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2019年10月

2019年10月29日 (火)

HOKUETSU Spirits 2019 ~ 幕開け ~

 インターハイ、北信越国体が終わり、新しいシーズンが幕を開けました。新チームは引き続き八木澤爽空をキャプテンとして来夏の京都インターハイに向けて歩みを始めました。今夏の宮崎インターハイを経験した八木澤、加藤、佐藤の3人は全国との差を明確に感じ、緊張感をもってテニスと向き合っています。この経験値は何物にも替え難いもので、実際に行動にも変化が表れています。

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 チームが変わると、必ず訪れるのが各選手たちの意識のギャップからくる軋轢です。この秋もやはり起こりました。インターハイを経験した3人に必死でついていこうとする選手と、距離を取ってしまう選手。さらに上級生がいなくなったことによる2年生の緩みと怠慢。秋季地区大会から県新人選抜大会までの約1か月は、強固なチームに固めるために一度ドロドロに溶かすような期間でした。

 

【秋季地区大会ダブルス】

2位 山崎・高田ペア

3位 八木澤・加藤ペア、佐藤・新部ペア

【同シングルス】

1位 松井 誠

2位 加藤 洸太郎

3位 八木澤 爽空

 

【県新人選抜大会ダブルス】

1位 八木澤・加藤ペア

3位 高松・松井ペア

【同シングルス】

入賞者なし

 

 インターハイが終わってからすぐに八木澤、加藤、佐藤、新部の4名は国体チームに帯同していたため、北信越国体が終わってからようやく新チームは始動しました。国体に帯同していた4名は高い意識をもって取り組んでいましたが、その意識の高さ故に「負けてはいけない」「勝って当たり前」という重圧との戦いだったように感じます。とくに八木澤、佐藤は来夏の戦いのためにフォームの改良と新しい戦術に取り組んでおり、地区大会でのパフォーマンスは非常に低いものとなりました。

 シード選手が崩れる中、粘って凌いで決勝までたどり着いたのは山崎・高田ペアでした。ファイナルゲームにもつれ込んだマッチがいくつもあり、自滅しかけた場面も多々ありましたが、2人でチャレンジをし続けました。決勝戦は巻高校の新保・長井ペアに力の差を感じましたが、最後まで攻める姿勢を失わなかったのは成長を感じました。次の日に行われたシングルスでは1年生の松井が圧倒的な攻撃力で他を圧倒し優勝。準決勝で八木澤、決勝で加藤を相手にしましたが、1年生らしい思い切りのよさでプレッシャーと戦う2年生を寄せ付けない戦いでした。

 

 話は変わって今、世間は空前のラグビーW杯フィーバー。100㎏を超える巨体がぶつかり合う、格闘技さながらのスポーツで、一歩間違えば大きなケガにつながる競技です。しかし、ラグビーのもつ精神と、厳格なルールに選手たちは護られています。その精神、ルールから逸脱した選手がいたとしたら、きっとこの競技は成立しないでしょう。

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 ラグビーに限らず、私たちが生きる社会にはルールやモラルが存在します。それらを互いに守るからこそ、我々はその社会で正しく共存していけるのです。チーム北越にも、いくつか選手たちが守らなければならないルールがあります。それらの多くは家庭生活、学校生活を正しく送るためのルールで、テニスコート外での生活を大切するために設けられています。アスリートがその競技のルールの範囲内で競い合うからこそ観ている人を魅了します。であれば、私たちが生きる社会でもルールを守るからこそ、その社会に心地よさを感じ、互いに生きやすい社会になるのだと思います。

 今、そのルールとモラルと真剣に向き合っている選手がいます。2年生の山崎隼人です。彼は今、このチームのデイリーライフリーダーとして、部員たちを「人として」「高校生として」成長させるために働いています。もちろん彼自身もまだまだ未熟ではありますが、それを理解し、他者の心情を読み取り、チームの精神を成熟させるために力を注いでいます。課題は多くありますが、一歩ずつ焦らずに、そして着実に育ってほしいと願っています。 

 

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 10月26、27日は県新人選抜大会。北越高校は先輩たちが築き上げてきた歴史があります。この歴史は他校の選手からすれば、「強いチームに向かっていく」モチベーションとなり、北越の選手からすれば「負けるわけにいかない」重圧となります。そして、特に主力となる2年生はその重圧との戦いとなります。 

