせて頂きたいと思い、急なメールで大変申し訳ないとは思ったのですが、連絡をさせていただきました。
 
DREAM FACTORYのお話の中にあった、
昨年度のIH後の投稿の中にある「君が育った道のり、君から教わった選手としての生き方。」、
2019年1月の投稿の中にある「僕はこの子たちに生かされているんだな。こんな劇的なドラマの中に重要な登場人物として命を与えられているんだな。」というところが特に印象に残りました。
生徒と共にソフトテニスをさせてもらっている中で、生徒から学ぶことやこちらが与えてもらっていることが沢山あるなと感じております。先生のお話の中で、あらゆるところに「ありがとう」という言葉があり、この想いが指導者である中でとても大切なことだと改めて実感させていただいました。
 
また2015の吉藤さんのノートにあった
「あと一歩」というお話。
私自身も「あと一歩」という経験がとてもあります。その一点が取れていれば、あそこで思い切らせることができればと。
その「あと一歩」は私にとって永遠の課題です。
 
目の前の選手の為に、ぜひ津野先生から学ばせていただきたいと思っております。ご質問をさせてください。
 
☆先生が日本一になるために一番こだわっていること(モットーや大切にしていること)を教えてください。
☆「あと一歩」その先にいくために答えは自分で見つけなければならないことだと思いますが、先生の考える「あと一歩」とはなんですか。
☆今年から女子の指導にチャレンジするのですが、女子指導でこだわっていらっしゃること、男子との違いについて教えてください。
 
以上三点です。よろしくお願いします。
図々しく、このような急な質問で大変失礼なことだとはわかっております。
申し訳ありませんが、ぜひよろしくお願いします。

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こんばんは。
お便り、ありがとうございます。
 
関東は緊急事態宣言が解除されていないですよね。
生徒さんたち、どうですか?
3年生にかけてあげる言葉一つひとつが、いつもと比べものにならないくらい重いものとなると思います。先生の熱い心で、勇気を与えてあげてください。
 
Dream Factoryもずっと読んでくださっているのですね。
2015の吉藤のブログは、もう載っていないはずです。
 
長く、こうして若い人間たちと夢を共に追っていると、だんだん立場が逆転してくるような気がしてきます。若いうちは、こっちが先頭に立って切り拓いてやる、というようなシナリオでドラマを生きていたと思うのですが、最近は先生が目を留めていらっしゃる箇所のように、こちらが夢を追わせてもらっている、生かされているという思いが強くなってくるのです。不思議なものです。主客転倒、でもそれが幸せなのかもしれません。
 
さて、熱心な先生の期待に応えられるかどうか、自信がありません。
そして、正解はないと思います。ですから、教えるなど、滅相もありません。
こちらの思いの一部をしたためさせていただいて、先生がより考えを深めるきっかけになれば幸いです。
 
①先生が日本一になるために一番こだわっていること(モットーや大切にしていること)を教えてください。
 

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日本一になるためにこだわっていることはありません。
こだわっていることならあります。たくさんあります。
そのこだわりと日本一の優勝旗とどちらかを選べと言われたら躊躇なく前者です。なので、日本一になるためのこだわり、という風な考え方にはならないのです。
こだわっていることは、Dream Factoryに色濃く現れていると思います。若い人間の人格的成長です。責任を伴った成長を促し、その過程を通じて心を養う。苦境に立たされた時に依存せず、状況に振り回されず、確かだと信じることをやり切る。その力がこれからの人生に力になり、競技の厳しい場面での力になる、そう考えています。ただ、生徒の人格的成長にこだわっている方は全国に山ほどおられるでしょう。その理想へ向けてそれぞれの指導者のこだわりがあるのだと思います。そう考えると、こだわりって入れ子構造ですね。
2019年の9月号ソフトテニスマガジンに北越高校女子部の記事が載っています。先生なら御覧になっているかな? 同じようなことを聞かれて話したことがまとまっていますので、読んでみてください。
ただ、おそらく、「言葉の力を信じる」と明言するのは私くらいしかいないかもしれません。
 
②「あと一歩」その先にいくために答えは自分で見つけなければならないことだと思いますが、先生の考える「あと一歩」とはなんですか。
 

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指導者としての「あと一歩」ということでよろしいでしょうか?
シミュレーション力と決断力だと思います。
僕も若いうちから、何度も「あと一歩」で悔しい思いを積み重ねてきました。
ずっと、経験のない選手を鍛え上げて全国を目指してきましたから、「あと一歩」は市内大会レベルから地区大会、県大会、ブロック大会、全国大会、インターハイ決勝・・・と、あらゆる階層で経験してきました。僕にとってはそのすべてが貴重な経験で、日本一の富士山に登るにしても、ふもとの一歩、次の一歩と積みあがって頂点へ向かうのですから、その一つひとつに「あと一歩」があるようなものです。
近年、選手が日本一になったり、準優勝だったりという高みへ来て、ふもとの一歩を思う時、やはりあの頃はそのふもとの世界しかリアルに思い描けなかったのだと思い至ります。
先生はかなり高いレベルで「あと一歩」を求められているのだと思いますが、現時点での「あと一歩」はその一歩先の世界において、勝負になる場面のシミュレーションがあらゆる角度から高い解像度でなされれば、その一歩の確からしさは上がっていくのではないでしょうか。
 
③今年から女子の指導にチャレンジするのですが、女子指導でこだわっていらっしゃること、男子との違いについて教えてください。
 
男子を教えた経験は高校で30代の頃に4年間と、40代の頃行政職だった期間が2年あり、その時地元の男子中学生の外部コーチをしていました。男女で共通する部分はたくさんあります。同じ成長過程にある人間ですから、当たり前ですね。
ただ、思春期の女子は、この時期の男子より「信じる力」が強いと思います。

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「信じる力」は「超えていく力」になりますから、時間をかけて関係をつくっていくと、一番大切な場面で輝きます。
それから、個人差はありますが、男子は教えられたことが世界のきっかけになるのに対して、女子は教えられたことが世界そのものになる。ですから、概して男子は教わったことを踏み台にできますが、女子は教わったことの完成度を高めようとします。そこに女子選手の指導の難しさと面白さがあると思っています。
 
 
さあ、どうでしょう。
お力になれるといいのですが。
 
ハウツーで答えられるものではないので難しいです。
先生の道でいいのです。途中で投げ出さないことです。薄れないことです。
間違いは生徒が教えてくれます。
そこに素直になってください。
すべてに意味があり、すべてはつながっています。
 

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コロナ禍が早く収束し、一日でも早く生徒とあの空に抜けるような打球音が聞けますように
 
先生のご活躍とご健康を心よりご祈念申し上げます。
失礼します。
 
北越高校
津野誠司 seiji.tsuno@gmail.com
 
 

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