 この重圧に押しつぶされてしまったのは佐藤と山崎でした。2人はそれぞれ、相手ではなく自分自身と、そして北越という名前と戦ってしまったように感じます。苦しい場面で強引なプレーで失点を重ね、北越の目指すテニスとは程遠いプレーを続けてしまいました。このプレッシャーに打ち勝てる強い精神力を養わなければ、来夏の京都へは辿り着けないでしょう。この悔しさをバネにできるか、本当の成長への起爆剤とできるか。真価が問われるときでしょう。

 

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 対して成長をみせたのは八木澤・加藤ペアでした。ガンガン向かってくる相手の攻撃を冷静に対処し、勝負所で精度の高い攻撃をし続けました。八木澤は昨シーズン、ことごとく県の決勝で負けてきました。勝負所で力が入りすぎてミスを重ね、そのミスから弱気になり、相手に押し切られるという場面を何度も経験しました。「負けグセ」がついてしまいそうな状態でした。しかし彼は、その弱さから目を背けず向き合いました。弱い自分を認め、そんな自分でも勝ち切れるだけの準備をしてきました。今大会でもベストとは程遠い状態でしたが、それでも準決勝、決勝は相手を圧倒しました。加藤も1日を通して落ち着いたプレーを続けました。相手をしっかり観察し、コースを絞り得点を重ねました。決勝のラストポイントも、きっちり相手の攻撃をシャットアウトしてゲームセット。今シーズン最初の県大会でのタイトル奪取に成功しました。

 

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 今日は県新人ダブルスだった。結果は優勝。やっとタイトルをとることができた。今日を振り返ってみると思うのは、とにかく落ち着いていたこと。

 かなり危ない試合もあったし、きつい場面もあったけど、とにかく冷静に考えてプレーできていたなと感じる。

 その要因は、しっかり準備ができていたことだと思う。自分の最低ラインを想定して、イメージしていたから、それより下回ることがなく、焦ることがなかったので、イメージ通りプレーすることができた。

 もうひとつは、相手に興味をもってプレーをすることを意識してやってきた成果が少し出たから。自分は今日、調子も特別よかったわけじゃないし、ミスも全然あったけど、自分の中にこもるもなく、不安になることもなく、常に相手に対して、どうするかを考えられていたし、感じ取ろうとしていたと思う。

 視野を広げることも少し成果がでたと感じる。攻めのロブがうまく使えていたのもそうだけど、普段打たないようなスペースも見えて、自分では打とうとしないコースにも、思い切ってもっていくことができた。あと無理があまりなかったように感じる。

 あと、攻めと守りのメリハリも最近意識しているけど、今日終わってみて、攻めが少なかったかなと感じる。その分余裕があるところでは攻められていたから攻撃で点を落とすことはほとんどなかったし、ディフェンスをしっかり守り切って簡単に流れを渡さないプレーはできていたと思う。攻められて失点しても我慢して徹底してやり切れたからよかったと思うし、それが勝ちにつながったからよかった。

 ただ、まだ相手を観察する力も弱くて自分たちの中で迷いがあるままプレーをしてしまうことも多かったから、もっとこだわっていきたいし、視野の広さもこだわってやっていきたい。

 秋地区で負けてからいろんな人に話を聞いて、先輩にも相談して、新しい視点の中で、自分たちのなかで答えを出して取り込んできて、結果を出せてよかったし、本当に感謝したい。

 これからまた自分としっかり向き合って、また先のビジョンに向けて取り組んでいきたい。(八木澤爽空のノートより)

 

 

 今日は県新人だった。結果は1位だった。

 今、素直に嬉しい気持ちがある。

 先生が言っていたように、今日は爽空も自分も調子がいいわけではなかった。でも自分は逆にそのおかげで、あまりいろんなことをしすぎないようにしたのがよかった。

 でもあれだけ「我慢」というのをキーワードに置いて挑んだのに、まだできないのが何本もあって、意味のないプレーもいくつもあった。

 その試合でも多かったミスは、セカンドサーブで前に出たときにセンターを打たせて取りに行くプレーで、来るのがわかっている状況なのにコートにおさめられないシーンがいくつもあって、すごくもったいないことをした。セカンドで前に出るなら最低限ミスだけはしないようなプレーにしていかなければいけない。あとは左ストレートボレーでネットに詰められていない。縦面でおさえられるボールをわざわざ難しく取りに行ってミスをしてしまった。そういうところでもったいないミスを無くしていかないと勝ちきれない試合がやってくる。

 新潟工業との試合では3-0から甘さが出た。色々なことをやった結果3-3までいった。甘さが目立った。でも、最後まで爽空が攻めて、守りもやり切ってくれたからよかった。

 決勝ではもらったアドバイスの通りにしたら、何もかもが上手くいった。あんなにコースをおさえられたのは初めてかもしれない。あの感覚を忘れないで、もっとうまくなりたい。

 北越としての目標のベスト4独占は達成できなかった。ペアとの間でコミュニケーションをとれていないペアもあったみたいだから、そういうところから徹底してやっていかないといけない。3年生のすごさを改めて知った。

 次は県インドア。ここにまずピークをもっていくことが大事。絶対に勝たなければいけない。個人は置いておいて団体戦。このチームで初となる団体戦。勝つのは簡単じゃないのは去年で思い知った。それまでに今日の出た課題に1人1人が本気で向き合っていけないとチームとして強くなれない。去年のチームですら中越に1試合目で負けた。もっとチーム力を強くしていかないと。

 勝つために何をするのか、そのときの自分のベストを尽くす。全国選抜に行く!(加藤洸太郎のノートより)

 

 

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 今日は県新人だった。結果は8決めで中越に負けてベスト16という結果になった。今日の試合では自分の今すべきテニスを理解していなくて、自分のやりたいテニスをして、キャパから外れて自滅をするという内容ばかりだった。爽空が試合前に何度も言っていたが、自分の最低限やるべきテニスを考えて、調子が悪いときにも勝ちにつながるテニスというのができていなくて、ボールが入らないのに無理に攻めないと、とかここに打ちたいなど自分勝手なことばかりしていた。ボールが入らないときでも最低限ボールをおさめてラリーがないと試合にならないのに自分の弱い部分がでた。先生が言っていたが、北越は今まで先輩たちが結果を出した分、他校からは思い切ってプレーされるから、相手は良い形でプレーできるし、自分たちは受けないといけなくなる。しかし、その中でも勝たなければいけない。いくら相手が100%の力で戦ってきて自分たちが最悪な状態でも勝たなければいけない。そのために今自分は苦しくなると自分勝手になる弱い自分を超えていかないといけない。これから県インドア、北信越インドアは今の自分では絶対に勝てない。

 今の現状、「県内一弱い後衛」打ち破る。(佐藤陽太のノートより)

 

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 27日に行われたシングルスでは、まったくいいところなくすべての選手が敗退しました。雨が降り続く中、思うようなプレーができないのは仕方がないとして、そのような場面で正しい戦術を引き出せない。ダブルスではパートナーとのコミュニケーションで精神の安定は測れるのでしょうが、シングルスとなるとまだまだ脆い。優勝した巻高校の新保君、準優勝の産大附属森田君、この2人の決勝戦は見事でした。サーブ、レシーブで主導権をとったほうが徹底した攻撃をみせ、それを他方が守っていく。長いラリーの中で少しずつスペースを広げてウィナーをとる。終盤に新保君は脚が痙攣を起こし、このまま負けてしまうのではないかと思いましたが、強い精神力で最後までボールを拾い続けました。本当に素晴らしい決勝を観させてもらいました。技術はもちろんですが、2人の放つ気迫は見事でした。あの戦い、今の北越ではできません。非常に勉強になる大会でした。

 

 この大会は開会式前から雨が降り続きました。中断する場面も多々みられましたが、運営された先生や補助員の生徒の皆さんの迅速な判断と行動で、大会は無事に行われました。みなさんに感謝いたします。本当にお疲れさまでした。

 

 

 

 昨シーズン、県新人と県インドア個人戦はベスト4を独占しました。県内では圧倒的に戦力があったはずでした。しかし県インドア団体では決勝リーグ初戦で中越高校に1-2負け。2戦目も長岡商業に1試合落としました。本当に薄氷の勝利でした。しかも北信越ではリーグ全敗。全国へはまったく届きませんでした。

今年は昨年ほどの戦力はありません。精神的にも幼く、脆い選手が多いです。

 県インドア団体まであと2か月弱。これからの彼らの成長にかかっています。

2019年10月19日 (土)

HOKUETSU Spirits 2019 ~ 夢 ~

 チーム北越の3年生に穂苅匠という選手がいます。白根第一中学校出身、前衛。

 彼が中学3年生のときの地区大会を観戦したとき、当時の顧問の先生に声をかけられたことがきっかけでした。中学からソフトテニスを始め、実績はまったくなし。顧問の先生が赴任されたのが2年生のときだったので、1年ほどしかまともにテニスを教わってはいない選手でした。ただし並外れた運動能力を持っており、「もしかしたら」という期待の持てる選手ではありました。

 入部当初は圧倒的なレベルの差を感じたと思います。ついていけないと感じたことも1度や2度ではないと思います。私は普段の練習をみていて、「きっとうまくなる」という予感はしていましたが、それは本人の自覚、努力があってこそです。

 幸いこの学年は非常に仲が良く、技術の有無に関わらずコミュニケーションが活発でした。こういった環境であったことも穂苅が最後までやり切れた要因だったと思います。

 2年生の春の県総体。穂苅は1学年上の小林風雅という選手の組んでのエントリーでした。残念ながら新発田中央高校のエースペアにファイナルで敗退(彼らはインターハイ出場を決めました)し、穂苅は小林を引退させました。

 県総体の最終日。最後のミーティングの後、2人はずっと話をしていました。ときに笑いながら、ときに涙しながら。その様子はあたかも小林が穂苅に襷を繋いだようにみえました。

 

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 秋からはダブルフォワードに挑戦しましたが、なかなか結果は伴いません。地区大会はベスト8、新人戦は初戦敗退。どこにゴールがあるのかわからないマラソンを駆けるようにもがいていました。

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 光が差してきたのは4月。恒例の奈良明日香遠征でのことです。後輩の佐藤陽太とのペアリングで全国の選手と多くの試合を行いました。この様子をみて「なんとかなるかも」という確信めいた感情を抱きました。迎えたHJS予選。順調に勝ち上がりベスト8進出。準々決勝は同校対決となり松尾・新部ペアに敗退しましたが、ついに公式戦で結果を残しました。

 

 しかし、そううまくはいかないものです。5月の連休のあとに行われた地区大会では第5シードだったにも関わらずまさかの3回戦敗退。県総体出場権への敗者復活にも負け、自力での県総体出場を逃してしまいました。幸い他のペアが自力で県総体出場を決めてくれたおかげで、各校に2枠ずつ与えられる「学校枠」で県総体出場となりました。

 このままでは県総体に出場しても、意味がないだろうと思いました。チーム北越にとって県総体は「出場することに意味がある」大会ではけっしてありません。3年間の集大成にする気もありません。そのことを彼に伝えました。

 時間は限られていました。毎日毎日、遅くまで残って自主練習を行いました。何度も何度も話をしました。そして県総体前夜、「これで勝てなかったら仕方ない」と思える状態にまでもっていくことができました。

 迎えた県総体は地区大会の汚名返上とばかり、アグレッシブに戦い続けました。学校枠での出場であり、厳しい組合せでした。苦しい場面もたくさんありました。しかし、彼らの心は最後まで折れませんでした。またしても準々決勝で同校対決に敗れましたが、2日目のインターハイ出場決定戦を2勝1敗で6位入賞。夢の舞台をつかみ取りました。

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 インターハイ出場を決めて臨んだ北信越大会。佐藤・穂苅ペアはシードをもらっていましたがまったくいいところなく初戦で敗退。今までに例のない強風の中での試合ではありましたが、条件はみな同じ。なのに負けたことに対して、戦えなかったことに対しての悔しさがまったく見えませんでした。県総体前、あれだけ必死に取り組んできた自主練習もあっさり切り上げるようになりました。彼に言いました。

「インターハイ出場を決めて、目的を果たしたと思ったのなら大間違い。チームは日本一を目指して練習している。今とっている行動が日本一に向かっていると胸を張って言えるか。」彼らの心に再びスイッチを入れました。

 インターハイまでの1か月。練習試合、強化練習でできることはやりました。穂苅は必死で戦いました。その結果、インターハイでは1回戦を突破。2回戦では強豪高田商業を相手に健闘むなしく敗れましたが、本当によく頑張りました。3年前「もしかしたら」と思った選手が宮崎の地で最後の戦いを迎えられたことを誇りに思います。素晴らしい選手に育ちました。そしてペアを組んだ佐藤陽太。あの襷は間違いなく受け継がれました。

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 あのとき声をかけてくれた顧問の先生、素晴らしい出会いをありがとうございます。

 先生の予想は超えてくれたでしょうか?